シナリオイメージ1-6
「ったく、せっかくボス戦だったてのに……こんなとこに戦う相手なんてもういるわけねえよ」
「はぁ、はぁ……報酬は払ったであろう。真友が死んでしまう。早く助けてくれ!」
ここにいないはずの声が聞こえる。俺はもう死んだのだろうか?
うっすらと目を開けると男の刃は振り下ろされることなく、突然の来訪者の方へと向いていた。
「あー、わかったって。一体どこの馬鹿がそんなことを……」
男の目の前には宮磨と、先ほどゲームセンターであった女の子が立っていた。
「馬鹿野郎! くるな、逃げろ!」
女の子の顔が俺たちの姿をみて、恐怖によるものなのかひきつった笑みを浮かべる……。
「なんだこいつは? なんでこんな野郎がこんな所にいる。こいつぁ極上の……獲物じゃねぇかよ!」
叫んだ女の子が視界から消える。次の瞬間、女の子の体が男の前へと現れ拳を繰り出していた。
弾ける火花。男はそれを寸でのところで短剣で防ぐ。
それなのに女の子の拳は裂けることはなく、逆に短剣のほうが折れ曲がっていた。
「いいねえ……思った通りだ。あたしの拳を受けた奴なんざひさしぶりだ……ぜっ!」
女の子の拳には金属製のナックルが握られていた。刃物を握る相手にも臆さず、そればかりか笑みさえ浮かべながら立ち向かっていく。
間髪いれずに二発、三発と拳を重ねていく。空気を切り裂くほどの拳速。さしもの男もそれを受けきれずに、後へと飛び退く。
互角……いや、押している?
「いったい何者なんだ……?」
「だから言ったであろう? あれは戦う者、飢えた野獣だと」
宮磨が俺の側へと駆け寄ってくる。懐から手ぬぐいを取り出すと、俺の肩をきつく縛り始める。
「痛っ……!」
「痛いのは当たり前だ! まったく、こんなに無茶しおって……」
俯きながら文句をたれる。心なしか声が震えている気がする。
「うらぁっ!」
力強い声が闇夜に響く。拳の渾身の一撃。
それを二つの短剣で受ける男。だがその衝撃は止まることを知らず、体は後方へと後ずさりする。
「もしかしてあいつが拳王……凶砲皇孤」
まことしやかに囁かれる噂。うちの学園に在籍しているという、拳のみで暴走族や暴力団をいくつも潰したという少女。
向かうところ敵なし。そしてつけられた二つ名が拳王。
「拳王……いいねぇ、その呼び名嫌いじゃない」
ニタリと笑う女の子。自分がその拳王だと応える。
ジャラッ
男の両手から短剣が消える。接近戦は不利だと悟ってか、その手には鎖鎌が握られていた。
優勢から劣勢へ。拳の届かない位置からの攻撃に、対処する術などあるはずもない。
二つの風切り音があたりに木霊する。その音は一定でなく、タイミングをまるで読ませない。
「そんなものまで使えんのか。厄介な奴だな」
しかし、その顔には焦りなど微塵もなかった。何かを待つようにその鎖の動きを見つめている。
鎌がくるか分銅が来るか……対処を間違えれば即死につながる。
ビュン
男の腕から鎌が投げ放たれる。それは回転しながら凶砲へとむかっていく。
凶砲は迫るそれを……ただじっと待っていた。
「よけろ!」
ジャン
凶砲の手が鎖でがんじがらめにされる。しかし、吹き出すはずの血しぶきはあがることはなかった。
その手には鎌が握られていた。一体どういう動体視力をしているというのか。
「さあ、チェーン・デスマッチと洒落込もうかっ……!」
凶砲がその鎖を力いっぱい引っ張る。引っ張られるはずの男の体はその位置を動いていなかった。
「なんだとっ?!」
残った分銅が凶砲へと向かう。うなるそれを躱し、武器を捨てた男の元へと駆ける。
だがその動きは男から1mほどの距離で止まってしまう。
「くそっ! 小癪な真似を」
先ほど投げた分銅が大木に巻き付いていた。まずい……。
巻き付いた鎖をほどこうと走る俺。だが、凶砲に振るわれるはずの攻撃はいくら待てども来ない。
男は優勢にも関わらず逆方向へと駆けていく。その姿は瞬く間に闇の中へと消えていく。
「てめえ逃げんのか! おいっ、早くはずしやがれ!」
俺が鎖を外すと凶砲はもの凄い速さで、その姿を追っていった。
彼女ほどの腕ならば心配はいるまい。
サイレンがなり響く。どうやら俺は生き延びることができたようだ。
「はぁ、はぁ……報酬は払ったであろう。真友が死んでしまう。早く助けてくれ!」
ここにいないはずの声が聞こえる。俺はもう死んだのだろうか?
うっすらと目を開けると男の刃は振り下ろされることなく、突然の来訪者の方へと向いていた。
「あー、わかったって。一体どこの馬鹿がそんなことを……」
男の目の前には宮磨と、先ほどゲームセンターであった女の子が立っていた。
「馬鹿野郎! くるな、逃げろ!」
女の子の顔が俺たちの姿をみて、恐怖によるものなのかひきつった笑みを浮かべる……。
「なんだこいつは? なんでこんな野郎がこんな所にいる。こいつぁ極上の……獲物じゃねぇかよ!」
叫んだ女の子が視界から消える。次の瞬間、女の子の体が男の前へと現れ拳を繰り出していた。
弾ける火花。男はそれを寸でのところで短剣で防ぐ。
それなのに女の子の拳は裂けることはなく、逆に短剣のほうが折れ曲がっていた。
「いいねえ……思った通りだ。あたしの拳を受けた奴なんざひさしぶりだ……ぜっ!」
女の子の拳には金属製のナックルが握られていた。刃物を握る相手にも臆さず、そればかりか笑みさえ浮かべながら立ち向かっていく。
間髪いれずに二発、三発と拳を重ねていく。空気を切り裂くほどの拳速。さしもの男もそれを受けきれずに、後へと飛び退く。
互角……いや、押している?
「いったい何者なんだ……?」
「だから言ったであろう? あれは戦う者、飢えた野獣だと」
宮磨が俺の側へと駆け寄ってくる。懐から手ぬぐいを取り出すと、俺の肩をきつく縛り始める。
「痛っ……!」
「痛いのは当たり前だ! まったく、こんなに無茶しおって……」
俯きながら文句をたれる。心なしか声が震えている気がする。
「うらぁっ!」
力強い声が闇夜に響く。拳の渾身の一撃。
それを二つの短剣で受ける男。だがその衝撃は止まることを知らず、体は後方へと後ずさりする。
「もしかしてあいつが拳王……凶砲皇孤」
まことしやかに囁かれる噂。うちの学園に在籍しているという、拳のみで暴走族や暴力団をいくつも潰したという少女。
向かうところ敵なし。そしてつけられた二つ名が拳王。
「拳王……いいねぇ、その呼び名嫌いじゃない」
ニタリと笑う女の子。自分がその拳王だと応える。
ジャラッ
男の両手から短剣が消える。接近戦は不利だと悟ってか、その手には鎖鎌が握られていた。
優勢から劣勢へ。拳の届かない位置からの攻撃に、対処する術などあるはずもない。
二つの風切り音があたりに木霊する。その音は一定でなく、タイミングをまるで読ませない。
「そんなものまで使えんのか。厄介な奴だな」
しかし、その顔には焦りなど微塵もなかった。何かを待つようにその鎖の動きを見つめている。
鎌がくるか分銅が来るか……対処を間違えれば即死につながる。
ビュン
男の腕から鎌が投げ放たれる。それは回転しながら凶砲へとむかっていく。
凶砲は迫るそれを……ただじっと待っていた。
「よけろ!」
ジャン
凶砲の手が鎖でがんじがらめにされる。しかし、吹き出すはずの血しぶきはあがることはなかった。
その手には鎌が握られていた。一体どういう動体視力をしているというのか。
「さあ、チェーン・デスマッチと洒落込もうかっ……!」
凶砲がその鎖を力いっぱい引っ張る。引っ張られるはずの男の体はその位置を動いていなかった。
「なんだとっ?!」
残った分銅が凶砲へと向かう。うなるそれを躱し、武器を捨てた男の元へと駆ける。
だがその動きは男から1mほどの距離で止まってしまう。
「くそっ! 小癪な真似を」
先ほど投げた分銅が大木に巻き付いていた。まずい……。
巻き付いた鎖をほどこうと走る俺。だが、凶砲に振るわれるはずの攻撃はいくら待てども来ない。
男は優勢にも関わらず逆方向へと駆けていく。その姿は瞬く間に闇の中へと消えていく。
「てめえ逃げんのか! おいっ、早くはずしやがれ!」
俺が鎖を外すと凶砲はもの凄い速さで、その姿を追っていった。
彼女ほどの腕ならば心配はいるまい。
サイレンがなり響く。どうやら俺は生き延びることができたようだ。