【初出】
VII巻
【解説】
[
仮装舞踏会]の『
大命』に深く関わり、周囲から隠匿されていたもの。
その正体は『
久遠の陥穽』に放逐された
創造神“
祭礼の蛇”の意思と共振し再現する
仮想意思総体を中核に、“祭礼の蛇”がこの世で自在に活動するための代行体製作のための道具。
『我学の結晶13274-暴君I』と『我学の結晶13274-暴君II』が存在するが、元々は一つのものであった。
『暴君I』は、『
零時迷子』が
サブラクによって打ち込まれた『大命詩篇』によって変化したものであり、合一を前提としているため『暴君II』の機能も組み込まれた同位体である(ただし、合一前は大半の機能は休眠していた)。
『零時迷子』に打ち込まれた『大命詩篇』は、
鏡像転移の機能を改造した物である。どの程度性質が変化したかは不明だが、この自在式によって『零時迷子』内部に『暴君I』の核と『暴君II』から送られる人格鏡像を受信する機能が組み込まれ、人格鏡像が『暴君II』から『零時迷子』に無数転写され続けることとなり、後の『暴君I』と『暴君II』との合一の下準備となった。
また、いくら離れていようと、本来一つであったため『暴君II』とは自ずと引かれ合う。
『暴君II』は『
星黎殿』内部、機関大底部に『
吟詠炉』と共に格納されていた、銀色の汚れ歪んだ板金鎧を指し、二つの『暴君』の本体に位置する。製作の際には、無数の
自在式=『
大命詩篇』が組み込まれた。
機械を織り合わせた大樹とも見える柱、その中程の窪みに磔状に架けられており、コードや管が接続され札が多数貼られていた。
その役割は、「『
盟主』の代行体の身体となること」(
ダンタリオン教授曰く「改造自由機能追加し放題!」)と、最初は「真っ白」な状態であるため“祭礼の蛇”の意識を表わすに足りない仮想意思総体を完成させるための、「人間のあらゆる感情とそれに伴う行動の採集」の二点。
「多重
顕現機能」を持ち、通常は分身を作り出す
鏡像転移によって感情サンプルの収集を行っていた。その鏡像転移に遭遇した
マージョリー・ドーは、『暴君II』を“
銀”の
炎を持つ“
徒”と思い込んで、復讐のために数百年間追い続けた。
長きにわたって集められた感情の集積により、本編の数十年前からは擬似的な会話や、感情の収集以外の目的での転移も行うようになったようだ。
この二つの『暴君』を合一させ、鎧の『暴君II』に完成した仮想意思総体を宿らせ“祭礼の蛇”の代行体とすることこそ『大命』の第一段階であり、仮想意思総体を『暴君II』に宿らせた後の『暴君I』は単なる動力源となるはずだった。
しかし構築中の仮想意思総体越しに
坂井悠二に興味を持った“祭礼の蛇”本人の意向で、坂井悠二という“
ミステス”の形を残したまま二つの『暴君』の合一が行われた。
坂井悠二の
意思総体と、『大命詩篇』で構築された“祭礼の蛇”の仮想意思総体が、二つ存在する『暴君』のシステムを応用して共存しており、一見それと分からない鎧の『暴君II』も“祭礼の蛇”坂井悠二の一部として多重顕現機能を利用した補助武装になっていた。
XIII巻で『暴君II』本体の右腕から頭部までが坂井悠二の元に転移してしまったのは、
フィレスが『暴君I』と化した『零時迷子』に過干渉を行うことで、不完全な仮装意思総体が異常活性化し、本来一つである二つの『暴君』が引き合い、不完全な合一が発生しかけたためだった。
また、この描写により、本来は歪んだ板金鎧の『暴君II』内で完成するはずだった仮想意思総体自体も、サブラクにより『暴君I』が誕生したことでそちらに転移していたことがわかる。
XIV巻でサブラクに打ち込まれた『大命詩篇』により、『暴君I』に転写され続けた無数の人格鏡像が結合され、仮想意思総体が“祭礼の蛇”の意思を反映できるようになった。
ラミーの見立てにより、『暴君I』では休眠状態にあったはずの、「鏡像転移の際の実体化と自由な行動を持続させる捕食機能に必要な『吸収』の式」が何らかの要因によって稼動し、『零時迷子』の『
戒禁』に影響を与えていたことが明らかになった。
これは、『零時迷子』の中に封じられていた『
永遠の恋人』
ヨーハンが意図的に改変した結果であった。
最終巻で教授たちが
サーレたちによって
両界の狭間に放逐されたことで、『暴君』は
竜尾と共に機能を停止し、使えなくなった。新世界『
無何有鏡』が創造された後、新世界へ渡り来てから坂井悠二は
竜尾と共に再起動を試みているが、一年後の時点では上手くいっていないようだ。
新世界が創造されてから数年後の外伝『クイディティ』では、竜尾と共に使えるようになっているようて、
ハボリムから譲り受けた複数の
大筒型“燐子”を収納しているようだ。
【
アニメ版】
アニメ第2期では、“祭礼の蛇”の代行体の製作といった描写はなく、
近衛史菜ら『偽りの器』が収集した感情(人格鏡像?)を脳、坂井悠二から引き抜いた『零時迷子』を心臓、御崎市に聳え立つ時計塔を外骨格として取り込み、板金鎧の巨人“
敖の立像”の核として『暴君』(“銀”)が使われた。
巨人を動かす核というだけでなく、内部において自立戦闘も行えるが、
シャナと坂井悠二に敗れ、『零時迷子』を抜かれて崩壊する“敖の立像”内に放置された。
これは、『暴君I』と『暴君II』を坂井悠二抜きで合一させた、上記の『本来の暴君』に近い形態であると思われるが、肝心の“祭礼の蛇”の意思を宿す仮想意思総体の描写がなかった。それが誕生早期に討滅されたためか、最初から“祭礼の蛇”の代行体でなかったのかはイマイチ不明。
最終更新:2023年11月27日 20:41