【種別】
紅世の徒”、通称

【初出】
X巻

【解説】
紅世の王”。真名は“天凍の倶”(てんとうのぐ)、の色は黝(あおぐろ)。
とむらいの鐘]最高幹部『九垓天秤』の一角にして、主を護り主力軍を指揮する中軍首将。
その外見は、球形の本体に台のような基部を持ち、口付近に装飾の施された、くすんだ色の巨大なガラス壷。球形の下部に剣や槍、棍棒などの種々の武器が文字通り刺さっており、その壷の中からは雪のように黝の炎を舞わせていた。

冷静沈着で、何より公正に拘る謹厳実直な指揮官で、ブロッケン要塞入城の順番を決める際にも「これまでの功績の順であるべきだ」と譲らなかった。逆に、公正ならば文句は言わない。実力は互いに確かだが、性格の反りの合わないソカルとはよく諍いを起こしていたようだ。
感情の昂ぶりに応じて、武器の表面とその周囲に霜が張る。それは、正しさから来る情の強さからだったようだ。
自らを振るう者を求めて[とむらいの鐘]に入ったようだ。

棺の織手アシズの回想部や表現では『氷の剣』と描写されており、剣に加えて、冷気や氷を操る能力を持つようだ。
外伝漫画『ES』でマティルダ・サントメールとの戦いで見せた戦闘形態は、周りに無数の刀剣が漂っているというものだった。この剣の戦列を展開している時は、彼に刺さっていた武器が消えており、これらの剣は彼に刺さっていたもの、もしくはそれを媒介にして生み出されたものだと思われる。
また、そのシーンの描写を見ると、渦のような暗い気流を発生させてそこに白いものが混ざっており、しかも周囲の地面は何かに包まれているようだった。彼の能力から考えると、あたりを覆いつくす猛吹雪を巻き起こし、剣の戦列を並べていたものと思われる。
ソカルとの口論で激情し臨戦態勢に入った時にも、吹雪のような氷の粒を巻き上げていた。
極低温の刃を無数に周囲に舞わす、吹雪の大嵐さながらの『炎髪灼眼』の天敵と、狩人のフリアグネで語られた。

数百年前の中世の『大戦』中の『小夜啼鳥』争奪戦にて討滅された。X巻では誰に討滅されたかについては言及されていなかったが、『ES』では撤退する軍の殿としてマティルダの前に立ちはだかり、そこで討滅されていた。

【由来・元ネタ推察】
バビロニア神話の戦争の神 ニヌルタ(Ninurta)と思われる。別名は、「蠍の尾」を意味するパ・ビル・サグ(Pa bil sag)である。
シュメール時代の最初期(前3500年ごろ)から信仰を捧げられた極めて古い神であり、当初は農業の神であった。
メソポタミアの文明が軍事に傾くと、ニヌルタもまた軍神としての性質を持つようになり、その武威は後のアッシリア人やバビロン人にも伝えられた。
シンボルは止まり木に止まった鳥(perched bird)と鋤。
蠍の尾を持ったケンタウロスの姿で、弓矢を使う。前8世紀~前7世紀の天文学者達はニヌルタ(またはパ・ビル・サグ)を射手座と同定していた。

「凍」は凍らす、「倶」という漢字自体に彼の姿と関連付けられる意味は無いが、おそらくこの「倶」は「倶梨迦羅」のことだと思われる。倶梨迦羅は戦いの神・不動明王の化身で、黒色の竜が絡み付いた剣の形をしている。
アシズの「氷の剣」という表現などからもこれが適当だと思われる。
真名全体で「天をも凍て付かせる剣たる戦神」という意味だと思われる。剣と吹雪を操ると思われる彼に相応しい真名である。

「中軍」とは文字通り中央部の軍隊であり、多くの場合、総大将の軍とされる。
「首将」は全軍の総大将、主将のこと。
[とむらいの鐘]の総大将アシズを守る親衛隊・主力軍の総指揮官としての職名であろう。

【コメント】
アニメシリーズには未登場。
フワワやソカル同様、既に物語開始直前に討滅されていた。
☆何か冷徹さが[仮装舞踏会]の布告官デカラビアハボリムに似ていた気がするな。
☆壷といえば、フランソワの“スプレット”も大きな壷型の神器だったな。
☆水と氷を操る“王”は、他には相柳スリュムがいた。
☆[巌楹院]のゴグマゴーグや[宝石の一味]の“瓊樹の万葉コヨーテトンサーイフックスイナンナや[百鬼夜行]のギュウキパラゼミナセムルヴや[革正団]のサラカエルドゥーグハリー・スミスハリエット・スミスや[仮装舞踏会]の盟主創造神祭礼の蛇伏羲や『三柱臣』のシュドナイベルペオルヘカテーフェコルーとも絡んでいたら面白そうだったのにな。
☆番外編『かぐやひめのしゃな』では、10話の猿蟹合戦の包丁として登場している。
☆番外編『おじょうさまのしゃな』では、トーテングロ家の土地管理人として登場している。
☆番外編『さんじゅうしのしゃな』では、序幕で観客の一人として登場している。

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最終更新:2024年03月26日 00:09