灼眼のシャナ&A/B用語大辞典 ヴィルヘルミナ・カルメル

【種別】
フレイムヘイズ

【初出】
III巻(称号のみ。名前はV巻)

【解説】
万条の仕手』の称号を持つ、“夢幻の冠帯”ティアマトーのフレイムヘイズ。の色は桜色。
強力な女性のフレイムヘイズであり、シャナの育ての親の一人で、フレイムヘイズの中でも指折りの猛者。
中世の『大戦』での英雄であり、古い“徒”にとって死の代名詞とも言われた。

中世の『大戦』以降の数百年間は、二代目『炎髪灼眼の討ち手』育成のために姿をくらましていたが、最近になって再び表の世界に復帰した。
現在では、“”の討滅に力を注いで数百年のブランクを覆す名声を再び確立し、“徒”絡みの事件の事後処理(情報操作など)に関しても有能極まりないと評判が高い。
着ている給仕服はシャナを育て始めた頃に、自分の世話係を模して着る様になったものである。シャナを育て終わった後も、意外な機能性の高さを気に入りそのまま着ていた。

「~であります」という独特の話し方と、能面のごとき無表情が特徴。
この話し方は元々ティアマトーの口癖であり、それを一般的なフレイムヘイズの語り口調と勘違いしたためのようだ。
ヴィルヘルミナはこの手の勘違いをメイド服やチャイナ服でもしていた。
復讐ではなく、情の為に動く稀有な存在でもあり、気性の荒いフレイムヘイズの中でも心身共に冷静であるが、激しい感情もかなり持ち合わせていた。
如何なる理由があろうと貫いた自説を一切曲げぬ頑固な面もあり、隠し事が大変下手な一面もあった。
またアラストール以上の親馬鹿でもあり、シャナの一言に過剰に反応し、厳しいことを言われるとへこみ、少しでも頼られると思わず鉄面皮が崩れる程に幸せを感じる。彼女の事に関しては保護者欲剥きだしで感情的になる場面が多々ある。
マージョリー・ドーとは、昔馴染みであり飲み友達。彼女を相手にくだを巻き、愚痴をこぼし、泣きながら酒を飲むことがある。
ぶつ切りチーズを肴にワインを飲むのが、密かな楽しみであるようだ。
他の知己としては、ゾフィー・サバリッシュレベッカ・リードヒルデガルドナム季重虞軒ピエトロ・モンテベルディ、“螺旋の風琴リャナンシーなどがいる。

人間時代のことは未だに不明。ティアマトーが「姫」と呼んだ事、生まれ育った場所で覚えた音曲に賛美歌と並んで宮廷恋歌を挙げていることから、一国の王女であったと思われる。オランダの郷土料理パンネンクックが好物であるという描写があり、オランダ出身である可能性が高い。

天道宮』にいた頃は主に『炎髪灼眼の討ち手』候補の世話と、『天道宮』の保守整備を担当していた。
家事全般に加え、工作や工事工法などに精通する有能さを持つが、唯一料理だけは苦手。
本人にもその自覚はあるが、向上心はない。得意料理はサラダと湯豆腐。
意外と迂闊なところもあり、階段から転げ落ちたり、料理中に火傷したり、工事中に埋まったりしてシャナを泣かせたこともあったらしい。

戦闘時にはヘッドドレス型の神器ペルソナ”を仮面へと変えて装備し、仮面の端から吹き出す鬣のように幾条にも伸びる無数の白いリボンを操り戦う。全力状態では『万条の仕手』の称号の通り、まさに万に匹敵する無数のリボンが繰り出される。
ヴィルヘルミナの意思により自在に動くリボンは、絹のようなしなやかさを持ちながら、鋼鉄に勝る硬度へと変化させることも可能で、それ自体での刺突や締め付けに加え、リボンを紡ぐことで、盾・剣山・アンカー・偽装のように様々な技を使ったり、反射や爆破や強化の自在法を織り込むことで変幻自在な技法を見せ、多人数戦でのサポートにも長ける。
また、「戦技無双の舞踏姫」と称される戦闘技術を持ち、常人を超越する器用さと機械に勝る精確さから繰り出される技術により、自身の力をほとんど使わずに相手の力を利用して受け流し跳ね返すことに優れている。ことその技術においては、「戦技無双」の名の通り、並び立つ者は存在しない。
その戦技を用いた近接戦闘に卓越しており、自身も卓越した剣士である“壊刃”サブラクをして「格闘の技巧においては間違いなく最高に位置する存在」とまで言わしめる程。その技巧は剣術に優れたシャナを赤子のようにあしらい、サブラクの剣の怒涛、イルヤンカの『幕瘴壁』や大規模なカムシンの技、シュドナイの大密度の剛槍すら受け流し、単純な力任せの攻撃は一切通用しない。また、イルヤンカ討滅後には連戦にもかかわらず暗殺に優れたチェルノボーグまでも討滅している。

しかしそうした最高クラスの格闘能力を誇る反面、大威力の攻撃や広域に渡る“殲滅技”など、火力・破壊力には欠けている。そのために高い耐久力を持つ敵や、撹乱戦法を主とする相手との真っ向勝負は苦手とする。
また、“虹の翼”メリヒムの『虹天剣』のような、触れるもの全てを問答無用で消し飛ばす破壊力を持った攻撃の前には、為す術がない。

その他、独自の自在法として、ミイラ男の様にリボンで全身を覆うことで気配を完全に遮断した隠密行動が可能。しかしこれは力の消費が激しく、長時間は使えない。

後に『天道宮』で次代の『炎髪灼眼の討ち手』に討ち滅ぼされることになる“紅世の王”、“虹の翼”メリヒムに思慕の念を抱いていた。『大戦』時に貴族風のドレスを着用していたのも、彼からは相手にされる事はないと理解していながらも足掻いた結果である。
XIV巻でシャナに「悠二に告白すると」と聞いてかつての自分のように好きな相手に振り向いてもらえない辛さを味わってほしくない思いから、一度は反対している。
しかし、自分と同じ思いを知ったのは吉田一美の方であった。

フレイムヘイズでありながら彼の心を得た先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダを探ろうとして共闘し、その事で諍いを起こした事もあったが、いつしか彼女と無二の親友となり、互いに補い合い支え合う相棒となった。
彼女と組んでの仕事の中には、“徒”の運び屋集団[百鬼夜行]をマティルダと二人であと一歩のところまで追い詰めるが、逃げられてしまうという一件もある。
『大戦』当時はマティルダと共にフレイムヘイズ兵団の切り札の一人として活躍し、メリヒムを含む[とむらいの鐘]と親友への想いの板ばさみになりながらも戦い続け、主に『両翼』が左“甲鉄竜”イルヤンカと鎬を削りあい、最終決戦では討滅した。
マティルダが死んだのち、彼女との約束を果たすため、『天道宮』へと姿を消し、“天壌の劫火”アラストールの新しい契約者を育て上げるための活動を始める。
それから何百年もの時を費やして新たな契約者を育て上げたのち、新たな『炎髪灼眼の討ち手』に対して『憎み』『許し』『愛した』との三つの感情の整理の為から、しばらくの間を置いて、フレイムヘイズとしての活動を再開する。

本編開始の二年程前、イタリア・ジェノヴァで知己の一人であるピエトロ・モンテベルディからの依頼を受けて、香港でマージョリー・ドーと再会した後、中央アジアでかつて取り逃がした“徒”の運び屋集団[百鬼夜行]を追っていたところ、サブラクが『約束の二人』のために張った罠にかかり、瀕死になってしまう。
そこをフィレスヨーハンに助けられてからは、サブラクを退けながら共に旅をしていたが、再三に渡る襲撃により遂に本編開始の少し前に彼に敗れ、フィレス達とは戦闘中に散り散りに別れることとなってしまう。
別れ際に、彼女はティアマトーと二人、ヨーハンの変異する様を目撃し、それをフィレスに知られないようにと、(おそらくは)彼女より先に見つけようと『零時迷子』を探していた。
III巻の少し前では、“愛染の兄妹(ソラトティリエル)”及びシュドナイと香港で接触しているが、シュドナイの手はずによって逃げられてしまう。

七月、教授らの起こした一連の騒動の後片付けの陣頭指揮を執る為に、外界宿から御崎市に派遣され(彼女が来たのはマージョリーの指名による)シャナと再会する。
悠二と出会った彼女は、シャナの変化の要因を取り除き、そして『零時迷子』を無作為転移させるために二度彼を襲い、二度ともシャナの妨害を受けるも、大戸ファンシーパークでは圧倒的な戦闘力で終始彼女を圧倒する。力による支配で日常に惹かれるシャナの心を折ろうとするも、『日常』を得ても変わらないシャナの心と言葉、不意打ちの悠二の『吸血鬼』の一撃で気絶し敗北する。それ以降は悠二を破壊することは断念するが、悠二に対しては悪感情を抱き、悠二が名付けた「シャナ」というあだ名も嫌っていた。XXII巻の終盤、新世界へ旅立つ直前に至って、ようやく『炎髪灼眼の討ち手』の少女をシャナと呼んだ。
十二月二十四日、“壊刃”サブラクの御崎市襲来時には、彼の初撃を回避して単身時間稼ぎのために挑み、最終的にヨーハンによる『スティグマ』破りの自在法と、サブラクの正体と対処法を見抜いた悠二の作戦を、シャナ、マージョリーとの連携によって実行し、共に勝利。フィレスとヨーハン、ヴィルヘルミナにとっては雪辱を果たす形となった。
シャナと共に、御崎市の平井家に滞在していたが、一月初頭に襲来した“祭礼の蛇”坂井悠二にシャナを拉致され、その奪還作戦を実行するために知己の討ち手たちに参加協力要請をしたがことごとく断られ、単身での奪還作戦実行を半ば覚悟していたが、出発前日にカムシンとレベッカ・リードの協力を得られて、士気をいくらか取り戻した。
その翌日、吉田一美田中栄太マルコシアスに見送られて、カムシンと共に御崎市を出発した。

レベッカとの合流後は、日本近海に水没していた『天道宮』を発見して中に入り、奥にある『カイナ』を操作して『天道宮』を浮上させる。そして、『星黎殿』内部に繋がる通路が修復する距離まで『天道宮』を接近させた後、修復した通路から『星黎殿』に内部から侵入する。
そして事前の打ち合わせ通りに、気配隠蔽の装束を纏って単独でシャナを奪還するために機密区画である岩塊部に潜入する。近づいてくる“徒”を討滅・回避しながら進む内に、「とある部屋」で旧友であるリャナンシーの存在の断片と遭遇し、この先には進まないよう説得される。しかし、リャナンシーの僅かな友誼によって『祀竃閣』へと通じる通路に密かに誘導されて、破壊された『祀竃閣』に辿り着く。そこでひっくり返っていた『ゲーヒンノム』を置き直して操作し、シャナや周辺の状況を知り、『星黎殿』に近づいていたフレイムヘイズ兵団を援護するために、『ゲーヒンノム』を使って『星黎殿』を直衛軍に落下させて大打撃を与える。
そしてシャナと再会。レベッカとカムシンに合流して情報交換を行った後、「悠二を追う」と宣言したシャナに同意し、シャナたちと共に『神門』に突入する。

詣道』の途中では、待ち伏せていたサブラクと遭遇し、シャナを一人先に行かせて自身はレベッカやカムシンと共に交戦を開始する。
一切の油断を捨てたサブラクの作戦と新たな自在法『スティグマータ』により三人とも負傷し、敗北は時間の問題となっていたが、それでも時間を稼ぐために戦闘を続行し続けていた。
しかしその最中、『詣道』を遡ってきた“祭礼の蛇”神体を見て、かつてない衝撃に呑まれ隙だらけになったサブラクに対して総攻撃を加え、何の対処もせずにまともに食らったサブラクを両界の狭間へと落として命を拾い、サブラクとの決着をつけた。
後シャナと合流し、“祭礼の蛇”本体の上に飛び移り、お互い満身創痍の状態のカムシンと共にシュドナイと交戦。色付く影達の援護と相手が全力を出せぬ事を利用して辛うじて生き残る。
『詣道』を抜ける寸前、色付く影達の助力でその場を離脱し、“祭礼の蛇”本体たちより一足早く『神門』を抜けてこの世に帰還した。

“祭礼の蛇”が復活したことにより“徒”達の士気が大きく上昇し、二度の大命宣布まで為されたことでフレイムヘイズ兵団は瓦解し、危機的状況に陥ることになる。
シャナとレベッカ、カムシンと共に総指令ゾフィーの元へ指令を仰ぎに駆け付けた結果、シャナとヴィルヘルミナとセンターヒルの3人でシュドナイの足止めを決行。先代『炎髪灼眼の討ち手』に負けず劣らずの最強格のフレイムヘイズ達すら凌駕するシュドナイを相手に多くの犠牲を払いながらも、撤退戦である『引潮』作戦を成功に至らせ、キアラサーレに回収されてシャナやマージョリーと共に戦場から脱出した。

以後、シャナ一派の一員として香港を経由してニューヨークへ至り、『大地の四神』へ同行を懇願したが彼女の言葉は彼らに届かず、シャナの言葉をもって『三神』の同行が決定する。
御崎市決戦では、市の南部から“ゾリャー”に乗って突入。阻もうとしたオセをシャナが『審判』と『断罪』により撃ち払い、市中央部の『真宰社』に到達する。
キアラやサーレと別れ、『真宰社』最上部にて、シャナとともに“祭礼の蛇”坂井悠二、シュドナイと交戦に入る。
マージョリーが戦場に現れてからは、[百鬼夜行]に連れられて戦場を離脱した『約束の二人』を(ティアマトーの後押しもあって)追っていき、際どいところで助けに入った。
彼女が[百鬼夜行]についていたからこそ、鉄巨人の自爆の際にカムシンは無茶な逃がし方をすることが出来た。

そして、誕生した『両界の嗣子ユストゥスのことをヨーハンからの遺言で託され、彼を新世界『無何有鏡』で養育するため、『天道宮』に搭乗して『天梯』を通って新世界へ旅立った。

新世界へ渡り来てから一年後の春、ユストゥスの養育をしながら時折『天道宮』を訪ねて来るシャナとレベッカに新世界の様子を聞いていた。また、坂井悠二の話題が出ると機嫌が悪くなる点は相変わらずである。

アニメ版
基本的には性格は同じだが、料理を他人と一緒に食べる楽しさを知らなかったり、料理への向上心を僅かながら見せたりしていた。
大きく違うところとしては、戦闘があげられ、アニメ第一期では“ペルソナ”の仮面の形状が違ったり、第一期第二期通して、アニメの表現の限界からか相手の力を利用した戦技無双の投げ技は見られず(シュドナイの攻撃も真正面から放たれたにも関わらず、リボンの盾で受けとめて当然のごとく破られている)、硬化させたリボンを手で持って戦ったり、仮面を付けたり解いたりを繰り返すなど、『万条の仕手』として在り得ないような戦いも見せた。
上記のように、アニメでは戦技無双の実力が発揮されておらず、またアニメオリジナルの戦いでベルペオルに敗北したりと、戦闘に関しては不遇な面が多かった。
ストーリー面の改編としては、原作IX巻でのシャナとの戦闘がカットされていることなどが上げられた。
アニメ第3期では、第16話を除いてほぼ原作通りであった。

【由来・元ネタ考察】
「ヴィルヘルミナ(Wilhelmina)」の名を持つ著名人には、オランダ女王ヴィルヘルミナ(Wilhelmina Helena Pauline Maria、生没年1880年-1962年、在位1890年-1948年)がいる。名の語意は、古ドイツ語で、「意志」-「兜」とされる。
「カルメル(Carmel)」は、パレスティナの聖地カルメル山、もしくはそこから派生したカルメル会修道会ではないだろうか。カルメル山は、『旧約聖書』において、預言者エリヤがバールの予言者に勝利した地であるとされる。

「条」は細長くのびるものを数える言葉で、この場合神器「ペルソナ」のリボンのことであろう。また、「仕手」は巧みに行う者、または能や狂言の主役という意味がある。
称号全体で「数多のリボンを巧みに操る踊り手」という意味だと思われる。「戦技無双の舞踏姫」とも呼ばれる彼女の超絶的な技巧と踊るような美しさを表す称号である。

【コメント】
☆『儀装の駆り手』と比べてどっちが強かったのかな。
☆2011年2月10日発売の電撃文庫MAGAZINEでの原作者いとうのいぢへのインタビューで、ヴィルヘルミナには死亡フラグが立っているようだが、ある程度のケアは考えていると語られていた。
☆『Eternal song ‐遙かなる歌‐』のカバー裏ネタでは、セーラー服姿の色気担当役となった。
☆番外編『しんでれらのしゃな』では、意地悪な姉の一人として登場している。
☆番外編『かぐやひめのしゃな』では、4話の鶴の恩返しで鶴として登場している。
☆番外編『おじょうさまのしゃな』では、トーテングロ家の女中長として登場している。
☆番外編『さんじゅうしのしゃな』では、ヴィルヘルミナ・トレヴィル銃士隊長として登場している。