ア 生命の保持

(ア)ねらい

①一人一人の子どもが、快適に生活できるようにする。

②一人一人の子どもが、健康で安全に過ごせるようにする。

③一人一人の子どもの生理的欲求が、十分に満たされるようにする。

④一人一人の子どもの健康増進が、積極的に図られるようにする。

養護に関わる保育の目標をより具体化した「ねらい」の中で、まず、子どもの「生命の保持」に関わるねらいとして、①から④までが示されています。
ここにあるように、子どもの命を守り、一人一人の子どもが快適に、そして健康で安全に過ごせるようにするとともに、その生理的欲求が十分に満たされ、健康増進が積極的に図られるようにすることは一人一人の子どもの生存権を保障することでもあります。それは、日常の生活の中での保育士等の具体的な関わりにより実現されていきます。特に、「ねらい」に対応して保育士等が行う事項を次の「内容」で示しています。
「生命の保持」に関わる保育の内容は、特に「教育に関わるねらい及び内容」のア「健康」の領域と深く関連し、また、第5章の(健康及び安全)に示されている事項と重なる事柄もあります。それぞれの内容を踏まえ、一人一人の子どもの健康と安全がしっかりと守られるとともに、保育所全体で子どもの健康増進を図っていくことが求められます。

(イ)内容

①一人一人の子どもの平常の健康状態や発育及び発達状態を的確に把握し、異常を感じる場合は、速やかに適切に対応する。一人一人の子どもの健康状態を把握するためには、子どもの発育や発達の状態、家庭での食事、睡眠などの状態について保護者から情報を得ることが必要です。また、登所時の健康観察、保育中の子どもの様子の把握も日々の保育の中で必ず行わなければなりません。
特に、乳児に対しては、常に体の状態を細かく観察し、疾病や異常を早く発見することが求められます。また、生後6か月を過ぎると母親から受け継いだ免疫がなくなり始め、感染症にかかりやすくなるため、朝の受け入れ時はもちろんのこと、保育中も、機嫌、食欲などの観察を十分に行い、発熱などの体の状態に変化が見られたときは適切に対応することが求められます。
乳幼児は疾病に対する抵抗力が弱く、容態が急変しやすいことを十分認識し、第5章で示されていることを踏まえ、職員間で連携を図りながら、適切かつ迅速に対応していきます。

②家庭との連携を密にし、嘱託医等との連携を図りながら、子どもの疾病や事故防止に関する認識を深め、保健的で安全な保育環境の維持及び向上に努める。
疾病予防については、保護者との連絡を密にしながら一人一人の子どもの状態に応じて、嘱託医やかかりつけ医などと相談して進めていくことが必要です。保育士等が子どもの疾病について理解を深めるとともに、感染予防に心がけ保護者に適切な情報を伝え、啓発していくことも大切です。衛生的な環境への細心の注意を払い、保育室や子どもの身の回りの環境、衣類や寝具、遊具などを点検します。
事故防止については、子どもの発達の特性や発達過程を踏まえ、子どもの行動を予測し、起こりやすい事故を想定し、環境に留意して事故防止に努めることが求められます。子どもの成長に伴い行動範囲が広がるので、その活動を保障しながら、保育所全体で安全点検表などを活用しながら対策を講じ、安心、安全な保育環境を作っていかなければなりません。

③清潔で安全な環境を整え、適切な援助や応答的な関わりを通して子どもの生理的欲求を満たしていく。また、家庭と協力しながら、子どもの発達過程等に応じた適切な生活リズムが作られていくようにする。
保育所は保健面や安全面に関して十分に配慮された環境でなければなりません。細やかに清掃され衛生的な場であることはもちろんのこと、明るさ、温度、湿度、音などについても常に配慮することが求められます。また、子どもが安心して探索活動をしたり、のびのびと体を動かして遊ぶことのできる環境であることが必要です。こうした環境の下で、保育士等が応答的に関わりながら食欲や睡眠などの生理的欲求を満たしていくことが、子どもの健やかな成長を支えます。子どもの欲求に応えて、語りかけながら優しく対応をすることにより、子どもは心地よくなる喜びとともに、自分の働きかけによって応じられた行為の意味を感じ取るのです。
送迎時の保護者との会話や連絡帳、懇談会などを通し、積極的に家庭との情報交換を行いながら、24 時間を見据えた子どもの生活時間を考慮し、子どもの食事、睡眠、休息、遊びなどが無理なく営まれるようにしていきます。
そして、一人一人の生活に合わせ、時には柔軟な対応をとりながら、家庭と協力して子どもの生活や発達過程にふさわしい生活リズムが作られるようにしていきます。

④子どもの発達過程等に応じて、適度な運動と休息を取ることができるようにする。また、食事、排泄、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなどについて、子どもが意欲的に生活できるよう適切に援助する。
子どもの発達を見通し、這う、歩く、走る、登る、跳ぶ、くぐる、押す、引っ張るなど全身を使う運動を適度に取り入れ、それぞれの状態にあった活動を十分に行うことが重要です。休息は、心身の疲労を癒したり緊張を緩和したり、子どもが生き生きと過ごすためには大切なことです。一人一人の生活リズムに合わせて安心して適度な休息や午睡がとれるようにするとともに、静と動のバランスに配慮した保育の内容が求められます。
食事は、楽しい雰囲気の中で喜んでできるようにします。友達と一緒に食事をしたり、様々な食べ物を食べる楽しさを味わったりすることで、第5章の3で示されている「食育の推進」が図られるようにしていきます。授乳する時は抱いて微笑みかけながら、ゆったりとした気持ちで行います。離乳の
時期や方法については、保護者と情報を交換し、嘱託医や栄養士、調理員と相談しながら一人一人の子どもに合わせて慎重に進めます。
健康や安全等、生活に必要な基本的生活習慣や態度を身に付けることは、子どもが自分の生活を律し、主体的に生きる基礎となるものです。食事、排泄、睡眠、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなどの生活習慣の習得は、急がせることなく、子どもの様子をよく見て、一人一人の子どもにとって適切な時期に適切な援助をしていくことが大切です。保育士等は見通しを持って、さりげない援助をしながら、子どもに分かりやすい方法でやり方を示すなどして、自分でできた達成感を味わえるようにします。子どもが、自信や満足感を持ち、更にやってみようとする意欲が高められるようにしていきます。
最終更新:2009年01月10日 21:15
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