(1)保育に関わる全般的な配慮事項

ア 子どもの心身の発達及び活動の実態などの個人差を踏まえるとともに、一人一人の子どもの気持ちを受け止め、援助すること。
子どもが安定し、充実感を持って生活するために、保育士等は以下の3つの点に配慮する必要があります。

一つ目は、乳幼児期の子どもの発達は心身共に個人差が大きいことに配慮することです。同じ月齢や年齢の子どもの平均的・標準的な姿に合わせた保育をするのではなく、一人一人の発達過程を踏まえた上で、保育を展開する必要があります。
二つ目は、子どもの活動における個人差に配慮することです。同じ活動をしていても、何に興味を持っているか、何を求めてその活動をしているのかは、子どもによって異なります。そのため一人一人の活動の実態を踏まえて、その子どもの興味や関心にそった環境を構成していく必要があります。
三つ目は、一人一人の子どものそのときどきの気持ちに配慮することです。
保育士等が様々に変化する子どもの気持ちや行動を受け止めて、適切な援助をすることが大切であり、常に子どもの気持ちによりそい保育することが求められます。

イ 子どもの健康は、生理的、身体的な育ちとともに、自主性や社会性、豊かな感性の育ちとがあいまってもたらされることに留意すること。
心と体の健康は、相互に密接な関連があります。大人との信頼関係を拠りどころに、子どもは安心感を持って自ら積極的に環境に関わっていくようになりますが、このことが、生理的、身体的な発達を促し、子どもの心と体を更に育てていきます。保育士等は、子どもの心と体の関係を十分に理解した上で、子どもの存在をまるごと受け止め、丁寧に関わることが大切です。
また、子どもは、自分の感じたことや思いを自分なりに生き生きと表現し、その表現を受け止めてもらい、認めてもらうことで、更に表現したい気持ちを高めます。他者と共感することにより更に自己発揮していくことが、子どもの心と体の健康につながっていくのです。
さらに、子どもは、保育士等に受け止めてもらうだけではなく友達にも認めてもらいたい、一緒に活動したいと思うようになります。保育士等は、子どもが、様々なものを感じることができるような環境、また十分に体を動かして表現することができるような環境を構成するとともに、子ども同士の関係を仲立ちし、関わりが促されるよう配慮することが重要です。

ウ 子どもが自ら周囲に働きかけ、試行錯誤しつつ自分の力で行う活動を見守りながら、適切に援助すること。
子どもは周囲の環境に対して、自ら主体的に関わって生活しています。保育士等は、子どもが遊びを通して積極的に環境に関わる中で、多様な経験が重ねられるよう配慮しなければなりません。また、子どもにとって魅力的な環境を構成し、意欲的に取り組みたくなる活動を子どもと共に計画していくことが大切です。
子どもの環境への関わり方は様々です。常に積極的に行動できる子どももいれば、関心を示さなかったり、保育士等や友達がすることを眺めている子どももいます。保育士等は、子どもの気持ちを尊重し、一人一人の子どもに「自分でやってみたい」という気持ちが現れるのを待つことが大切ですが、子どもの興味や関心に沿って環境構成を変えたりするなどの工夫をすることも必要です。また、活動に取り組む中で、子どもは、うまくできない悔しさを感じて様々に試行錯誤を重ねたり、自分でできたという達成感を味わったりします。保育士等は、子どもの気持ちを受け止めながら、自分で行うことの充実感が味わえるように、行動を見守り、適切に援助することが必要です。

エ 子どもの入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的に対応し、子どもが安定感を得て、次第に保育所の生活になじんでいくようにするとともに、既に入所している子どもに不安や動揺を与えないよう配慮すること。
入所時に子どもは、心の拠りどころとなる保護者からも、慣れ親しんだ家庭からも離れ、見知らぬ保育士等や友達と、慣れない場所で生活することになります。
入所時の保育に当たっては、こうした子どもの不安な思いを理解して、特定の保育士等が関わり、その気持ちや欲求に応えるよう努めます。また、保護者との連絡を密にし、子どもの生活リズムを把握することも大切です。子どもは、保育士等との関係を基盤にして、徐々に保育室の環境に馴染んでいきますが、保育士等は、子どもが自分の居場所をみいだし、好きな遊具で遊ぶなど、環境にじっくりと関わることができるよう積極的に援助することが大切です。
既に入所している子どもにとっても、新しい友達との出会いは不安と期待が入り混じり、自分と保育士等と新しい友達との関係に敏感になることもあります。保育士等は、既に入所している子どもと入所してきた子どもの双方と関わりながら、子ども同士が安定した関係を築けるよう援助していくことが必要です。

オ 子どもの国籍や文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるよう配慮すること。
前述の1のイ「人間関係」の(イ)内容の⑭にもあるように、保育所では外国籍の子どもや様々な文化を持った子どもが共に生活しています。保育士等はそれぞれの持つ文化の多様性を尊重し、多文化共生の保育を進めていくことが求められます。
例えば外国籍の保護者に自国の文化に関する話をしてもらったり、遊びや料理を紹介してもらったりするなど、子どもが異なる文化に触れる機会を通して文化の多様性に気付き、興味や関心を高めていくことができるよう、子ども同士の関わりを見守りながら、適切に援助していきます。
外国籍の子どもの文化を尊重することだけでなく、宗教や生活習慣など、どの家庭にもあるそれぞれの文化を尊重し、十分に認識することが必要です。
保育士等は、自らの感性や価値観を振り返りながら、子どもや家庭の多様性を積極的に認め、互いに尊重しあえる雰囲気をつくり出すことに努めましょう。

カ 子どもの性差や個人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な意識を植
え付けることがないよう配慮すること。
保育所において、固定的なイメージに基づいて子どもの性別などにより対応を変えたり、固定的な意識を植え付けたりすることがないようにしなければなりません。子どもの性差や個人差を踏まえて環境を整えるとともに、一人一人の子どもの行動を狭めたり、子どもが差別感を味わったりすることがないよう十分に配慮します。子どもが将来、性差や個人差などにより人を差別したり、偏見を持つことがないよう、人権に配慮した保育を心がけ、保育士等自らが自己の価値観や言動を省察していくことが必要です。
男女共同参画社会の推進とともに、子どもも、職員も、保護者も、一人一人の可能性を伸ばし、自己実現を図っていくことが求められます。
最終更新:2009年01月10日 21:34
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