【初出】
X巻
【解説】
[
とむらいの鐘]の『
九垓天秤』宰相である“大擁炉”
モレクの使用していた大規模な空間制御の自在法。
彼自身の体を巨大な牛の姿の迷宮と化し、空間ごと敵や味方を飲み込む。大きさはある程度融通が利き、中世の『
大戦』最終決戦の際には普段より大きく展開し、彼らの本拠地及び『
天道宮』もまるごと内部に取り込んだ。
発動の際には、モレクの体を構成する牛骨が一本ずつ黄色い火の粉となって分解して、空間に染み渡っていった。最後に
自在式が起動し、自在法が発動した。このように『ラビリントス』の発動には時間がかかった。
モレクの骨体そのものを素材にした自在法であるため、迷宮の破壊はモレクの討滅に直結する。
『ラビリントス』が発動すると、効果範囲内では空間が罅割れずれて攪拌され、目標を数秒で迷宮の中に飲み込む。
迷宮内部は薄暗い石造りの迷路が広がり、通路は“
徒”の体躯に合わせて幅広く天井も高いが、罠や仕掛けなどは無く、一見すると特に変わったところの無い建造物である。
しかし、迷宮内部は見た目以上に複雑で、空間すら奇妙にねじ曲がり、さらにモレクの体内に等しい環境であるため、彼の
気配が周囲に満ちており、気配の察知が困難となる。その上、内部の空間の接続はモレクの意思で自由に操ることが可能なため、敵には不利、味方には有利な戦場を構築できる。
ただし、モレク自身も、内部のことは気配や存在以上に細かくは把握できなかった。
迷宮の材料は、空間制御でかき集めた周囲の物質である。
『ラビリントス』には物質を強化する能力がないため、強度は普通の建造物と大差ないが、破壊された迷宮の残骸や周囲の物質を取り込んで材料にし、再び迷宮を構築することができ、モレクの力が続く限りいくらでも『ラビリントス』は再建できる。
この再構築は、
自在師であれば妨害できる性質のものであるようだ。
再構築と空間制御を続ける迷宮を脱出することは非常に困難で、内部に手勢を抱え込んでいれば、並の
フレイムヘイズなら百人が相手でもゆうに持ちこたえる。
中世の『大戦』で展開した際には、
ブロッケン要塞守備兵が、侵入者を迎撃するため内部に籠もっていた。
滅多に使われないが、過去一度も破られたことがなく、そのことでただ一度だけ、モレクが冗談めかして「難攻不落と言ってもいいかもしれない」と口にしたことがあり、
チェルノボーグはそれを「彼が唯一誇ったこと」という認識と共に完全に信じきっていた。
しかし実際のところは、過去に一度も破られていないとはいえ、決して難攻不落ではなく「破壊するのは一苦労」という程度のものであり、モレクの力を上回る強力な敵の前には敗れ去るものだと本人は自覚していた。
【由来・元ネタ】
ギリシアはクレタ島にある、クノッソスの迷宮『ラビュリントス(Labyrinthos)』。
クレタ王ミノスの子で、海神ポセイドンの怒りに触れたために牛頭人身として生まれた怪物ミノタウロスを閉じこめるために、工匠ダイダロスが建造した地下迷宮のこと。
ミノスは、アテナイから毎年七人ずつの少年少女を、ミノタウロスへの生け贄として差し出させていた。
勇者テセウスは、迷宮内で怪物ミノタウロスを倒し、アリアドネからもらった糸玉を逆にたどって、この迷宮から脱出した。
なお、クレタ島で栄えたミノア文明では、牛飛びの儀式が行われたといわれる。
最終更新:2024年02月29日 20:05