イ 情緒の安定

(ア)ねらい

① 一人一人の子どもが、安定感を持って過ごせるようにする。

② 一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。

③ 一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。

④一人一人の子どもの心身の疲れが癒されるようにする。

次に、「情緒の安定」に関わるねらいとして、①から④までが示されています。

ここにあるように、子どもが保育士等に受け止められながら、安定感を持って過ごし、自分の気持ちを安心して表すことができることは、子どもの心の成長の基盤となります。周囲の大人や子どもから、かけがえのない存在として受け止められ、認められ、自己を十分に発揮していくことは自分への自信につながります。保育士等が子どもを一個の主体として尊重し、主体として受け止め認めるという対応を通して、子どもは自己を肯定する心を育んでいくのです。また、そのことにより保育士等や周囲の人への信頼感が育ち、一人一人がかけがえのない存在であることを感じ取っていきます。人との相互的な関わりにより育まれていくこうした自己肯定感を乳幼児期に育てることは、子どもの将来にわたる心の基盤を培うことでもあります。
一方、子どもの状態を把握し、心身の疲れが癒されるようにすることは、長時間にわたり保育所で過ごす子どもにとって必要なことです。子どもの情緒の安定を図り、その心の成長によりそい、適切に援助するために、「ねらい」に対応して特に、保育士等が行う事項を次の「内容」で示しています。
「情緒の安定」に関わる保育の内容は、「生命の保持」と相互に関連することはもちろん、特に「教育に関わるねらい及び内容」のイ「人間関係」の領域に示されている事項と深く関わります。それぞれの内容を踏まえ、一人一人の子どもの心の成長を助け、保育所全体で子ども主体の保育を実践していくことが求められます。

(イ)内容

① 一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。
保育士等は、一人一人の子どもの心身の状態や発達過程を的確に把握し、それぞれの子どもの欲求を受け止め、子どもの気持ちに沿って対応していかなければなりません。また、子どもにとってどうすることが望ましいのかを検討しながら保育していくことが求められます。
子どもは、自分がして欲しいことを心地よくかなえられると安心し、自分の欲求をかなえてくれた人に対し、親しみと信頼感を抱くようになります。
また、日ごろより、自分に向けられる優しいまなざしや態度から、自分が認められ愛されていることを感じ、自分からもそうしたまなざしや態度を示していきます。保育士等とのこうした温かなやり取りやスキンシップが積み重ねられることにより、子どもは安定感を持って過ごすことができるようになります。特に、乳児など低年齢の子どもが十分にスキンシップを受けることは、心の安定につながるだけでなく子どもの身体感覚を育てます。肌の触れ合いの温かさを実感することにより、人との関わりの心地よさや安心感を得て、自ら手を伸ばし、スキンシップを求めるようになっていきます。こうした子どもとの触れ合いは保育士等の喜びとなり、応答的なやり取りや言葉がけが豊かになる中で、子どもは保育士等の気持ちや言葉の表す意味を理解していきます。

②一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。
保育士等が一人一人の子どもの気持ちや心の声を聴き取り、適切に応答していく行為は保育の基本であり、人への信頼感はこうした関わりが継続的に行われることを通して育まれていきます。子どもは自分の気持ちに共感し、応えてくれる人がいることで、自分の気持ちを確認し、安心して表現したり行動したりしていきます。
また、保育士等が子どもと向き合う中で、自らの思いや願いを子どもに返していくことにより、子どももまた保育士等の存在を受け止め、その気持ちを理解するようになります。保育士等の温かい受容的な雰囲気とともに、自分への気持ちや期待を、子どもは敏感に感じ取るものです。
生涯にわたる人との信頼関係の基盤が保育所での生活によって培われていくことを認識し、互いに認め合い信頼される関わりを育み、子どもの心を豊かに育てていくことは保育士等の責任です。

③保育士等との信頼関係を基盤に、一人一人の子どもが主体的に活動し、自発性や探索意欲などを高めるとともに、自分への自信を持つことができるよう成長の過程を見守り、適切に働きかける。
自分への自信や自己肯定感を育てていくことは、保育の大切なねらいです。一人一人の子どもが豊かに伸びていくその可能性を発揮して、かけがえのない人生を歩んでいること、自らが選択し、決定していくという主体性や生きることへの意欲を育んでいること、保育士等はそれらを心に刻んで子どもと関わることが重要です。そのためには、一人一人の子どもの人格を尊重し、命への尊厳を感受する保育士等の倫
理性が求められます。
また、子どもの主体的な活動を促す保育環境を計画的に構成し、子ども自らが環境に関わり体得していくことが大切です。その姿を見守り、共感しながら、時には励まし、必要な助言をしたり、環境を再構成しながら保育士等も一緒に楽しんでいくことが必要でしょう。
大切なことは時間をかけてゆっくりと醸成されていきます。目に見えない心の育ちや人や物との出会いの中で芽生える子どもの様々な感情や考えを受け止め、多様な経験が重なる中で成長していくその過程を見守り、子どもの自己肯定感を育んでいくことが重要です。主体としての子どもを認め、肯定する気持ちを言葉や態度で子どもに伝えることにより、子どもは自分への自信や人への信頼感を獲得していきます。

④一人一人の子どもの生活リズム、発達過程、保育時間などに応じて、活動内容のバランスや調和を図りながら、適切な食事や休息が取れるようにする。
保育所で長時間過ごす子どもの生活は夜型になりやすく、就寝時間も遅くなりがちです。また、子どもは保護者の就労状況や家庭での食生活などの影響を受けます。乳幼児期の子どもにふさわしい生活リズムや、その心身の成長を支える食事や適度な休息はたいへん重要であり、保育士等は子どもの生活を見通して、家庭と協力しながら適切に援助していくことが求められます。
子どもは、睡眠や食事が不十分であったり、心身の疲れがたまっていると、情緒が安定せず、不機嫌になったり、活動への意欲が衰えたりします。保育士等は一人一人の子どもの心身の状態に応じてきめ細やかに対応していきます。
いつでも安心して休息できる雰囲気やスペースを確保し、静かで心地よい環境の下で、子どもが心身の疲れを癒すことができるようにしていくことが大切です。また、午睡は、子どもの年齢や発達過程、家庭での生活や保育時間などを考慮して、必要に応じて取れるようにしていきます。子どもの家庭での就寝時間に配慮し、午睡の時間や時間帯を工夫し、柔軟に対応します。
さらに、子どもの生活時間全体に留意しながら一日の生活の流れを見通し、発散、集中、リラックスなど、静と動の活動のバランスや調和を図るようにしていきます。
最終更新:2009年01月10日 21:16
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