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110822 リビア反体制派、首都掌握か カダフィ政権崩壊不可避に [朝日]

 リビアの首都トリポリに進攻した同国反体制派部隊は21日夜(日本時間22日未明)、首都の大部分を掌握した模様だ。反体制派によると、最高指導者カダフィ大佐の後継者と目されていた次男セイフルイスラム氏が拘束された。カダフィ大佐は徹底抗戦を呼びかけているが、政権の崩壊は避けがたい情勢だ。

 2月に反政権デモが始まって半年。リビア情勢は大詰めを迎えた。

 中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどによると、反体制派の代表組織「国民評議会」(TNC)のアブドルジャリル議長は21日夜、「セイフルイスラム氏の身柄を確保した。公正な裁きにかける」と述べた。大佐の長男ムハンマド氏も拘束された。また、カダフィ大佐の警護部隊が投降したという情報もある。

 現地からの情報では、東部からトリポリに進攻した反体制派は市内の刑務所に収容されていた政治犯らを釈放しながら、カダフィ大佐の居住区兼軍事基地で、強固な地下シェルターを装備しているとされるバーブ・アジジヤ地区に迫った。トリポリ西方約50キロのザウィヤを出発した反体制派部隊も市中心部の「緑の広場」に到達。多くの市民が歓声で出迎え、政権軍側の抵抗はほとんどなかったという。アブドルジャリル議長は「カダフィ一族が投降するならば、進攻を止める」と語っている。

 カダフィ大佐は21日夕、国営テレビで電話中継とみられる音声での演説を行い、「血の最後の一滴まであきらめない。我々は絶対に降伏しない。我々は勝利する」と述べ、徹底抗戦を呼びかけた。21日深夜にも再び音声のみの演説で「トリポリを救え」と叫び、各部族に決起を求めた。

 カダフィ大佐の居どころは明らかになっていないが、反体制派司令官の一人は「トリポリ市内にいる」との見方を示した。バーブ・アジジヤ地区には地下通路があるとの情報もあり、カダフィ大佐が移動している可能性も否定できない。同地区周辺には今も政権軍が展開しているとみられ、戦闘が続く事態もあり得る。ただ、カダフィ大佐が再び情勢を掌握する可能性はほとんどないと見られる。

 カダフィ大佐の幼なじみで元側近ながら政権を離反したジャルード元首相は滞在先のローマで同日、「周囲を包囲され、カダフィはトリポリを出ることはできない。亡命するには遅すぎる。彼が生き延びることはできない。政権は長くても10日しか持たない」との見方を示した。(カイロ=貫洞欣寛)

110819 シリア弾圧の死者1900人 国連報告書「人道への罪」 [朝日]

 国連人権高等弁務官事務所は18日、シリア情勢についての事実調査報告書を公表した。治安部隊による弾圧などによる死者が1900人超にのぼり、「人道に対する罪」にあたる可能性がある、と指摘した。

 国連人権理事会(本部ジュネーブ)の決議に基づき、国際人権法の専門家らが3月15日から7月15日までの主なデモ弾圧事件を調べた。シリア政府が入国を認めなかったため、国外に逃げたシリア市民や元警察官ら180人から聞き取り調査し、50本のビデオ画像も分析した。

 22ページの報告書は、治安部隊によるデモ隊への実弾発砲や逮捕者の処刑などを「事実」として列挙。シリア大統領が解除したと表明した非常事態令も、実際にはまだ有効だと指摘した。シリア政府は国連に提出した書簡で「調査は偏っている」と主張している。(ジュネーブ=前川浩之)

110813 「宗教国家に反対」エジプト中心部でデモ 千人超参加 [朝日]

 エジプトの首都カイロ中心部のタハリール広場で12日夜、民衆革命を主導した若者グループなどが呼びかけたデモがあり、千人以上の市民が「宗教国家に反対」「真の民主国家を」と叫んで気勢を上げた。

 治安部隊に投石する参加者もいて、現場の軍将校によると、隊員と市民計10人が負傷した。

 広場では7月末、保守的なイスラム主義者が大規模な集会を開き、「エジプトをイスラム国家に」などと要求。世俗派の若者たちが反発し、対抗するデモを呼びかけた。

110811 シリアの弾圧、死者は「2千人以上」 国連安保理報告 [朝日]

 国連安全保障理事会は10日、アサド政権による反体制派デモ弾圧が続くシリア情勢をめぐり、非公開の協議を開き、国連高官が「弾圧による民間人の死者は約2千人に上り、その圧倒的多数は武装していなかった」と報告した。

 終了後、英国のパラム国連次席大使らが会見で明らかにした。クリントン米国務長官は4日、弾圧による反体制派の死者は「2千人以上に上る」との見方を示していたが、国連が裏付けた形だ。パラム次席大使らによると、国連高官はこのほかに弾圧で約3千人の市民が行方不明となり、約1万3千人が拘束されたままだ、と説明したという。

 パラム次席大使は、シリア政府は、暴力行為の即時停止を求めた3日の安保理議長声明を無視しており「この状況が続けば、安保理は追加措置を検討しなければならない」と、制裁に踏み込むよう訴えた。(ニューヨーク=春日芳晃)

110627 カダフィ大佐に逮捕状 ICC、人道に対する罪の容疑 [朝日]

 国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)の予審裁判部は27日、リビアの最高指導者カダフィ大佐ら3人に対し、人道に対する罪の容疑で逮捕状を出した。ICCが国家のトップに逮捕状を出すのはスーダンのバシル大統領に次いで2例目。これで、ICC加盟国(114カ国)は逮捕への協力義務が生じる。

 他の2人は、カダフィ大佐の次男で事実上の首相とされるセイフルイスラム氏と、大佐の義弟で諜報(ちょうほう)部門トップのサヌーシ氏。

 同予審裁判部は、3人が今年2月半ば以降、反政府デモに対する狙撃の指揮など、組織的な弾圧を続けたと信じるに足りる合理的な根拠があると判断した。5月に同検察局から逮捕状の請求を受け、逮捕状を出すかどうか検討していた。

 リビアはICC非加盟国だが、国連安全保障理事会の付託があれば、ICCの検察官が捜査できる。ただ、ICCは容疑者を逮捕する警察組織を持っておらず、リビア当局やICC加盟国の協力が無ければ実際の逮捕は難しい。

110322 多国籍軍、カダフィ氏施設破壊 米、英仏に指揮権移譲へ [朝日]

 【パリ=稲田信司、ワシントン=望月洋嗣】リビアでの飛行禁止空域設定を目的とした軍事行動を始めた米英仏中心の多国籍軍は、21日までに巡航ミサイルや爆撃機による攻撃でカダフィ大佐の防空設備や関連施設に大きな打撃を与えた。米軍は「飛行禁止空域が整いつつある」とし、リビア上空で偵察飛行を開始。作戦指揮権を数日中に英仏両国軍などに譲る方針を示した。

 多国籍軍はこれまでに、米英両軍のミサイル駆逐艦や潜水艦から、巡航ミサイル「トマホーク」124発を発射するとともに、計15機以上の爆撃機や戦闘機でミサイル発射設備や防空レーダーなどを攻撃。約20カ所の軍事施設を破壊した。作戦には米英仏のほか、イタリア、カナダ、ベルギー、カタールが参加する予定という。

 今回の軍事介入の目的は「一般市民の保護」だが、戦況の泥沼化を懸念する米国をよそに、英仏政府高官からは「カダフィ政権の打倒」の本音が漏れる。20日には、トリポリにあるカダフィ大佐の関連施設にも巡航ミサイルを撃ち込み、破壊した。多国籍軍側は英BBCに「カダフィ大佐の指揮・命令系統を破壊した」と説明している。

 米国とともにミサイル攻撃に参加する英国のフォックス国防相は20日、BBCラジオでカダフィ大佐が攻撃の標的かどうかを問われ、「潜在的な可能性はある」と回答。ヘイグ英外相は21日、「そのときの状況次第だ」とした。AFP通信によると、ジュペ仏外相は「(攻撃の目的は)リビア国民が自分たちの政権を選ぶことができるようにすることだ」と述べた。

 一方、米国は、カダフィ政権の打倒という本音が透ける英仏を横目に、軍事行動を飛行禁止空域の実施に限定する方針を強調している。ゲーツ国防長官は20日、「我々は国連安保理決議の範囲内で行動することが大切だ。達成できるかどうか分からない目標を設定することは、賢明ではない」と述べた。

 アフガニスタンとイラクという「二つの戦争」に15万人にのぼる米兵を投入するゲーツ長官は、リビアでの軍事介入が泥沼化することに強い警戒感を示してきた。地上軍は投入せず、数日中に指揮権を英仏や北大西洋条約機構(NATO)に譲り、舞台裏に回る意向を明らかにした。

 ただ、米英仏による攻撃にもかかわらず、カダフィ政権が存続する場合、反政府勢力への弾圧が激しさを増す可能性は高い。「米国が傍観しているわけにはいかない」(オバマ米大統領)という事情は変わらない。

 米統合参謀本部のゴートニー海軍中将は20日、「彼(カダフィ大佐)が標的リストに載っていないと保証する」と明言しつつ、「彼が(多国籍軍が標的とする)地対空ミサイル設備にいたとしても確認はできない」とも述べ、カダフィ氏の放逐に淡い期待をのぞかせた。

110320 リビアへの軍事介入 ロシア・中国が遺憾の意を表明 [朝日]

 【パリ=稲田信司】米英仏を中心とする多国籍軍がリビアへの軍事行動を開始したことに対し、ロシアや中国が20日までに遺憾の意を表明し、アフリカ連合(AU)は即時停戦を要求するなど、国際社会の賛否が割れている。「リビア国民を救う」という大義の裏に透けてみえる「カダフィ政権の打倒」という多国籍軍側の本音に、不信感があるからだ。

 攻撃が開始された19日、ロシア外務省のルカシェビッチ報道官は「軍事行動は遺憾である」との声明を発表し、リビアのすべての当事者や戦闘参加者に対し、一般市民への被害防止と早期停戦のために努力をするよう求めた。同報道官は20日には、多国籍軍の攻撃によって民間人に死傷者が出ているとして「節度なき軍事力行使の停止」を呼びかける声明を出した。

 20日には、中国も姜瑜・外務省副報道局長が「リビア情勢が早く安定を取り戻し、武力衝突のエスカレートによる多くの一般市民の死傷が回避されることを希望する」との談話を発表し、多国籍軍を非難はしなかったものの、否定的な考えを示した。

 多国籍軍による軍事介入の大義について、フランスのサルコジ大統領は19日、パリ首脳級国際会議直後の事実上の「開戦宣言」で「殺意の狂気に満ちた政権から一般市民を守るため」と説明。英国のキャメロン首相も同日、「独裁者(カダフィ大佐)が自国民を殺すのを放置しておくわけにいかない」と述べた。

 リビアは主権国家であり、外国が政治指導者の交代を強制することは国際法上難しい。そこで、カダフィ氏が自国民保護の責任を果たさず、人権を侵害しているという論理で軍事介入を認める国連安保理決議にこぎ着けた。

 だが、米英仏をはじめ多国籍軍の多くの国はすでに、最高指導者カダフィ大佐に退陣要求を突きつけている。フランスに至っては、反体制派でつくる「国民評議会」を正式に認知し、カダフィ政権と断交した。軍事介入の真の狙いはカダフィ氏を追い落とすことにあるとの見方が強い。

 アフガニスタンで多くの兵士が死亡し、軍事介入に懐疑的な世論が強いドイツは、軍事行動に関しては同盟国である米英仏と距離を置いた。

 英仏などが軍事介入への支持を強く迫っていたAUも、リビア問題委員会が20日、「深刻な人道問題を招く」として、攻撃の即時停止を求める声明を発表した。リビアがAU予算の約15%を負担する有力国であることへの配慮に加え、体制変革という目的がちらつく軍事介入への警戒感もあるとみられる。

110320 仏戦闘機、リビア政府軍車両を攻撃 米英も軍事介入  [日経]

 【パリ=古谷茂久】フランス軍参謀本部は19日、仏軍の戦闘機がグリニッジ標準時同日午後4時45分(日本時間20日午前1時45分)、リビアの反政府勢力の拠点ベンガジ付近でリビア政府軍の車両数台を攻撃したと発表した。国連安全保障理事会の決議を受け、カダフィ政権に対するはじめての軍事行動となる。

 参謀本部によると作戦はベンガジ周辺の100~150キロ四方の区域で実施した。戦闘機ラファールやミラージュ2000のほか空中警戒管制機など約20機が参加した。ロイター通信によると標的はカダフィ政権側の戦車と装甲車だったという。

 仏本土では追加作戦に向け戦闘機などが待機している。このほか仏海軍の原子力空母「シャルル・ドゴール」も20日に同国南部トゥーロンからリビア沖へ向け出港する。フリゲート艦2隻もリビア沖へ向かう予定。ジュペ仏外相は19日夜(日本時間20日未明)、テレビに出演し「リビアの現政権が国連安保理決議に従うまで、攻撃は数日は続くだろう」などと語った。

 このほか英キャメロン首相は19日夜、英国軍がリビアで軍事行動に入ったと発表した。キャメロン首相は軍事行動について「必要であり、法的に正当だ」などと述べた。英仏に続きカナダや米国軍なども作戦に合流する見通しだ。

 これに先立つ19日午後(日本時間同日夜)、英仏独の首脳のほかクリントン米国務長官、潘基文(バン・キムン)国連事務総長、アラブ連盟のムーサ事務局長、アフリカ連合の代表らがパリに集まりリビア問題について協議。軍事介入は不可避との認識で一致した。

110226 リビア首都、市街戦へ動き活発化 カダフィ氏住居に戦車 [朝日]

 【カイロ=山本大輔】リビアの最高指導者カダフィ大佐が演説で徹底抗戦を呼びかけたことを受け、首都トリポリでは26日、カダフィ氏を支持する市民らが武装を始め、市内各所に検問所が設置されるなど、市街戦に向けた準備とみられる動きが活発化している。AP通信が住民らの話として伝えた。

 武器は車や現金などとともに政権側が提供しているといい、武装した市民らが治安部隊とともに市内のパトロールを始めているという。衛星テレビ局アルジャジーラは、カダフィ氏が住居兼司令部として使っている首都郊外の「アジジーア門」の兵舎に複数の戦車が配備され、厳戒態勢が敷かれたと報じた。

 現地からの報道によると、カダフィ氏が徹底抗戦を呼びかけた25日の演説後、トリポリ市内では同日夜から26日未明にかけ、ビル屋上などに狙撃手などが配置され、複数の地区で銃声が響いた。首都の一部地域はすでに反体制派の支配下にあるとの情報もある。

 また、AP通信によると、首都の東200キロのミスラタ近郊にある空軍基地では、政権側が動員した戦車部隊が攻撃をしかけ、反体制派から基地の一部を奪還するなど、攻防戦が激化しつつある。

 こうした事態を受け、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は25日、リビア情勢について触れ、「2週間足らずの間に1千人を超える人たちが殺された」と指摘。「この数日でリビアやその国民の未来が決まるだろう」と語った。

 一方、リビアの旧宗主国イタリアのベルルスコーニ首相は26日、ローマの政治集会で「カダフィ大佐はもはや国をコントロールしていないように見える」と語り、体制崩壊間近との認識を示した。

110212 スイス、ムバラク氏一族の資産凍結指示 5兆円報道も [朝日]

 【カイロ=前川浩之】エジプトのムバラク大統領が辞任したことを受け、ムバラク氏の巨額の金融資産が存在する可能性が取りざたされてきたスイスが11日、ムバラク氏と家族、ムバラク氏側近ら12人を対象に、スイス国内の銀行などにある資産を最大3年間凍結する政令を出した。「国有財産の横領を防ぐため」としている。

 カルミレイ大統領が11日付で政令を出した。ムバラク氏や次男ガマル氏ら一族7人のほか、国外逃亡が疑われているマグラビ前住宅相や、人権侵害の疑いで訴追準備が進むアドリ前内相ら政権幹部5人の計12人を名指しし、スイス国内のすべての金融機関に調査と、判明した銀行口座の預金や有価証券などのすべてを凍結するよう命じた。

 スイス政府は「額は確定していない」とした。英紙ガーディアンは2月初旬、中東専門家の話として、ムバラク一族が持つスイスの口座や英ロンドンの不動産などの資産の合計は最大約700億ドル(約5兆8千億円)と推定されると報じている。

 スイスの銀行は、顧客情報を第三者に漏らすと刑事罰になる銀行法を悪用した途上国の独裁者らの資金の受け皿になってきた。イメージ改善を図るため、スイスは今年から新法を施行。凍結資産の持ち主の国家元首らが、国有財産横領で有罪とされた場合などには、その国の国民に還元できる仕組みを導入した。

 今回のムバラク氏の資産を巡っても、スイス政府は新法に基づいて今月初めに調査を開始。資金の出入りを監視し、辞任時の凍結に備えていた。先月には、民衆デモで倒されたチュニジアのベンアリ前大統領や、選挙結果を受け入れずに居座るコートジボワールのバグボ大統領の資産も同様に凍結している。

110212 ムバラク大統領が辞任 エジプト軍、権限掌握 [朝日]

 【カイロ=貫洞欣寛、古谷祐伸】エジプトのスレイマン副大統領は11日、ムバラク大統領が辞任し、軍の最高評議会に権限を渡したと発表した。ムバラク氏は10日夜(日本時間11日朝)にテレビ演説し、大統領としての権限をスレイマン副大統領に移譲すると発表。同時に、大統領としての地位にはとどまる意向を示していた。だが、即時辞任を求める大規模デモが11日も起き、激しさを増したことなどから、辞任を決断したとみられる。

 スレイマン副大統領は「ホスニ・ムバラク大統領は辞任を決め、国家運営のための権限を軍最高評議会に移譲する」と述べた。

 中東の地域大国エジプトで5期30年にわたり強権支配を続けてきたムバラク氏が大衆行動によって追いつめられ、退陣したことは、今後の中東各国の情勢に大きな影響を与えることになるとみられる。カイロ市内では発表直後、一斉に車のクラクションが鳴り、タハリール広場のデモ隊は歓声を上げて大騒ぎとなった。

 エジプト憲法では、大統領が辞任して空位となったり、永続的に職務執行が不可能となったりした場合は、人民議会議長か憲法裁判所長官が権限を代行する規定となっており、軍部が憲法を一時的に停止する可能性がある。スレイマン氏は、自らの処遇については触れなかった。

 ムバラク氏は10日のテレビ演説で、「憲法規定に従い、権限を副大統領に移譲する」と述べる一方、「責任を担い続ける」「(任期の)9月までの間に権力の平和的な移行を進める」と語り、今後も大統領の座にはとどまる考えを示していた。さらに「私はこの国で生まれ、この国で死ぬ」と述べ、メディアなどで取りざたされている「辞任後出国する」との見方を否定した。スレイマン副大統領も演説で、デモ隊は帰宅し、職場などに戻るよう呼びかけた。

 一方、エジプト軍最高評議会は11日、声明を発表し、(1)混乱収束後直ちに非常事態令を解除(2)総選挙の結果に関する不服申し立ての受理(3)憲法改正(4)自由で公正な大統領選挙の実施――を保証するとした。さらに、権力移行が完結するまでは市民の要求に真剣に向き合い、デモ参加者を訴追しないことなどを確約した。

 だが、ムバラク氏の即時辞任を求める野党勢力やデモに参加する市民らは大統領演説に猛反発。11日のイスラム教金曜礼拝後に「勝利の金曜日」と名付けた大規模デモを行った。退陣要求デモの拠点、カイロ中心部タハリール広場には20万人を超えるとみられる市民が集まり、北部アレクサンドリアなど各地でデモが行われた。

 スレイマン副大統領に対しては「最側近としてムバラク強権体制を支えてきた」との批判があり、辞任を求める声も強かった。スレイマン氏が今後も副大統領など政府の顔として残った場合、抗議デモが沈静化するかどうかは不透明。

 アルジャジーラなどによると、ムバラク氏は11日、家族とともにシナイ半島の紅海に面した高級リゾート地、シャルムエルシェイクに入ったという。シャルムエルシェイクはムバラク氏の肝いりで開発が進められ、各種の外交交渉や国際会議を誘致。ムバラク氏は昨春ドイツで「胆嚢(たんのう)の摘出手術」を受けた後、しばらく同地で静養していた。

 今年に入りムバラク即時退陣を求めるデモが続くようになってから、米国政府筋などの情報として「スレイマン副大統領に権限を移譲し、ムバラク氏はシャルムエルシェイクかドイツで静養生活に入る」との観測が出ていた。

110131 米、ムバラク政権離れ 「新政府移行を支持」表明 [朝日]

 【ワシントン=望月洋嗣】エジプト情勢をめぐり、オバマ米大統領はトルコ、イスラエル、サウジアラビア、英国の首脳と電話で会談し、「エジプト国民の願望に応じる新政府への秩序ある移行」を支持する考えを伝え、協力を求めた。ホワイトハウスが30日に発表した。一連の事態で、米政府が新たな政治体制への「移行」の支持を表明したのは初めて。

 会談は29、30両日に行われた。30年にわたって支えてきたエジプトのムバラク政権と距離を置き、抗議活動を主導する野党勢力を含む包括的な新政権づくりを後押しする方針が鮮明になった。米政府が、ムバラク氏の政権維持が困難になりつつあるとの見方を強めている可能性がある。

 クリントン米国務長官も30日、米3大ネットワークとCNNなど二つのニュース専門局の報道番組に相次いで出演し、ムバラク政権について、民主的な政権への「秩序ある移行を望んでいる」との考えを示した。

 クリントン氏は、ムバラク大統領が初の副大統領を任命したことについて「米国が30年来求めてきたことを危機に直面してようやく実現した」と指摘。「ムバラク氏と街頭で抗議する人々のどちらを支持するか」との問いには「すべてのエジプト国民」と応じ、ムバラク政権を突き放した。

 ただ、新体制についてはエルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長ら特定の名前には触れず、ムスリム同胞団などイスラム色が強い勢力の台頭には警戒感を示した。

110130 エジプト、事実上の無政府状態 軍が治安維持にあたらず [朝日]

 【カイロ=貫洞欣寛、石合力】ムバラク大統領の辞任を求めてエジプト全土に広がっている民衆デモは29日、政府の外出禁止令を無視する形で継続、首都カイロでは略奪が起きるなど、事実上無政府状態に陥った。カイロ中心部などには、軍兵士が戦車などとともに多数配置されているが、治安維持には当たっていない。

 ムバラク氏は同日夕(日本時間30日未明)、副大統領に側近で軍出身のオマル・スレイマン情報長官を充てると発表した。1981年の大統領就任以来、ムバラク氏が副大統領職を置くのは初めて。9月の大統領選に向けた事実上の後継指名といえる。新内閣の首相には、アハメド・シャフィク前民間航空相を指名した。

 カイロ・タハリール広場での抗議デモの参加者の一部からは、スレイマン氏の人事を歓迎する歓声が上がった。一方、ムバラク氏側近による後継を望まず、大統領の即時辞任を求める意見もあり、デモが沈静化するかはなお不透明だ。

 AFP通信によると、民主化指導者のエルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長は同日、「抗議はムバラク氏が退陣するまで続くだろう」と述べた。エジプト出身の宗教指導者でスンニ派に大きな影響力を持つカラダウィ師も同日、ムバラク氏の即時辞任を求めた。

 デモは5日目の29日、政府の外出禁止令が午後4時から午前8時に拡大された後も続き、タハリール広場には5万人以上が集まり大統領の辞任を要求。中東の衛星テレビ、アルジャジーラによると、29日までにカイロ、アレクサンドリア、スエズなどで少なくとも計120人が死亡、1千人を超す負傷者が出た。

 29日午後現在、カイロ中心部やアレクサンドリアなどでは、これまでデモの規制に当たっていた制服警察官の姿がほとんど見られなくなった。デモ隊との衝突回避のため、一部地域から警官が撤収したとの見方も出ている。治安の空白化に伴って、商店の略奪や放火、強盗なども相次ぎ、都市部では混乱状態が広がっている。交通整理の警官もほとんど見られない。

 軍は政府関係施設などの警備に当たっているものの、犯罪抑止やデモの制圧には、ほとんど関与していない模様だ。

 28日早朝から途絶えていたインターネット、携帯電話網のうち、携帯は29日午前、徐々に接続を再開した。インターネットが再開されれば、フェイスブックなどを通じた呼びかけでデモの勢いがさらに増すことも予想される。

 世界的な観光地として人気があるカイロ中心部のエジプト考古学博物館と、近郊ギザの3大ピラミッド地区は29日、閉鎖された。

110129 エジプト全土の反政府デモ、与党本部から出火 [朝日]

 【カイロ=北川学、貫洞欣寛】ムバラク大統領の退陣を要求する反政府デモが続くエジプトで28日午後(日本時間同夜)、イスラム教の金曜礼拝後の「怒りの金曜日」と名付けた大規模な抗議行動が始まった。千人を超える規模のデモが各地で起き、治安当局と衝突。少なくとも市民2人の死亡が報じられた。治安当局はモスク(イスラム礼拝所)周辺に大量の治安要員を配置し、抑え込みを図ったが、デモには各地で計数万人が加わり、25日に始まって以来、最大規模となった。

 国営テレビは28日、ムバラク大統領が首都カイロや北部アレクサンドリア、東部スエズの3都市に午後6時から翌日午前7時まで外出禁止令を出したと報じた。治安部隊のほか、軍にも出動命令が出された。

 カイロ近郊のギザではデモに2千人が参加、制圧に乗り出した治安部隊が空中に向けてゴム弾や催涙弾を発射、放水銃も使われた。

 中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、ギザのデモには、エジプトの民主化を訴えて27日に帰国した国際原子力機関(IAEA)前事務局長でノーベル平和賞受賞者のエルバラダイ氏が参加した。しかし、同氏が礼拝したモスクの周辺を複数の治安当局者が取り囲み、移動を阻止した。AP通信は治安当局者の話として、同氏が軟禁されたと報じた。

 カイロでは治安部隊が、主要道路や広場の周辺を封鎖。催涙弾を放ち、数百人規模のデモ隊同士が合流するのを阻もうとした。これに対し、デモ参加者は投石などで抵抗した。警察署2カ所が放火されたという。ムバラク政権の与党、国民民主党の本部から出火した。また、アルジャジーラによると、中心部では治安部隊の発砲した催涙弾の直撃を受けた少女が死亡した。

 AFP通信は、デモが始まった25日から27日までに市民5人、治安部隊員2人の計7人が死亡し、100人以上が負傷したと伝えているが、28日のデモを受け、死傷者がさらに増えるのは確実だ。

 エジプト当局は同日未明からインターネットと携帯電話を遮断した。デモを呼びかけた市民グループ「4月6日運動」のフェイスブックのファンページには8万人以上が登録しているが、当局はデモを阻止するため、市民らが連絡を取り合えないよう通信の制限に踏み切ったようだ。

 当局はさらに、国内最大の野党勢力「ムスリム同胞団」の幹部らを相次いで逮捕し、デモの規模拡大を防ごうとした。これに対し、ムスリム同胞団は全土でデモへの参加を訴えた。


110118 「アラブ初の民衆革命だ」チュニジア、軍と市民連帯も [朝日]

 【チュニス=貫洞欣寛】ベンアリ大統領による23年の強権支配が倒れたチュニジアの首都チュニスの街に17日入ると、路面電車や一部の企業、商店が営業を再開し、徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。だが、目抜き通りには戦車や装甲車が並び、緊張感が漂う。

 チュニス名物の白壁の家々の多くは、水色に塗られた雨戸を閉ざしたまま。一方、大通りのカフェのいくつかは、扉を開き始めた。与党・立憲民主連合本部に掲げられていたベンアリ前大統領の写真は外されている。タクシー運転手(52)は叫んだ。「ほらごらん。もうベンアリとはおさらばだ。アラブ初の民衆による革命が起きたんだ」

 14日に大勢の市民が取り囲み、ベンアリ大統領の即時退陣を求めた内務省は、チュニス中心部の目抜き通り、ハビブ・ブルギバ通りにある。商店や高級ホテルが並ぶ一等地だ。建物周辺は、有刺鉄線で覆われ、厳戒態勢が敷かれている。

 中年の男性が近づいて行き、警備に立つ兵士にコーヒーを振る舞った。「軍の兵士は市民の味方だ」。ベンアリ前大統領は大規模なデモが発生すると、突然14日に国外脱出した。「軍がベンアリ氏を見限ったからだ」。そんな見方を多くの市民が口にした。

110115 チュニジア大統領がサウジに脱出、強権政権が崩壊 [朝日]

 【カイロ=貫洞欣寛】大規模な反政府デモが続いていたチュニジアで14日、ベンアリ大統領(74)が国外に脱出、23年続いた強権政権は崩壊した。デモが激化し、多数の死傷者が出る中、政権の維持は不可能と判断したとみられる。ガンヌーシ首相(69)が同日、大統領権限を暫定的に引き継ぐことを宣言した。ベンアリ政権を支えてきたガンヌーシ氏に拒否反応を示す市民は多く、情勢が沈静化するかどうかは不透明だ。中東には強権的な長期政権が多く、影響が広がる可能性もある。

 AFP通信などによると、ベンアリ氏と家族を乗せた航空機は15日未明、サウジアラビアのジッダに到着した。事実上の亡命とみられる。

 チュニジア全土には14日、非常事態宣言と戒厳令が出され、空港も閉鎖された。チュニスなどでは深夜になって中心街から人通りが消えたとの情報もあるが、散発的に銃声が聞かれ、略奪なども起きている模様だ。

 先月中旬、高い失業率や物価高に抗議するために始まったデモは、治安当局が強圧的に鎮圧を図ったため、猛反発を招き、雪だるま式に参加者を増やしながら各地に広がった。批判の矛先は強権体制を敷いてきたベンアリ氏に向かい、退陣を求める声が高まった。警官隊との衝突により、政府発表で23人、人権団体の集計で60人を超える死者が出た。

 ベンアリ氏は当初、デモを「テロ行為」などと批判していたが、12日に内相の更迭を発表。13日にはテレビ演説し、言論の自由を拡大することや食料品の価格引き下げ、任期が切れる2014年に引退することなどを約束、事態の沈静化を図った。

 しかし国民の抗議は抑えきれず、14日には数千人が内務省を包囲してベンアリ氏の即時退陣を求めた。ベンアリ氏は同日夕、全閣僚の更迭と半年以内の選挙実施を発表したが、間もなくベンアリ氏が国外脱出したとの報道が流れ、ガンヌーシ首相が暫定的に大統領権限を引き継ぐと発表した。

 ベンアリ氏は軍情報部出身。首相となった1987年、事実上の無血クーデターで約30年にわたり政権の座にあったブルギバ大統領を追い出し、大統領に就任。各地に秘密警察員を配置したり、政治活動の自由を制限して政敵を拘束したりする強権的な手法で5期23年にわたり政権を維持してきた。

 ガンヌーシ氏は87年にベンアリ氏が政権を掌握後、政権に加わり財務相に就任。99年から首相としてベンアリ政権を支えてきた。ガンヌーシ氏に反発する声も強く、15日にはガンヌーシ氏退陣を求めるデモがあるとの情報もある。

100903 中東和平交渉、2週間に1度開催で合意 今後1年間 [朝日]

 【ワシントン=望月洋嗣、井上道夫】イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長は2日、パレスチナ和平についての直接交渉をワシントンで再開し、今後1年間にわたり、2週間に一度のペースで交渉を続けることで合意した。次回は14、15日に中東で会談し、クリントン米国務長官も駆けつける見通しだ。

 両首脳は米国務省でクリントン長官を交えた3者会談をした後、1年9カ月ぶりの直接交渉に臨んだ。同長官は3者会談を前に声明を読み上げ、「我々は過去にも交渉のテーブルについており、先行きがどれだけ困難かを知っている」と述べつつ、両当事者に忍耐強い交渉を要請。「我々は核心の課題を1年以内に解決できる」と訴えた。

 これに対し、ネタニヤフ氏は「永続的な本当の和平は、互いに痛みを伴う譲歩によってのみ達成できる。核心的な課題で合意せねばならない」と述べ、境界画定などに取り組む姿勢を表明。「紛争は1世紀近く続いている。終止符を打つための前例のない機会だ」と呼びかけた。

 アッバス氏も「1年以内に和平合意につなげるべきだ」と主張。一方で「イスラエル政府は(占領地での)すべての入植活動を停止し、あらゆる挑発行為をやめるべきだ」と求めた。

 AP通信によると、次回会合はエジプトのリゾート地シャルムエルシェイクで行われる見通し。最終的な合意に向けて、双方が歩み寄るべき重要課題の確定を目指す。当面、境界画定や聖地エルサレムの帰属問題などを含む個別課題のどれを議題とするかで、一致点をさぐることになるとみられる。

 イスラエルは、ヨルダン川西岸での入植活動を9月26日まで一部凍結している。パレスチナは凍結の継続を求めており、この期限までに開かれる直接交渉で、イスラエルがこの要請に応じるかが、当面の焦点になる。

100823 難民帰還権放棄、和平合意の原則に イスラエル首相表明 [朝日]

 【エルサレム=井上道夫】イスラエルのネタニヤフ首相は22日、9月初旬に再開するパレスチナとの直接和平交渉について、パレスチナ難民の帰還権放棄などを和平合意の原則とする方針を改めて示した。

 ネタニヤフ氏は、同日の閣議で直接交渉に臨む政府の方針を確認。和平合意の原則として(1)イスラエルの安全保障の確保(2)パレスチナ側がイスラエルを「ユダヤ人国家」として認めること(3)パレスチナ国家の非武装化、を掲げた。(2)は、イスラエル建国に伴い発生したパレスチナ難民が、現在、イスラエル領になっている故郷に戻ることを同国が拒否するもので、パレスチナ側は反発している。

 一方、パレスチナのマアン通信によると、アッバス自治政府議長は同日、中東和平を仲介する米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連の各首脳に書簡を送り、「入植と和平は、決して両立しない」と指摘。イスラエルが占領地ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植を続けた場合、交渉を打ち切る方針を伝えた。

 イスラエルは米国の要請で昨年11月から西岸での新規入植住宅の建設を停止しているが、9月下旬にその期限が迫っている。ネタニヤフ政権内の右派は期限延長を認めない姿勢を示しており、ネタニヤフ氏の対応が注目される。

100816 イラン核兵器、世論過半数「好ましい」 中東など6カ国 [朝日]

 【ワシントン=村山祐介】米メリーランド大学などが中東・北アフリカ6カ国で実施した年次世論調査で、イランの核兵器保有が中東にとって「好ましい」と答えた人が初めて半数を超えた。同大はオバマ米大統領への失望が対立するイランへの共感になって表れた、と分析している。

 イランの核兵器保有の影響を尋ねたのは2008年からで、今回が3回目。今年は「好ましい」とする回答が57%に達し、昨年の29%から倍増した。別の問いでは「イランには核開発の権利がある」とする答えが77%に上り、「開発停止への圧力」を支持する回答は20%にとどまった。オバマ政権の中東政策全般については「失望した」が63%で、「期待できる」とした16%を圧倒した。

 同大のテルハミ教授は米メディアに「オバマ大統領への期待が消えて反米感情に結びつき、『敵(米国)の敵(イラン)』への支持になった」と指摘した。調査は同大と米世論調査機関ゾグビー・インターナショナルが6月29日~7月20日、エジプトとヨルダン、レバノン、モロッコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)で実施し、計3976件の回答を得た。

100601 イスラエル軍とガザ支援船が衝突 支援船の10人死亡 [朝日]

 【エルサレム=井上道夫、カイロ=貫洞欣寛】イスラエル軍は31日、地中海上で、パレスチナ支持の人権活動家らが乗った船団を拿捕(だほ)する作戦を実施、同軍によると船団の10人以上が死亡した。

 船団側は、パレスチナ自治区ガザへ支援物資を届けるため人道目的で航行していたと主張している。だが、軍報道官は「刃物を持った船団側のメンバーが兵士を襲い、奪った銃2丁で発砲した」と説明し、正当防衛として武力を行使したと説明している。

 衝突の中で、兵士7人を含め、数十人の負傷者も出た模様だ。イスラム組織ハマスが実効支配するガザについて、イスラエルは境界封鎖を続けており、国連などが人道上の理由で封鎖解除を求めてきた。人道支援を掲げてガザ入りを目指した船団に死傷者が出たことで、国際社会からの批判が高まるとみられる。

 船団は、トルコや欧州などの人権活動家、政治家ら600人以上が6隻の船に分乗。セメントや医療機器など約1万トンを積んでいた。

 イスラエル軍は、ヘリコプターから降下、乗船した部隊が船を拿捕する過程で衝突が起きたと主張している。軍報道官は作戦実施場所を「公海上だった」と説明した。

 船団を送った国際人権団体の一つの広報担当は朝日新聞の取材に「イスラエル兵らは突然、私たちの船を襲ってきた。我々が武装していたなんてばかげている」と答えた。

 イスラエル政府はハマスが2007年6月にガザを武力制圧して以来、「ハマスによる武器搬入を防ぐため」との説明で境界封鎖を強化。国連機関などは「人道上の問題」として封鎖解除を求めている。

 事件を受けてイスラエルのネタニヤフ首相は31日、1日の訪米予定を中止し、訪問先のカナダから急きょ帰国することを決めた。首相府の報道官が確認した。

 首相は1日にオバマ米大統領と会談する予定だった。先週末に閉会した核不拡散条約(NPT)再検討会議で、条約非加盟だが核保有が確実視されるイスラエルの加盟を求める内容の最終文書が採択されたことなどを受け、米国と協議するとみられていた。

 一方、AFP通信によると、国連の安全保障理事会は31日、同日中にも緊急会合を開き、事件について話し合うことを決めた。

0322 イスラエル、占領地の入植住宅建設続ける方針 米に書簡 [朝日]

 【エルサレム=井上道夫】イスラエルのネタニヤフ首相は21日の閣議で、占領地東エルサレムでの入植住宅建設を今後も続ける方針を、パレスチナ和平を仲介する米国に伝えたことを明らかにした。

 ネタニヤフ氏は住宅建設について「歴代政権の政策と変わりはない。我々の見解では、首都(エルサレム)での住宅建設は、テルアビブで住宅を建てるのと変わらない」と述べ、この見解をクリントン米国務長官に書簡で伝えたという。

0322 イスラエル軍と衝突 発砲されパレスチナ人4人死亡 [朝日]

 【エルサレム=井上道夫】ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ナブルス近郊で20日から21日にかけて、パレスチナ人住民とイスラエル軍が衝突し、少年2人を含むパレスチナ人計4人が死亡した。

 イスラエルが占領する西岸や東エルサレムでは、同国政府の入植住宅建設計画などに反発するパレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突が相次いでいる。死者が出たことで騒動が広がる恐れがあり、米仲介のパレスチナ和平交渉に影響が出る可能性もある。

 20日午後、ユダヤ人入植地に反対するパレスチナ人と同軍が衝突し10代の少年2人が死亡。2人が搬送された病院の医師によると、1人は胸部を撃たれ、もう1人は頭部に銃弾が残っていたという。21日には、パレスチナ人2人がイスラエル兵に射殺された。

 イスラエル軍は20日の衝突について、「暴動を鎮圧するためにゴム弾を使用した」とする声明を発表し、実弾の使用を否定した。ただ、衝突時の状況を調査するとしている。21日の事件は「パトロール中の兵士をパレスチナ人が刺そうとしたので発砲した」と説明した。

 アッバス・パレスチナ自治政府議長は市民に自制を促しているが、西岸や東エルサレムだけでなく自治区ガザの武装勢力も動き出している。パレスチナ解放機構(PLO)の幹部の一人は、「イスラエルの挑発行為が続けば、インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)につながる恐れがある」と指摘する。

 パレスチナ和平を促すため西岸を訪問した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は20日、自治区ラマラで会見し、「占領地での入植活動は違法」と指摘して、イスラエル政府に入植を停止するよう訴えた。


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