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*BFT妄想記 **「[[BANMOU CAFE]]」・・・と謎の掘立小屋 #center(){#image(http://www1.atwiki.jp/legoblog?cmd=upload&act=open&pageid=82&file=banmoucafe01s.jpg,width=250,title=BANMOU CAFE,http://www1.atwiki.jp/legoblog/pages/82.html,center)} 1Fの白い壁に並んだ大きさもデザインもさまざまのたくさんの時計はいろいろな時間を指している。時報を告げるチャイムは鳴らないようにスプリングで止めてある。ばらばらの時間を指すそれらは手入れされていないわけではない。毎晩27時にこの店を閉めた後に、マスターはすべての時計のねじを巻く。ひとつひとつ、いとおしむように。すべての時計のねじを巻き終えたのを確認すると店を閉めて歩いて家に帰る。ここは[[異人街]]と[[古城跡>古城(離宮) ]]の近くの喫茶店、「[[BANMOU CAFE]]」 マスターは室内でも黒い丸型のサングラスをかけている。長身でほっそりとした体型。白いドレスシャツ、黒の細身のパンツ、黒の蝶ネクタイを締め、長いカフェエプロンをつけている。長いストレートの黒髪は後ろでひとつに束ねられていて、だらしなさは微塵も感じられない。そのスタイルはアール・ヌーボー風のこの店に良く似合う。彼がここの持ち主なのか、それとも雇われているのかは誰も知らない。サングラスに隠された目の色はわからないが、髪と肌の色からアジアの血が入っていることだけは伺える。彼はいつでもこの店の一番奥にあるマホガニーのカウンターの奥で、静かに珈琲を淹れている。観光客で賑わうこの店で、そこだけ時の流れが違うようだ。 ある日、お客のいるテーブルに注文を届けたマスターの顔がひとつの小さな掛け時計のところで止まった。レッドチェリーで作られた八角形の小さな時計。眉間に少ししわを寄せ、顔をかしげ、サングラスの奥からそっとその時計を見つめる。時計が指している時間は12時。彼の脳裏にはひとつの映像が浮かんでいた。 埃が舞い上がる道を4頭立ての乗合馬車が走っている。停車した馬車から飛び出してきた小さな少女、そしてその母親らしき女性。白いドレスを着た少女は母親の手を握りながら興奮したように顔を真っ赤にし、しゃべり続けている。彼女はこのこれからできる新しい首都にはじめてやってきた。[[船]]と馬車で1日の距離のところにある小さな町に住んでいる少女。二人はここに一足先にやってきて、家を建てて待っている父親の元に向かう途中である。グリーンのモスリンのドレスがほこりまみれにならないように、上からスモッグをはおる母親を待ちきれずに少女は走り出す。そこに1台の荷馬車が走ってきた。少女は驚いて立ち止まってしまった。悲鳴を上げる周囲の中から一人の男が飛び出し、少女が馬車に轢かれる寸前でひったくるように彼女を抱き寄せた。安堵の声と何が起こったのかわからずに呆然とする少女。母親が泣き叫びながら走り寄った。何度も頭を下げお礼を言う母親。礼と共に食事に誘うが、男は軽く帽子に手をやり何かを言って群衆の中に紛れて去って行った。 マスターはひゅうと小さく息をついた。時計はふたたび音を立てて動き始めた。これでいい。あの少女は死んではならないのだ。彼女はこの先、偉大な大統領になるべき人物の母親になる。マスターは再びカウンターの後ろに戻ると何事もなかったようにカップを磨く作業に戻った。 その日の深夜。いつものように店を閉め、時計のねじをすべて巻いた後に帰り仕度をする。蝶ネクタイをとカフェエプロンを外し、カウンターの奥のクローゼットにかける。店を出た。住居のある[[異人街]]に向かう。大きな[[中華料理店>中華街]]に寄り添うように建っている小さなその建物には彼しか住んでいない。多くの観光客が歩きまわる[[異人街]]にひっそりと人目を避けるように建つ建物。多くの人はこの建物に目を止めない。掘立小屋のように見えるこの建物に入る。ドアを開けると地下に向かう階段がある。地下室は外からは想像もつかないくらいに広く、マスターの好みで内装はフランス統治時代のベトナム風に整えられている。 リビングに入る。その日はそこで一人の男が待っていた。良く見るとその男は古めかしい吊りズボンを履いて山高帽を手に持っている。昼間、マスターにしか見えない映像に出てきた男だ。マスターは驚きもせず、サングラスをかけた顔をあげその男に向かって言った。 「危なかったな。」 「あぁ、でも他に方法がなかった。あの日のあの乗合馬車に乗ることを遅らせることはできなかったんだ。」 「そうか。うまくいって良かった。君の服はいつも通り奥のクローゼットに入っている。シャワーを浴びて着替えて来たらどうだ?今夜はここに泊まるか?」 「そうだな、そうさせてもらうよ。1週間もあっちにいたから少し時差ボケだ。」 吊りズボンの男はシャワールームに向かって行った。マスターはシャツのボタンを3つあけながら棚からグラスを2つ取り出し、ひとつに氷を入れブラントンを注いだ。リビングのソファに座りグラスを傾けながら部屋にかけてある現在の時刻を指している大きな胡桃材の置時計を眺める。男がシャワーから出てきて、もう一つのグラスに氷をいれ、同じくブラントンをたっぷりと注いで戻ってきた。 「カードでもやるか?」 「いや、今日はいい。向こうでは毎晩ポーカーをやっていてな。しばらくカードは見たくない。」 「そうか。」 ふたりは並んでグラスを傾ける。マスターは静かな声でたんたんとこの1週間に起こったニュースを男に告げる。特筆すべき大きなニュースはない。世界はいつでもどこかで戦争をやっていて、どこかの国で指導者が変わっている。3杯目のグラスを空けると男は眠くなったと告げ、ゲストルームに引き上げて行った。 翌朝、寝ている男を起こさないようにマスターは家を出た。[[異人街]]の裏路地を抜け、店まで歩く。いつものように支度をして、きっちりと蝶ネクタイとエプロンを締める。階下の店に降り、壁にかけられた時計を見渡す。昨日の小さな八角形の時計は正確な時を刻んでいる。開店の看板を出すマスターの口元には小さな笑みが浮かんでいた。 #center(){#image(http://www1.atwiki.jp/legoblog?cmd=upload&act=open&pageid=157&file=sandou_02_05.jpg,width=250,title=ラッパ堂、FENGSHUI、アスラン,http://www1.atwiki.jp/legoblog/pages/157.html,center)} ---- #right(){text [[shinob]]} &bold(){「[[BANMOU CAFE]]」へ戻る} ----
*BFT妄想記 **「[[BANMOU CAFE]]」・・・と謎の掘立小屋 #center(){#image(http://www1.atwiki.jp/legoblog?cmd=upload&act=open&pageid=82&file=banmoucafe01s.jpg,width=250,title=BANMOU CAFE,http://www1.atwiki.jp/legoblog/pages/82.html,center)} 1Fの白い壁に並んだ大きさもデザインもさまざまのたくさんの時計はいろいろな時間を指している。時報を告げるチャイムは鳴らないようにスプリングで止めてある。ばらばらの時間を指すそれらは手入れされていないわけではない。毎晩27時にこの店を閉めた後に、マスターはすべての時計のねじを巻く。ひとつひとつ、いとおしむように。すべての時計のねじを巻き終えたのを確認すると店を閉めて歩いて家に帰る。ここは[[異人街]]と[[古城跡>古城(離宮) ]]の近くの喫茶店、「[[BANMOU CAFE]]」 マスターは室内でも黒い丸型のサングラスをかけている。長身でほっそりとした体型。白いドレスシャツ、黒の細身のパンツ、黒の蝶ネクタイを締め、長いカフェエプロンをつけている。長いストレートの黒髪は後ろでひとつに束ねられていて、だらしなさは微塵も感じられない。そのスタイルはアール・ヌーボー風のこの店に良く似合う。彼がここの持ち主なのか、それとも雇われているのかは誰も知らない。サングラスに隠された目の色はわからないが、髪と肌の色からアジアの血が入っていることだけは伺える。彼はいつでもこの店の一番奥にあるマホガニーのカウンターの奥で、静かに珈琲を淹れている。観光客で賑わうこの店で、そこだけ時の流れが違うようだ。 ある日、お客のいるテーブルに注文を届けたマスターの顔がひとつの小さな掛け時計のところで止まった。レッドチェリーで作られた八角形の小さな時計。眉間に少ししわを寄せ、顔をかしげ、サングラスの奥からそっとその時計を見つめる。時計が指している時間は12時。彼の脳裏にはひとつの映像が浮かんでいた。 埃が舞い上がる道を4頭立ての乗合馬車が走っている。停車した馬車から飛び出してきた小さな少女、そしてその母親らしき女性。白いドレスを着た少女は母親の手を握りながら興奮したように顔を真っ赤にし、しゃべり続けている。彼女はこのこれからできる新しい首都にはじめてやってきた。[[船]]と馬車で1日の距離のところにある小さな町に住んでいる少女。二人はここに一足先にやってきて、家を建てて待っている父親の元に向かう途中である。グリーンのモスリンのドレスがほこりまみれにならないように、上からスモッグをはおる母親を待ちきれずに少女は走り出す。そこに1台の荷馬車が走ってきた。少女は驚いて立ち止まってしまった。悲鳴を上げる周囲の中から一人の男が飛び出し、少女が馬車に轢かれる寸前でひったくるように彼女を抱き寄せた。安堵の声と何が起こったのかわからずに呆然とする少女。母親が泣き叫びながら走り寄った。何度も頭を下げお礼を言う母親。礼と共に食事に誘うが、男は軽く帽子に手をやり何かを言って群衆の中に紛れて去って行った。 マスターはひゅうと小さく息をついた。時計はふたたび音を立てて動き始めた。これでいい。あの少女は死んではならないのだ。彼女はこの先、偉大な大統領になるべき人物の母親になる。マスターは再びカウンターの後ろに戻ると何事もなかったようにカップを磨く作業に戻った。 その日の深夜。いつものように店を閉め、時計のねじをすべて巻いた後に帰り仕度をする。蝶ネクタイをとカフェエプロンを外し、カウンターの奥のクローゼットにかける。店を出た。住居のある[[異人街]]に向かう。大きな[[中華料理店>中華街]]に寄り添うように建っている小さなその建物には彼しか住んでいない。多くの観光客が歩きまわる[[異人街]]にひっそりと人目を避けるように建つ建物。多くの人はこの建物に目を止めない。掘立小屋のように見えるこの建物に入る。ドアを開けると地下に向かう階段がある。地下室は外からは想像もつかないくらいに広く、マスターの好みで内装はフランス統治時代のベトナム風に整えられている。 リビングに入る。その日はそこで一人の男が待っていた。良く見るとその男は古めかしい吊りズボンを履いて山高帽を手に持っている。昼間、マスターにしか見えない映像に出てきた男だ。マスターは驚きもせず、サングラスをかけた顔をあげその男に向かって言った。 「危なかったな。」 「あぁ、でも他に方法がなかった。あの日のあの乗合馬車に乗ることを遅らせることはできなかったんだ。」 「そうか。うまくいって良かった。君の服はいつも通り奥のクローゼットに入っている。シャワーを浴びて着替えて来たらどうだ?今夜はここに泊まるか?」 「そうだな、そうさせてもらうよ。1週間もあっちにいたから少し時差ボケだ。」 吊りズボンの男はシャワールームに向かって行った。マスターはシャツのボタンを3つあけながら棚からグラスを2つ取り出し、ひとつに氷を入れブラントンを注いだ。リビングのソファに座りグラスを傾けながら部屋にかけてある現在の時刻を指している大きな胡桃材の置時計を眺める。男がシャワーから出てきて、もう一つのグラスに氷をいれ、同じくブラントンをたっぷりと注いで戻ってきた。 「カードでもやるか?」 「いや、今日はいい。向こうでは毎晩ポーカーをやっていてな。しばらくカードは見たくない。」 「そうか。」 ふたりは並んでグラスを傾ける。マスターは静かな声でたんたんとこの1週間に起こったニュースを男に告げる。特筆すべき大きなニュースはない。世界はいつでもどこかで戦争をやっていて、どこかの国で指導者が変わっている。3杯目のグラスを空けると男は眠くなったと告げ、ゲストルームに引き上げて行った。 翌朝、寝ている男を起こさないようにマスターは家を出た。[[異人街]]の裏路地を抜け、店まで歩く。いつものように支度をして、きっちりと蝶ネクタイとエプロンを締める。階下の店に降り、壁にかけられた時計を見渡す。昨日の小さな八角形の時計は正確な時を刻んでいる。開店の看板を出すマスターの口元には小さな笑みが浮かんでいた。 #center(){#image(http://www1.atwiki.jp/legoblog?cmd=upload&act=open&pageid=157&file=sandou_02_05.jpg,width=250,title=ラッパ堂、FENGSHUI、アスラン,http://www1.atwiki.jp/legoblog/pages/157.html,center)} ---- #right(){text [[shinob]]} &bold(){「[[BANMOU CAFE]]」へ戻る} ---- **ご感想、コメントをどうぞ #comment() ----

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