妖精・精霊

ア・バオア・クー

 A Bao A Qu とは、インド・ラジャスターン地方ウダイプル郡のチトール(チットールガル)にあるという「勝利の塔」の最下層に住む幻獣。ア・バオ・ア・クゥー、ア・バオ・ア・クとも。

 これはホルヘ・ルイス=ボルヘスの『幻獣辞典』に登場し、他は、この書から引いたもの、と書かれる。

アルベルト・マングェル、ジアンニ・グアダルーピ『世界文学に見る架空地名大事典』(245頁 「完訳」では337頁)によれば、「バートン版のアラビアンナイト」の注釈に登場する、 「勝利の塔」は「中国」にあるとされる。  また、キャロル・ローズ 『世界の怪物・神獣事典』22頁で、ボルヘスの参照した資料は、マレーシアの妖術師に関するイトゥルヴルの大著(1937年)、とする。

この生物は、色が無く、薄く青い光を放つが、肉眼では見えない。実体はあり、桃の皮のような皮膚を持ち、全身に視覚がある。常に眠り続けているが、塔に人が入ってくると目を覚まし、その踵にくっついて塔の頂上を目指す。

塔を上がるほど色が付き、光も強くなる。螺旋階段の最上段で完全な姿を得ることができるが、時間の始まり以来、この行為を繰り返しているが、完全な姿を得たことは今まで一度しかない。

 通常、人についたこの生き物は、塔の最上段へ至る前に、麻痺したかのごとくたじろぎはじめ、体は不完全となり、苦痛にさいなまれ、絹のすれるようなか細い悲鳴をあげ色と光を失う。旅人が降りてくるやいなや、最初の段へ転がるように倒れ伏し、形のないまま眠りにつき、次の訪問者を待つ。

 

参考文献

 

ホルヘ、ルイス=ボルヘス『幻獣辞典』なお、晶文社刊の単行本では記事の末尾にこの生き物については「バートン大尉のアラビアンナイトの注釈」からとったと書かれるが、河出書房刊の文庫版では、その一文がない。

『世界文学に見る架空地名大事典』『完訳世界文学に見る架空地名大事典』(アルベルト・マングェル、ジアンニ・グアダルーピ)

キャロル ローズ 『世界の怪物・神獣事典』

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最終更新:2021年06月10日 16:01