ア 健康

健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。

(ア)ねらい

① 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
② 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
③ 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける。

「健康」の領域では、「(イ)健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと」を具体化した「ねらい」として、①から③までが示されています。そして、保育士等の愛情に支えられた安全な環境のもとで、心と体を十分に動かして生活することにより、健康な生活を送るた
めの基盤をつくることを目指します。食事、排泄、睡眠、着脱、清潔などの基本的な生活習慣の確立や、食生活などを通し、自分の健康に関心を持ち、病気の予防や健康増進のための活動をすること、安全に行動することなどが含まれます。
特に、心と体の健康は、相互に密接な関わりがあることを踏まえ、子どもが保育所の生活の中で、「明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう」といった心情を持ち、「自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする」意欲が育つようにすることが大切です。また、子どもが全身を使って活動することを通して、「健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け」、自分の体を大切にしようとする気持ちや態度を育てていくことが望まれます。
こうした「ねらい」を達成するために、保育士等が援助して子どもが環境に関わって経験する事項を次の「内容」で示しています。

(イ)内容

① 保育士等や友達と触れ合い、安定感を持って生活する。
子どもが長時間にわたり生活する保育所において、子どもの欲求を理解し受け止める保育士等との関わりの中で、子どもは次第に心の安定を得て、友達とも安心して関わるようになります。
この安定感は、心の健康につながるものです。子どもが自立して行く過程にはいろいろな出来事が待ち受けていますが、保育士等や友達との温かい触れ合いの中で得た安定感を心の拠りどころとして、子どもは、様々な活動に意欲的に取り組んでいくようになります。

②いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。
保育士等は、子どもの発達過程に沿って十分に体を動かす活動を保障する必要があります。すなわち、寝返り、腹ばい、はいはい、つたい歩き、立つ、歩く、走る、登る、降りる、跳ぶなど、その時期に合わせた運動を取り入れて遊ぶことが、子どもの心と体を育てます。また、つまむ、たたく、ひっぱる、丸める、めくるなどの手や指を使う遊びも、子どもの能力や興味に応じて展開していくことが大切です。発達過程にふさわしい遊具などの物的環境にも十分配慮します。
子どもは十分に体を動かすことの心地よさを味わうことで、自ら活動することの喜びや達成感を味わい、ますます活発に遊ぶようになります。また、様々な遊びを通して身体の諸機能の発達が促されていきます。子どもの心身の成長には身体感覚を伴う様々な経験が必要です。乳幼児期に十分に体を動かすことの意義を踏まえ、子どもの身体の調和的発達を促していきましょう。

③進んで戸外で遊ぶ。
戸外は子どもにとって思いきり全身を動かして遊ぶことのできる空間です。自然は、子どもに様々な刺激を与えます。戸外は自然の不思議さやおもしろさに満ちており、子どもに多くの興味や関心を抱かせます。保育所の園庭だけではなく、公園や広場など、自然環境の豊かな場所に出かけ、戸外で遊ぶ
ことの心地よさを十分に味わうことができるようにします。
乳児にとっても、外気に触れることは大切であり、五感を通して様々な感覚や知覚を得ていきます。一人一人の子どもの健康状態を把握した上で、また、紫外線などの対策に配慮しながら散歩などを心がけたいものです。
また、子どもが進んで体を動かし、様々な遊具や用具などを使った運動や遊びを楽しむことができるように、保育の環境に留意し、戸外での遊びが豊かに展開されるよう工夫して保育することが必要です。

④様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。
子どもの心と体が調和的に発達していくためには、様々な経験を積み重ねることが必要です。子どもが一人でじっくりと好きな遊びに取り組むことは重要であり、その時間と空間が保障されることにより様々な気付きを得ていきます。
子どもは自ら楽しみながら、心と体を十分に動かし、繰り返し試したり、工夫したりすることにより身の回りの事象などへの興味や関心を深めていきます。そして、様々な遊びや活動に親しむ中で、興味や関心を同じくする友達との関わりが生じ、徐々にその関わりを深めていきます。
さらに仲のよい友達と一緒に取り組むだけでなく、グル?プやクラスなど集団で取り組む活動を経験していくことにより仲間と共に活動することのおもしろさを味わい、その楽しさや充実感が子どもの心と体を育てます。

⑤健康な生活のリズムを身に付け、楽しんで食事する。
子どもの生活の場である保育所において、適切な食事や休息はたいへん重要です。バランスのとれた食事や適度な運動と休息により、健康な生活のリズムや生活習慣を身に付けていくことは、子どもの自立の基礎となります。
長時間にわたる保育所での生活において、活動と休息のバランスに配慮するとともに、明るく和やかな雰囲気の中、子どもが友達と一緒に食事を食べることを楽しみ、食への関心や意欲を高めていくことができるようにします。
そして、楽しい食事が子どもの心と体の栄養となるよう食事の環境に配慮することが大切です。
第5 章の3の「食育の推進」を踏まえ、子どもの食生活を充実させていきましょう。

⑥ 身の回りを清潔にし、衣類の着脱、食事、排泄など生活に必要な活動を自分でする。
身の回りを清潔にする習慣については、おむつを取り換えてもらい、きれいになった心地よさを感じること、食事の前後に手や顔を拭いてもらい、清潔になることの心地よさを感じることなど、保育士等の援助が必要ですが、次第に子ども自らがやってみようとするようになります。衣服の着脱についても、発達過程に応じて保育士等が手を添え、丁寧に優しく援助することにより、自分でしようとする気持ちが芽生えていきます。その気持ちを大切にし、子どもの意志を尊重しながら見守ったり援助したりしながら、自分でできたことの喜びを味わえるようにしていきます。
和やかな雰囲気の中で、丁寧に援助してもらい、自分でできたことをともに喜んでもらう中で、徐々に食事や排泄などの生活習慣が身に付いていきます。子どもの気持ちに寄り添い、繰り返し丁寧に関わるとともに、発達過程や子どもにふさわしい食器やテーブルなどの生活用具に配慮することが求められます。

⑦ 保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しを持って行動する。
子どもの一日の生活の流れを明確にすることにより、子どもは安心感を持ち、その都度必要な行動や約束事などを徐々に理解していきます。
例えば、登所後の持ち物の始末、遊んだ後の遊具などの片づけ、自分の持ち物や用具を整理すること、食事の前や排泄後の手洗いなど、保育士等が手を添え、繰り返し丁寧に伝えていくことが大切です。保育士等の立ち居振舞いや物を扱う態度などは子どもが生活する上でのモデルとなり、子どもに大
きな影響を及ぼします。
保育士等は、子どもが見通しを持って意欲的に行動することができるように、物の配置や子どもの動線などに留意するとともに、快適に生活するための約束事を子ども自身が理解し、その必要性に気付いていけるよう援助します。
例えば、遊んだ後に遊具などを片付けることにより、次に遊ぶときに気持ちよく使えることに気付いたりしながら、子どもが生活の場を自ら整えようとすることを促していきます。また、十分に遊んで楽しかったといった充実感や満足感が次の活動につながっていくという子どもの活動の連続性に留意することも大切です。

⑧自分の健康に関心を持ち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。
保育士等は、日頃から子どもの心身の健康について理解を深めるとともに、子ども自身が自分の体や健康に関心を持ち、健康に過ごすことの大切さに気付くことが大切です。そのためにも、生活面の細やかな援助やスキンシップなどを通し、子どもの身体感覚を育て、また、健康診断や身体測定などの機会を通して、自分の体に関心を持つようにすることが必要です。
保育士等が看護職や栄養士等と連携を図りながら子どもの状態を把握し、適切に対応していくとともに、子ども自身が自分の体の状態を意識し、異常などを感じた時に、保育士等に伝えられるようになることが大切です。そのためには、様々な方法で病気や発熱、排便などについて、子どもに分かりやすく伝え、清潔にすること、手洗いやうがいをすること、汗をかいたら着替えること、寒暖に応じて衣服の調節をすること、戸外では帽子をかぶることなど、子どもが自分で気付いてできるように日常的な働きかけも重要です。

⑨危険な場所や災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動する。
保育所の事故防止や安全対策が重要であることはいうまでもありません。第5章に示されていることを踏まえ、子ども自身が安全に過ごすための習慣を身に付け、危険を回避することができるよう計画的に保育していくことが必要です。
年齢や発達過程などに応じて、子どもへの声のかけ方、注意の促し方、安全の確保、危険回避の仕方などは様々ですが、子どもの安全を第一に考慮するとともに、危険に対する知識やその理由を繰り返し丁寧に伝えていくことが重要です。
また、子どもの遊びや行動を狭めることなく、子どもが保育士等や友達と一緒に行動しながら、危険な場所や遊び方を知り、考えながら行動していくことが大切です。
交通安全や避難訓練などを定期的に計画、実施する中で、子ども自らが安全に対する認識や関心を高め、災害時の行動や避難場所、非常時の行動、不審者への対応などについて、保育士等の指示を聞いて行動できるようにしておくことが必要です。

また、家庭や地域との連携を図るとともに地域の安全に関わる行事などに参加することも大切です。
最終更新:2009年01月10日 21:22
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