VIPで人格破綻者だらけのギャルゲーを作らないか

シナリオイメージ1-4

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hatan

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シナリオイメージ1-4


ゲームセンターを出た俺たちは、裏路地のほうへと向かっていく。
「ふう、今日は冷えるのう」
街灯に照らされ、宮磨の白い息が空中を舞う。その横には俺の白い息があった。
「家は近いのか?」
あまり遠くは無理だが、近くならば送ろうと思った。何故そう思ったのかはわからない。
「ああ、そこの公園の先だ。すぐ近くだから心配しなくてよいぞ」
「そうか。それなら安心だな」
それっきりしばらく俺たちは無言のまま、夜道を歩く。
「……?」
なにか妙な違和感が俺の足を止める。なんだこの肌を突き刺すような感覚は。
「真友。どうしたのだ?」
「いや、なんでもない……」
しかしその正体はわからない。いつからだ。今さっきのような、ずいぶん前からのようなはっきりしない。
眼の前に広がるのは闇。街灯が心許ない明かりで道をところどころ照らしている。
「さてと、ここで十分だ。今日は世話になったな」
カーブミラーがついたT字路にさしかかる。どうやらここでお別れらしい。
「ああ、気をつけてな」
「真友もな。それではまたな」
ブンブンと手を振ると、軽やかに公園の中へと駆けていった。
公園の先に住宅街などあっただろうか?
そう首をかしげ、カーブミラーをみあげた時だった。
そこには黒い人影が映っていた。
比喩ではない。魔法使いのような黒い幅広の帽子、そして黒いローブを身にまとい、全身を黒ずくめで覆い尽くしている。
男の口にはマフラーのようなものが巻かれており、その表情は伺い知ることができない。
なにをするわけでもない。獲物を見定めるかのように、ただじっとそこに立つ。
「……!」
あわてて通りに顔を向ける。そこには薄暗い通りが静かに広がるのみ。
目の錯覚だろうか……。黒闇がみせた幻だったのかもしれない。
どうみてもおとぎ話の世界の格好だ。不思議な出会いばかりが連続し、脳が毒されたのかもしれない。
「だいぶ遅くなったな」
宮磨につきあっているうちにだいぶ時間が経ってしまっていた。すでに白い髪の女の子が起きてしまっているかもしれない。
小走りぎみに急ぎながら、俺はあの子のことを考えていた。あの子は一体なぜ俺の部屋の前に倒れていたのだろうか。
そしてなぜ血など流していたのだろうか? 何者かに襲われたのだろうか?
『また市街で女学生の失踪事件が発生しました。目撃証言もなく……』
呼び起こされる血のイメージ。いいようのない不安が俺の中を駆け巡っていた。
まさか……俺の近くでそんなことが起きるはずがない。そのような事件はテレビの中だけのものだ。
そう自分に言い聞かせる。
俺はいつでも傍観者だった。そんなことが身近に起きることに期待しながらも、起きるはずがないとも思っていた。
白い髪の少女との出会い。そして振り袖の少女……闇小路宮磨との出会い。
俺はこの半日で、起きるはずがないと思っていた事を二度も体験しいていた。
ならば俺の側でそのような事件がおきてもおかしくはない。さきほどの黒い人影も錯覚ではなかったとしたら……。
わき上がるもう一つの違和感。
宮磨のような幼い子が、なぜこんな暗い時間に一人でパンを買いにいっていたのか。
100円のパンを必死に50円にねぎろうとしていた。いくらなんでもコンビニで値切れないことなど知っていたことだろう。
それはよほど金に困っていたということなのだろう。
そして失踪した自分の兄を、この寒空の下一人で捜そうとしていた。
加えてゲームセンターさえ行ったことがないという、世間知らず。
とするならば宮磨は家に内緒で、一人でこの町に着た可能性が高い。
「公園の先は……川だ!」
俺の体は駆けだしていた。
すべてが間違いであればそれに超したことはない。馬鹿な妄想だと自分を笑えばいい。
全力で走ったのはいつ以来だったか。足が重い。冷えた体は思うように動かず、苛立ちがつのる。
息をあらげながら公園の入り口へと到着する。
小さい公園だ。宮磨がいればすぐにわかる。
しかしそこには黒い影の姿も、宮磨の姿もどこにもなかった。
「はは……」
やはり俺の妄想だったのだろう。宮磨はフェンスでも乗り越えて、近道をしただけかもしれない。
帰ろうとした俺の目の端に、外灯に照らされたベンチが映る。
その下には食べかけのパン……俺がおごったはずのパンが落ちていた。
「っ……!」
よくみればベンチの位置は争ったかのように斜めを向いている。地面には何かを叩きつけたような、いくつものくぼみ。
「宮磨!!」
俺の叫びが暗闇にむなしく響く……。

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