(2)乳児保育に関わる配慮事項

ア 乳児は疾病への抵抗力が弱く、心身の機能の未熟さに伴う疾病の発生が多いことから、一人一人の発育及び発達状態や健康状態についての適切な判断に基づく保健的な対応を行うこと。
抵抗力が弱く、感染症などの病気にかかりやすい乳児の保育の環境には、最大限の注意を払う必要があります。特に生後57 日からの産休明け保育については、生命の保持と情緒の安定に配慮した細やかな保育が必要となります。
乳児の生活や遊びの場が清潔で衛生面に十分留意した環境になるように、日々整えることが求められます。また、衣類、布団、おむつ等身の回りのものについても、清潔であることはもちろん、その素材などにも十分配慮し、心地よく過ごせるようにします。さらに、保育士等は、手洗いやうがいを励行し、服装や身支度などにも配慮し、自らの健康と清潔を常に心がけることが必要です。
乳児は、食中毒に対しても、抵抗力が弱く重篤になりやすいことから、食品やミルクの取扱いなどには細心の注意を要します。
SIDS(乳幼児突然死症候群)に対しても、うつ伏せ寝を避け、睡眠時にチェック表を利用して乳児の様子を把握するなど、十分な配慮が必要です。特に、入所して間もない頃の保育は複数の目による観察と注意が必要です。
一人一人の発育及び発達状態をよく把握した上で、常に体の状態を細かく観察し、疾病や異常は早く発見し、発見したら、速やかに適切な対応をします。観察に当たっては、機嫌、顔色、皮膚の状態、体温、泣き声、全身症状など様々な視点から、複数の職員の目で行うことも大切です。

イ 一人一人の子どもの生育歴の違いに留意しつつ、欲求を適切に満たし、特定の保育士が応答的に関わるように努めること。
生育歴には、その子どもの誕生時の状態をはじめ、誕生時から今日までの生活のすべてが含まれます。乳児の状態は、実際にそれまでどのような生活を送ってきたかに加えて、保護者の心身の状態や家庭の状況など、生活環境のすべてが影響します。このような生育歴の違いが、欲求や行動などの違いとなって現れます。
保育士等は、こうした違いを踏まえ、一人一人の乳児の現在のありのままの状態を理解することが大切です。そして、乳児がその声やしぐさや動きなどを介して発する欲求を察知し、タイミングよく応えていきます。特に乳児の泣き声に対しては、優しく応え、その心の声を保育士等が言葉で表しながら関わります。こうした特定の保育士等による丁寧な関わりを通して、気持ちの交流が芽生えていきます。
乳児が成長する上で、最も重要なことは、人との継続的かつ応答的な関わりです。特定の保育士等が、愛情豊かに優しく語りかけながら世話をすることにより、乳児は、顔を見たり、表情を変えたり、声に反応したり、手足を動かしたり、子どもなりに自分の気持ちを表現していきます。保育士等が、あやしたり、抱いたり、優しく揺すったりして、乳児が人に触れられて心地よいと感じる関わりを持つことも大切です。子どもは、安心できる人との相互的な関わりの中で、心身の健康が培われ、情緒が安定し、言葉の発達が促されていきます。信頼感など子どもが人として生きていく土台が乳児保育においてつくられることの重要性を十分に認識しながら保育していくことが求められます。

ウ 乳児保育に関わる職員間の連携や嘱託医との連携を図り、第5章(健康及び安全)に示された事項を踏まえ、適切に対応すること。栄養士及び看護師等が配置されている場合は、その専門性を生かした対応を図ること。
第5章に示されているように、健康及び安全に関する事項は、保育をする上での基本です。特に、乳児は、大人が手厚く守り育てていかなければ、生命の保持や情緒の安定ができないことから、健康と安全についての事項はたいへん重要です。
乳児保育では、嘱託医との連携を図るとともに、保育士等、看護師、栄養士等がそれぞれの専門性を生かしながら職員間の連携を図り、保育所全体で乳児の健康と安全を守っていくことが大切です。乳児の健康な生活の基本となる授乳や離乳食、睡眠やおむつ替えなどについては、職員間で共通理解を図り、一人一人の状態に応じて丁寧に行っていくことが必要です。
授乳については、清潔に留意して行い、しっかりと抱いて顔を見ながら飲ませ、飲み終わった後の排気や姿勢に留意します。離乳は、健康状態などをみながら、一人一人の咀嚼や嚥下の状態に合わせて進めていきます。また、子どもの機嫌がよく、眠くならない状況の中で食事ができるようにします。
厚生労働省において策定した「授乳・離乳の支援ガイド」(平成19 年3月)を参考にしましょう。
睡眠は、乳児が安心して眠れるように、場所、気温、湿度、明るさ、風通し、衣類、布団などの状態に留意します。寝かせ方への配慮も重要であり、月齢が低い場合は、仰向けに寝かせるようにします。眠い時に眠り、自ら目覚めるようにしながら、徐々に睡眠と覚醒のリズムを整え、昼間起きている時間を長くします。
おむつは、汚れたら手際よく替えますが、その際、優しく言葉をかけ、おむつを替えてもらうことの心地よさや清潔感を伝えるようにします。また、乳児が動きやすいように配慮します。
健康の増進が図られるように、体を動かす遊びを積極的に取り入れ、気温や天候などの状況や乳児の体調に留意しながら外気浴することも必要です。
また、乳児の生活及び遊びの中で、窒息・誤飲・転倒・転落・脱臼等、予想される危険や事故に対し、様々な配慮や確認が必要です。さらに十分に水分を補給し、脱水状態を回避しなければなりません。

エ 保護者との信頼関係を築きながら保育を進めるとともに、保護者からの相談に応じ、保護者への支援に努めていくこと。
乳児保育においては、特に保護者との密接な連携が重要です。成長・発達が著しい乳児の様子や日々の保育について、温かい視点で詳しく伝えるとともに、家庭での様子を丁寧に聞き取っていきます。保護者の就労や子育てを支え、保護者の気持ちに配慮して対応し、送迎時には気持ちよい挨拶や励ましの言葉をかけましょう。
子育てを始めたばかりであったり、育児に不安を抱いたり、悩みを抱えたりなど、一人一人の保護者の置かれている状況は様々です。第6章(保護者に対する支援)にある事項を踏まえ、保護者と信頼関係を築きながら、乳児の成長の喜びを共に味わっていくことができるようにしていきます。

オ 担当の保育士が替わる場合には、子どものそれまでの経験や発達過程に留意し、職員間で協力して対応すること。
年度替わりあるいは年度途中で、担当の保育士が替わる場合、特に乳児保育では特定の保育士等との密接な関わりが重要であることから、乳児が安定して過ごせるための配慮が大切になります。生育歴や発達過程等における個人差だけでなく、それまでの生活や遊びの中での乳児の様子についても丁寧に引き継いでいくようにします。一人一人の乳児への働きかけや対応が急激に変わることのないよう、職員間で協力し、乳児の気持ちに沿った対応をしていきます。
周囲の職員は子どもと新しい担当保育士との信頼関係が築けるよう配慮するとともに、子どもがそれまでの経験の中で培ってきた人と関わる力を信じることも大切です。担当保育士等を安全基地として、様々な人と関わり、多くの人の温かい眼差しの中で乳児が成長していくことを職員全員で見守っていきたいものです。
最終更新:2009年01月10日 21:36
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