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◎平和をつくるための本棚06Ⅰ

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反ユダヤ主義の歴史1 ●[著]レオン・ポリアコフ


[掲載]2005年05月22日
[評者]中西寛

 いかなる社会にも後ろめたい部分は存在する。西洋においてその最たるものは、言うまでもなく反ユダヤ主義の伝統である。ホロコーストは20世紀の鬼子であるナチスが引き起こした特異な現象であったというのが今日の一般的な理解であろう。しかしその根元に、西洋社会の反ユダヤ主義という長く、かつ暗い歴史があることは否定できない。

 著者は、帝政ロシアに生まれ、長くパリに住み、ナチス占領下で南部非占領地域で潜伏生活をした経験をもつ。亡命ユダヤ人であり、反ユダヤ主義の研究者として世界的に知られた碩学(せきがく)である。本書は全4巻(邦訳では、別の1巻を加えて全5巻の予定)からなる著者の主著の第1巻であり、古代から17世紀までを扱う。

 ユダヤ人の歴史については既に日本語でも本格的な書物がいくつもあるが、反ユダヤ主義という角度から歴史を追った本書は、西洋史を裏側から見るという独特の趣をもつ。反ユダヤ主義は古代には存在せず、また近代以前の非西洋世界にも存在しなかった。それがはっきりとした姿を示したのは11世紀末、十字軍の時代の西洋であった。民衆の熱情が身近な異教徒であるユダヤ人迫害をもたらし、権力者は過剰な暴力を抑制しつつもユダヤ人を差別し、時に資金源とした。

 黒死病への恐怖、魔女狩り、宗教改革の熱情といった西洋社会の変動は、そのたびに反ユダヤ主義を再生した。それはユダヤ人が社会階層として定着しえたポーランドのような例外を除いて、神話的、空想的な内容だったが、現にユダヤ人がいる所では、その排撃の口実として用いられた。くり返される迫害の過程を通じて、ゲットーに住まい、苦難を耐え忍ぶというユダヤ人的心性も形成されてきたのである。

 描かれた内容は、人類史の中でも最も恥ずべき、残虐な事績の繰り返しでありながら、著者の文体は感情を超えて冷静で、時にユーモアも交えられている。誤解を恐れずに書けば、知的な意味で退屈させない。透徹した歴史記述の神髄を味わえる一書である。

反ユダヤ主義の歴史 (第1巻)
著者: レオン・ポリアコフ
出版社: 筑摩書房
ISBN: 4480861211
価格: ¥ 7,140


ネクスト 善き社会への道 ●アミタイ・エツィオーニ [朝日]

[掲載]2005年05月29日
[評者]松原隆一郎

 コミュニティーを社会の基盤とみなすコミュニタリアニズムは90年代以降のアメリカで、自由放任の市場原理にもとづく新保守主義と、福祉や権利を国家によって保障しようとするリベラリズムの双方を批判する思想として脚光を浴びた。

 アメリカでは建国時に、市場や連邦よりも地域共同体や自発的結社が社会を支えたという経緯があるから、中道を行く「第三の道」を標榜(ひょうぼう)してはいるものの、考え方としてはむしろなじみ深いはずだ。とはいえ、家族や地縁・信仰などを中心とする伝統的な共同体の再興を目指す社会保守主義とは異なる。職業や性的指向、趣味などを通じて社交する多様なコミュニティーも含める点が現在形だ。

 コミュニタリアニズムは当初、哲学畑でリベラリズムの非歴史的な人間観を痛烈に批判して注目されたが、社会学者であるエツィオーニは具体的な公共政策を打ち出している。以前の『新しい黄金律』は学術的大著だったが、今回は「同胞市民に向けて」書かれたパンフレットだけあって、内容は簡潔である。

 人々を自由放任や国の強制によって外面的につなぐのでなく、対話を通じて内面から秩序づけようとする点が重要だ。吸わない人に煙を吹きかけてはならないという配慮が共有されているならば、喫煙は法で禁止されなくてすむ。そして社交や対話は人として互いに敬意を払うところに始まるから、衣食住で「尊厳」を確保しうるだけの「ベーシックミニマム」が必要になり、そこから権利と責任の均衡をめぐって警察や公衆衛生、サイバースペースなどについての各論が展開される。

 近年、経済競争に勝つための高等教育が整備されつつあるが、学力よりも対話能力を養う初等・中等教育こそが重要だとエツィオーニは指摘する。これには感銘を受けた。学者は学者言葉、会社人間は会社言葉に染まる日本では、対話能力の低さこそが懸念される。「ゆとり教育」は、そこに焦点を当てるべきだった。

 監訳者解説はアメリカの政治潮流も踏まえて有益だが、字句表記などで自己宣伝の気配があり、戸惑う。

ネクスト 善き社会への道
著者: 公共哲学センター・アミタイ・エツィオーニ
出版社: 麗沢大学出版会
ISBN: 4892054712
価格: ¥ 2,520


あの戦争は何だったのか ●[著]保阪正康

[掲載]2005年09月04日
[評者]吉田司
(抜粋)
「高度成長を成し遂げた、その“集中力”たるや、私には太平洋戦争に突入した時の勢いと似ているように思えてしまう」「高度成長期までの日本にとって、“戦争”は続いていたのかもしれない」。つまりいま『あの戦争は何だったのか』と問うことは、過去をひたすら懴悔(ざんげ)することでも、逆に正義の戦争だったと居直ることでもない??やって来る未来(低成長の高齢少子化社会)に、日本人の精神や生きざまをどうセットし直すかを模索する未来的行為でもあるのだ。

 本書の主眼は、あの戦争の真の“黒幕”は「陸軍」(関東軍の暴走)ではなく「海軍」だったという意外性に置かれているが、それはすでに半藤一利の『昭和史』が指摘している。むしろ保阪の面白さは、歴史の転換点を昭和15年(皇紀2600年)=「国民は臣民となり、全(すべ)てが天皇に帰一した」大政翼賛の時代に見た点だ。日本人みんなが全体主義(ファッショ)(熱狂的集団主義)化したというわけで、即(すなわ)ち、保阪は「戦争責任問題」を陸海軍指導部だけでなく、戦後の高度成長まで続く日本人の“熱狂体質”にまで発展させた。そこが、ベリー・グッドなのである。そのリベラルな視点で、次は、団塊世代という戦後「経済戦争」のサラリーマン兵士の歴史総括をやってもらいたいと、心底俺(おれ)は思ったね。
TITLE:asahi.com: あの戦争は何だったのか [著]保阪正康 - ベストセラー快読 - BOOK
DATE:2005/09/12 16:44
URL:http://book.asahi.com/bestseller/TKY200509070210.html


テロルを考える ●ス-ザン・バック・モ-ス

出版社:みすず書房
発行:2005年7月
ISBN:4622071479
価格:¥2625 (本体¥2500+税)
評者・池内 恵(日文研助教授)
(抜粋)
 欧米の支配的な言説構造を批判する学派に属す著者が、9・11事件をきっかけにイスラム思想の批判理論としての可能性に目を向けた。

 しかし本書は根本的な誤解にもとづいている。なにしろ、〈1〉中東諸国でイスラム主義者として知られる思想家(ホメイニやサイイド・クトゥブなど)と、〈2〉イスラム主義批判を行い、「反イスラム」のレッテルを貼(は)られて殺害された思想家(マフムード・ムハンマド・ターハーなど)や、〈3〉欧米の大学に拠点を置き、英語やフランス語で活動する知識人(ヒシャーム・シャラビー、ムハンマド・アルクーン、ファズルール・ラフマーン、タラール・アサドなど)による言説をすべて、著者独自の規定により「イスラム主義」に含めてしまうのである。しかも著者が重ねて依拠するのは中東の現地の文派からは切り離された〈3〉の人たちである。

 元来が懸け離れた存在を一緒くたにしているのだから、そこに多様性を見出せるのは当然である。アメリカ化した知識人がアメリカの左派大学人向けに繰り出す議論が、期待どおり「グローバル経済における新自由主義のヘゲモニー」に対する政治的抵抗であるかのように見えてくるのも当然である。それらは現地のイスラム主義思想とはあまり関係がない。

 それでは本書に意味がないかというと、そうではない。イスラム思想に独自の解釈と意味づけを与えて拠(よ)り所にしようとする、欧米の左派思想の一潮流の典型例として非常に興味深い。欧米や日本の「イスラム言説」には、イスラム諸国から実際に発せられている議論よりも、こういった左派系の言説の影響が強い。希望的観測と誤解にもとづいて、イスラム教徒を取り込んだ「グローバル公共圏」を構想するアメリカ人思想家の試みが、まさにアメリカのグローバルな知的ヘゲモニーを背景にしてイスラム諸国に影響を及ぼしていく可能性もある。村山敏勝訳。

 ◇S・バック=モース=米コーネル大学教授。専門は批判理論、文学および視覚文化理論。
(2005年9月12日 読売新聞)
TITLE:テロルを考える : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
DATE:2005/09/12 16:45
URL:http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050912bk06.htm


ハードワーク ●[著]ポリー・トインビー

[掲載]2005年09月04日
[評者]苅谷剛彦

 経済を活性化させるために、「小さな政府」をつくる。非効率な官業は民営化する。官民を問わず、割高になる人件費を切り下げるため、正規職員を減らし、雇用は派遣会社との外部契約に変えていく。どこかの国の選挙公約にも似た内容だが、その先には、どんな社会と暮らしが待ち受けているのか。本書は、サッチャー改革以来、20年以上民営化路線を進めてきたイギリスで何が起きたのかを、生々しく伝えた問題提起のドキュメンタリーである。

 何より本書がユニークなのは、新聞記者を務める著者が、政府の定める「最低賃金」(それ以下での雇用は違法となる基準)で、本当に生きていけるかどうかを、自ら実践し、その体験をまとめたものだということだ。時給4.1ポンド(820円)の生活。それは公共の安アパートに移り住むことから始まる。引っ越し先の老朽化した建物は悪臭がひどく、麻薬や売春、暴力の温床でもある。

 そして次に、職探し。申告できる職歴も職業資格もない(という設定の)50歳を過ぎた女性である著者にできるのは、派遣会社に登録し、時給800円前後の短期的な仕事を転々とすることくらいだ。いつも仕事があるとは限らないし、なければ無給となる。病院の運搬係、学校の給食助手、電話セールス……著者がどんな仕事をし、職場にどんな人々がいたのかが本書の中心部分だが、そこから見えてくるのは、仕事のきつさばかりではない。効率化とコスト削減のための外部契約が、かえって仕事の非効率を生んだり、コスト高になる矛盾も見えてくる。

 こうした不安定な生活をする人々が、全体の30%を占める社会。国全体の経済成長にかかわらず、彼らの賃金は一向に上がらない。そして、子どもたちは、底辺から脱出するはしご??優れた教育を受ける機会を奪われる。「中流」崩壊後のイギリスに、日本の将来像が重なって見えてくる。貧富の拡大は、政策選択の結果、つくられるのだ。

 社会の平等を犠牲にしなければ経済的に成功できない、という神話を打ち消す研究成果の紹介にも目を引かれた。
TITLE:asahi.com: ハードワーク [著]ポリー・トインビー - 書評 - BOOK
DATE:2005/09/08 11:23
URL:http://book.asahi.com/review/TKY200509060311.html


魂の民主主義 ●[著]星川淳 [朝日]

[掲載]2005年09月04日
[評者]天外伺朗
(抜粋)
 12世紀、戦乱のたえなかった先住民・インディアンの5部族を、ピースメーカーという名の男が苦難の末にまとめあげた。その「イロコイ連邦」の社会・政治のシステムを記述したのが精緻(せいち)な117項目の「大いなる平和の法」。徹底した人民主権、自由と平等の精神、言論の自由、婦人や子供も含めた参政権、部族ごとの自治権、信教の自由、文民統制、二院制、大統領制などが含まれている。

 その後、アメリカ大陸を訪れた多くの探検家がもたらしたイロコイ社会の情報は、王と教会の圧政に苦しむヨーロッパ人の心をとらえ、「気高い未開人」という概念が定着していった。英国のトマス・モアは、その伝聞をもとに王や特権階級による圧政のない自由・平等な理想社会を『ユートピア』に書いた。ヨーロッパで起こった啓蒙(けいもう)主義思想は、まさにその底流の上に構築された。『社会契約論』を著したジャン・ジャック・ルソーは、インディアンを手本と言い切っている。

 アメリカ建国は啓蒙思想を基に、さらにフランクリンやジェファーソンなどのイロコイ情報通の主導で進んだ。イロコイ側の伝承ではイロコイ人に「手を引かれるように」と表現されている。

 著者は、そのイロコイ思想が日本国憲法制定に大きく影響したと主張。たしかに精神は受け継がれてはいるが、制定に関与した人たちは直接的にはイロコイを意識しておらず、この点は微妙。

 ただし、会議の冒頭ですべて自然に感謝し、7世代後まで配慮するインディアンの精神は先進国の民主主義には引き継がれなかった。政治・社会の混迷の中、民主主義を抜本から見直し、次の政治体制を考える上で見逃せない好著。
TITLE:asahi.com: 魂の民主主義 [著]星川淳 - 書評 - BOOK
DATE:2005/09/08 11:24
URL:http://book.asahi.com/review/TKY200509060309.html


CIA失敗の研究 ●落合浩太郎 [読売]

出版社:文藝春秋
発行:2005年6月
ISBN:4166604457
価格:¥756 (本体¥720+税)
評者・布施 裕之(本社編集委員)
(抜粋)
「米中央情報局(CIA)」の歴史から現状まで、公開資料を駆使してわかりやすく解説しながら、ところどころに独自の取材や聞き取りの跡をのぞかせる。

 「9・11テロ」をなぜ防げなかったかという主テーマに関しては、他の諜報機関との縄張り争い、秘密主義、「化石」とまで酷評された情報システムの立ち遅れなど、行政的、技術的な要因とならんで、組織破壊を招いたクリントン政権時代の「反軍思想」をあげているのが印象に残る。
(2005年9月5日 読売新聞)
TITLE:CIA失敗の研究 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
DATE:2005/09/05 14:09
URL:http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050905bk08.htm


科学大国アメリカは原爆投下によって生まれた ●歌田明弘 [読売]

出版社:平凡社
発行:2005年7月
ISBN:4582824455
価格:¥2940 (本体¥2800+税)
評者・浅羽 雅晴(本社編集委員)
(抜粋)
 前作『マルチメディアの巨人』ではコンピューター文化に焦点を当てて論じたが、今回は原爆開発に紙幅を割いた。なぜ原爆投下に踏み切ったか。戦争の早期終結に米国がやむを得ずとった措置というのが、日本の通説だ。ここでは、米国が戦後の核管理に踏み込むための“見せしめ説”と暴いており、残酷な論理には驚愕(きょうがく)させられる。

 またマルチメディア文化が、原爆開発の“悪”を薄めるために用意された“善”の部分であるとの指摘は、何とも複雑な気持ちが残る。原爆開発と投下の背景を、政治と科学の緊密な文脈でとらえた貴重な成果。戦後60年を再度見つめ直す格好の書といえる。(平凡社、2800円)
(2005年8月29日 読売新聞)
TITLE:科学大国アメリカは原爆投下によって生まれた : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
DATE:2005/09/05 14:09
URL:http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050829bk0b.htm


記憶・歴史・忘却 (上・下) ●ポ-ル・リク-ル [読売]

出版社:新曜社
発行:2004年8月
ISBN:4788509113
価格:上5300円 下4500円
評者・神崎 繁(首都大学東京教授)
(抜粋)
1980年代以降、冷戦構造の崩壊にともなって「歴史の終焉(しゅうえん)」が唱えられ、また実証的な歴史叙述への不信から、「物語」の重要性が注目されるようになったが、そうした試みを代表するものとしてリクールの『時間と物語』は、「新しい歴史教科書をつくる会」に参加した故・坂本多加雄によって自国中心史観の論拠とされた。他方、これとは対照的立場の政治学者・最上敏樹は、『人道的介入』(岩波新書)で、正義のための武力行使に関して、「人の苦しみはそれを見た者に義務を負わせる」というリクールの考えをやはり論拠として援用した。これらはおそらく完全な誤読でないとしても、引用の綴(つづ)れ織りとでも言うべきリクールの著作のもつ危険性の一端を示すものである。

 過去の歴史的記憶をめぐる問題群が、いわば「棘(とげ)」となってわれわれの思考に刺さった状態がつづいている現在、本書が「記憶」を「歴史」から区別して、その操作や濫用(らんよう)から議論を始めているのは重要である。だが、それ以上に重要なのは、「過ちの深さ」を自ら認めることと、それに対する無償の贈与としての「赦(ゆる)しの高み」について語る本書の珠玉の末尾である。

 「その共同体の記憶が、他の共同体の苦しみに対して目をつむり、耳をかさなくなるほどに、自分自身の苦しみに退き、閉じこもる」ことへの著者の最後の警鐘に、われわれは耳をすますべきである。

 絶筆となった本書を含め、リクールの大半の主著を訳された久米博氏の労をねぎらいたい。

 ◇P・リクール=1913~2005年。現代フランスを代表する哲学者。

(2005年8月22日 読売新聞)
TITLE:記憶・歴史・忘却 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
DATE:2005/09/05 14:10
URL:http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050822bk03.htm


アウシュヴィッツを越えて ●アナ・ハイルマン [読売]

出版社:東洋書林
発行:2005年6月
ISBN:4887216998
価格:¥2310 (本体¥2200+税)
(抜粋)
強制収容所の実態を被収容者の立場から語った貴重なドキュメントだ。アンネより6カ月早くワルシャワで生まれた著者が、収容所からの解放直後に綴(つづ)った手記と、後年移住先のカナダで記した回想録から成り、ワルシャワ・ゲットーとユダヤ人組織の蜂起(ほうき)、アウシュヴィッツで著者の姉を含む女性4人が起こした反乱とその結末等、他では読めない記録も含まれている。平戸久美子訳。(東洋書林、2200円)

評者・深町眞理子(翻訳家)
(2005年8月15日 読売新聞)
TITLE:アウシュヴィッツを越えて : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
DATE:2005/09/05 14:12
URL:http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050815bk07.htm


戦争のかたち ●下道基行 [読売]

出版社:リトル・モア
発行:2005年7月
ISBN:4898151558
価格:¥1890 (本体¥1800+税)
 大戦末期、飛行機を敵機から守るべく建造された掩体壕(えんたいごう)の中は、畑や農業倉庫になっているらしい。原画はカラー。各地のトーチカや砲台跡などを、柔らかな色調でとらえた写真を収録する。戦争遺跡の粛然とさせるような存在感にモノクロで迫るのとは別種の、新たな視線を感じさせる。

 著者は1978年生まれ。取材・撮影を始めたのはピザを宅配中、ある戦争遺跡に出合ったのがきっかけだという。いわば偶然の体験から出発したことが、目の前にある戦争遺跡の姿を率直に見つめる視線につながっているのだろう。砲台跡はしばしば花壇に転用されている。掩体壕に住んでいる人もいる。戦争という非常時の建造物はいまや戦後の日常的な風景と不思議な形で同居している。

 それが戦後60年を迎える現在の、一つの「戦争のかたち」なのだろう。戦争の記憶がどのような形で存在するのか、どう伝えられていくのか、改めて考えさせる一冊でもある。(リトルモア、1800円)(前)

(2005年8月15日 読売新聞)
TITLE:戦争のかたち : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
DATE:2005/09/05 14:13
URL:http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050815bk0b.htm


戦争ニュ-ス裏の読み方表の読み方 ●保岡裕之 [読売]

出版社:講談社
発行:2005年8月
ISBN:4062723328
価格:¥880 (本体¥838+税)
 フリージャーナリストが、特派員をインタビューして各国の報道事情を探る。戦争報道は、戦争を有利に遂行するための、権力側の“道具”になっているとの指摘が鋭い。(講談社+α新書、838円)

(2005年8月29日 読売新聞)
TITLE:戦争ニュ-ス裏の読み方表の読み方 : 新書 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
DATE:2005/09/04 15:31
URL:http://www.yomiuri.co.jp/book/paperback/20050829bk0e.htm
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