【初出】
II巻
【解説】
真名は“屍拾い”(しかばねひろい)。
炎の色は深い緑色。
細身のクラシックなスーツを着込んだ老紳士の姿は、“
存在の力”の消費を減らすために寄生している
トーチのものであり、本当の姿は別にある。
世界のバランスを考慮しているため無害とされ、通常の
フレイムヘイズからは討滅の対象外となっている特殊な“徒”。
他の“徒”が作った燃え尽きそうなトーチを摘み、すでに失われたある物の復活のために“存在の力”を集めていたことで、他の“徒”から蔑まれていた。戦闘になりそうなら、様々な
自在法を巧みに使い、相手を
撹乱して遁走していた。
アラストールとは中世の『
大戦』最終決戦以来の、古い友人関係にある。
その正体は、
封絶などを編み出した“
紅世”最高の
自在師“
螺旋の風琴”
リャナンシー。
その自在法や
式に対する知識は
ダンタリオン教授と並んで広く知れ渡っており、『“屍拾い”』という真名も『ラミー』という通称も、有名すぎる本名を隠すための偽名であった。
その教授とは旧知の仲で、迷惑をかけたりかけられたりした間柄とのことで、教授を通称で呼ぶほど親しかった。研究仲間らしく、ふたりの会話は、傍からは実に生き生きとして見えていた。
『
大命』関係者以外で“
銀”=『
暴君』の事を知っていた唯一の人物だった。
坂井悠二と“
祭礼の蛇”の合一に伴い、
デカラビアから動員令の伝達を受け、『
星黎殿』に招聘された。悠二・
アラストール・シャナと再会した後、[
仮装舞踏会]の客分として、『
久遠の陥穽』に向かった教授に代わり『
大命詩篇』の分析にあたった。
その役目は、
ベルペオルから依頼された二つの事柄を解決させるための糸口を掴むことであった。
一つは
盟主“祭礼の蛇”の代行体となった“
ミステス”坂井悠二に起こっている現象である、盟主と悠二の声が混ざり合っている状態と、異常なまでの鋭敏な感知能力の原因を突き止めることであった。
もう一つは、
宝具『
零時迷子』に深く絡み付いている不確定要素と推測される『
永遠の恋人』
ヨーハンを取り除くことだと思われる。
盟主たちが『久遠の陥穽』に出発した数日後、『星黎殿』の機密区画である岩塊部のとある部屋にて、鳩に偽装した存在の断片が旧友である
ヴィルヘルミナ・カルメルと再会し、部屋の先には進まないように説得しながら、僅かな友誼で司令室『祀竃閣』に通じる通路へと密かに誘導した。また、ヨーハンから託されていた『大命詩篇』を解析するための「虎の巻」をヴィルヘルミナに渡してもいた。
ラミーにとっては絵を復元するための“存在の力”を平穏に集めることだけが目的で、世界の行く末も[仮装舞踏会]とフレイムヘイズ陣営の戦争のどちらの勝敗にも興味が無かった。
[仮装舞踏会]への協力も、世界最大規模の組織に逆らって睨まれるよりも、非常時に協力することで普段の行動を見逃してもらえる方が目的のために都合がいいからであった。
“祭礼の蛇”神体たちがこの世に帰還した後、ベルペオルたちが諸作業に忙殺されている傍ら、当面の暇を得て冷徹な表情で“祭礼の蛇”神体を観察した。
御崎市決戦では、『
真宰社』の機関大底部にある『
吟詠炉』で新世界『
無何有鏡』創造の作業の補佐(
調律の
逆転印章起動)を行う傍ら、
吉田一美に語りかけた。その会話の中でラミーが[仮装舞踏会]に協力することで得る報酬は“徒”たちが新世界『無何有鏡』へ赴く際に、この世に置いて行く莫大な“存在の力”の一部であることを告げた。そして、『真宰社』が
カムシンの『儀装』によって倒壊しかけた直後に、吉田一美から「遺言」を託された。
その後は、やってきたマージョリーが『吟詠炉』に保存されていた『大命詩篇』のバックアップを改変するのを黙認しながら成り行きを見守っていたが、“徒”が創造された新世界へ旅立った際にこの世に置いていった莫大な“存在の力”を使って、念願の自在法を起動。それによって再生した
ドナートの板絵を抱き、リャナンシー本来の姿に戻って悠二にかねてからの約束である遺失物を復元する自在式を手渡し、悠二の持つ『
アズュール』に刻まれた『
転生の自在式』を条件付きで起動するようにし、悠二固有の自在法を『
グランマティカ』と名付けて、新世界へ旅立った。
【由来・元ネタ】
荒野や墓地に出現し、死骸を掘り出して喰らうという邪悪な悪魔ラミー(Lamies)だと思われる。女の姿で、両足の先が竜の頭になっているという。
なお、フランスにはヴァイオリン弓メーカーのラミー(Lamy)社がある。
真名(彼女はそもそも“螺旋の風琴”なので厳密には違うが)は「屍=トーチの“存在の力”を拾い集めるもの」という意味でいいと思われる。
最終更新:2024年04月05日 08:27