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■公害06Ⅰ

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0611 「水俣病不知火患者会」与党の救済策拒否、訴訟継続へ [読売]

 水俣病の健康被害を巡り、国などを相手取り損害賠償請求訴訟を起こしている「水俣病不知火患者会」(約1700人)は11日、熊本県水俣市で集会を開き、自民、公明両党の水俣病問題プロジェクトチーム(PT)が検討を始めた1995年の政治決着並みの救済策について、受け入れを拒否し、訴訟を継続することを決めた。

 現在、水俣病の認定申請者団体は同患者会を含めて四つあるが、受け入れ拒否を決めたのは初めて。

 95年の政治決着に伴う救済策は、260万円の一時金支給などが柱。集会では、患者会から「水俣病と認定されないままでは救済策は受け入れられない」「95年の政治決着は国、県の責任があいまい」などと救済策への批判が相次ぎ、「問題解決のためには公平、公正な司法救済しかない」との結論で一致した。

 同患者会を除く認定申請者3団体のうち、2団体は救済策の受け入れを決め、別の1団体は受け入れない方針で訴訟の準備を進めている。

(2006年6月11日20時42分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060611i112.htm

0608 公害被害 救済まだ 総行動30周年、政府に要請 [赤旗]

 ことし三十周年をむかえた全国公害被害者総行動が六日、東京・霞が関の官庁街で二日間の日程でとりくまれました。全国から病をおして集まったぜんそく患者や公害・薬害被害者やその家族、支援団体のスタッフら約千人が、公害根絶・被害救済と平和を求めて環境省周辺をデモ行進し、関係省庁と交渉しました。

 「どうか私のような悲しい思いをだれにもさせないで」と涙ながらに、江田康幸環境省副大臣との交渉で訴えたのは、東京大気汚染裁判原告の吉澤ヨシエさん(65)=東京・北区=。「交通量の多い沿道で、一日中排ガスにさらされ、気管支ぜんそくになりました。息ができず、意識不明になったこともある。生死をさまよっていたとき妊娠中で、しかたなく中絶した]]と声をつまらせます。

 全国公害患者の会連合会の松光子代表幹事は「命綱の公害健康被害補償法を拡充し、浮遊粒子状物質(SP2・5)の環境基準設定を」と求めます。

 熊本県天草市の御所浦島から上京した「水俣病不知火患者の会」の女性(69)も「きりでさされるような痛みで、心臓が止まるのではと恐怖にかられてきた」と訴えました。園田昭人ノーモア・ミナマタ国際訴訟弁護団長は「一昨年の最高裁判決で、今度こそ救済されると期待したが裏切られた。水俣病と認めて救済すべきだ」と迫りました。

 カネミ油症事件弁護団の吉野高幸弁護士は「発生から三十八年がたった現在でも、カネミ油による被害者は、病気に苦しめられ救済されていない」として救済対策を求めました。

 約六万人分の公害根絶八項目の署名を受け取った江田副大臣は「水俣病の拡大防止ができなかったことをおわびします。すべての被害者に行政責任をはたす」と答えました。

総決起集会で仁比議員が激励
 六日夜、日比谷公会堂で開かれた総決起集会では、大気汚染、米軍基地騒音、ダム・道路など無駄な公共事業ストップ、薬害問題にとりくむ全国の住民団体代表や公害被害者など百八十一団体、約千二百人が一堂に会して交流。憲法改悪・米軍基地再編が、平和と人権・環境をおびやかすものだと批判する「集会アピール」を採択しました。

 日本共産党の仁比聡平参院議員は、「戦争は最大の環境と人権破壊であり、『戦争する国』にする憲法改悪に反対するとともに、公害根絶と被害者救済に力をつくす」と激励のあいさつをしました。
URL:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-06-07/2006060714_01_0.html

0604 ディーゼル排ガス:胎児に影響、自閉症発症の可能性 [毎日]

 ディーゼル自動車の排ガスを妊娠中のマウスに吸わせると、生まれた子供の小脳にある神経細胞「プルキンエ細胞」が消失して少なくなることが、栃木臨床病理研究所と東京理科大のグループによる研究で分かった。自閉症では小脳にプルキンエ細胞の減少が見られるとの報告もある。ディーゼル排ガスが自閉症の発症につながる可能性を示す初めての研究として注目を集めそうだ。16日にカナダのモントリオールで開かれる国際小児神経学会で発表する。

 研究グループは、妊娠中のマウスに、大都市の重汚染地域の2倍の濃度に相当する1立方メートル当たり0.3ミリグラムの濃度のディーゼル排ガスを、1日12時間、約3週間浴びせた後に生まれた子マウスと、きれいな空気の下で生まれた子マウスの小脳をそれぞれ20匹ずつ調べた。

 その結果、細胞を自ら殺す「アポトーシス」と呼ばれる状態になったプルキンエ細胞の割合は、ディーゼル排ガスを浴びた親マウスから生まれた子マウスが57.5%だったのに対し、きれいな空気の下で生まれた子マウスは2.4%だった。また、雄は雌に比べ、この割合が高かった。人間の自閉症発症率は男性が女性より高い傾向がある。

 さらに、プルキンエ細胞の数も、排ガスを浴びたマウスから生まれた子マウスに比べ、きれいな空気下で生まれた子マウスは約1.7倍と多かった。

 菅又昌雄・栃木臨床病理研究所長は「プルキンエ細胞の消失などは、精神神経疾患につながる可能性がある。ヒトはマウスに比べ胎盤にある“フィルター”の数が少ないため、ディーゼル排ガスの影響を受けやすいと考えられる。現在、防御方法を研究中だ」と話している。【河内敏康】

 ▽橋本俊顕・鳴門教育大教授(小児神経学)の話 最近約10年間で先進国では自閉症が増えているとみられており、海外の研究報告では生まれる前の要因が強く疑われている。その研究報告と今回の研究は一致しており、候補の一つを特定できた点で高く評価できる。今後は、ディーゼル排ガスで動物に自閉症の行動特徴が起こるのか調べる必要がある。

 <自閉症>

 言葉の発達の遅れや対人関係を築きにくいなどの特徴がある一方、特定の分野で大変優れた能力を発揮する人がいる。脳の機能障害があるとされるが、はっきりした原因は分かっていない。典型的な自閉症は日本に約36万人、広汎性発達障害なども含めると約120万人いると推定されている。


0601 水俣病政治決着「再開」打診へ、与党チームが被害者団体に [朝日]

2006年06月01日14時15分
 自民、公明両党の水俣病問題プロジェクトチーム(PT)は1日、水俣病の未認定者に対して、一時金260万円を支払うことなどを柱とする95年の政治決着とほぼ同様の条件での受け入れを、再び被害者団体に打診する方針を明らかにした。04年の最高裁判決で国と県の責任を認めたため、「二重基準」となっている混乱を打開する策として浮上した。早ければ、来年度から実施したい考え。しかし、あくまで裁判で争う被害者たちは多く、どこまで受け入れられるか不透明だ。

 この日のPTは、熊本県が環境省に提出した、95年並みの政治救済を求めた要請書について検討。座長の松岡利勝衆院議員は会合の後、裁判で国などの責任を求めている原告団だけでなく、認定を受けた患者団体、政治決着に応じた被害者らと話し合う方針を明らかにした。

 来年度予算編成に間に合わせるため、「夏までにできるだけ議論を整理したい」として、07年度から実施したい考えを示した。

 水俣病は、熊本、鹿児島両県でこれまでに約2300人が認定され、原因企業のチッソから1600万~1800万円の補償金を受けている。

 だが、軽度の未認定者への補償制度がなく、裁判が相次いで提訴されるなど混乱が続いたため、95年、村山富市首相(当時)は「最終的、全面的解決を図る」として政治決着を決断。一時金260万円と医療費全額、療養手当を盛り込んだ救済策を提示。訴訟取り下げを条件に、約1万2千人が応じた。

 だが、あくまで国の責任を追及するとして、関西訴訟団の約50人が裁判を続行。04年、最高裁で未認定患者にも450万~850万円の賠償金を認める判決が確定。国の認定基準と司法判断の「二重基準」の状態と指摘されてきた。以後、司法基準による補償への期待が高まり、新たな認定申請者や国家賠償訴訟が相次いでいる。

 与党PTは、今回の救済策の提示によって、「二重基準」が原因で起きた訴訟の原告らに事実上の和解を求めたい考えだ。だが、地元では、歓迎する声とともにあくまで司法上の決着を主張する声もあり、被害者らが条件を受け入れるかどうか、流動的な状況だ。
URL:http://www.asahi.com/politics/update/0601/005.html

0526 石綿被害:元従業員ら8人提訴 国相手取った集団訴訟は初 [毎日]

アスベスト被害について国家賠償請求の提訴のため、訴状を手渡す原告団(右)=大阪地裁で26日午前10時すぎ、望月亮一写す アスベスト(石綿)産業が集中していた大阪府南部・泉南地域の工場元従業員や周辺住民ら8人が26日、国の石綿対策が不十分だったため健康被害を受けたとして、総額2億4420万円の慰謝料を求める国家賠償請求訴訟を大阪地裁に起こした。石綿被害をめぐり国を相手取った集団提訴は全国初。原告を支援する「大阪じん肺アスベスト弁護団」(芝原明夫団長)は、「工場外にも石綿が大量に飛散し、被害は地域全体に及ぶ。石綿禍に対する国の責任と、対象を限定した石綿健康被害救済法(今年3月施行)の不備を明確にしたい」としている。【中本泰代】

 原告は石綿肺などの患者5人と死亡した患者の遺族3人。故人2人を含む6人が1950年代から90年代初めにかけ石綿工場で労働。また、石綿工場に勤める両親とともに隣接する社宅に出生直後から12歳まで住んでいた看護師、岡田陽子さん(49)と、工場近くで30年以上にわたり農業を営んでいた南寛三さん(昨年2月に91歳で死亡)の遺族も原告となった。

 生存している5人と亡くなった1人は石綿肺などのため、いずれも対象を中皮腫と肺がんに限定した石綿健康被害救済法の適用外。肺がんで亡くなった2人は労災認定を受けているため、やはり適用外となる。また、泉南地域で石綿を扱っていた企業はほとんどが数人規模の上、多くが廃業しており、企業による補償は見込めない状況だ。

 訴状によると、国は1937~40年、泉南地域を中心に石綿の被害調査を実施しており、「遅くとも結果を報告した約70年前から、国は被害発生と法規制の必要性を認識していた」と主張。「あらゆる方策を駆使して、工場内での石綿粉じんの飛散・暴露防止と、工場外への飛散防止を行わなければならなかったのに、対策を怠ったため、泉南地域の労働者や近隣住民らが石綿被害をこうむった」として、慰謝料など1人660万~4950万円を求めている。

 ◇「なぜみじめな死に方を」…原告となる大阪・泉南地域の石綿被害者遺族が語る

 原告の南和子さん(63)=泉南市=の父寛三さんは、石綿肺で昨年2月に死去。畑仕事の間に隣の工場から飛散した石綿繊維を吸い込んだという。「なぜ、苦しんで、みじめな死を迎えなければならなかったのか。国に謝罪してもらいたい」。“救い”からも置き去りにされた憤りを隠さない。

 寛三さんは74歳だった87年、血たんを吐いて病院で診察を受けた。「石綿工場で働いたことがあるんか」。エックス線撮影の写真を見た医師の質問に、寛三さんは、泉州名産のタマネギ作りのため通った畑が石綿工場の窓の下にあったことを思い出した。左肺にはたくさんの石綿繊維が突き刺さっていた。「手術はできないのか」とすがったが、医師は「残念だが、一生このままだ」と告げた。

 工場の従業員は数十人。断熱材などに使用する、石綿を織り込んだ布などを24時間稼働で生産していた。閉鎖される77年まで、工場内で舞い上がった微少な繊維は、毎日のように畑に出た寛三さんの体をむしばんでいった。帰宅した寛三さんの目の縁には「白い粉」が付着していたことを和子さんも覚えている。石綿肺は工場労働者など大量の石綿を吸わないとかからない病気だ。

 発病後、寛三さんは毎日激しくせき込んだ。酸素吸入器を手放せず、動悸(どうき)が激しくなるため風呂には5分以上入れなかった。寝入っても、発作が起きるとゼイゼイと苦しい息で和子さんに助けを求めた。

 「この苦しさを工場長に代わってほしい」。最期は、か細い声でつぶやいて91歳で亡くなった。

 工場は今、跡形もない。国に賠償を求める訴訟となることに、和子さんは「お金を求めているわけじゃない」と強調した。「必要な対策を国はとれたのに、国民を危険にさらし続けた。責任を認め、環境大臣に仏さんの前で手をついて謝ってほしい」と涙をこぼしながら訴えた。【野田武】

 ▽厚生労働省石綿対策室の話 訴状の中身を見ていないのでコメントできない。

 ▽環境省大気環境課の話 訴状の内容が明らかになっていないのでコメントできる状況ではない。

毎日新聞 2006年5月26日 11時11分 (最終更新時間 5月26日 11時47分)
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20060526k0000e040031000c.html

0523 石綿工場:健診の住民、17%病変 奈良「ニチアス」周辺 [毎日]

 アスベスト(石綿)製品を作っていた耐火材メーカー「ニチアス」(本社・東京都)の王寺工場(奈良県王寺町)と子会社の「竜田工業」(同県斑鳩町)が実施した健康診断で、受診した周辺住民202人のうち約17%にあたる35人が、石綿を吸ったことで現れる病変「胸膜肥厚斑」や石綿疾患の「肺線維症」と診断されたことが22日、分かった。

 健診を担当した国立病院機構奈良医療センターの田村猛夏副院長(呼吸器内科)らが6月2日、都内で開かれる日本呼吸器学会で発表する。

 住民説明会などで呼びかけ、昨年7月末ごろから実施。同年末までに▽両社の元従業員496人▽従業員の家族76人▽出入り業者13人▽周辺住民202人の計787人が受診した。

 このうち612人が再検査を受けた。石綿の職業歴が確認されていない周辺住民では35人に「胸膜肥厚斑」があり、うち1人は大量に石綿を吸って肺の組織が硬くなり呼吸しづらくなる「肺線維症」になっていた。いずれも今後、中皮腫や肺がんになるおそれもあるとされる。

 35人は30~80歳代。終戦直後から約10年間、ニチアス王寺工場周辺で農作業をした際に石綿を吸い込んだとみられる70歳代の男性や、乳児のころから竜田工業周辺に住み続けていた38歳の男性などの例があるという。

 元従業員らについては、大半に異状があったが、詳細はまとまっていないという。

 田村副院長は「被害の出ている周辺住民には、定期健診をするなどの制度を行政が早急に確立すべきだ」と話している。

 両工場周辺では、住民5人が石綿関連がんの中皮腫で死亡していたことが既に判明。今回の調査結果について、ニチアス王寺工場は「アスベストの影響の可能性が高いと考えており、経過観察など誠心誠意対応したい」とし、竜田工業は「当社起因の(石綿の)可能性が高いと判断する。企業の責任として住民をケアしていく」と話している。【曽根田和久】


0522 神戸製鋼:データ改ざん NOxなど基準値超えて排出 [毎日]

 神戸製鋼所(本社・神戸市中央区)は22日、同社の加古川製鉄所(兵庫県加古川市)と神戸製鉄所(神戸市灘区)で、加熱炉やボイラーなどから大気汚染防止法の基準値を超える窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物(SOx)を排出しながら、地元自治体に提出するデータを改ざんするなどして隠ぺいする不正があったと発表した。過去5年で計152時間分にわたっており、報告を受けた同県、神戸市、加古川市は同日、同法などに違反する疑いがあるとみて立ち入り検査。経済産業省も同社からの報告を待ち、立ち入り検査を検討している。

 同社によると、実際はNOxで基準値を最大20倍、SOxで最大1・35倍上回っていたが、周辺住民への健康被害の報告はないとしている。

 犬伏泰夫社長らが同日、本社で記者会見して明らかにした。04年4月以降、両製鉄所内で死傷事故などが多発したため、経産省から厳重注意を受け、法令順守の状況などについて内部調査を進めて判明した。

 同社によると、加古川製鉄所では、▽加熱炉などからNOxを96時間(調査対象は過去3年)、SOxを1時間(同)▽ボイラーからNOxを11時間(同5年)、SOxを22時間(同)、基準値を超えて排出していた。ばい煙に含まれる排出物質のデータは県や加古川市に報告していたが、基準値を超えた際のデータは、記録を意図的に送らなかったり、改ざんして基準値内であるようにしていた。

 また神戸製鉄所でも▽加熱炉からNOxを20時間(同3年)▽ボイラーからNOxを2時間(同5年)排出。加古川製鉄所と同じ手口で神戸市に虚偽報告していた。

 一方、加古川製鉄所のボイラーではこのほか、590時間分の排出物質の記録が社内に残っておらず、同社はこれについても、基準値を超えたSOxを排出した可能性があるとしている。

 さらに、加古川製鉄所の自家発電設備で冷却水の配管に亀裂が入るなどの事故が01~06年に計12件あり、発電設備を一時的に止めたのに、社内記録では理由をすべて「電力調整による停止」などと虚偽記載していたことも明らかにした。電気事業法に基づく経産省への報告を避けるためだったとみられる。

 犬伏社長は「地域の皆様、関係当局の信頼を損なう結果となったことを深く反省いたします」と陳謝。調査を進め、処分を検討するという。【津島史人、武内彩】

毎日新聞 2006年5月22日 23時28分 (最終更新時間 5月23日 1時20分)
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20060523k0000m040130000c.html

0521 アスベスト:クボタの関連死者が100人超える [毎日]

 大阪市に本社のある大手機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)を中心にアスベスト(石綿)関連病患者が多発している問題で、05年度に新たに石綿関連病で死亡したことが判明した同社社員と元社員が34人に上っていたことがわかった。

 これで同社の石綿関連死者は109人と100人を超え、旧神崎工場の出入り業者を含めると、少なくとも115人が死亡したことになる。同工場周辺では、石綿関連がんの中皮腫にかかった住民108人が被害を訴えており、工場内外での激しい石綿暴露や被害の増加傾向を裏付けた格好だ。

 また、05年度に石綿関連病と判明した社員、元社員は39人。中皮腫は14人(累計60人)、肺がん15人(同35人)、石綿じん肺など10人(同37人)で、全石綿関連病の累計は132人に達した。そのうち死亡した109人を疾患別にみると、中皮腫57人、肺がん27人、石綿じん肺など25人。

 石綿関連病で死亡した社員、元社員の数を年度別に見ると、04年度の10人が最も多かったが、05年度は34人と3.4倍に急増。うち12人は、労災補償の時効(死亡後5年)を過ぎた遺族が連絡してきた。

 また、これまでに死亡した109人のうち105人は、旧神崎工場と旧尼崎工場の勤務者。残る4人は小田原工場(神奈川県小田原市)での勤務経験があった。小田原工場では、肺がんなどで3人が死亡したことが05年度に新たに判明し、療養者を含め患者は7人になった。

 旧神崎工場では1954~95年、水道管や建材などの石綿関連製品が作られ、57~75年には毒性が強いとされる青石綿が使われていた。クボタ広報室は「昨年からの一連の報道をきっかけに、途中退社した10人以上の元社員から関連病にかかったという知らせが寄せられ、05年度は急増した格好になっている」と説明している。【大島秀利】


0514 アスベスト:大阪・泉南地域で被害の8人、国家賠償提訴へ [毎日]

 アスベスト(石綿)を取り扱っていた大阪府南部・泉南地域の工場の元従業員や周辺住民ら8人が国の石綿対策が不十分なために健康被害を受けたとして、1人2000万~3000万円、総額約2億円の国家賠償請求訴訟を26日に大阪地裁に起こすことを決め、14日、原告団を結成した。石綿被害による国への集団提訴は初めて。

 原告は石綿肺などの患者5人と、死亡した患者の遺族3人。1950年代から90年代初めにかけて石綿紡績工場などで働き、石綿を吸い込んだ。3月施行の石綿救済新法は、対象を中皮腫と肺がんに限定しており、石綿肺は対象外。

 原告を支援する「大阪じん肺アスベスト弁護団」(芝原明夫団長)によると、泉南地域は100年にわたって石綿産業が集まり、その多くは数人規模の業者。国は戦前に被害調査し、それを担当した医師から法規制の必要性が指摘されていた。このため原告側は「国が対策を取ることは可能だった」と主張する。弁護団の村松昭夫副団長は「国は石綿被害を『知っていた。(対策を)できた。やらなかった』と言える。1審判決が出た段階で、新法見直しなど被害者救済策を求める」と話している。【野田武、中本泰代、奥村隆】

毎日新聞 2006年5月14日 21時10分 (最終更新時間 5月14日 21時16分)
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20060515k0000m040078000c.html

0501 水俣病、公式確認50年…なお3900人認定申請 [読売]

「公害の原点」と呼ばれる水俣病は1日、公式確認から50年を迎えた。

 熊本県水俣市では、午後1時半から、「水俣病慰霊の碑」前で犠牲者慰霊式を開催。1万人以上の未認定患者に一時金が支払われることで1995年に「政治決着」したとされながら、今なお約3900人が補償を求めて認定申請しているほか、国や原因物質のメチル水銀を排出したチッソなどを相手取った1000人規模の損害賠償請求訴訟が係争中だ。患者認定基準を巡って行政と司法で「二重基準」状態となっており、水俣病問題は、半世紀を経ても解決の兆しが見えていない。

 水俣病の公式確認は、チッソ付属病院の院長らが保健所に「原因不明の脳症状を呈する患者4人が入院した」と報告した56年5月1日。メチル水銀は68年まで排出され続けたため、被害は八代海沿岸全域に広がった。行政による認定患者数は3月末現在、2265人(熊本県1775人、鹿児島県490人)。うち1577人が死亡した。

 「政治決着」を唯一、拒否した関西訴訟では、2004年の最高裁判決が、国と熊本県の被害拡大責任を断罪したうえ、「家族に認定患者がおり、手足の感覚異常があれば患者と認める」として、複数の症状の組み合わせを求める現行の認定基準より緩やかな基準を採用した。しかし、国が現行基準を堅持しているため、熊本、鹿児島両県の認定審査会は、約3900人の認定申請がありながら機能しない状態になっている。

(2006年5月1日12時14分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060501it04.htm

0425 水俣病:確認50年、繰り返さぬ誓い--衆院が決議 [毎日]

 衆院は25日午後の本会議で、「水俣病公式確認50年に当たり、悲惨な公害を繰り返さないことを誓約する決議」を全会一致で採択した。水俣病に関する決議は衆参両院で初めて。

 決議は、5月1日に公式確認50年を迎える水俣病を「公害の原点」と明記。政府に「すべての被害者の方々が、健やかで安心な暮らしを送れるよう、水俣病対策を着実に実施すべきだ」と求めた。【平元英治】

毎日新聞 2006年4月25日 東京夕刊
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20060425dde001010029000c.html

0424 水俣病:公式確認50年 苦しみ、今も絶えず 被害救済、なお課題 [毎日]

 1956年、2人の幼い姉妹の診察によって、水俣病は公式に確認された。5月1日は、ちょうど50年の節目となる。「公害の原点」「人類史上の大事件」と言われながら、患者の認定基準は行政と司法判断で異なり、救済・補償制度は4通りも存在するなど被害者救済制度は混乱と複雑さを極めている。認定を申請し、結果を待つ人はいまだ約3800人に上る。50年が過ぎても、水俣病は終わりが見えない。

 ■遅れた公式確認

 チッソ付属病院の細川一院長は56年4月、歩行障害や言語障害などを訴える5歳と2歳の姉妹を診察した。他にも同様の症状を訴える患者が多数発生していることが分かり、同年5月1日、水俣保健所に「原因不明の中枢神経症患者が多発している」と報告。この日が水俣病の公式確認の日となった。

 しかし、公式確認以前でも、死んだ魚が水俣湾に浮いたり、ネコが狂ったような状態で死ぬことが確認されており、患者は公式確認の10年以上前から出ていたとされる。認定患者で最も早い人は53年に発病していた。

 ■水銀中毒と特定

 水俣病の原因究明で、熊本大医学部の研究班は英国の農薬工場で発生したメチル水銀中毒の報告論文「ハンター・ラッセル症候群」に着目。水俣病と症状が酷似していたため、メチル水銀と特定した。59年のことだ。ハンター・ラッセル症候群は手足のしびれなど感覚障害や視野狭窄(きょうさく)、運動失調などが主症状で、水俣病の病像ともなっている。

 当初は、同症候群の各症状が重なった重症患者が多かったが、70年代から、感覚障害だけの患者が増えてきた。国は「感覚障害だけでは他の病気との区別が難しい」として、感覚障害と、もう一つ別の症状の組み合わせを求め、患者認定を申請しても棄却される人が相次いだ。

 これに対し、熊本大大学院の浴野成生(えきのしげお)教授らは、特有の診断法を用いることで感覚障害は中枢神経(脳)の障害から起きることをつかみ、「感覚障害があればメチル水銀中毒」と主張する。病像論を巡っては関西訴訟の大阪高裁判決(01年)が浴野教授らの説を初めて採用、同訴訟最高裁判決(04年)も追認した。

 ■政府が「解決策」

 患者認定の現場が混乱する中、村山富市首相の自社さ連立内閣は95年9月、政府解決策をまとめ、政治決着を図った。

 この中では、救済対象者を「メチル水銀の影響が否定できない者」と定義。疑いのある人は救済対象者とした。対象者に一時金260万円を支払うことや、国を相手取って訴訟で争っていた最大の患者団体、水俣病被害者・弁護団全国連絡会議(全国連)など各患者団体に計約50億円を支給することも盛り込んだ。患者側には訴訟や認定申請の取り下げを求めた。

 村山首相は同年12月、「水俣病の原因の確定や企業に対する的確な対応をするまでに、結果として長期間を要したことを率直に反省しなければならない」との談話を発表し、遺憾の意を示した。

 ■「四大公害病」に

 高度経済成長の中、同じメチル水銀を原因とする公害が新潟で起きた。 65年1月、椿忠雄・東京大助教授(同年4月からは新潟大教授)は新潟大病院で、有機水銀中毒ではないかと疑われる患者を診察した。同年4月と5月にも同様の患者が発見され、椿教授は新潟県衛生部に報告。同県は6月、「阿賀野川流域に有機水銀中毒患者が7人発生し、2人死亡」と公表。これが「新潟水俣病」と名付けられた。

 原因は、阿賀野川上流の旧昭和電工鹿瀬工場からメチル水銀を含む工場排水が排出されていたためだった。しかし昭和電工側は、工場排水説に反論、地震によって流出した農薬が原因だと主張した。結局、政府が「工場排水が関与」と統一見解を出したのは68年9月になってからだ。

 その前年の67年6月、患者らは昭和電工を被告として損害賠償請求訴訟を起こした(第1次訴訟)。いわゆる「四大公害訴訟」(水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病)の最初の訴訟で、高度成長期の公害問題に対する国民世論が大きく変わるきっかけとなった。

 ■国策企業チッソ

 原因企業、チッソ(本社・東京都中央区)は1908年、製塩業が衰退していた水俣市に進出。国策を追い風に事業を拡大、27年に朝鮮半島で大規模な化学コンビナートを展開し、総合化学メーカーとしての地歩を築いた。

 終戦直後、従業員の多くを水俣工場で受け入れ、46年には約5200人が働いた。これは当時の市の人口の14%に当たる。戦後復興の中、水俣は“企業城下町”として繁栄。市の人口は56年、5万人を超えピークとなった。下請け・関連会社の従業員や家族も含めると市民の半数が関係し、61年度の市税収入の半分は同社関連が占めた。

 水俣工場では、有機工業製品の原料となる「アセトアルデヒド」を生産する際、副産物として猛毒の「有機(メチル)水銀」が発生。チッソはこの廃液を汚染処理を十分行わないまま、水俣湾や川に流した。

 水俣病が公式確認されても、チッソは水俣病と工場排水との因果関係を否定し続けた。“城主”として影響力も発言力も強く、水俣病の患者や家族は地域社会で長く孤立させられた。

 しかし、公式確認を受け59年には、患者と見舞金契約(成人患者に年金10万円、死者に弔慰金30万円など)を結び、事態の収拾を図ろうとした。

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 ◆富樫貞夫・熊本学園大教授の話

 ◇行政責任認めた意義 「予防原則」見ぬ限界も--最高裁判決

 95年の政治決着以後、唯一継続した関西訴訟の最高裁判決がなければ、法的な行政責任はあいまいなまま終わっていた。水俣病史に大きな汚点として残ったはずで、最高裁が国と熊本県の責任を確定した意義は大きい。

 一方で判決の限界も指摘したい。判決は59年末を基準にし、それ以降の被害拡大を防止しなかった責任を問うている。59年7月に熊本大学医学部の有機水銀説が出た。11月に厚相(当時)の諮問機関である食品衛生調査会が追認する形で「原因はある種の有機水銀」と報告した。判決は、唯一の国の公式見解を踏まえ、59年11月を判断時点として国の責任を認定した。

 実は、公式確認の56年から59年まで、水俣湾と周辺海域は最も汚染され、被害発生がピークに達していた。この時期に被害拡大の防止対策をとらなかったため巨大公害事件となったのに、60年以降しか国、県が責任を問われないのは問題だ。

 判決は「59年時点まではメチル水銀という原因物質の究明がないため防止策は立てられない」との考えに立つ。しかし、人体に大きな影響があると考えられる場合は科学的に因果関係が証明されていなくても規制できるという「予防原則」からすれば57年には対策を立てられたはずだ。

 水俣保健所の伊藤蓮雄所長(当時)は57年にネコの水俣病発症を確認し、県に「水俣病は水俣湾で何らかの毒物に汚染された魚が原因。魚を食べさせない措置をとってほしい」と報告した。結局、県から打診を受けた厚生省が「すべての魚が有毒化しているという明らかな証拠がない限り食品衛生法は適用すべきではない」と回答、予防策は立ち消えとなった。

 食品衛生法は公害を念頭に置いた法律ではないが、3次訴訟第1陣の熊本地裁判決(87年3月)は「当時のすべての法律を動員してでも拡大防止の策をとるべきで、それを怠った行政に責任がある」と判断している。

 当時の厚生省も最高裁も「原因物質」にこだわった。そのスタンスこそが、被害を拡大させた最大の原因とみることもできる。これからの環境汚染問題には、予防原則が重要だ。「魚が危ないと分かれば被害は防止できる」という伊藤所長らの考えこそが、予防原則だ。最高裁にはそれをもっと正面から評価してほしかった。(談)

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 ◆現在の水俣市

 ◇教訓生かし「環境都市づくり」--徹底分別でリサイクル

 水俣市は92年、「水俣病の犠牲を無駄にしない都市」を目指し、市民総参加の環境モデル都市づくりを宣言した。翌93年8月、不燃物、可燃物、粗大ごみの3分別から一挙に20分別に大幅拡大した。一時は24分別まで増えたが、現在は、びん類6▽空き缶2▽紙類3▽有害ゴミ2など計22分別にしている。

 ごみステーションには地区のリサイクル委員らが立ち会う。住民が区分けできない物を判別したり、ビンの口に残ったキャップをペンチで外し、ボンベに穴を開ける。当番ではない住民も参加し「ごみ端会議」に花が咲く。中学生ボランティアがお年寄りのごみ出しを手伝う風景も珍しくない。換金できる資源ごみは、排出量に合わせて地区の自治会に還元、市全体で年間約770万円に上る。

「まだ水俣病の教訓は生かされていない」と話す浜元さん=熊本県水俣市で2006年4月12日、山田宏太郎写す ◇不自由な体、もどかしい

 自由にならない体がもどかしい。家の中をはいつくばって移動する。車いすの乗り降りも1人ではままならない。劇症の水俣病に侵され、病院の壁をかきむしって苦しみの果てに絶命した父もそうだった。公式確認前年の1955年に19歳で発症した熊本県水俣市月浦の浜元二徳(つぎのり)さん(70)は「年を取るほど、水俣病でなかったら、という思いが強くなる」ともらす。

 困窮する一家。水銀汚染で破壊された家族に、チッソとの闘いを「金目当て」とみる地域の冷たい目が追い打ちをかけた。それでも浜元さんは、裁判闘争やチッソとの直接交渉、海外での環境保護活動で水俣病に正面から向き合ってきた。しかし、半世紀がたった今も苦悩は続く。それは症状のためだけではない。「変わらぬ社会」への失望でもある。

 「最高裁は行政に責任があると言った。それなのに国は過ちを認めようとしない。だから、被害者救済問題が尾を引いている」。認定申請者の審査が滞留し、新たな国家賠償請求訴訟が始まった現状を「情けない」と嘆き「もっと幅広く救済するように認定制度を見直さなければならない」と訴える。

 1次訴訟(69年提訴)には、「公害を出せば多額の金を払わなければならないと、全企業にみせつけるために」との思いで加わり勝訴した。

 72年には「この体がすべてを示す」と不自由な体を押しスウェーデンの第1回国連環境会議に出席。つえをついて壇上に上がり、「公害の苦しみは日本の被害者だけでたくさん。地球がこれ以上破壊されないようともに運動しよう」と呼びかけ、万雷の拍手を浴びた。子供たちに水俣病を語り、環境保護を説く語り部活動は10年になる。

 それでも自然破壊は進む。「中国や東南アジアや中南米。まだ水俣病の教訓が十分生かされていない」。日本も含め「いまだに一番はこれだものね」と人さし指と親指で輪をつくり「金がすべて」の世の中を嘆いた。

 「自然破壊のとばっちりは人間に来る。日本が率先してそのことを発信しないといけないの。水俣病問題を解決できない日本にその資格はない。とても残念だ」。浜元さんの胸には水俣病50年がむなしく響く。

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 ◇継ぎはぎの補償制度

 ■複雑な仕組み

 水俣病の救済・補償の仕組みは複雑多岐にわたる。相次ぐ国家賠償訴訟を受け、国が未認定患者対策として屋上屋を架してきた結果だ。

 補償制度は以下の4通りが存在する。(1)行政認定(約2300人)(2)政府解決策による医療・保健手帳交付(約1万1000人)。さらに(3)訴訟の結果、認められた司法認定(39人)(4)04年の最高裁判決を受けた新保健手帳交付(約2000人)--だ。

 行政認定には感覚障害、運動失調などから二つの症状があることが必要だが、司法認定や政府解決策の医療事業は、手足の感覚障害などがあれば対象となるなど二重基準となっている。

 こうした複雑な制度はそれ自体がさまざまな矛盾を抱えている。新保健手帳による医療費などの助成は「認定申請、提訴取り下げ」が条件。最高裁判決後、急増する認定申請者や新たな国賠訴訟を抑えようという国の意図だが、被害者に「認定」か「手帳」かの選択を迫る不条理を招いている。

 さらに、新保健手帳は半年間で申請が打ち切られた政府解決策の保健手帳を拡充し再開したものだが、より重症者が対象の医療手帳は復活しなかった。たとえ医療手帳レベルの重い症状があっても、新保健手帳の内容でしか救済されない。

 すべての制度で対象者が「メチル水銀による健康被害を受けている」ということは共通。制度見直しを求める被害者団体は「制度を統合し、すべての対象者を水俣病と認めるべきだ」と批判する。

 ■厳しい審査基準

 患者認定は、公害健康被害補償法(公健法、74年施行)に基づき、熊本、鹿児島両県の認定審査会が申請者を判定する。熊本県の審査会の場合は神経内科や精神科、耳鼻科、眼科などの医師で構成。判定を受け、県知事が患者と正式認定する。

 チッソは73年に締結した補償協定で、行政が認定した患者に慰謝料(1600万~1800万円)と医療費や年金などを支払っている。公健法以前の特別措置法時の認定患者にも補償協定はさかのぼって適用された。

 一方で「認定基準」が「補償のための基準」となり、基準に合致しない症状を訴える被害者が認定審査会で次々と切り捨てられ、未認定患者問題を引き起こした。旧環境庁は71年に事務次官通知で基準を緩めたが、77年には再度基準を狭め、混乱に拍車を掛けた。

 両県では棄却1万5000人。未処分者も現在3800人に上り認定作業を待っている。処分に不服の場合、公健法に基づいて異議申し立てができる。熊本県では延べ776人が知事に申し立てし、うち478人は県の再棄却・却下後、旧環境庁へ審査請求した。

 未認定患者が救済を求めた司法の場では「認定基準は補償に見合った形で厳格に過ぎる」(85年、2次訴訟福岡高裁判決)と批判を浴びたものの、国は「司法と行政の判断は別」としている。

 ■ツケは巨額債務

 チッソは73年の補償協定締結後に認定申請者が急増したため、77年度には364億円の累積赤字を計上。翌年、熊本県が県債を発行してチッソに融資する金融支援が閣議了解された。他にも、水俣湾の公害防止事業(77~90年)への負担費用支援(ヘドロ立て替え県債)、95年の政治決着で未認定患者への一時金支払いの貸し付けなどを受け、公的債務は99年に1257億円にまで増加した。

 チッソの返済が困難となり、県の負担が問題になったため00年に県債発行を廃止。チッソは毎年、可能な範囲で県に返済し、残りを国が肩代わりするように見直された。

 同社は現在、液晶素材の生産で業績を伸ばし、05年3月期は34年ぶりに単体で黒字に転換した。

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 ◇公害学習、全国から受け入れ--資料館入場者の7割が高校生以下

 水俣市の環境に力点を置いた「まちづくり」はごみばかりではない。子供たちの公害・環境学習を積極的に受け入れている。

 市立水俣病資料館の年間入場者約4万6000人(05年度)のうち、約7割が小中高校生だ。02~04年度、県は水俣で環境学習を実施、県内478校の小学5年生約1万9000人が来館した。

 九州各県はもとより、関東や関西からも多く訪れている。東京都港区の私立正則高は4年前から毎春、2年生が水俣病やハンセン病、原爆を学ぶ学習旅行で同市や長崎市などを訪問している。今年3月には、同館のほか、胎児性水俣病患者が通う共同作業所を訪問したり、漁船で海に出て「公害の原点」を学んだ。

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 この特集は加藤学、井本義親(西部報道部)、山田宏太郎(熊本支局)、平野美紀(水俣通信部)、江口一(東京科学環境部)が担当しました。

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 【水俣病に関する主なできごと】

1908・ 8 日本窒素肥料(現チッソ)、水俣工場操業開始

  32・ 5 同工場、アセトアルデヒドの製造を開始。有機水銀を含む排水を水俣湾へ放出

  56・ 5 水俣病公式確認

     11 熊本大が「原因はある種の重金属中毒」と、チッソを疑う

  59・ 7 熊大が水俣病の原因に関して有機水銀説を発表

     11 厚生省食品衛生調査会が、水俣病の原因は魚介類中の有機水銀化合物と厚相に答申

  63・ 2 熊本大が水俣病の原因は有機水銀で、チッソの汚泥から有機水銀を検出したと正式発表

  65・ 6 新潟水俣病公式発表

  68・ 5 チッソがアセトアルデヒドの製造を中止

      9 政府が水俣病はチッソで生成された有機水銀が原因と公害病認定

  69・ 6 訴訟派患者たちがチッソに損害賠償を提訴(第1次訴訟)

  71・ 7 環境庁発足、水俣病関係業務を厚生省から移管

      8 「影響が否定できない者は水俣病」と事務次官通知

     10 自主交渉派患者がチッソとの直接交渉で補償要求を開始

  73・ 3 第1次訴訟判決。チッソの賠償責任を認め、原告勝訴

      5 「第三水俣病」騒動、水銀パニック(74年6月、環境庁が否定)

      7 訴訟派と自主交渉派がチッソとの補償協定締結

  77・ 7 旧環境庁部長通知「52年判断条件」で認定基準に複数の症状が求められる

  80・ 5 未認定患者らが国、熊本県の水俣病発生責任を初めて問う第3次訴訟提訴(熊本地裁)

  87・ 3 第3次訴訟で国、熊本県の賠償責任を初めて認める判決

  95・ 9 政府・与党が未認定患者救済案(政府解決策)示す

  96・ 5 この月までに、各患者団体が政府救済案に基づき、チッソと協定を結ぶ。国家賠償請求訴訟は関西訴訟を除いて取り下げ

2001・ 4 関西訴訟大阪高裁判決。国と熊本県の行政責任を認める。事実上、国の認定基準を否定

  04・10 関西訴訟最高裁判決。国と熊本県の行政責任を認める。事実上、国の認定基準を否定

  05・ 4 環境省、最高裁判決を踏まえ保健手帳の拡充・再開など新対策を公表

  06・ 5 公式確認から50年

毎日新聞 2006年4月24日 東京朝刊
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060424ddm010010136000c.html

0417 クボタ、住民に最高4600万円 石綿救済で合意 [朝日]

2006年04月17日22時31分
 大手機械メーカー「クボタ」(本社・大阪市)の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の周辺住民にアスベスト(石綿)による健康被害が広がっている問題で、同社は17日、周辺住民の患者と遺族に「救済金」として1人最高4600万円を支払う制度を創設したと発表した。健康被害との因果関係は認めないながらも、石綿を扱ってきた企業の社会的責任があるとした。患者・遺族団体と合意し、まず88人に計32億1700万円を支払う。対象から外れる被害者への対応などを協議するため、同社と患者・遺族らによる「救済金運営協議会」も新設する。
石綿被害者との合意について記者会見するクボタの福田俊弘専務(左)と伊藤太一安全衛生推進部長=17日午後2時40分、兵庫県尼崎市で


 これで、労災認定された従業員が同社から受けてきた補償金並みの給付が実現する。企業が因果関係を認めないまま、訴訟を経ずに事実上の補償に近い形で支払いをするのは極めて異例だ。患者・遺族側も一定の評価をしている。

 同社によると、対象となるのは(1)3月施行の石綿被害者救済法の手続きに基づき、石綿による中皮腫、肺がんにかかったと認定される(2)同工場で石綿を使っていた54~95年に、工場から半径1キロ以内で1年以上の居住歴や通勤、通学などの生活歴がある(3)仕事で石綿を扱ったことがない――の3点をすべて満たす患者と遺族。支払額は4600万~2500万円で、年齢や家族構成などによって金額を決めるとみられる。

 会見した福田俊弘専務は「健康被害の原因は特定できていない」としながら、「石綿が飛散しなかったとは言い切れない」とも述べ、企業の社会的責任から救済策に踏み切ったと説明した。

 対象を「1キロ以内」とした理由は、「飛散する距離の概念ではなく『近隣住民』という意味で一般的に考える距離」と述べた。ただ、1キロを超えるなどの対象外のケースについても今後、救済金運営協議会で話し合いを続けると明言した。

 同社は従業員や周辺住民の健康被害を公表した昨年6月以降、「道義的責任」を理由に、住民の患者と遺族に見舞金・弔慰金として一律200万円を支払ってきた。しかし、労災認定を受けた従業員が在職中に死亡した場合は、労災給付に加えて最高約3200万円の上積み補償をしており、住民側からは「工場の壁一つを隔てるだけで同じ被害者に差をつけるのはおかしい」との声があがっていた。

 同社は、従来の「見舞金・弔慰金」の支払い対象として認めた88人(うち少なくとも71人が死亡)に、近く救済金支払いの手続きをとる。今後も期限を決めずに救済金の申請を受けつける。見舞金・弔慰金の制度は17日で廃止した。救済金を受け取る患者・遺族は、同社への賠償請求権を放棄する。

 旧神崎工場では57年から75年にかけて、毒性が強いとされる青石綿を使って水道管などを製造していた。多い年で8000トン近くを使い、国内最大級の石綿使用工場だった。昨年6月、それまでに工場の従業員ら78人が中皮腫などで死亡し、周辺住民5人(うち2人死亡)も発病していたことが発覚。住民から同社や尼崎市に相談などが相次いだ。

 クボタ問題をきっかけに国は、労災で補償されない周辺住民らを救済する石綿被害者救済法を制定。患者の遺族には特別遺族弔慰金280万円と特別葬祭料約20万円、患者には医療費自己負担分と療養手当月約10万円を支給する。
URL:http://www.asahi.com/national/update/0417/TKY200604170233.html

0331 排ガス対策「効果不十分」 総務省が政策評価 [共同]

 竹中平蔵総務相は31日の閣議で、大都市の自動車排ガス対策を対象に実施した政策評価結果を報告した。政府は車の通行が集中し汚染が著しい大都市圏の266市区町村を「対策地域」として定め、排ガス削減に取り組んでいるが、「大きな改善がみられない」として、より効果的な対策を環境、国土交通、警察など関係4省庁に求めた。
 今回の評価は、関係省庁や対策地域のある埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、三重、大阪、兵庫の8都府県の取り組みについて横断的に実施。
 対策地域の道路沿いに設置された自動車排出ガス測定局の二酸化窒素(NO2)濃度について、1990年以降の推移を調べたところ、数値自体は改善していたものの、対策地域以外と比べると高い状態が続いていた。
URL:http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2006033101000445

0321 水俣病懇談会 認定基準・救済めぐり激論、国と対立 [朝日]

(要約)
環境相の私的懇談会「水俣病懇談会」は、今年5月の公式確認50年式典までに大規模な公害の再発防止策を提言する予定だった。ところが、議論は、水俣病の認定基準を含む救済策に及び、環境省側の思惑を超えて紛糾している。
77年以降、水俣病と認められるには、「手足の感覚障害と視野狭窄などの複数症状の組み合わせが必要」との国の認定基準があった。だが、04年10月、国と熊本県の責任を認めた関西訴訟最高裁判決は、ひとつの症状だけでも損害賠償の対象となるとの判断を示したことから、二重基準が存在する状態となり、熊本と鹿児島の認定作業がストップし、審査待ちの人が3700名にも及ぶ事態に。
懇談会では、最高裁判決通りに認定基準をゆるめるべきだという意見が強いが、環境省や地元自治体では、過去の認定判断との不公平感がでるため消極的だ。


0320 石綿救済新法:周知不足で時効多発に懸念 [毎日]

 アスベスト(石綿)救済新法に基づく救済申請の受け付けが20日、始まった。被害者には落ち度がないにもかかわらず、対象疾患が限定されていることなど、多くの不十分な点を残したままのスタートとなった。

 新法による救済でも、自分の職業とは関係なく石綿関連病になった人は、職業に関係して労災補償を受けた人に比べ、格段に給付額が少ない。そのうえ、対象は中皮腫と肺がんに限定され、労災認定では対象となる石綿肺とその合併症、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚が除外されている。無料となる治療費も、申請日以降の分に限られるため、闘病中の患者や家族の状況を考えると、「さかのぼって支給できるようにしてほしい」と支援団体は要望している。

 一方、労災補償を受けられることに気付かずに時効(死後5年)を迎えた遺族も、新法の救済対象として特別遺族給付金が支給される。しかし、今月27日の法施行後、3年間に申請が限定されている。中皮腫や肺がんの潜伏期間が20~60年もあることを考慮すると、行政や企業による周知不足で、今後も時効が多発することが懸念される。中皮腫などに時効を設けていること自体に、見直しを求める声が強くある。【大島秀利】

毎日新聞 2006年3月20日 12時36分
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20060320k0000e040067000c.html


0320 石綿救済新法:救済申請開始 患者や遺族にさまざまな思い

 アスベスト(石綿)救済新法に基づく救済申請が始まった20日、午前9時の開始を待ちかねたように各地の窓口には申請者が訪れ、真剣な表情で手続きを行った。姿を見せた患者や遺族は「これまで何の救済もなかったことに比べれば前進」としながら、「労災補償との格差は大きいまま。安心して暮らしていける補償を今後も求めていく」とも強調するなど、救済制度スタートの場ではさまざまな思いが交錯した。

 工場周辺住民に中皮腫(ちゅうひしゅ)が多発した兵庫県尼崎市の保健所では、午前9時に受け付けが始まり、市公害健康補償課の担当者に加え、環境省から派遣された職員らが対応に追われた。保健所では、患者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」副会長の古川和子さん(57)らが申請の注意点を記したチラシを配った。

 同市の荒木吉治さん(81)は妻すみ子さん(当時72歳)を02年7月に中皮腫で亡くし、長男の昭さん(45)と一緒に申請に訪れた。吉治さんは言葉少なく、昭さんは「母は長生きしたいと言いながら、苦しんで死んだ。それを考えると、現状の救済では全く足りない」と話した。すみ子さんらは1958~67年、クボタ旧神崎工場の南約2キロに居住。石綿関連の職業歴はなく、クボタに弔慰金を申請したが、支給されていない。

 同工場周辺に居住歴がある母(当時48歳)を04年7月に中皮腫で亡くした大阪市の主婦、荻野ゆりかさん(28)も申請手続きをした。一家の働き手だった母の死後、妹(18)と弟(13)は祖母(78)との3人暮らし。3人の生活費は、妹のアルバイト代と祖母の年金で何とか賄っている。

 280万円の特別遺族弔慰金について荻野さんは「高齢の祖母を早く安心させたくて申請に来た。でも新法には納得していない。弟が大学を卒業するまでまだ10年もある。弔慰金は一時的なもので、今日を、しっかり補償を求めていく始まりにしたい」と語った。

 一方、結婚するまで旧神崎工場の近くで暮らして中皮腫になった主婦の土井雅子さん(58)=同県伊丹市=は、書類を取り寄せ今月中に郵送で申請するつもりだ。医療費の自己負担は月額約8万円に上り、「これからも一生治療を続けなくてはいけないので、給付はありがたい」と話す。しかし、「労災との格差が残り不満。今までにかかった医療費なども国が負担すべきだ」と注文した。【樋口岳大、宇城昇】

 ◇小池環境相が電話で対応

 救済の認定と、給付を実施する川崎市幸区の独立行政法人・環境再生保全機構の本部には同日午前、小池百合子環境相が視察し、相談の電話などに応対した。

 小池環境相は「受け取った電話はご主人が中皮腫で亡くなられた方だった。ご主人への思いと救済制度への期待をしっかりと受け止めました」と話した。また、「法律が施行される27日以降は、生前の申請がないと救済されない。心配な方はまず、(同機構や各地の地方環境事務所、保健所などに)相談してほしい」と早期の手続きを訴えた。

 最初に申請に訪れたのは、妻(76)が中皮腫で入院中の神奈川県茅ケ崎市の会社経営、福田実さん(74)で、先日報道で今回の救済制度を知り、必要書類を郵送で取り寄せて手続きに来たという。福田さんは「妻は石綿と関係のある仕事はしていなかった。医者には20~30年前に石綿を吸い込んだのではと言われたが、原因は分からない。今回の国の救済制度はありがたい」と話していた。【江口一】

毎日新聞 2006年3月20日 11時33分 (最終更新時間 3月20日 16時33分)
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20060320k0000e040052000c.html

0228 光化学スモッグ抑制へ都内の建造物塗り替え [読売]

 東京タワーの展望台上部や首都高のトンネル部分などが、光化学スモッグの原因となる「揮発性有機化合物(VOC)」の含有量が少ない塗料で塗り替えられることになった。

 工場などから排出されるVOCは4月から規制されるが、固定発生源の3割を占める屋外の塗装工事は対象外。このため、東京都は低VOC塗装を広めようと、所有する企業などに協力を求め実現にこぎ着けた。

 3月から来年度いっぱいで、全面的に塗り替えられるのは、首都高中央環状新宿線トンネル部、東京ガスのガスタンク2基、東京電力の送電鉄塔6基、白鬚橋、JR常磐線三河島跨線橋。東京タワーは展望台と特別展望台の間の約20平方メートルを試験的に塗装し、実用性に問題がなければほかの部分の塗り替えを検討する。

 VOCは、塗料やドライクリーニングの溶剤に広く利用されている。大気中に放出されると化学反応を起こし、光化学オキシダント(光化学スモッグ)の原因物質になる。今回、使用される塗料は、VOC削減率が21~90%、コストは従来より2~5割高いが、各企業で負担するという。

 昨年の都内の光化学スモッグ注意報の発令日数は22日で、2001年(23日)以来の高水準。都環境局は「効果が実証されれば、低VOC塗料の普及に弾みがつくはず」と期待する。

(2006年2月28日1時49分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060227i517.htm

アスベスト疾患、労災認定の基準を緩和 厚労省 [朝日]

2006年02月09日23時27分
 厚生労働省は9日、中皮腫(ちゅうひしゅ)などのアスベスト(石綿)関連疾患について、現行の労災保険の認定基準を緩和すると発表した。1年以上の石綿作業歴がある中皮腫の人は、胸膜肥厚(胸膜プラーク)がなくても診断があれば原則として対象とし、肺がんは肺に一定量以上の石綿を吸引していれば、作業歴が10年に満たなくても認定する。今国会で成立した石綿被害者を救済する新法で、中皮腫と肺がんの認定基準が新たに示されたことから、労災としても整合性を図る。同日付で全国の労働局長に通知した。

 改正認定基準は、同日以降の支給決定から適用される。これまでにいったん不支給が決定している人が再請求することはできないが、60日以内なら、不服審査請求ができる。04年度に労災認定を受けたのは中皮腫が128件、肺がんが58件だった。

 石綿が原因の疾病については、昨年11月に厚労省と環境省で有識者の検討会を設置。今月2日、中皮腫はほとんどが石綿に由来し、肺がんについては、レントゲンなどで胸膜プラークがみられ、かつ肺の中に多量の石綿繊維がある場合を対象とするなどの結論を出していた。
URL:http://www.asahi.com/life/update/0209/009.html

アスベスト中皮腫死、環境省調査で「公害」裏付け [読売]

 アスベスト(石綿)による健康被害問題で、環境省は9日、被害が集中している兵庫県内で2002~04年に、がんの一種の中皮腫(ちゅうひしゅ)で死亡した人の追跡調査結果を公表した。

 遺族から聞き取りができた143人のうち、20人(14%)については、仕事ではアスベストとの接点がなく、問題の発端となった同県尼崎市内での居住歴などを確認、アスベスト関連工場の周辺住民に被害が及ぶ「公害」だったことを裏付ける結果となった。

 アスベスト被害での国による疫学調査結果がまとまったのは初めて。

 02~04年の兵庫県内の中皮腫による死亡者は222人で、そのうち、調査に応じた143人(男性112人、女性31人)の遺族から、死亡者の職業、居住歴、生活環境などを聞き取り、分析した。

 それによると、21人がアスベストを扱う仕事に従事し、労災認定を受けていた。これ以外に、83人がアスベストが吹き付けられた場所での作業経験があるなど、仕事でアスベストとの接点があった。

 一方、仕事上、アスベストと関係がなかった20人(うち男性13人)の共通点が、尼崎市内の居住歴か、通勤・通学歴だった。同市内には大手機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場があった。

 これ以外の女性2人には、アスベストが付着した作業着を洗濯していたと遺族が証言するなど、家庭で吸い込んだ可能性がうかがえた。残る17人は、アスベストとの接点が不明。

(2006年2月10日1時32分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060209it16.htm

石綿救済新法成立:労災補償との格差に失望の声強く [毎日]

 石綿による健康被害者で労災の補償対象外となる患者や遺族に医療費や一時金などを支給することを定めた「石綿救済新法」が3日、成立した。政府は「救済されない被害者をなくす、すき間のない制度」と自負するが、労災補償との間に厳然とした格差が存在することなどから、患者や遺族からは「期待した法律にはほど遠い」と失望の声が上がっている。【大島秀利、江口一】

■遅れた対応

 中皮腫は、1959年に南アフリカで開催された国際会議で、鉱山から飛散した石綿を吸い込んだ周辺住民の発症例が既に報告されていた。国内では、環境庁(現環境省)が遅くとも72年に、英国の石綿工場周辺で多数の住民が中皮腫を発症していたことを、論文を通じて認識していた。

 しかし、政府が住民被害(環境暴露)の防止策に本格的に取り組んだのは89年の大気汚染防止法改正からだ。この改正でようやく、工場敷地境界の石綿濃度を「空気1リットル当たり石綿繊維10本」に規制した。だが、その後も対応は鈍く、毒性の強い青石綿や茶石綿を禁止したのは95年、白石綿も含めて原則禁止にしたのは04年になってからだ。

 対策の遅れのツケが表れたように昨年来、石綿工場周辺の住民や従業員の家族ら全国で約100人が中皮腫にかかっていたことが判明した。一方、労災で石綿被害に遭いながら、遺族らが情報不足で気付かず、時効のため全部または一部の労災補償を受けられなかったケースも、判明分だけで約100件に上る。中皮腫の潜伏期間が30~50年の長期に及ぶことを考えると、政府が70年代前半に環境暴露対策や、厳格な労災対策を実施していれば、今後出てくる患者も含めた被害の多くは防ぐことが出来たと考えられる。

■労災との格差

 新法で救済対象となる工場周辺の住民被害者などには、認定患者に医療費自己負担分や療養手当(月約10万円)など、遺族には特別遺族弔慰金と特別葬祭料が支払われる。一方、労災補償は原則として、医療費だけでなく通院費も支払われ、ほかに休業補償▽大学までの就学者に就学援護費▽遺族には遺族年金か一時金が支払われる。

 これらを比較すると新法の内容は、労災補償を受けられた人との間で、数千万円の給付格差が生じるケースも起きる。

 このため新法の救済対象者からは「石綿を扱う工場の敷地内と外で、命の代償が違うことに納得できない。現在の労災並み補償が不可欠だ」との声が上がっている。この点について政府は「今回の制度は補償ではなく救済制度。政府に損害賠償の補償をしなければならない不法行為はなかった」と説明する。

 一方、「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京都江東区)の名取雄司所長によると、世界的に中皮腫の8割は仕事中に石綿を吸い込んだことが原因とされるという。しかし日本では中皮腫による死亡者に対する労災認定が1~2割にとどまっている。

 名取さんは「医師や労働者本人、労働基準監督署などの認識不足で、多くの中皮腫患者が労災補償を受けていない。石綿問題に取り組んできたNPOなどの調査能力を労災認定で生かし、まずは『労災認定漏れ』をなくすべきだ」と提案する。

■診断体制の急務

 救済制度を円滑に進めるには、中皮腫や肺がんといった対象疾患の確実な診断体制の確立が急務だ。厚生労働省と環境省は来年度にも、中皮腫の症例をデータベース化する「中皮腫登録制度」を開始する方針だが、蓄積された情報を診断法や治療法の向上に生かす必要がある。

 中皮腫患者は統計を取り始めた95年は500人だったが、04年は953人まで増加。石綿原因の肺がん患者はその1・5~2倍になるとみられ、「中皮腫、肺がん合わせて約30万人が健康被害となる恐れがある」と予測する声もある。

 診断にはエックス線やCT(コンピューター断層撮影)による画像診断や、組織の一部を切り取って調べる病理診断が必要だ。両省の専門家検討会では「全国レベルで病理医、臨床医、疫学者による症例検討会を開き、困難な症例の診断を確定する必要がある」(岡山労災病院・岸本卓巳副院長)などと指摘された。一般住民に対しては問診で疑いのある場合、定期的な検査を継続することが望ましいとしている。

 環境省は現在、大手機械メーカー「クボタ」旧神崎工場のある兵庫県尼崎市で、工場と周辺住民の被害との因果関係を調べる疫学調査を進めているが、来年度にはこれを他の都市でも実施する予定だ。

毎日新聞 2006年2月3日 20時27分 (最終更新時間 2月3日 20時56分)
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060204k0000m040107000c.html

アスベスト法、参院で可決・成立 [読売]

 アスベスト(石綿)による健康被害者の救済法と被害拡大防止のため関連4法の一括改正法が3日、参院で可決・成立した。
(2006年2月3日22時22分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060203ic22.htm

石綿使用の累積、日本が世界2位に 早大・村山教授推計 [朝日]

2006年01月31日16時34分
 日本のアスベスト(石綿)の消費量の累積が、90年代にドイツを抜き、米国に次ぎ第2位になった可能性があることが、米国の資料をもとにした早稲田大学の村山武彦教授(社会工学)の推計で分かった。他国に比べ、日本では80年代後半まで消費量が伸び続けたことが原因とみられ、村山教授は「代替化の取り組みなどに問題がなかったか、検証の必要がある」と問題提起している。

 推計は、新法審議の参考資料として衆議院に提出されている。

 米国地質調査所が2003年に出した1920年以降の各国の石綿の消費量の数値をもとに、村山教授が推計した。それによると、戦前から消費が進んだ英国、米国、ドイツでは70年代から80年代にかけて消費量が減少。これに対し、日本では最近まで消費量が増加し、累積量は90年代にドイツを抜いた。以降、米国に次いで世界第2位であることが予想される。2000年の累積量は1100万トン余りになるという。
URL:http://www.asahi.com/life/update/0131/004.html

光化学オキシダント:被害は過去10年で最多 05年 [毎日]

 環境省は31日、2005年の光化学オキシダント警報・注意報の発令状況と被害届け出人数を発表した。関東や近畿を中心に21都府県で延べ185日、警報・注意報が発令された。目やのどの痛みなど被害を届け出た人は過去10年間で最も多い1495人に上った。

 被害が集中したのは9月1~2の2日間で、茨城、栃木、埼玉、東京、神奈川の各都県で計1325人が被害を届け出た。屋外で授業中の小中学生の被害が大半を占めたという。

毎日新聞 2006年1月31日 20時58分
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20060201k0000m040095000c.html

衆院でアスベスト救済法案可決、給付水準に根強い不満 [読売]

 アスベスト(石綿)による健康被害者救済法案が31日、衆院で可決された。

 2月3日にも参院で可決・成立する見通し。政府は今年度内に被害者からの申請の受け付けを始める方針だが、給付水準への不満は根強い。

 同法案では、労災補償が適用されないアスベスト関連工場周辺の住民や従業員の家族に対し、既に死亡した被害者の遺族には弔慰金280万円と葬祭料20万円の計300万円を支給。治療中の被害者には、医療費の自己負担分と月額10万円の療養費が支払われる。

 こうした救済内容について、母親を中皮腫(ちゅうひしゅ)で亡くした大阪市の主婦荻野ゆりかさん(28)は「国は遺族や患者の苦境をわかっていない」と、悔しさをにじませる。母親は機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)近くに住んでいた。「何の落ち度もない被害者なのに、なぜ労災補償と差があるのか」と憤る。「関西労働者安全センター」の片岡明彦事務局次長も「法制定は当然だが、その中身は患者や遺族の声に応えていない」と批判する。

(2006年2月1日0時52分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060131ic29.htm

救済新法求め146万人署名、国会に 石綿対策会議 [朝日]

2006年01月23日19時10分
 アスベスト(石綿)被害者の救済新法案について、市民団体や労働組合らでつくる「石綿対策全国連絡会議」(東京都江東区)は、労災補償に時効を適用しないことや、すべての被害者が労災に準じた補償が受けられる制度づくりなどを求める約146万人分の署名を集め、23日、関係国会議員に衆参議長への提出を依頼した。

 同日、衆院第2議員会館で開かれた緊急集会には、中皮腫の患者や石綿による病気で家族を亡くした遺族ら約200人が参加。積み上げた署名を前に、名取雄司事務局次長が「新法案には国の責任がまったく書かれず、補償も我々が求めてきた内容にはほど遠い。さらに十分な検討が必要だ」と訴えた。
URL:http://www.asahi.com/life/update/0123/004.html

水俣病:原因企業チッソが「終息へ」の認識 被害者ら反発 [毎日]

 水俣病の原因企業チッソ(岡田俊一社長)は、水俣病問題について「終息に向かいつつある」との認識を示した。東京都内で23日開いた創立100周年謝恩会のあいさつ状に、後藤舜吉会長と岡田社長の連名で記した。国と熊本県の行政責任を認めた関西訴訟最高裁判決(04年10月)後、認定申請者は熊本、鹿児島両県で3559人(23日現在)と急増、そのうち690人が損害賠償を求めて熊本地裁で係争中で、被害者は反発している。

 あいさつ状は、謝恩会に出席した取引先や関係者ら約600人に配られた。100年を振り返る中で「水俣病という不祥事を惹起(じゃっき)してしまったことは痛恨の極みであり、後半50年はこの負の遺産との苦闘の歳月でもあった」と言及。「幸い96年の(政府解決策による)『全面解決』以降、この問題も終息に向かいつつあり業績も著しく伸長して弊社は復活への道程を歩みつつある」としている。

 チッソ総務人事部は「最高裁判決以降の認定申請者らを無視しているわけではない。政府解決策では、未認定患者も含めてできるだけの対応をしたという趣旨だ」と説明する。

 未認定患者団体「水俣病不知火患者会」の瀧本忠事務局長は「3500人が認定申請し、1500人が保健手帳を申請している現状のどこを見れば、終息に向かっていると言えるのか。隠れた被害が顕在化しているのに、信じられない」と不快感をあらわにした。

 95年に決定した政府解決策は、行政責任を認めないまま、訴訟や認定申請の終結を条件に、四肢末しょう優位の感覚障害がある人への一時金260万円支払いなどが盛り込まれ、96年までに主要患者5団体が受け入れた。

 後藤会長は今年1月発行の社内報にも「(「全面解決」から)10年が経過した今、また認定申請や訴訟提起が行われていることは、経緯に鑑(かんが)み、甚だ残念」との文を寄せている。【平野美紀】

  ◇「まさに現在進行形だ」…小池環境相

 一方、小池百合子環境相は24日の記者会見で「公式確認50年の節目で、国としての検証も保健手帳の話も進めているところ。まさに現在進行形という認識だ」と述べた。


アスベスト:救済新法案決定 国民世論が後押し [毎日]

 「世論の力を実感しました」。アスベスト(石綿)被害が石綿工場周辺の一般住民にも及んでいることが発覚してから7カ月弱。政府は石綿救済新法案などを20日閣議決定した。政府の「スピード」よりも上回ったのは国民の世論だった。法案の輪郭が見えてきた昨年10月から、被害者全員に対する公正な補償を求める署名はわずか3カ月で110万人を突破した。活動にかかわった石綿関連がんの中皮腫患者らは「みんなが安心して住める国へ」と、より良い法律成立に向けて決意を語った。【大島秀利、宇城昇、山口朋辰】

 「一家の大黒柱を亡くしたり、働けなくなった被害者を、看護しながら家族が生活できる救済策ではない。一家で路頭に迷えと言うのか」

 「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」世話人の中村実寛さん(57)は憤る。新法には患者や遺族への医療費や療養手当などの支給が盛り込まれたが、十分な金額ではない。患者団体と昨年11月に面会した小池百合子環境相は「がけから飛び降りるつもりで(対策を)やる」と語ったが、「どのがけから飛び降りたのか」と厳しい。

 署名は、北海道から沖縄まで計数百件、個人や団体から寄せられ、目標の100万人を超えた。病をおして街頭にも立った中村さんは「『明日は我が身かと心配している』と話しながら署名してくれた方もたくさんいた」と振り返る。

 夫清二さんを02年、中皮腫のため56歳で亡くした神戸市兵庫区の近藤たみ子さん(59)は「救済は一時的なもの。これで幕引きしないで」と危機感を募らせる。

 清二さんはゼネコンの下請け会社で、とび職として建設現場で働いていた。診断されてから11カ月後の死。病気にかかったことがない夫がせき込みながら「孫の顔を見られないまま死ぬおれの人生は何やったんやろか」と涙を流す姿が忘れられない。たみ子さんは昨年10月に労災申請した。「下請け企業で働き、暴露を証明できない人もいる。せめてすべての患者・遺族に公平に一時金の支給を」と訴える。

 クボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺の中皮腫患者を支援している「関西労働者安全センター」の片岡明彦次長は「政府が不作為の責任を認めず、『補償』ではなく『救済』とした法案は、問題が多い」と指摘し、「労災補償の時効の問題や、一般の住民の救済内容に格差が出てしまう点を早期に見直す必要がある」と訴えた。

毎日新聞 2006年1月20日 12時17分
URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20060120k0000e040073000c.html

アスベスト:全面禁止は先送り 厚労省検討会が報告書 [毎日]

 アスベスト(石綿)製品の全面禁止を検討してきた厚生労働省の検討会(座長=平野敏右・千葉科学大学長)は18日、石綿製品の製造、使用などを原則禁止とし、新設の設備への使用は認めないとする報告書をまとめた。同省は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)への諮問、答申を経て、来年度中に労働安全衛生法施行令を改正、施行する方針。ただ、現在の技術水準では代替品がない5種類は例外として禁止除外品とする。同省は来年度中の全面禁止を目指してきたが先送りすることになった。08年に改めて禁止除外品を見直す。

 報告書は、石綿製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止し、新規の設備には使用を認めないとした。ただ、国民の安全確保のうえで、例外的に禁止除外とせざるを得ない製品として、既存の化学工場や製鉄所で配管などの接合部分に使われているシール材4種類(ジョイントシートガスケット、うず巻き形ガスケット、メタルジャケット形ガスケット、グランドパッキン)とロケットモーター用断熱材の計5種類を挙げ、用途や使用条件など禁止除外にあたっての要件を示した。こうした製品は耐熱、耐圧、耐腐食性の点で、代替品が未完成という。禁止除外品を5種類に限定することで、昨年(1~11月)の石綿輸入量110トンの8割が削減できるとみている。

 政府は昨年7月に公表したアスベスト問題への当面の対応で「遅くとも08年までに全面禁止を達成し、前倒しを含め検討する」とし、尾辻秀久・前厚労相は同9月の関係閣僚会議で「全面禁止は06年度中を目指したい」と発言していた。厚労省の古川祐二・化学物質対策課長は「建材と違い、シール材は代替化が難しい。今回は対応しきれず、(全面禁止の先延ばしは)やむを得ない措置」と話した。【大石雅康】


政府、チッソ特例措置廃止 業績好転受け判断 [朝日]

2006年01月11日07時41分
 水俣病の原因企業・チッソ(東京都中央区、岡田俊一社長)に対して政府が行ってきた内部留保に関する特例措置が、06年度に廃止される。環境、財務など関係省庁と熊本県の連絡会議で決めた。政府は00年から、同社の経営再建と患者への継続的な補償のため、本来なら熊本県などへの借り入れの返済にあてるべき資金を内部留保に回せる措置を講じてきた。しかし、液晶部品などの生産・販売が好調で経営が軌道に乗り始めたため、患者への補償に支障がないと判断した。

 チッソは05年3月期決算(単独)の当期損益で7億6100万円の黒字を計上した。当期黒字は、経営危機に直面していた00年3月期に政府の支援で黒字になったのを除けば34年ぶり。デジタル家電向けなどの液晶部材が好調なためで、06年3月期には、経常利益100億円の過去最高益を見込む。

 チッソは約1300億円の公的債務を抱えるほか、患者への補償費が年25億円、県への債務返済が年50億~90億円にのぼる。

 政府が00年から行ってきた特例措置は、チッソの経常利益から、患者補償のために借りた熊本県などに返すべき借入金の一部を内部留保に回せるというもの。この措置の結果、04年3月期には67億円の経常利益のうち30億円を内部留保に回せた。チッソは内部留保を使って海外拠点整備など新たな投資に回してきた。

 チッソは、患者補償が負担になって00年に経営危機に陥った。補償が続けられなくなるおそれがあったため、政府は、内部留保の措置のほか、熊本県からの借り入れの国による立て替えや、95年の政治解決の際に患者に払った一時金の債務免除など「極めてお得な制度」(政府関係者)で、支援を続けてきた。

 チッソは政府に対し、枠組み継続を求める構えだったが、見送った。業績好調な同社が政府の金融支援を受け続けることへの批判に配慮したとみられる。同社は「今の利益水準が続けば、特例措置が見直されても経営への影響はほとんどない」としている。

 支援の枠組みは3年ごとに見直す規定になっていた。03年は経営が安定していなかったため枠組みは延長されたが、政府は昨秋、チッソから業績好調の報告を受けていた。
URL:http://www.asahi.com/business/update/0111/041.html

■公害05? から続く

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