絵茶で「フレユリえろ」、という宿題を出されました。
困る!


 

前半パートのあらすじ>

 ♀ユーリに告白して両思いになったけど、幼馴染みのあの娘は騎士団を辞めちまいました。
 恋人関係は自然消滅して、久々に再会したらしたで温度差に愕然とするフレンちゃん。
 星喰みも無事何とかなったし、騎士団長にもなったし、鬱憤晴らそうかな!
 ラゴウとキュモール殺害を利用してユーリちゃんを監禁・調教うっはうっは。



妄想ギルド MEGALOMANIA
20100220

 

「――……っていう、夢を視たんだよね。どうしよう?」
 凛々の明星の幼い首領は、榛の瞳に困惑の色を浮かべたまま、言った。何か言わなければ、と思うのに開いた口は一向に言葉を紡ごうとはしない。
 不本意な沈黙を守るフレンの横からごん、と鈍い音が響き、机が揺れた。ソーサーの上の、カップに入ったコーヒーが衝撃で少しこぼれた。
「ユーリ、しっかりするんだ……」
 こぼれたコーヒーを凝視したまま、フレンは言った。それはともすれば自身にも言って聞かせるような含みもあったのだが、如何せん声に張りがない。だって、仕方がない。震えなかっただけ良しとしよう。
 フレンの声は、隣で恐らくは机に突っ伏したまま微動だにしない幼馴染みには、届いていないかも知れない。届いてはいるけれど、敢えて聞こえないふりをしているのかも知れない。それは、フレンには判らない。
 苦笑を浮かべたまま口を噤むフレンと、表情さえ伺い知ることの出来ないユーリとを前にして凛々の明星の首領――カロル・カペルは申し訳なさそうに眉根を寄せている。そもそも、折り入って二人に話したいことがある、と言いだしたのはこの子供だ。ニュアンスの違いはあったにせよ、二つ返事でフレンとユーリは彼の話を聞くことを承諾し、表通りから少し奥まった場所にある下町の喫茶店に入った。そして、彼が視たという夢の話を聞いた。
「カロル、君は僕のことをそんな目で視ていたんだね」
 彼を責めているわけではなく、己の日頃の姿勢を恥じて、フレンは言った。
「そ、そんなつもりじゃ、なかったんだ、けど……なぁ?」
 フレンの言葉を否定はしてくれるのだが、子供の語尾は何故か自身が無さそうに揺れる。悲しい。
 溜め息を吐いて、それからやっとフレンは隣で動かない幼馴染みを横目で見遣った。机に伏せた姿勢は変わらず、魔導器を引っ掛けた腕がだらしなく垂れ下がっている。
 フレンは、もう幼馴染みに声を掛けることはせずに飲みかけのままだったコーヒーを口に含む。口の中には拡がる風味は、苦味より酸味の方が強い。チョコレートが欲しいな、と思いながらもう一口含むその隣で、力なく垂れ下がっていた筈のユーリの手が、今度はばん、という擬音語が聞こえそうな勢いでテーブルを叩いた。コーヒーカップはフレンが手にしていたので、こぼれることはなかった。
「……カロル」
 地の底から響くような声、というのは今の幼馴染みが発している類いのものを言うのだろうな、と思いながらフレンは通り掛かった給仕の女性を呼び止める。
「すみません。チョコレートはありませんか?」
 やはり、食べたくなった。
「何でオレが女なんだ?」
 肩越しに、ゆらりと持ち上がる黒い頭を見る。
「そうですね。チョコレートパフェや、フォンダンショコラでしたらございますが」
 給仕の女性は柔らかそうなストロベリーブロンドを揺らしながら、メニューを捲り、指し示した。
「だって、男の人同士でどうするのか、なんてボク分からないもん」
 溶けた氷で随分と薄まってしまったジンジャーエールを啜りながら、カロルは唇を尖らせる。
「う……ん。ちょっと一人で食べるにはどちらも多いかも知れないな」
 メニューに描かれた柔らかいテイストの甘い絵に、フレンは渋面を作りながら唸った。
「だったらコイツが女でいいじゃねぇか。フレン、フォンダンショコラなら手伝う」
 言いながら、ユーリはフレンの首周りに腕を絡ませて引き寄せた。
「では、フォンダンショコラお一つで宜しいですか?」
 注文を繰り返しながらも、給仕の持つペンは既に淀みなく伝票の上を滑り出す。フレンはユーリに首を固められたままメニューを閉じて女性に返し、頷いた。
「フレンが女の子じゃ意味ないもん。ユーリ、食べ過ぎだよ」
 注文を取り終えた給仕が去り、また三人だけになってカロルは言う。彼の視線は、ユーリの手前のケーキ皿に注がれていた。
「何で?顔だけはいいじゃねぇか、こいつ」三分の一ほど残されていたケーキの切れ端で、皿に描かれたベリーソースを綺麗に掬い上げながらユーリは言った。「それに、お前らが味見したせいであんなの食った内に入んねぇよ」
 彼の主張は口に放り込んだケーキで、不明瞭に濁る。子供の言い分は、幼馴染みの指摘とは外れたところにあるのだろうな、とフレンは思ったけれど、言わなかった。友人のある種の身勝手さは長年の付き合いでよく解っていたし、自分に都合良く解釈して勘違いしているのならその内に痛い目を見れば良い。そこまで面倒は見切れない。面倒臭い。
 もしかすると自分が彼に抱く親愛の情、或いは執着というものは男女間の愛だの恋だのに似通っているのかも知れない。けれど自覚を促せば、何処かそうした優しく、暖かいものではないような気がしてくる。
 子供の視たという狂暴な夢も強ち的外れというわけではないのかも知れない、と甘くて黒い砂糖菓子を待ちながらフレンは思った。



 

 

 


夢オチはお約束。
(20100221)





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最終更新:2010年04月09日 14:31