・今更のようにユーリお兄さん女体化ネタ
・いつになく真剣に悩むユーリお兄さん
・終始ユーリお兄さんとおっさんがムラムラしてる
・性描写はありませんが、ナチュラルに性的な話題が出てきている

と、いう感じなので、駄目そうだったらそっと閉じて下さいませ!

 


 

 

テイレシアースの怪 Ⅰ 朝起きたらけしからん谷間が覗いていたので揉んでみることにした

 

 目蓋を押し上げると、カーテンの隙間を縫う陽射しが目を突き刺した。反射的に目を閉じてから、二度瞬きをすると意を決して開く。
 ユーリの寝起きは良い方だ。単に眠りが浅いだけなのかも知れないが、なるべくなら良い方に考える。それに、何かしらの不便を感じたことも、第三者に感じさせた覚えもないので欠点であるとも思わない。
 眩しさにもすぐに慣れ、微睡むカロルを起こさないようにして上体を起こし、寝台の下へと足を滑らせた。久しぶりの宿屋の布団なので、ぎりぎりまで堪能させてやりたい。
 固まった肩や腕を解しながら立ち上がる。部屋の中の寝台は三つあり、一つはユーリとカロルとで(宿屋の寝台が足りないと、大体カロルがユーリの毛布に潜り込んでくる)、一つはレイヴンが使った。後の一つは毛布も綺麗に畳まれたまま全く使われた形跡がなく、フレンが騎士団の詰所に顔を出したまま帰らなかったことを暗に臭わせた。
 すぐ隣の寝台でうつ伏せに寝ていたレイヴンは気配に気付いたのか、顔を傾けて薄く目を開けた。ユーリがどれだけ気を付けても、彼だけはいつもこうして起きてしまう。
 最初の頃は起きてしまっても狸寝入りを決め込んでいたレイヴンだが、正体が知れてからは隠そうという気はなくなったようだった。顎の辺りが枕に隠れているので、シュヴァーンに見えるのが笑える。
 まだ寝ていて構わない、という意を込めて解けた鳥の巣を枕に埋めてやると、くぐもった断末魔の悲鳴が聞こえた。それを喉を鳴らして笑うと、ユーリは洗面所へと向かった。
 限界まで蛇口を捻り、水を出す。早朝と言って差し支えのない時間帯なので出が悪い。オルニオンが発展途上であることを差し引いても、定期的に水道魔導器[アクエブラスティア]の点検がされるような宿に泊まる機会などまずないので、朝はいつもこんなものだ。
 勢いの悪い水の濁りが薄らいだところで、指先を浸す。朝の清涼な空気の中にあって尚、冷たい。
 顔を先ず洗い、それから水を掬って口の中を濯ぐ。それから、髭を剃ろうと石鹸と剃刀に延ばしかけた手を止める。
 洗いざらしの顔を伝う水が、唇を割って口内に拡がる。ぬるい。睫毛に溜まった水滴が、瞬きを繰り返す度に落ち掛かる。
 上唇を一舐めしてからユーリは延ばしかけた指を引き戻し、顎へと滑らせた。
 ユーリの髭は濃くもないが薄くもない。それもあって、フレンのように容姿もステータスになるような職に就いているわけではないので毎日剃刀を当てるようなことはしない。似合わない、という自覚はあるので必要最低限の清潔感を保つために、せいぜい二日に一度くらいの頻度でしか剃っていない。それでも騎士団に在籍していた頃のように夜勤続きにくたびれて手を抜けば、無精髭が生えて幼馴染みから露骨に嫌そうな視線を向けられたりもした。
 一昨日は剃った。それは覚えている。正確にはカロルに剃ってもらった。ユーリもフレンもあれくらいの年の頃には髭に対して憧憬の念にも似た興味を抱いていたし、カロルは手先も器用だったので別に構わないか、と思ったのだった。ユーリが終わるとフレンも剃られていたので間違いない。レイヴンは髭の生え方が汚いから嫌だ、と断られていた。哀れだ。
 昨日は昨日でフレンの珍しい個人的な我が儘に応えて、各地のエアルクレーネを飛び回った。慌ただしい一日だったので、そんなゆったりした時間をとれた記憶はない。
 顎に触れる指先に、引っ掛かる感触はない。寝不足からか、少しざらつく気はするがそれだけだ。
 首をかしげながら洗面台の鏡に視線を向ける。見慣れた自分の顔がそこにはある。寝起きであるせいか、多少眠たそうにも見えた。だが、何の変哲もない、と称しても差し支えはないように思う。
 結局、剃らずに済むならそれはそれで楽だし良いか、と生来無精な性質のユーリはそう済ませてしまった。それから、石鹸で顔だけでも洗おうと改めて腰を屈めてまた止まった。
 何か、今、そこに本来あるべきではないものを視た――気がした。
 石鹸に手を延ばそうと、腰を屈めたまま静止してユーリは思考を巡らせる。鏡から少し下がった縁に、視線は定まっている。その溝にフレンが見たら大喜びしそうな小さな黴を見つけたが、今はそれはどうでもいい。
 視線を上げることも、下げることも躊躇われた。だから、ユーリはただただ不毛にもその黴を凝視し続けた。ややあって不毛さを自覚すると、今度は強く、目蓋を閉じた。
 眉間には、自然と皺が寄る。仕方がない。眉間だけでなく、恐らくは顔全体が強ばっている。だから、仕方がない。
 額に、濡れた感触があった。鏡だ。目を開けなくても分かる。
 鏡に額を押し当てたまま、ユーリは細く、長い溜め息を吐いた。それから、身体を起こして目を開けた。
 鏡に映る、童顔だと周囲から指摘される表情は固い。だが、心なしか骨張った角が取れて円みを帯びているように見える。見える、と言うより事実常より輪郭が軟らかくなっているのだろう、と現実逃避にも似た希望的観測を捻伏せて極力客観的な目で現状の把握に努めることにした。
 頬は、円く軟らかい曲線を描いている。気のせいではない。不機嫌さも顕に引き結ばれた唇は、心なしかいつもよりふっくらとしていて薄紅に色付いている。そして何より、視線を僅か下へ向ければ飛び込んでくる、大きく開いた服の合わせから覗く胸がユーリをいよいよ途方に暮れさせた。
 鳩尾の辺りまで開いているのだから、胸元が見えるのは仕方がない。本人にしても、周りの人間にしても、ユーリの服の合わせから覗く胸板というのは「いつものこと」で済まされる範疇だ。
 ユーリは、鏡に映る自身の胸元を凝視し続けた。少し顎を引いて視線を落とせばすぐそこに現物があるのだが、直視する勇気は未だ持てずにいた。
 合わせから覗いていたのが筋骨隆々とまではいかなくても、それなりに逞しいと自負している常の自身の胸板であったなら、清々しい朝の光の中冷や汗をかきながら洗面台の前で固まらずに済んだのに、とユーリは思う。慌ただしくも平穏な一日が、何事もなく始まったのに、と思う。朝起きて、綺麗な釣り鐘型の乳房が二つ、たわわに自身の胸元に実っていたら健全極まりない成人男子として反応に困るというのは仕方がない、と思う。
 鏡の中に映り込む、大胆に開いた胸元を凝視したままユーリはおもむろに突如として現れた乳房の片方を鷲掴みにした。
 間違いない。乳だ。まごうことなき立派な乳だ。
 指先に力を込めれば、記憶に残る柔らかな弾力と同じ感触が返された。性的な意図を持って女性に触れたのは随分前のことのように思う。久しぶりの感触だ。
 ザーフィアスを出てからというもの、何処かしらに必ず人の目があったから仕方がないと言えば仕方がない。女性と旅をするというのは勿論、子供も居る。戦闘で性欲を発散していました、と言えば聞こえは良いかも知れないがこんな風に自給自足してしまう程に欲求不満だったのだろうか、と思うと少し悲しくなった。これではレイヴンを笑えない。
「……まいったな」
 手持ちぶさたなので乳房をやわやわと揉みながら、ユーリは呟いた。いい弾力だ。
「何か、変なもんでも食ったか?」
 先ず、昨日の食事を思い出すことから始めた。思い当たる節はある――と、いうよりあり過ぎる。
 昨日は三食の全てを自分たちで賄った。
 朝食はフレンが作った。この時点で真っ黒だ。ユーリとフレン以外の全ての仲間が次々と箸を置く中、結局全て平らげてしまったことが原因かも知れない。
 昼食はリタだ。味そのものは決して美味しいとは言えないが、それでもフレンの作る料理に比べればまだ「人間の食べる物」という認識が通る。だが、そこはリタだ。実験だか検証だか、その辺りはよく分からないが、何が入っているか解ったものではない。真っ黒だ。
 最後に、夕食だ。作ったのはパティだ。彼女の作る食事は普通に美味しい。特に魚介類を使った料理は、とにかく素材の使い方が上手い。だから、味に関しては文句のつけようがないし、昨夜の彼女が作った漁師なべもユーリは三杯は食べた。女性陣が満腹を訴える傍ら、〆ものと称して雑炊にもした。だが、作ったのはパティだ。あのパティだ。
 思い当たる節は、確かにある。寧ろ、あり過ぎて特定出来ない。だから、ユーリはもう考えるだけ無駄のような気がしてきて、途中で面倒臭くなったのも手伝い潔く思考を放棄してしまうことに決めた。そういった小難しいアレやコレに頭を捻るのはどう考えても自分には向かなかった。幸いカロルやリタといった利発な仲間も居ることだし、その辺りは彼らに任せても問題はないだろう。
 だから、まとまらない思考とは裏腹に存外ユーリは落ち着いていたし、戻れないかも知れない、という危機感にも至らずにいた。それに、ユーリの意識は最早別な方に傾いていた。
 この胸板に張り付いた、けしからん谷間にいつの間にか意識も視線も釘付けになっていた。
 そう、乳だ。
 見下ろしてしまうと正確な大きさは把握出来ないが、鏡に映る様子からしてそれなりの質量を伴う立派な出来だ。ジュディスほどではないが、エステルよりは大きいだろう(だが、あのお姫さまは着痩せする性質なのか意外と凹凸のある体つきをしている。言わないけど)。
 それは自前とはいえ、確かに久しぶりの女の身体だった。
 ユーリは胸からそっと手を外し、目を閉じた。
 仲間に事の次第を打ち明ければ、彼らはきっと原因を解明してくれる。その、確信はある。あるが、解明されるまでにユーリには様々な制限が課せられるだろう、とも思う。その、確信がある。
 確信――つまり、何の制限、言い換えれば気兼ねもなしに自身に降り掛かった事態を掌握する好機は、今を除いて他にない、ということだ。
 今、ユーリの筋張った胸板だった場所には、二対のふくよかな乳房が居座っている。それは分かる。ならば同時に、生まれ落ちてから二〇余年という月日を片時も離れず(離れようもないが)連れ添ったアレやソレはどうなっているのだろう、という疑問が降って沸くのは自然な流れだ、とユーリは思う。
 両親のことなどろくに覚えてはいないが、それでも親から貰った大切な身体だ。他人に調べられるより先に、今自分の身に降り掛かっていることは自分で調べるべきだ。
 だが、女という生き物は不思議なもので、互いに胸を触り合っては「おっきい」だの、「きゃっ、擽ったい」だのというやり取りを容しておきながら、それが殊異性相手となると、それが喩え偶発的な事故であっても途端にゴキブリでも見るような目で男を見つめてくる。だからきっと、ユーリの今の状態を知れば、元の姿に戻るまで始終女性陣の監視の目が付いて回ることになる。下手をすると入浴時など目隠しされるかも知れない。確かに役得とも言えなくはないが、それはそれだ。
 ユーリは、薄く目を開いた。白く濡れた洗面器に視線を落としたまま思考を巡らせる。
 下心はオブラートに包み込んだ。完璧だ。問題はその手段だ。
 落とした視線を僅かに上げる。そこには壁に直接はめ込まれた、形ばかりの鏡があるだけだ。出来れば全身を確認出来る鏡が理想的なのだが、生憎と姿見はカロルとレイヴンの微睡む寝室にしかない。危険過ぎる。
 仕方がないか、とユーリは口の中で呟き鏡から視線を外した。右手側には寝室へと続く扉が、そして左手側には便器とユニットバスがある。カーテン引いて浴槽の中で全裸にでもなればいいか――あれこれと考えるより先に即行動に移る傾向にあるユーリは、この期に及んでもわりと安易で手軽で、そして確実な手段に訴える決断に至った。
 だが、そこで邪魔が入った。
 扉一枚隔てた向こう、人の動く気配と不審な物音、次いで「痛っ」という、早朝な為か極力声を低く殺した悲鳴が上がる(足の小指でもぶつけたのか)。そうして、得てして一つのことに集中して意識を傾けている人間というのは、不意討ちに弱い。言うなれば、意識が中断され引き戻される、というシフトタイムがある分判断が遅れる。今の場合はある種の危険回避能力を欠いた状態、と言える。
 普段のユーリなら、外に人の気配があっただけでも即座に鍵をかけて、この洗面所を密室にしていた。どうせ後で仲間に打ち明けるつもりではいても、ユーリはそれなりに本能と欲望に忠実だった。
 ノックはない。ただドアノブがユーリの背後で小さく捻られた。それだけだ。
「なぁ~んか目ェ醒めちまったわー」
 蝶番を軋ませ扉が開かれると、寝起きの所為か何処となく間延びしたレイヴンの声が背中越しに響いた。ユーリは――特に悲壮な決意を固めるわけでもなく、ただ腹を括った。
「年寄りは朝早くて駄目ねぇ」
「あんま時間も掛けてらんねぇしな」
「あん?青年、声が何か」
 レイヴンが言い終わる前に、ユーリは踵を返した。返し様に谷間の覗く襟元に左右から手を掛け、正面にレイヴンを捉えたことを確認する。そして躊躇せず肘を引いた。
「おっさん、取り敢えず道連れっつーことで」
 当然、昨日まで突如としてこんな得体の知れないものが生えるとは思っていなかった服の下には何もない。左右の襟元を摘んだまま肘を引けば、思わずぽろり、という擬音語が聞こえてきそうな勢いで乳房が顕になる。
「……へ、ん」
 レイヴンは言って固まり、そして倒れた。そういえばユウマンジュでジュディスの肢体を覗き見た後にも倒れていた。成る程、確かに彼女の言うようにレイヴンは意外とうぶなのかも知れない、とユーリは胸を仕舞いながら思った。

 

 

 


 

 → 続いてます。

 

 

 

 

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最終更新:2010年04月09日 14:18