VIPで人格破綻者だらけのギャルゲーを作らないか

シナリオイメージ1-5

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hatan

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シナリオイメージ1-5


「ぁ…………ぉ…………」
耳をすまさなければ聞こえないほどの、か細い呻き。どこだ?
その呻き声を頼りに、外灯のない暗がりへと走る。
ガサッ
茂みが俺の行く手を遮る。その茂みの奥からは何かを引きずるような音。
俺は躊躇せずにその中へと突っ込む。
そこにはミラーごしに見た黒い影と、鎖に首を絞められ地面を這いずる宮磨の姿があった。
「てめえ……!!」
全体重をかけた蹴りをその背中めがけ放つ。
捕らえたはずの体。なのに俺の足は男の体に触れることなく、藪へと突き刺さる。手に持った弁当が地べたへと転がる。
「くっ……」
まるで俺の攻撃がわかっていたかのように、ひらりと俺の攻撃をかわした。
「ま……とも……?」
俺の攻撃をよけた際に鎖が少しゆるまったのか、宮磨が声を出すだけの呼吸を取り戻す。
しかし絡まった鎖はそう簡単に外れることはない。男が再びその鎖に力を入れる。
「ぐっ……にげろ……真友」
苦しそうに顔を歪めながら俺に逃げろという。
自分が命を取られようとしている時に、なぜ会ったばかりの俺の心配などできるのか。
「ふっ……!」
ここで逃げてどこへ行くというのか。俺は再び蹴りを放つ。
男は半歩だけ動きそれをいとも簡単にかわす。
2度、3度とさらに蹴りを放つ。だがその攻撃は一つたりともかすることはない。
圧倒的。多少空手をかじった程度の俺では太刀打ちできない。それほどの実力差があった。
ビュッ
「ぐっ……!」
その気後れが俺の体を後にひいた。コートを裂き、腕から血がしたたり落ちる。
男の手には鎌が握られていた。鎖が体ならば鎌は牙。それは鎖へとつながる鎖鎌。
体をひいていなければ腕は切り落とされていた。その事実に体が硬直する。
「……ぉ……っ!」
宮磨が声にならない悲鳴をあげる。そうだ、俺は後に退くわけにはいかない。
息を吸い込み……吐く……。俺は宮磨の前で立ちふさがり、再び構えをとる。
「とはいっても……」
何も手はなかった。下手に手を出せば次こそ俺は絶命するだろう。
俺が死んでは宮磨の命もなくなる。勢いだけで行動するわけにはいかなかった。
「ぁ……っ……」
宮磨の息づかいが、どんどんか細いものになっていく。時間の猶予も残り少ない。
焦る気持ちを抑え、今俺がするべきことを冷静に考える。
相手を倒すことはまず不可能だ。だとしたら宮磨をつれて逃げるしかない。
あの鎖さえなんとかできれば……。
ダッ
俺は駆けだした。男もその動きに反応し鎌を振るう。
しかし俺が向かったのは奴ではない。
パシッ
転がり落ちた激臭の弁当を拾い、そのフタをラップごと乱暴にひっぺがえす。
「くらえっ!」
空中を触手のように広がる大量の納豆とキムチとパスタの群れ。
瞬間移動でもしなければこれをかわすのは叶うまい。
男が手に持つ鎌でそれを防ごうと構えをとる。
かかった! 俺はすでに手にとっていた鎖を綱引きの要領で一気に引く。
鎌にかかった納豆のぬめりと、ペペロンチーノの油分が男の手を滑らせる。
いとも簡単に鎖鎌は男の手から俺の手へと収まる。
ここまではよし……。だが安心はできない、鎖鎌がなくても奴の実力は俺よりはるかに上だろう。
宮磨の鎖を急ぎ取り外し、地面から立たせる。
「大丈夫か?」
「はぁっ……はぁっ……! なぜ、なぜ逃げんのだ。真友には……関係なかろう」
なぜ俺は死にそうになってまでこんなことをしているのか。答えはよくわからなかった。
「お前がいったんだ……これは縁だと。それより早く逃げろ。俺じゃあいつには勝てない」
「なっ……真友を置いて逃げられるはずなかろう。わらわも一緒に戦えば……」
「無理だ。奴は普通じゃない。俺なら一人で逃げられる。だから俺が引きつきているうちに町まで逃げろ」
どこから取り出しのか、黒づくめの男はその手に二つの奇妙な短剣を手にしていた。
その曲がりくねった形状は敵に食らいつけば、死に至るまで離さない。
「行けっ!」
俺が叫ぶのと同時に男が動く。俺など眼中にないとばかりに宮磨めがけて駆ける。
ジャラッ
俺がふりまわした分銅が飛び、男の行く手を鎖が阻む。
避ける男。線や弧の動きであれば奴にかわされていたであろう。
しかし、鎖の動きは円。それを避けきることは適わない。
「早くっ!」
男の片腕に鎖が絡みつき、宮磨と引き離す。
「待ってろ。すぐ助けを呼んでくる!」
宮磨はそう言い残し、暗闇の中へと駆けていった。
ここから町まで1分ぐらいだろうか。それまで持たせる。
残念ながら助けが来る頃には俺はこの世にいないだろう。自力で逃げる方法を考えなくては……。
男が地を蹴る。一直線にその軌道は俺へと向かう。
ヒュッ
「くっ……!」
俺の頬を刃がかすめる。続けざまに男の膝蹴りが、腕の傷口へとたたき込まれる。
「ぐぁっ……くそっ!」
男との距離を離そうと鎌を振り下ろす。だが慣れない武器は、ゆっくりと空を切るだけだった。
それを身を捻っただけでいなし、短剣を俺の喉元めがけ奔らせる。
「チッ」
俺は鎖鎌をあきらめ、横へと飛ぶ。
「うっ……!」
右肩を男の短剣がえぐる。庖丁で指を切ったのとは、比べものにならない痛みが俺を襲う。
男が鎖をふりほどき、その身を自由にする。
「ぐぅ……」
一体、今何十秒たったのだろうか? それとも何秒だろうか?
とても自分が逃げる方法など考えてる余裕はない。そして俺はもう……詰みだった。
地べたを這いつくばった俺に、何を考えるのかわからない視線を投げかける。
「せめて……俺の死体は残さないでくれよ」
宮磨に知られなければ……それがせめてもの願いだった。
目をつぶり、その刃が落ちるのを待つ。白い髪の女の子にせめてもう一度会いたかった。

おしまい

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