アレクセイがさり気なくひどい言われようかも知れません。
アレクセイが好きな方(私だ!)(笑)はそっと回れ右してみるのも手です。


 

 健やかな喧騒はすっかりなりを潜め、町は静けさに沈んでいた。
 下町の坂を何をするわけでなく緩慢な足取りで上りながら、自分の故郷はこんなにも寂寥としていただろうか、とユーリは首を傾げる。そして、擦れ違う人の陰鬱な顔を横目で見遣ると、そのまま空に踊る天殃を仰いだ。
「まー……分からないでもない、か」
 なあ、と傍らに寄り添い歩く相棒に目配せをすれば、いつもの相槌が返される。期待通りの答えに満足して、ユーリは相棒の耳の裏を一撫でし、また歩きだす。
 空を覆う、古の災厄の名を「星喰み」という。太古に栄えた魔導器[ブラスティア]文明がエアルの増加を誘発し、結果エアルの調停者だった始祖の隷長[エンテレケイア]がその過負荷に耐え切れず転化した負の遺産だ。
 ザウデ不落宮に封じられていたそれを、こともあろうか兵器と勘違いして解放した馬鹿が居る。帝国の、元騎士団長だ。哄笑と共に舞台を降りた道化は、災厄を純粋な力と思い込み、その力を以ってして世界を纏め上げるつもりだったらしい。
 男は自身の所業を「手を汚すことも厭わない」、と形容した。つまり、どれだけ崇高な目的であるよう唱えはしても結局は帝国の強いてきた独裁制と自身の理想(野望?)がそう大差ないことを自覚はしていたのかも知れない。その点――つまり、自身の信じる、或いは貫こうと思う正義に絶対性が伴いはしない点を意識的にせよ無意識的にせよ理解しているという点では、不本意だが男の言わんとすることは分からないでもない。理解出来るのは言わんとすることに限られ、その理想の方向性に納得など勿論出来るわけがなかった。ただ、己の信じるところを成すために自ら汚れ役を買って出る、というブレのない男の姿勢は奇妙にユーリ自身と被ることもあり、若しかすると傍からは自分もあの男のように見られているのだろうか、と思わないでもない。そして、それは何となく、少し、嫌だな、とユーリは思っていた。
 そうして解き放たれた「星喰み」は空を覆い、大地を喰らい、着実に世界を侵していった。男の声高に称えた理想の果てに訪れたものは何ということのない、世界の終末だ。そして、そんな未曾有――などでは決してない、過去の皺寄せを前に帝国とギルドのみならず、始祖の隷長[エンテレケイア]までもが一つになろうとしているのは大した皮肉だ。男の意図とは外れたところで歯車は正しく噛み合い、回りだした。古今東西、共通の敵や脅威を前にバラバラだった思想や理念が団結するというのは随分と使い古されたものだが、どうやら未だに有効であるらしい。
(違うな。『有効』だなんて可愛いモンじゃなくて、単に学習してねぇだけか)
 古今東西使い古されている上、飽きもせずに同じ手に食い付くというのは、そういうことなのだと言い切ってしまって良いだろう、とユーリは思う。決意を固め「敵」を見据えているその時だけは皆心に誓うのだろう。
「『もう二度と、同じ過ちは繰り返すまい』――って、か」
 この平和を、友情を、永久に尊び守ることを誓う。虚構の誓約の名の下に、志の辻褄を合わせた勇士が集う。
 それも、構わないとは思う。例え争いがまた巡っても、今度の平和は永く続くこともあるのかも知れない。ただ、平和と抗争のプロセスなしに世界は廻らないという事実、その事実を皮肉に思う。独裁者の投じようとした劇薬は、結局こうして一番収まりの良いところ、良いように、落ち着いてしまったというわけだ。どちらともを最良とは呼べず、ただただ不毛な過程だけがまた繰り返される。
 せめて後始末くらいはしていってくれ、と思わないでもなかったがこの危機を巧く捌けばフレンの株も上がるだろうし、それで良しとしておくことにした。そうでなくとも、もう居ない人間を中傷するのは気が引ける。
 坂を上りきり、市街地へ出ても相変わらず帝都は閑散とした様子で、普段なら子供たちの行き交う午後の広場も今は静けさに包まれている。
 遠く、高らかな尖塔から時を告げる鐘の音が響くと、これはまたますます終末じみてきたな、とユーリは肩を震わせて笑った。


スワンプマンの埋葬 Burial Play
20090604


 道具屋で不足していたボトル類を補充すると、鐘の音に誘われるように郊外へと向かった。用は済んだのでこのまま下町の宿に戻っても良かったが、どうせ今は自由行動中で日が暮れるまでは誰も戻りはしないだろう。自分含め、どうにも落ち着きがない。
 郊外には共同墓地がある。普段からこの周辺は閑散としていたが、迫り来る世界の脅威を前にしてもその光景に変化はない。寧ろ以前来たときよりも増えているくらいかも知れない。見苦しくない程度に手入れの行き届いた花壇を横目に、花くらい持ってくるべきだったかな、とユーリは思った。
 墓地の門に差し掛かるとそこでラピードは立ち止まり、糸杉の下で座り込んだ。聡明な相棒はユーリが命じるまでもなく分別というものを弁えているということらしい。確かに、万人が犬に対して好意的な目を持っているわけではなかったし、無用な誤解を生むこともない。
 ちょっとだけな、と頭を一撫でするとラピードは腕に顔を埋めて伏せた。
 相棒の頭から手を離して屈めた上体を起こす際、流れ落ちる髪の間に見慣れている気のする石楠花色に目を止める。姿勢を正し、改めて見遣ればその背中は矢張りレイヴンのものだった。
「なーにやってんだ、あのおっさんは……」
 ユーリが首を傾げながら呟くと、視界の隅で相槌を打つようにラピードの長い尾が揺れた。
 最初は、昔戦友兼想い人だったという女の墓参りにでも来たのだろうか、とユーリは思った。海凶[リヴァイアサン]の爪の暗殺者たちからレイヴンと女、そしてイエガーの関係を聞いたのはつい最近のことだ。意外と面倒臭い――繊細な性格をしているレイヴンが、感傷的になって彼女の墓に顔を出すという構図は然したる苦もなく容易に思い浮かぶ。だから、もしあの面倒臭い――繊細な男が在りし日の思い出に浸りたいだとか、感傷的な自分に酔いたいというのであれば声を掛けずにそのまま立ち去るつもりでいた。だが、男の立ち尽くす墓の前には想い人の愛したという明るい色の花はなく、ユーリ同様その手には何も持たなかった。
 それはそれで面倒臭い気もしたが、何より好奇心に勝てなかった。短く刈られた緑の絨毯を踏み締めて、黒い鳥の巣に声を掛ける。
「黄昏てんなあ、おっさん」
 ユーリに気付いていた男は、少し顎を引いて肩越しに視線を寄越した。目が合う。
「あーら青年。なになにー?俺様恋しさにストーキング?」
「やー、何か場違いなのが居んなーと思ったらつい、な」
「ひっどいわー。って言うか、そりゃお互い様ってもんよ。お前さんこそこんな寂れたところで何しておいで?」
 問い掛けを投げながら、レイヴンはユーリへと向き直った。少し低い位置から湖の色をした目が真っ直ぐにユーリを覗き込む。
「別に?まあ、俺も一応人の子なもんで」
 下町に根を張っていたときでこそ、いつでも行けるのだと足が遠退いていたが今は帝都に寄る度に一応は立ち寄ることにしていた。母親の墓がここにはある。
 別に隠すようなことではないので至極軽い調子でユーリが答えると、レイヴンからは同様に軽い相槌が返された。
「で?木の股から生まれたおっさんは、こんなとこで何やってんだ」レイヴンの横に並び立ちながら、疑問をそのまま口にした。「元上司の墓参りにでも来たか?」
 レイヴンより幾らか高いところにユーリの視線はあるので、見ようと思えば墓碑に刻まれた名前を覗き込むことも出来たがしなかった。当て推量に、女とはまた違うレイヴン関係の故人を臭わせただけだ。
 ユーリの不躾とさえ取れる問いに、レイヴンは小さく肩を竦める。そしてそのまま肩を引き、ユーリから視線を外して墓石へと落とした。一連の動きを了承と受け取り、ユーリもまたレイヴンに倣い視線を落とす。
「ってかさあ、あのでっかい魔核[コア]の下から大将引っ張り出すのは事っしょー。騎士団もそんな暇ないって」
 レイヴンの言うように、確かに墓石に書かれた名前はかつての騎士団長のものではなかった。勿論、数回しか聞いたことはないが、レイヴンの愛したという女の名でもない。
「ふーん。ザウデ、調査入ったって聞いてたからな。そんとき回収したのかと思ってたわ」
「最初はねー、結構臭うもんで気が散って調査出来ないとかそういうデリケートな意見とかもあって、魔核[コア]退かそうとかって動きもあったことはあったのよ。でも、何せ奴っこさんあの大きさっしょ?砕いて退かそうにも……」
「あー……アスピオの魔導士か」
「そそ。抗議の声がたっくさんねー。その内皆さん鼻の方が慣れてきちまって、そのまーんま」
 仲間の一人である魔導士の少女を散々変人呼ばわりしている彼らアスピオの魔導士たが、男の話を聞くと第三者から見れば五十歩百歩な気がしてならない。目糞鼻糞を嗤う、でも良い。
「良く言えばまあ何だ……研究熱心で何より」
 寧ろそれ以外の言い種が見つからず、色々と曖昧に濁して締め括る。そして改めて、足元の墓石に視線を落とす。
「『シュヴァーン・オルトレイン』、ね」
 墓碑に刻まれたを読み上げると、並び立つ男は少し困ったように笑った。
「十年前のアレで、いつ終わりが来たって構わないって覚悟はしてたんだがねぇ」
「いざ自分の名前が書かれた墓とか目の前にすっと、何かしら思うところもある、ってか?」
 言い淀んだレイヴンに代わり付け足し確認する。レイヴンはユーリの問い掛けを否定も肯定もせず、ただしゃがみ込んだ。かつて自分だったものの名を、その軌跡を辿るような手つきで男は撫でた。
 ユーリは、沈黙を守る丸い背中から視線を外すと、結界が煌めき天殃の踊る空へと向けた。光る輪の向こう、奇禍の渦巻く終末の空にも、変わらず宵闇の先ぶれは輝いている。
「覚悟は、していたさ。まさか、置いてかれるとは思ってなかっただけで」
 西の空から再び男の背中へとユーリは視線を戻した。何となく、相槌は不要かとも思い口は開かずにいた。すると男は、シュヴァーンともレイヴンともつかない表情を肩越しに寄越し、笑った。

「うっわ、面倒くさ」
 丸く、明るい榛の色をした目を極限まで絞り、眉根を強く寄せしかめっ面をした子供に、ユーリは小さく顎を引いて同意の意を示した。
「そう。レイヴンは面倒臭い。いい歳こいて思春期の青少年並みにおセンチかつ繊細だもんだから、すっげぇ面倒臭い」
 つられて寄りそうになる眉根から意識を逸らそうと、子供の眉間に指をあてがって皺を引き伸ばしてやる。子供は寝台の上に寝そべり頬杖を突いたまま、されるが儘にしている。
 宿屋の二階に間借りしているユーリの部屋には、今はユーリとカロル、そしてラピードしか居ない。思春期真っ盛りの中年の面倒を最後までみる気が失せて、墓地に彼一人残してさっさと引き上げてきたところ、程なくして帰ってきたカロルに掻い摘んで先刻の男のことを話した。女性陣は――隣の部屋なので解らないが、エステルとリタは行動を共にしているだろう。
 限りなく愚痴に近い報告に、カロルから得られた答えがそれとなく自分の抱いた感想に近いことにユーリは満足した。主観を交えて話してしまった分、自分に分があることには敢えて目を瞑る。
「生きてるのに死んでた人が、急に死んでるのに生きてる人になっちゃったんだし、それも仕方がないのかもね」ユーリの手から離れ、ごろりと仰向けになりながらカロルは言った。「十年、だっけ?ブランク。サボってたツケが喪失感だけなら、それはそれでラッキーなんじゃない?」
 行き場をなくしたユーリの手は、そのままカロルの顔の脇にぱたりと倒れた。つられて、床に腰を下ろしたまま寝台にこめかみを押し当てる。
 喪失感、と子供は言った。喪失感、なのだろうかとユーリは思った。
「んー……何か、もっと単純っつーか、曖昧っつーか…………どっちかっつーと違和感とかなんじゃねぇの?」
 シュヴァーン・オルトレインとして生まれ、英雄として生き(生かされ?)、道具として死んでいく男を喪失することへの違和感だ。そうだ。喪失など有り得ない。有り得ないことへの違和感だ。或いは、シュヴァーン・オルトレインとして死んでいくことの適わない違和感、と言い換えても良い。
「そう簡単には割り切れねぇんだろ。それこそ俺らより長く生きてる分、な」
「何か寂しいね。折角生きよう、って思えるようになったのにその違和感がずっと付き纏うなんて」
 端から見ている分にはそれもあるのかも知れない、とユーリは思った。少なからず、英雄とさえ呼ばれたあの男の脆弱さに接触する機会のあった身としては放っておけないのも解る。
「まあ、あのおっさんも自分で生きることを決めたんだ。俺らがあれこれ言わなくても、とっとと自分で折り合い着けるだろ」
 決着、とは言わなかった。何となく、彼がどんな答えを導きだしたとしても妥協の域を出ない気がしたからだ。そして、それを子供に悟られたくはない程度の矜持はあの男にもあるだろう。
「それでも、支えるくらいは出来るよね?傍に居るんだもん」
 子供は、そう言って同意を求めてきた。寝台の上に落とした手を持ち上げて、子供の頭を掻き混ぜながら「だな」、とユーリは呟いた。
 どのみち、この聡い子供は気付いてしまうのだろう。そして気付いた上で、それでも綺麗なものや、尊いものを選ぶのだろう。そんな確信が、ユーリにはある。だからきっと、多少言葉を濁したところでこんなものはつまらない時間稼ぎでしかない。
 ユーリにせよ、名前に先立たれた男にせよ、これ以上ないほど惨めに、不様に、隠していたことを暴きたてられて尚、どうしてもまだ踏み込まれたくはない一線というものが存在している。そんな自分たちの仄昏い部分を、子供――子供、たちは、きっと、許してくれるのだとも、思う。
 だからきっと、名前を持たないもの達は明るい場所を忌避して暗がりに身を寄せる。出来れば誰も掘り起こしてはくれるなと、鼻歌混じりに埋め立てる。恐らく、それらはユーリと男の中に共通する数少ない概念だ。
 ぼんやりと思考を巡らせていると、カロルの頭を撫でていた手を取られる。撫で付けた前髪が崩れるのが気に入らなかったのか、と腕を引こうとすると手首を掴む手が本体ごと前のめりになってユーリの顔を覆いかぶさるようにして覗き込んできた。
「近い!近いぞカロル」
 迫る子供の頭を押し退けようと床に投げ出したままだった方の手も持ち上げるが、こちらも矢張りカロルの空いている方の手で阻まれた。絶妙な捻り具合のまま上体が固定されてしまったため、脇腹から背骨にかけての筋がとても痛い。
「意外……ここでユーリが同意するなんて」
「何が?っつーかまじ痛ぇ!」
 素直に痛みを訴えると、カロルはあっさりとユーリの両手を解放した。そのまま姿勢を直して、寝台の上に座り直す。ユーリはユーリで立ち上がり、違えた筋を伸ばしながら窓際に寄った。
 西の地平に太陽が沈んでから大分経つ。明々と瞬く宵の空の一番星を見上げながら、隣の部屋に顔を見せるべきか、と逡巡する。
「――……意外……?」一通り思考を巡らせ、身体の機能の回復を確認したところで引っ掛かった。「意外、って何がだよ?」
 窓の縁に浅く腰掛けながらユーリは問う。すると寝台の上に座る子供は、死人の名をなぞる男を「面倒臭い」、と断じたそのときと全く同じ形相で深々と溜め息を吐いた。
「ユーリはさ、レイヴンのことどうこう言えないんじゃないかなあ、って」
 寝台の上に寄った、シーツの皺を凝視するようにしてカロルは呟いた。成る程、矢張り根幹的に賢い子供のようだ、とユーリは感心する。
「俺、何も言ってねぇけど?カロル先生に同意しただけだって」
 知らずと、口元が緩んだ。
「ボクが言いたいのは、人の振り見て我が振り直せ、ってことだよ」
「何でおっさんの話から、矛先が俺に向くのか分からねぇ」
 これは本当だった。その上、心なしかカロルの機嫌は急激に下降している。しかも珍しく、怒りに由来しているように見える。
 この子供が憤りでなく、純粋に怒りだけの感情を滲ませることはそう多くない。その物珍しさに可愛げすら覚えながら、それが顔に出る前にカロルから視線を逸らしてしまうことにする。
 逸らした視線の先、宿屋の前をエステルとリタが連れ立って歩いているのが見えた。ジュディスは――姿は見えないが、多少暗くなってもあの二人のような心配は要らないだろう。
 窓から通りを覗いていたユーリに気付いたエステルが、下から大きく腕を振る。
「分からないの?本当に?」
 苛立ちを通り越して、飽きれてすらいるような子供の声が、エステルに手を振り返していたユーリの背中に掛けられた。
「分からねぇよ、本当に」
 エステルたちが角を曲がる、その背中を見送りながら言葉を返す。
「飽きれた!」
「知ってる」
 間一髪入れずに言うと、今度は沈黙で返された。
 カロルが何をそんなに不機嫌でいるのかは測りかねたが、顔を高揚させて感情を顕にしている様子は、取り敢えず可愛らしく微笑ましいのでまあいいか、とユーリは思う。
「ああ!もう!信じらんない!ユーリがここまで面倒臭いなんて!」
「何だよ。俺、おっさんと同列かよ?」
「そうじゃなくて!」
 肩越しに背後を伺うと、寝台の上の子供は頭を抱えてのた打っていた。面白い生き物だ。
「レイヴンとシュヴァーンは同じ人間だけど、ユーリとフレンは別々の人間なんだからね!」
「うん?……うん、まあ、そうだな」
 これまでの話の流れから、どうして急に幼馴染みの名前が引き合いに出されることになったのだろう、と首を傾げながらカロルの言葉をユーリは肯定した。
 不本意ながら、根本的なところはよくよく似通っていると言われるユーリとフレンだが、レイヴンとシュヴァーンとは違い外見的に合致する箇所はほぼ皆無だ。せいぜい、身長が同じことくらいだろう。
 そのために、意を決したように詳細を説明した(らしい)カロルの言葉の半分も理解しないまま、ユーリは答えた。
「ああ!駄目だこの人、全然解ってないよ!致命的だー!」
 ばれている。
 とうとう突っ伏してしまったカロルを見て、少し気の毒になった。
「まあ……心配しなくても俺とフレンは違う人間だし、同じ人間だと困るし、寧ろ嫌だし」
 小さく丸まった背中はとても可愛らしかったが、同時に可哀想でもあったので何となくフレンを扱き下ろしながら、それとなくフォローを入れてみた。けれど結局、カロルはレイヴンが戻るまでずっと寝台の上で唸り続けていた。

 



 


 


 


本当はもう少しカロル先生に核心を喋らせたかったのですが、
文章全体通した時に美しく(笑)なさそうだったのでブッツリ切りました。(笑)
代わりにユーリがぽろっと喋ってます。
(20090604)





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最終更新:2009年06月04日 01:57