【種別】
現象

【初出】
I巻

【解説】
この世のあらゆる存在が持つ“存在の力”と、時空に広がる全存在である『運命という名の器』が失われたことで、その存在によって伸び、繋がり、広がった、広がるはずだったことが「なかったこと」になることで生じていた、この世を構成する巨大な“存在の力”の秩序と流れの変調のことである。そのため、「この世の歪み」とも呼んでいた。

【歪みの発生と発見後の流れ】
歩いてはいけない隣にある異世界“紅世”より渡り来た“紅世”の住人達“紅世の徒”が、この世の存在(主に人間)の“存在の力”を奪い消費することで世界の歪みは生まれ、大きくなり、この世と“紅世”の境界を捻じ曲げ、引き摺り、荒れさせ始めた。

この両界の境界面の変調から、“徒”達の間で「いつかこの世と“紅世”の両界に『大災厄』と称される大きな災いが起きる」と予想、あるいは危惧され始め、歪みの発生を止めるために同胞殺しを決意した一部の“紅世の王”の尖兵、あるいは道具となって歪みを生む“徒”を力ずくで止める元人間の討滅者フレイムヘイズが作られることとなった。
この世で放埒を尽くす“徒”たちは、そういったフレイムヘイズの追跡から逃れるために、歪みの発生を一時的に遅らせる道具であるトーチを作って対抗するようになった。トーチが燃え尽き、歪みが発生してフレイムヘイズに察知されても、“徒”はもうその場から姿をくらませていた。

また、この世の秩序に生まれた変調(=歪み)が限界を超えた先にある秩序の崩壊を防ぐため、局地的な大きな歪みを元に近い形に整えるフレイムヘイズを『調律師』と呼んでいた。

【影響】
この「世界が歪んだ気配」は、フレイムヘイズにとっては“紅世の徒”が人喰いを行った証であるため察知すれば追いかけ、“紅世の徒”にとっても興味を引かれる対象であるため、ある程度歪みが大きくなれば双方を多く引き寄せ、その結果戦いによる被害だけではなく、戦いのための人喰いによる歪みもさらに発生する。
この連鎖反応の最悪の形は『闘争の渦』と呼ばれ、十六世紀の『大戦』など、過去幾つかあった大きな戦いの発端となっていた。
調律師の活動目的には、この『闘争の渦』の発生を防ぐことも含まれていた。

世界の歪みを利用した大事件として、高名な自在師である“紅世の王”である“棺の織手アシズによって引き起こされた、自在法都喰らい』の発動があった。
『都喰らい』は世界の歪みを意図的に瞬間的かつ大きく作り出すことで、周囲の存在を歪みに巻き込んで干渉、高純度の“存在の力”に変換する自在法であり、一度に発生した歪みとしては史上空前の大きさの歪みを発生し、都市オストローデが丸ごとこの世から完全に消滅した。

“探耽求究”ダンタリオンは、歪みを極限まで大きくした場合に実際に何が起こるかを実地(御崎市)で実験しようとしたが、後一歩のところでフレイムヘイズに阻止された。
また教授は、『詣道』の崩壊を観測することで「『歪み』によらぬ両界の狭間」を観測できるとも述べていた。

【世界の歪みへの認識】
現代まで、大きな歪みが生まれることはあっても、『大災厄』の片鱗すら掴めておらず、この世を跋扈する“徒”のほぼ全ては『大災厄』は根拠が曖昧で、そういった予想は“存在の力”を使うことへの過剰反応に過ぎないという考えを持っていた。
ただし、この世の秩序に生まれた変調(=歪み)が大きくなるのは「危険」であるということは、この世を跋扈する“徒”たちも認めていた。

【世界の歪みの真実】
世界の歪みの真の原因は、"存在の力”が「欠損」したことではなく、不安定なエネルギー状態に「変質」したことであった。間違っているのは因果関係の理解だけで、「“徒”が人を食らうことで歪みが生じる」「歪みが両界の狭間に嵐をもたらす」という理解自体は確かに正しかったがために、誰も気づけなかった。特に、なまじフレイムヘイズは歪みを実際に感じることができるために疑問を抱かなかったようだ。
故に、自在法を使うなどして、“存在の力”がこの世の現象や物体に再構成されれば、この世は安定化し、その分の歪みも消えた。
もっとも、どのみち“徒”の行動が誰にとっても迷惑で危険なものであることには変わりないし、フレイムヘイズの行動が人間の犠牲と『大災厄』を防いでいたことにも変わりは無い。なにより、歪みが「欠損」という不可逆的な現象ではなく、“存在の力”を使用すれば消える一時的な現象に過ぎないということが“徒”に知られれば、“徒”の暴虐がさらに過激化する恐れがあったために、真実に気づいた少数の者たち(『宙の心臓』と『大地の四神』)もその事実を伏せていた。しかし、歪みの原因が「欠損」ではなく「変質」である以上、無限の“存在の力”を持つ新世界『無何有鏡』であっても歪みは発生し得る。故に新世界『無何有鏡』の創造を放置しないために、協力者を求めたセンターヒルによってこの真実が明かされた。

そして最終巻で、シャナたちが撃ち込んだ改変の自在式による「人を喰らえない理」を含んだままで新世界『無何有鏡』が創造されたことで、世界の歪みは消失し、ほぼ全ての“徒”たちが新世界へ旅立ったことで、この世(旧世界)に残った“徒”たちが人を喰わない限り、世界の歪みは発生しないと思われる。

【コメント】
アニメ版から語られ、発生していた。
☆『大命』の最終段階の達成によって、世界の歪みが完全に消失したことが、外伝『ホープ』で描写された。
宝具零時迷子』で補われる“存在の力”は、歪みを回復しようとする世界の復元力から得ていたことが最終巻で判明した。
☆[マカベアの兄弟]のダーインカルンには実感できないんだろうな。
高橋弥七郎の新作『カナエの星』でも、崩壊点という現象が存在している。

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最終更新:2022年06月29日 05:20