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#contents *ピアノ・ノート―演奏家と聴き手のために [著]チャールズ・ローゼン [朝日] [掲載]2009年10月11日 [評者]奥泉光(作家、近畿大学教授) &amazon(4622074893,text,image,left)  いまピアノを習っていたり、趣味で弾いたり、あるいは自分では弾かなくともピアノ音楽に関心を持つ人は、とにかく一度は本書を繙(ひもと)くべきだ。十九世紀から二十世紀、いわゆる西洋クラシック音楽の世界に君臨し続けてきたピアノという楽器と、その演奏をめぐる諸問題が、自身第一級のピアノ演奏家である著者の経験を軸に、ベートーベン、シューマンをはじめ多くの作曲家や、シュナーベル、ルービンシュタインといった名ピアニストの、興味深いエピソードとともに語られていく。  読んで愉(たの)しいタッチは軽妙だけれど、ときに楽譜を図示して論じられる内容の響きは深い。これは著者ローゼンが、音楽一般への高度な知識と、音楽にとどまらぬ広汎な教養の持ち主だからで、「訳者あとがき」で紹介されている、「音楽について物を書く人間で、ローゼンのような才能をもつ者は他にいない」というエドワード・サイードの評言も頷(うなず)ける。  本書を読んで、自分はいろいろと疑問が氷解した。たとえば、同じピアノを二人の演奏家が弾いて「音色」が違うのはなぜなのか? ホロビッツと猫が同じピアノの同じ鍵盤を一音だけ押したとき、そこに「音色」の違いはあるのか? グレン・グールドはあんな低い椅子(いす)に座って何か支障はないのか? ピアニストはコンサートで観客から鼓舞されることはあるのか? レコーディングの際、あとからテープを切り貼(ば)りして修正することに、演奏家は忸怩(じくじ)たる思いを抱くのか? 等々の疑問である。  新たな思索に導かれることも多くあった。一つだけあげるなら、西洋音楽の合理化の最大の推進力であったピアノの時代が、二十一世紀のいま黄昏(たそがれ)を迎えているのだとして、そのことの意味は何か? といった問いである。そうして、本書を読み終えた評者は、なにはさておき、日本では演奏があまり知られていないローゼンのピアノが聴きたくなった。と思ったら、巻末にはちゃんと解説とディスコグラフィーがついていた。これも嬉(うれ)しい。     ◇  朝倉和子訳/Charles Rosen 27年生まれ。ピアニスト・音楽批評家。 著者:チャールズ・ローゼン 出版社:みすず書房  価格:¥ 3,360

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