道端にJCが落ちていたのでお持ち帰りした 立ち読み版
その日も残業だった。田中悟志はため息をこぼしながら終電を降りた。凝り固まった肩を無意識に手で揉みほぐす。普段はテレワークで出社する必要はないのだが、夏発売のゲーム開発が遅れていて、社員がほぼ全員、連日泊まり込みになってしまったのだ。
今夏発売のゲームはようやく完成はした。だが悟志は達成感より疲れを感じていた。人前では強気な態度を通しているため、周囲の反応が見えると精神的にキツくなる。だが悟志はわざとそれに気づかないふりをしていた。だから余計に気疲れすると判っているのだが、責任のある立場にいるため、仕方なくそれを続けている。
田中さんもアラサーなんだから、彼女いた方がいいんじゃないですか?
と、部下は口々に言う。悟志もこれまでに何度か女性と付き合ったことはある。が、今のような忙しさになってからは、特定の女性と付き合うことは面倒になっていた。
そもそも相手に合わせて、相手のことを考えて、相手の機嫌を伺うというのが面倒だと思う。悟志はつい癖でポケットから煙草のボックスを出そうとして、慌てて手を下ろした。改札を抜けてエスカレーターで地上に向かう。
十代の頃からこの業界でバイトを始め、二十代に入ってすぐに社員登用され、様々なタイトルに関わった悟志の年収はけっこうな額になっていた。
最初は会社の近くの六畳一間の安いアパートを借りていたのだが、今は海外出張中の友人の一軒家を丸ごと借りて暮らせているのはありがたい。難を言えば会社からかなり離れていることだろうか。だが普段はテレワークオンリーなので、何の問題もないのだ。悟志はぼんやりとそんなことを考えながら家への帰り道をのんびり歩いていた。
この時間になると会社帰りに飲みに行く、ということもない。自分が一番最後に会社を出たのだから、誘われても断るしかなかったし、今日は悟志自身、誘いに応じる気はなかった。
街明かりに照らされた道路が住宅街に入ると急に狭くなる。街灯が弱くなって周囲が急に暗く見える。働き始めた頃はこの闇が妙に怖かった。そんなことをぼんやり思い出していた悟志は、見慣れたゴミ捨て場に違和感を覚えて立ち止まった。
ゴミ捨て場に一人の少女が横たわっている。弱々しい街灯に照らされた、地面に転がった少女を見た悟志は息を飲んで目を凝らした。少女は悟志に背を向け、足を抱えた格好で横になっている。髪はストレートのロング、服はどう見ても女子学生の制服だ。悟志は慌ててその少女に駆け寄った。
悟志は急いで救急通報するために携帯用端末を取りだした。だが少女の状態を見た悟志は通話のボタンを押すのを止めた。
以前、悟志は街中で倒れた女性を助けたことがあった。その女性はとても具合が悪かったのか、顔色も悪く、地面にへたり込んで息を切らしていた。悟志が慌てて救急連絡した後、女性は搬送された。その時の女性の見た目と、少女の見た目がまるで違うのだ。
横たわった少女はとても綺麗で可愛かった。長い睫毛はカールされていて、顔立ちはとても整っている。だがエステでは説明がつかないくらい、肌に妙な照りがある。化粧をしっかりするタイプなのかも、と考えてはみたが、無理があると悟志は考えた。しかも少女はぴくりとも動かず、呼吸をしている様子がないのだ。
もしかして、と悟志はまじまじと少女の顔を覗き込んだ。以前、捨てられたダッチワイフを死体と間違えて通報したというニュースを見かけた。悟志は確かめるために少女を検分した。人通りがない路地で、しかもゴミ捨て場に倒れているというのも変な話だ。
脚部を見ようとした悟志はそこで覚えのある匂いに気付いた。前にチューンナップし過ぎたゲームパソコンのグラフィックボードが壊れた時のような、電子回路の焼ける匂いだ。悟志が匂いの発生源を辿ると、どうやら少女のスカートの中らしいということが何となく判った。
この場でスカートをめくって大丈夫だろうか。
悟志は一瞬、迷ってから周囲をこっそり見回した。幸い人通りは全くない。悟志は少女のスカートの裾をつまんで軽く持ち上げてみた。すると途端に匂いが強くなる。そこまでしても少女は一切動かない。悟志はこの場合は仕方ない、と自分を納得させて、一気に少女のスカートをめくり上げた。
足を折り曲げた少女はショーツを穿いていなかった。膝を抱える格好をしているために股間の部分が目に入る。が、そのおかげで悟志は平常心でいられた。顔を近づけるまでもなく、電子回路の焼ける匂いは少女の股間から漂っているのがはっきりと判ったからだ。
そういえばこないだ、人間そっくりで感情を持った高級ダッチワイフロボットが売り出されたとか何とか、掲示板に書いてあったなあ。
人身売買組織が臓器密売を行って残った脳を有効活用するために人の脳を組み込んだダッチワイフロボットを製造しているだとか、もっともらしいことが書いてあったのだが、悟志はそれを厨二病的なネタだろう、と笑って流していた。しかし、この少女を見ると、掲示板に書かれた内容は全くのデタラメではないのかもしれない。
これはお持ち帰りするべきなのでは。
二徹な状態の悟志は、普段なら考えないようなことを考えていた。悟志は平常心のつもりだった。後で、どうしてこーなった、ということになるのだが、この時は気付いてなかった。酒も飲んでいないのに酔っ払っている状態に近かった。
そもそも人身売買とか臓器密売とかの被害者なら保護する必要がある。それに何より、少女がもし、そういった存在なら興味がある。だが、一応、死体でないことは確認しなければならない。悟志はうん、と一人で頷いて、少女の股間を覗き込んだ。
植え込まれたアンダーヘアをかき分けると、妙につるつるした大陰唇が見えた。悟志は片手で携帯用端末を操作し、その部分にライトを当ててみた。傍から見ると変態行為だったのだが、その時の悟志はガチで真面目だった。
ライトに照らされた少女の股間には、生身ではあり得ない継ぎ目があちこちにあった。よっしゃー、と思わず呟いてから、悟志はさっさと少女をお持ち帰りすることにした。生身の人間ならヤバいのだが、生身でなければ問題ない。むしろ不法投棄する方が悪い。などと、真剣に考えた悟志は少女を抱き上げて驚いた。
軽い。悟志はそのことに驚いた。かつて付き合っていた女性を両腕で持ち上げた時は、こんなに軽くはなかった。だが、ロボットなら重い、というイメージはもしかしたら間違っていたのかも知れない。プラスチックやアルミ合金で出来ているなら人より軽くて当然ではないだろうか。
それにお持ち帰りするには軽い方がありがたい。悟志は少女に自分の鞄を乗せて、家に持ち帰ることにした。
家に運び込んでも少女は全く動かなかった。悟志はとりあえず少女を自分のベッドに寝かせることにした。他にもベッドを入れておけば良かったかも知れないが、生憎と泊まりにくる客には布団を敷いてもらうことにしている。だがそこに乗せたら少女を見る時に、中腰かしゃがむか、座るかして覗き込まなければならない。
そんな姿勢続けたら腰が壊れるわ!
と、悟志は口の中で言って、まずは少女の制服を剥がすことにした。女性の服の脱がせ方程度なら判る。ブラジャーのホックが後ろか前か、または全くないか、とかで驚くような初心でもない。悟志は興味津々で鼻歌を歌いながら少女のブラウスのボタンを外した。
ブラジャーは純白で、乙女な感じだった。ついつい、おおー、と感嘆の声を上げて悟志はフロントホックを外して乳房を拝んでがっくりうなだれた。人身売買とか臓器密売とか残った脳がどーとかの、超厨二病展開を期待していたのに、残念な乳首が見えたからだ。
少女の乳首はツヤツヤのテカテカで、どう見ても玩具っぽかった。色だけ見ればベビーピンクなのだが、プラスチックっぽい質感なのでどうしても作り物にしか見えない。しかも乳首と乳輪の部分に継ぎ目がある、というか明らかに別のパーツで構成されていて取り外しも出来そうだ。ブラジャーを完全に剥ぎ取ると、乳房の付け根にも注意して見ないとわからないほどうっすらとだが、継ぎ目があるのが解った。
「乳首がローズピンクとか……」
うなだれた悟志は唸るように言ってから、がばっと顔を上げた。
「このテクスチャーにこのカラー乗せたの誰だよ! 肌のテクスチャー書き換えろ!」
質感が良ければローズピンクはとても上品に見えるはずだ。だが、少女の乳首はいかにもな作り物、しかも超安物にしか見えなかった。