【初出】
X巻
【解説】
“
紅世の王”。
真名は“凶界卵”(きょうかいらん)。
炎の色は亜麻色。
[
とむらいの鐘]最高幹部『
九垓天秤』の一角。戦場での敵情視察を任とする大斥候。
大量の蝿を生み出す
自在法『
五月蝿る風』の使い手。その本領は戦闘ではなく、絶大な規模で自在法を展開し制御する点にあった。
人間大の卵に魔物、老人、女の三つの面を張り付かせた姿をしていた。
「三つの面から声を繋げつつ」「意味不明のことを」「喚いている!」。
その言動は、同僚の『九垓天秤』たちでもなんとなくしか読み取れなかった。周囲からは、「組織の枢要たる変人」として扱われていた。
中世の『
大戦』最終決戦では、壊滅した
メリヒムの『
空軍』に代わって、『五月蠅る風』で戦場の制空権の確保に尽力した。
『九垓天秤』の中で唯一、“
棺の織手”
アシズの側に最後まで控えていたが、“
天破壌砕”の生贄として存在を取り込まれて消滅し、己が主を滅びへと導くこととなった(その際、一度は『五月蠅る風』を駆使して『主塔』を崩し『天破壌砕』の阻止を試みるも、“
螺旋の風琴”
リャナンシーの介入により『主塔』の崩落が停止させられ失敗に終わった)。
【由来・元ネタ】
名前の元ネタはヒッタイト・小アジアの疫病の神 ジャリ(Jarri)と思われる。疫病が発生すると、人々はジャリに救いを求めた。「弓の王」とも呼ばれ、王を戦いにおいて助けるという。
「凶」の字義は不吉であり、世人を害し恐れられる存在のことである。「界」には、世界と境の両系統の意味がある。「卵」はタマゴ、未だ生まれざるものを指す。
真名全体で、「殻を境とし、その内に不吉な世界を収めた卵」という意味だと思われる。
ジャリが[とむらいの鐘]の大斥候となる以前の、単独の“王”として動いていた時代を考えると、『五月蝿る風』で広範囲の人間を殺傷していたのではないかと考えられるからである。もし『五月蝿る風』を人間の殺戮に使うなら、襲われた地域はまさに地獄となるであろう。
「斥候」とは、地形や敵情の情報収集、遭遇戦への対応、後退する敵部隊の追跡などを行う小規模の部隊である。ただひとりでこれをこなすことができるからこその大斥候なのであろう。
最終更新:2024年02月01日 09:16