【種別】
フレイムヘイズ

【初出】
VI巻(称号はV巻)

【解説】
フルネームはカムシン・ネブハーウ。
儀装の駆り手』(ぎそうのかりて)の称号を持つ、“不抜の尖嶺”ベヘモットのフレイムヘイズ。の色は褐色。神器はガラスの飾り紐型の“サービア”。

見た目は十に満たないほどの少年だが、フレイムヘイズ屈指の強者として知られていた。数千年前というフレイムヘイズ誕生の最初期に契約した最古のフレイムヘイズの一人であり、百戦錬磨の古強者であった。数千年前の太古に勃発した創造神祭礼の蛇伏羲との『大縛鎖』での『殺し』の戦いにも参戦していた。
その身体には長い戦歴に比例した傷跡がいたるところに残されており、フレイムヘイズは本来なら完全に傷跡を消すことも可能だが、本人はそれを他者との思い出として刻み付けていた。
世界に数少ない調律師の一人であり、かつては強大な戦闘力で名を馳せた。『極光の射手』と同じく、破壊そのものを得意とするフレイムヘイズ。周囲に被害を出さずにはいないその圧倒的破壊力と戦い方から、今でも「壊し屋」と呼ばれ、味方からすらも恐れられていた。
また、先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールとは知人の一人だった。

精神及び性格は年齢相応に老成しており、外見に不相応な枯れた口調で喋り、言葉の最初に「ああ」とつくのが口癖。かつては、相当に短気であったとのこと。
行動は非常に事務的で、シャナとは違った意味で『フレイムヘイズの使命』に純化していた。
基本的には真っ当な倫理観や気遣いは持っているが、『調律』の協力者に対する表面上の人当たりの良い態度も、ほとんどは使命のためのものだった。世界のバランスのためならば、一般的な情緒を速やかに切り捨てることもできる「丁寧な冷酷」。
それでも、よほどの冷血漢と思われていることを自嘲する程度の感性は残っていた。

戦闘では自在法カデシュの心室』と『カデシュの血印』と『カデシュの血脈』によって大質量の物体を繋ぎ寄り合わせて組み上げた、瓦礫の巨人である『儀装』を纏って戦う。
同じく炎で瓦礫をつないだ鉄棒型宝具メケスト』の先端から岩塊を飛ばす『ラーの礫』、巨人の腕をロケットパンチのように放つ『アテンの拳』、『メケスト』に繋いだ瓦礫を回転させ遠心力で周囲にばら撒く『セトの車輪』など、全ての技が極めて強大な破壊力を持っていた。
カムシンの落ち着いた性格に反し、とにかく豪快で大雑把。
その強烈な威力は、長い時を経て尚、マージョリーをも畏怖させ、『輝爍の撒き手レベッカさえも敵わないと認める程だった。
纏う物のない空中での戦いは苦手とするが、それでも並の“”を寄せ付けない強さを誇った。

吉田一美に語った『昔話』によれば、人間であった頃はある暑い国(北アフリカ)の王子だった。
幼い頃に王の妾によって牢に幽閉された際に、常盤色の炎の“徒”に助けられ、彼女に看病されるうちに“存在の力”を感じ取れるようになった。“徒”のおかげで解放された後、“徒”は王子が止めるのも構わず彼の邪魔になる者たちを喰い続けた。やがて共に戦に出陣した父王までも喰われそうになった王子が“徒”を斬り、逆上した“徒”の反撃で死にかけた際に契約してフレイムヘイズとなった。
人としての存在が欠落した王子は討ち手として“徒”を追い、“徒”は何度となく王子を殺そうとし、最後は自分も死にかけながら“徒”を討滅した。それでも二人は、憎み合いながらも愛し合ったままだった。

調律のために御崎市を訪れ、モノクル型宝具『ジェタトゥーラ』を一時預けた吉田一美を協力者として選ぶことで、結果として御崎市に存在する“紅世”の関係者を一堂に引き合わせるきっかけを作った。
カムシンが施そうとした調律に対して、ダンタリオン教授が干渉を試みたが、シャナとマージョリーと協力してこれを退け、調律を完遂した。
その時点では傷跡を目立たないようにするためフードをかぶっていたが、御崎市を去る直前に吉田一美から麦わら帽子を贈られてからは、それを着用していた。だが、『メケスト』を常時担いでいるので結局目立っていた。

御崎市の調律を終えて同地を離れてから半年後、チューリヒの欧州外界宿総本部に姿を見せ、ゾフィーからヴィルヘルミナへのメッセンジャーを引き受けて、再び御崎市を訪れた。

御崎市の再訪中に吉田一美との再会を果たし、彼なりの気遣いを見せていた。その際に宝具『ヒラルダ』の使用の代償とフィレスの思惑について相談を受けるが、長く生きる彼といえども全てのことに答えは持っておらず、再び『昔話』を語って愛の有り様を示唆するにとどめていた。

ヴィルヘルミナと面会して、彼女のシャナ奪還計画にレベッカ・リードともども参加することになり(ゾフィーも最初からそのつもりだったようだ)、御崎市駅で一美と田中(とマルコシアス)に見送られながら再び御崎市を離れ、レベッカとの合流地点に向かった。

レベッカとの合流後は、ヴィルヘルミナが浮上させた『天道宮』に乗り込み、『星黎殿』内部に繋がる通路が修復した後、『星黎殿』に内部から侵入した。そして、事前の打ち合わせ通りにヴィルヘルミナが単独でシャナを奪還するまでの陽動として、瓦礫の巨人を形成して暴れ回った(この際、誤射でシャナを殺しかけた)。
最初に『秘匿の聖室』を破壊しようとして『ラーの礫』を放ったが、『マグネシア』によって完全に防がれてしまい、以降は内部施設の破壊活動を始めるが、『星黎殿』守備隊と教授謹製の防衛機構に手を焼いた。
その内、『マグネシア』が突如消失したのを好機と見たカムシンは、『アテンの拳』を放って『秘匿の聖室』上部を破壊した。
しかし、『秘匿の聖室』を破壊されたことで要塞の損壊に気を払う必要が無くなり積極的に攻勢に出てきた『星黎殿』守備隊と教授の防衛機構に手こずっているうちに、シャナたちが合流してきた。各人の間で情報交換を行った後、「悠二を追う」と宣言したシャナに同意し、シャナたちと共に『神門』に突入した。

詣道』では、その途上で待ち構えていたサブラクと遭遇し、シャナを先に行かせて自身はヴィルヘルミナ、レベッカと共に戦闘を開始した。
他の二人がサブラクの新たな自在法『スティグマータ』を喰らってしまい、足止めのために単身サブラクと交戦を続けるも、サブラクの圧倒的戦闘力に加えて地面にサブラクの本体が浸透していたために『儀装』を容易に組成できなくなり、苦戦し続けた。そして遂には苦心して組み上げた『儀装』を破られ自身も『スティグマータ』を喰らい、敗北は時間の問題となっていたが、それでも戦闘を続行し続けていた。
しかしその最中、『詣道』を遡って来た“祭礼の蛇”神体を見て、かつてない衝撃に呑まれ隙だらけになったサブラクに総攻撃を加え、何の対処もせずにまともに喰らったサブラクを両界の狭間に落とし、命を拾った。
そのままシャナと合流し、“祭礼の蛇”神体の上に飛び移り、ヴィルヘルミナと共にシュドナイと交戦。色付く影達の援護と相手が全力を出せぬ事を利用して辛うじて生き残った。『詣道』を抜ける寸前、色付く影達の助力でその場を離脱し、“祭礼の蛇”本体たちより一足早く『神門』を抜けてこの世に帰還した。
なお『神門』を抜ける直前に、知人だったかもしれない色付く影の一人が、かつて交わした別れの挨拶とその仕草を取っているのを見て、それがかつての知友である「弾け踊る大太鼓」とその契約者「闇を撒く歌い手」であることに気づき、密か微かに悲痛の表情を見せた。

この世に帰還してからは、直後の“祭礼の蛇”による『大命』宣布を聞いた後、南部の出城でゾフィー・サバリッシュら兵団幹部の会議に参加し、方針を確認した。『大命』宣布に対して、内心密かに思うところがあったようで、表面上は特別の動揺はなかったものの、僅かながら呆然として声を失っていた。
レベッカと共に、敵南部防衛線の先遣隊を部隊長パイモンごと撃破した後、戦場南部の出城を放棄し、『引潮』作戦に従って東部の保塁へと転進。
しかし、その途上で“祭礼の蛇”坂井悠二による二度目の宣布を受け、己の存在意義を揺るがされ拠り所を失った討ち手たちはパニックを起こして逃げ惑い、次々と殺害され、フレイムヘイズ兵団は完全に崩壊・消滅した。
それでも、[仮装舞踏会]の包囲網内で未だ辛うじて生き残っていた討ち手らを助けるために、揺るがずに残った極僅かの討ち手らと共に偽『天道宮』を用いた偽計を実行。マージョリーが作成した光球を従えて包囲網を混乱させる囮の一人となり、戦場の北東に向けて脱出していった。

フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、香港またはニューヨークでシャナ一行と合流した。シャナが『大地の三神』を同行させるのを見守った後、飛行機で日本へ移動した。
御崎市決戦では、[百鬼夜行]に『真宰社』内部へ密かに連れ込んでもらい、基部に『カデシュの血印』をマーキングして破砕、瓦礫の巨人を作り出した。これにより、『真宰社』は倒壊寸前まで追い込まれるが、シュドナイが巨大化させた『神鉄如意』を芯柱として支えることで阻止された。

役目であった祭壇近辺の破壊と攪乱を終えると、事前に車内に刻んで残してあった石を頼りに『真宰社』を下ってきた[百鬼夜行]のタクシー型“燐子”に合流し、自らは護衛として戦場からの脱出を試みた。
しかし、ピルソインの『ダイモーン』で“燐子”が狂い振り出しに戻ると、無数の炎弾の大爆発を受けた身で再び『儀装』を纏い、真南川で獅子奮迅の戦いぶりを見せ、背後の[百鬼夜行]らを護ることに専念した。途中、ヴィルヘルミナの合流もあったが、味方を護るという枷がある以上、万全の戦闘は出来ず、『真宰社』周辺を守る鉄巨人たちが教授の討滅によって自爆する寸前に、塔内に避難していた[百鬼夜行]を塔ごとえぐり出して放り投げることで助け出すが、自身は『揮散の大圏』の一斉消滅により致命傷を負った。
新世界『無何有鏡』創造後に河川敷に横たえられ(左半身は黒焦げ、右半身はえぐり取られるというまさに満身創痍の姿だった)、シャナや『三神』や吉田一美たちに見守られ、麦わら帽子をなくしたことを吉田に謝れなかったのを心残りに思いながら死亡した。

アニメ版
アニメ版では基本的に設定などは同じだが、出会った直後に『ジェタトゥーラ』を吉田一美に渡したり(原作では吉田一美の人格や家族の安否、その他を調べた上で渡している)、封絶内でも動けるようになる“サービア”の飾り珠の一つを渡すなど(封絶内で『動けるだけ』であることのメリットはデメリットに比べてあまりにも少なく、危険が増す行為)、原作より強引かつ配慮と慎重さのない性格になっていた。
また、アニメ第2期では、パリの外界宿でヴィルヘルミナにフィレスの情報を伝えていた。
アニメ第3期では、『引潮』作戦で『天道宮』に逃げ込んだことを除いてほぼ原作通りに行動し、最期も原作通りだった。
TV放送時は左半身が光に包まれていて見えなかったが、DVD版ではえぐり取られていることが判明した。

【由来・元ネタ】
公式サイトの三木氏の発言によると、エジプト出身らしい。『カムシン(Khamsin)』は局地風の一つで、3~5月にかけてサハラ砂漠からエジプトに吹く熱風のことである。
『ネブハーウ(Nbh`w)』は、古代エジプト語で〔ネブ〕が「所有者」、〔ハーウ〕が「王冠」を意味することから、「王冠の所有者」つまりファラオを示すと思われる。

【コメント】
☆坂井悠二にとって『万条の仕手』並みにたちの悪いやつだったな。
☆アニメで調査の自在法なども使っていたことから考えると、もとは自在師かと思ったが、それは無かった。
☆いや、『調律』が出来るんだから(特に明言はされてないけど)、自在師だったんじゃないの?
☆XIX巻の終盤で『神門』を抜ける直前にカムシンたちに別れの仕草をした色付く影は、XX巻で「闇を撒く歌い手」と呼称されていた討ち手だろうと思われる。
ナムや『棺の織手ティスノースエアとは顔見知りだったんだろうな。
☆最初に殺しあった“徒”は、『瓦礫の巨人』といい勝負をするほど強力だったのだろうか?
☆まさか最終巻でカムシンが戦死するとは意外だったな。
☆カムシンが死ぬシーンは、この作品で最初で最後の泣いたシーンだった。
☆[巌楹院]のゴグマゴーグや[宝石の一味]の“瓊樹の万葉コヨーテフックストンサーイイナンナや[とむらいの鐘]の“棺の織手アシズや『九垓天秤フワワニヌルタソカルウルリクムミモレクチェルノボーグジャリや『両翼』のメリヒムイルヤンカやウルリクムミの副官のアルラウネや[革正団]のサラカエルドゥーグハリー・スミスハリエット・スミスや[マカベアの兄弟]のダーインカルンや[]のギータケレブスや『色盗人』のバロメッツとも絡んでいたら面白そうだったのにな。
☆番外編『しんでれらのしゃな』では、王家の重臣として登場している。
☆番外編『かぐやひめのしゃな』では、7話の一寸法師で一寸法師として登場している。
☆番外編『おじょうさまのしゃな』では、悪党その1として登場している。
☆番外編『さんじゅうしのしゃな』では、カムシン・ボナシューとして登場している。

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最終更新:2024年04月01日 01:51