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●ダウニング・ストリート・メモ 解説と全訳 +ダウニング・ストリート・メモ 解説と全訳 +ブッシュは疑惑に答えよ *ブッシュは疑惑に答えよ Subject:[TUP-Bulletin] 速報513号 ブッシュは疑惑に応えよ 050615 Date:Wed, 15 Jun 2005 22:33:38 +0900 To:TUP-Bulletin@yahoogroups.jp 「ダウニングストリート・メモ」への応答を求めるブッシュ大統領への手紙 と、大統領弾劾をとの米国民への檄 ================================== イラク侵略開始後、ブッシュ大統領と米首脳を弾劾すべしとの声を最初にあげ たラムゼー・クラーク元米司法長官は、弾劾書を公開しています。 http://impeachbush.pephost.org/site/PageServer?pagename=VTI_articles (「TUP速報399号ブッシュ政権を弾劾する04年11月1日」をご参照ください。 http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/426 ) TUP速報499号で全文が紹介されている機密文書「ダウニングストリート・メ モ」――ロンドンのダウニングストリートにある英首相官邸で行われた秘密会 の議事録なので、このように呼ばれています――は、アメリカとイギリスが根 を捏造してイラク侵略に踏み込んだことを白日の下にさらけ出しました。 この機密文書が明らかになって、米議会によるブッシュ大統領の弾劾、また、 ブレア首相の国際刑事裁判所(ICC)への訴追が現実味を帯びてきました。英サ ンデータイムズ紙が5月1日にこの機密文書を掲載してから1ヵ月が経過した現 在も、まだ、そのような動きは見えていませんが、ジョン・コンヤーズ・ジュ ニア下院議員ら89人の連邦議員が連名で、ブッシュ大統領にこの機密文書に対 するコメントを求める書簡を送り、同時に、大統領に回答を求める手紙に署名 するよう、コンヤーズ議員が署名者10万人を目標に国民に呼びかけています。 また、ノーマン・ソロモンがブッシュ大統領弾劾を実現しようとの檄を小論に まとめています。 米国民には是非ブッシュ大統領の不正を正して欲しいものです。今後の経過を 注目したいと思います。                     寺尾光身/TUPスタッフ =================================== ~~~~~~~コンヤーズ下院議員による米国民への呼びかけ~~~~~~~ ( http://www.johnconyers.org/ ) ダウニングストリート・メモ 2005年5月27日 仲間の皆さん: 皆さんの多くがご存知のように、最近英国で極秘メモが明るみに出ましたが、 これは、アメリカ合州国政府がはたして信頼できるのかに重大な疑いを抱かせ るに十分なものだと思います。「ダウニングストリート・メモ」と呼ばれるこ のメモは、内容はトニー・ブレア首相と英政府高官とで行われた会議の記録で あり、イラク戦争へ導いていくためにブッシュ政権が行った多くの主張に、重 大な疑問を投げかけています。イラクでは1600人を超える男女の米兵が死に、 イラク人数十万人が殺され、2000億ドルを超える納税者の税金がこの戦争遂行 についやされている事実を見れば、私たちはこれ以上傍観者でいることはでき ません。 同僚議員88人と共に、私は大統領にこの重大な件について回答するよう要請す る手紙を書きました。しかし、真実を追究する私たちのこの活動はこれまで無 視されてきました。皆さんのご支援をお願いしたいのです。アメリカ国民はこ の件に関して回答をもらう権利がありますし、大統領はこのメモについて真実 を語るよう、国民の皆さんが直接要求するべきだと、私は確信しています。そ のために、89人の国会議員が大統領に突きつけた質問に大統領自身が回答する よう要請する大統領宛ての手紙に、皆さんの署名をお願いします。 私自身が責任を持ってその手紙をホワイトハウスに届けます。 皆さんはこの手紙を読み、自由に後ろに署名してください。皆さんもそうだし 私も、ホワイトハウスが何とかこの件が尻すぼみにうやむやになって欲しい、 と思っていることはわかっています。しかし、ここ数週という短期間に、私た ちの断固たる姿勢によって、このメモは主要紙の記事になり、ホワイトハウス の記者会見でも取り上げられるに至りました。皆さんの助けがあれば、ブッ シュ政権に説明責任を果たさせることが可能になります。 どうか皆さんの友人や同僚にこの重要な手紙を手渡して、一緒に署名するよう お願いしてください。 皆さんの援助と支援、どうもありがとうございます。 ジョン・コンヤーズ・ジュニア ~~~~「ダウニングストリート・メモ」に関する大統領への手紙~~~~ ( http://qrl.jp/?174199 [圧縮URL]) 「ダウニングストリート・メモ」に関する大統領への手紙 ジョージ・W・ブッシュ閣下 アメリカ合州国大統領 1600 Pennsylvania Ave, N.W. ワシントンDC、20005 親愛なる大統領様、 以下に署名した私たちは、トニー・ブレア英首相と英閣僚級高官が行った会議 の記録を記したダウニングストリート・メモなるものがロンドンタイムズ紙に 最近明らかにされたことに、強い関心を持っていますので、この手紙を書いて おります。アメリカ合州国と英国は、2002年の夏にはイラク攻撃について合意 していたことを、この記録は示していますが、これは侵略が行われた時点より かなり前であり、また、あなたが軍事行動決行の国会承認を求めた時点からさ えも前であり、さらに、この戦争を正当化するために米国当局が故意に情報を 操作したものであることを示しています。 この英政府の記録が、ブッシュは2002年7月の時点ですでに軍事行動に出る決 心をしていた、との英高官の言辞を引用していることは、特記に値します。に もかかわらず、一月後に、「すべての選択肢を考慮に入れる」つもりであると あなたは述べ、戦争の「予定表は存在しない」と語られました。ドナルド・ラ ムズフェルド国防長官は「イラクと戦争を始めるというような決定は、大統領 はしていない」と言い切っていました。 さらに、イラクが大量破壊兵器を保有していたという根拠の無い主張がどうし て出てきたのかということが、なぜこの戦争に踏み出したのかという重大な疑 問としていまだに消えずに残っています。これが「諜報機関の大失敗」、換言 すればミスの結果なのか、それとも戦争擁護を正当化するために、意図的にそ して周到に情報を操作した結果なのか、について、なおも議論が続いていま す。ダウニングストリート・メモはこの論争を解明するものでもあるようで す。米国で「政策に都合がいいように、情報や事実をでっちあげた」、との英 国の諜報機関の長の発言が引用されているからです。 以上のような懸念がありますので、私たちはあなたに以下の質問にお答えくだ さるようお願いするものです。 1) あなたあるいは政府のどなたかが、この漏洩した文書の内容は正しくない と反論されますか? 2)戦争決行の議会承認を求める以前に、同盟軍参加を求めることも含めて、 戦争への手筈を整えていたのでしょうか? あなたあるいは政府のどなたか が、これより前に侵略行為に参加の承認を英国から取り付けましたか? 3)この記録に示されているように、戦争正当化に役立たせるために、兵器査 察団に関しての最後通告を作る努力をしていましたか? 4)あなたとブレア英首相とがイラク侵略が不可避であると合意したのは、ど の時点でしたか? 5)漏洩した文書に述べられているように、情報と事実を政策に都合がいいよ うに「でっち上げる」ために、米諜報機関と英政府当局が協力しあったので しょうか? これらの質問は、下院議員ジョン・コンヤーズ・ジュニアが代表となって連邦 議員89人が2005年5月5日にあなたにお送りしたのと同じものです。米国市民そ して納税者として、私たちは次のように考えます。我が国を代表し開戦を宣言 するに当っては、国民が我が政府および最高指揮官を信頼できることが絶対に 必要です。したがって、以上の質問に、あなたができる限り迅速に、公開して お応えくださることを要求したいと思います。 この件を早急にご検討くださいますよう、心からお願い申し上げます。 敬具 氏名: 町名番地: 市、州: 郵便番号: Eメールアドレス: ~~~~~~~~~~~ノーマン・ソロモンの小論~~~~~~~~~~~ ( http://www.tompaine.com/print/the_key_to_impeachment.php ) 弾劾への手掛かり ノーマン・ソロモン 2005年6月1日 ノーマン・ソロモンの新著、「How Presidents and Pundits Keep Spinning Us to Death(お手軽な戦争-大統領と評論家たちは如何に我われを死に巻き込 んでいるか)」、6月に刷り上り。詳しくは www.WarMadeEasy.com へ。 ブッシュ大統領を弾劾すべきだとお考えなら、本気になるべき時が来ました。 私たちは巨大な障害に直面しています――しかもその障害は弾劾のための法的規 準とは何の関係もありません。すべてマスコミと政治の問題です。 2005年も5ヵ月が過ぎました。ブッシュを弾劾しようとする運動は大変小さな ものでしかありません。そのような運動にのしかかっている大きな因子は次の 3つです。1) 連邦議会を共和党が牛耳っていること。2) 民主党の連邦議員が 無気力に慣れきっていること。3) もしかすると大統領は本当は戦争犯罪を犯 しているかもしれない、という考えを、主流マスコミが取り上げようとしない こと。 当面、共和党を多数派から引き摺り下ろすことはできません。しかし、民主党 の連邦議員に火をつけることは、やろうとすればできるのです。それからこの 数週の間に、圧倒的な啓発的、「扇動的」キャンペーンを打ち上げて、報道機 関に強い衝撃を与えることは可能です――その際先日来明るみに出たダウニン ストリート・メモにスポットライトをあて、なぜ重大な憲法問題としてのこの メモの意味を明らかにしなければいけないのか、ということを説明することです。 トニー・ブレア首相が側近と2002年7月に行った会議の議事録を記したこのメ モが数週前に漏出したことは、弾劾に値する違法行為についてブッシュが有罪 であることの、かつて無い最強の証拠となる可能性があります。下院司法委員 会の民主党有力下院議員ジョン・コンヤーズがついこの5月にこう書いています。 * 「第一に、戦争開始に至るまでには政府はあらゆる選択肢を模索しつく すつもりである、と連邦議会と米国民に対して行った政府の意思表明とこのメ モの内容とは真っ向から矛盾すると思われます。議事録によると、2002年7月 には政府はすでにイラクに戦争を仕掛けるとの決定をしていました。」 * 「第二に、イラクが大量破壊兵器を保有していると間違って述べている 欠陥情報が、単なる「ミス」だったのか、それとも戦争は必然であることを支 持するようにあらかじめ定めた結論に導くために、意図的に手を加えた結果 だったのか、ということに関して、過去一年有半、アメリカ合州国内で論争が 巻き起こりました。このメモは米国内で戦争に踏み込む決定に都合がいいよう に、情報や事実をでっちあげた、と述べており、この問題は決着がついている と思われます。」 サイト www.AfterDowningStreet.org が5月26日に立ち上がったのは、マスコ ミと政治の場で論点を構築しなければと考え、一歩一歩着実にこの問題に迫ろ うとしている実績ある進歩的団体が連合した成果です。この連合は下院での審 問決議を呼びかけていますが、そうなれば法務委員会の場での正式な調査が行 われることになります。 「最近漏れてしまったダウニングストリート・メモは、イラクに対する戦争に 踏み切った根拠について、アメリカ合州国議会と米国民を騙し、誤った方向に 導く陰謀に、合州国大統領が積極的に関与したことの、これまでに無く有力な 証拠となるものです」と、ジョン・C・ボニファズ弁護士がコンヤーズに最近 書き送っています。「もし事実であれば、その行為はアメリカ合州国憲法第二 条第四節『大統領、副大統領および合州国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪 またはその他の重罪および軽罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合 は、その職を免ぜられる。』に規定される重大な犯罪を構成するものです。」 とも。 憲法第一条第八節は連邦議会だけに宣戦布告をする権限を与えています――し がって、イラク侵略の下準備の中での嘘は結局憲法条項に対する犯罪的攻撃に 他ならない、と言うこともできます。しかし、「重罪および軽罪」という文言 は極めて大まかな言い方です。そして歴史をひもといてみると、ワシントンの マスコミ・政界が織りなす中枢的な論議の場では、戦争犯罪が弾劾というよう なスケールで話題になることすらまれでした。 1974年のウォーターゲート疑惑事件では、ニクソン大統領は、司法委員会が27 票対11票で弾劾勧告を承認した後にすぐさま辞任して弾劾を免れました。同勧 告では、司法妨害を理由として、下院本会議による弾劾を勧めていました。こ の法務委員会で、弾劾条項の中にニクソンによる違法なカンボジア爆撃――そ て爆撃に関してついたうそ――を含めることに賛成票を投じたのは、委員中12 だけでした。 もう一つ戦争関連で弾劾の動きがあったのはイラン・コントラ疑惑*に応じて でした。マスコミ報道や議会審議では知ることはできなかったはずですが、 レーガン政権のイラン・コントラ工作は、アメリカに支援されたコントラ・ゲ リラがニカラグアの一般市民を恐怖に陥れ、その中で数千人を殺した米政権が 行った戦争の一環をなすものでした。テキサス州選出で民主党のヘンリー・ゴ ンザレス下院議員が1987年にレーガン大統領(それから、ついでのことに ジョージ・H・W・ブッシュ副大統領)の弾劾を執拗に求めましたが、このとき 賛同した議員はほとんどいませんでした。 *訳者註:イラン・コントラ疑惑=中米ニカラグアのソモサ独裁政権をサン ディニスタ民族解放戦線が打倒しましたが、レーガン大統領は旧ソモサ派の反 政府ゲリラ・コントラを支援し、新政権に圧迫を加えました。米議会がコント ラ支援を禁止したにもかかわらず、レーガン政権は敵対していたイランへの武 器売却代金など3000万ドルをコントラに与えるとうい違法行為を行いました。 いわゆるイラン・コントラ疑惑です。 父ブッシュ大統領が湾岸戦争を開始する前日、ゴンザレス議員はふたたび道徳 的高みを示しました。1991年1月16日、この一匹狼の民主党員は下院の議場に 立ち、ブッシュを五つの訴追項目に関して弾劾する決議案を提出すると発言し ました。ナショナルジャーナル誌はつぎのように報じました。「ゴンザレスに よると、ブッシュが犯した憲法違反には、『貧しい白人、黒人、メキシコ系ア メリカ人、ヒスパニック系アメリカ人が圧倒的多数を占める中東派遣の』志願 兵からなる軍隊を指揮している平等保護条項違反や、国連安全保障理事会理事 国に『イラクに対する好戦的行動を支持するよう買収、恫喝、脅迫している』 国連憲章違反があげられていた。」 過去において、戦争犯罪で大統領を弾劾しようとの試みはすべて、ポトマック 川に投ぜられた石のように沈んでしまいました。今回そんなことにさせないた めには、私たちの取組みが必要です――国じゅうで団結するのです――徹底的な公 的調査を行い、草の根からの強大な力となって現れるうねりを作り出しましょ う。マスコミの壁を押し倒し、大統領の戦争犯罪と憲法に基づく適切な処罰に 関する現実的な議論の輪の中に政治家を引きずりこむ大きな力は、大規模な運 動からしか生まれません。 翻訳:寺尾光身/TUPスタッフ TUP速報 配信担当 萩谷 良 電子メール: TUP-Bulletin-owner@yahoogroups.jp TITLE:wsfj - Outlook Express DATE:2005/06/16 14:40 URL:mhtml:mid://00000069/ *ダウニング・ストリート・メモ 解説と全訳 イギリス政府の機密文書が証明するイラク侵略という巨大な犯罪 安濃一樹 2005年5月14日 5月1日、英サンデータイムズ紙がイギリス政府の機密文書を掲載した【1】。議会選挙を背景としてリークされたこの文書は、イラクに対する攻撃と占領が国際法に反する犯罪行為であることを証明している。 内部からの告発や証言はこれまでにもあった。そのつど、アメリカやイギリス政府がいかに腐敗し無能で残忍であるかが明らかにされたが、政府は情報操作(スピン)が巧みで、権力に従順な企業メディアの協力をえて、いつのまにか批判をはぐらかしてしまう。 イラクをめぐる世界の情勢に関心を持ち、信頼できる資料や論説・証言を調べた人ならだれでも、イラク侵略が不法行為であることを「知っていた」けれど、どれほど説得力ある論証を重ねても犯罪を証明することはできなかった。しかし、今回リークされた秘密メモは、イラク侵略という巨大な犯罪をアメリカとイギリスが共謀して犯したことの確かな証拠となる。 メモは、2002年7月23日に首相官邸で開かれた会議の内容を要約したものだ。会議に招かれたのは首相の側近と外交・情報・軍事・法律を担当する閣僚だけで、他の大臣たちは会議があることも知らされていなかった。 メモの核心となるのは、MI6(アメリカのCIAに相当する)のディアラブ長官による次の発言である。 ──アメリカ政権の態度が明らかに変わってきた。武力行使はもはや当然だと見なされている。攻撃を正当化するために、テロリズムと大量破壊兵器を同時に[サダム政権と]結びつける。しかし、政策に合わせて情報を作り上げ、事実をねじまげているだけだ── ブッシュ政権がイラク侵略を正当化するために、サダム政権とアルカイダの関係や大量破壊兵器の脅威を利用すること、そしてそれがすべてウソであることをイギリス政府は(そして、おそらく世界の数多くの政府も)知っていた。ストロー外相は、イラクを侵略する「理由が薄弱だ」として、次のように説明している。 ──サダムは近隣諸国の脅威とはなっていないし、大量破壊兵器を開発するイラクの能力はリビア・北朝鮮・イランよりも劣る── その上でストローは、武器査察団を受け入れるかどうか、サダムに最後通告を出すよう国連に働きかけるべきだと対策を提案し、サダムが拒絶すれば攻撃する理由となることを示唆した。つまり、国連のイラクに対する通告は、戦争を回避するためではなく、イラク侵略を正当化するために仕組まれたものだった。 それで法的な根拠がえられるのだろうか。ゴールドスミス法務長官の次の証言に注目しよう。 ──イラクの政権交代がいかに望ましく思えても、それだけでは軍事攻撃の法的な根拠とはならない── イギリス人が好む乾いたユーモアだが、長官が意味したことは、ブレア首相も会議に顔をそろえた面々もよく承知していたに違いない。侵略戦争は国際法に反する。もっとも厳しく裁かれる大罪である。ニュルンベルク裁判の判決文には次のように記されている。 ──戦争は本質的に邪悪なものである。その影響は、交戦国の間にだけに留まらず全世界に及ぶ。よって、侵略戦争を遂行することは、単なる国際犯罪ではなく、究極の国際犯罪となる。あらゆる犯罪を引き起こす侵略戦争は、すべての悪を内包するという点で、他の戦争犯罪と隔絶している── これを「平和に対する犯罪」と呼び、「人道に対する犯罪」と並ぶ大罪と規定している。ニュルンベルク裁判と東京裁判で、「平和に対する犯罪」を問われた戦犯は全員が絞首刑を宣告された。 アメリカは、自国の利益のために国際法の精神を踏みにじり、国際刑事裁判所(02年4月に効力発生)の権威も認めていない。しかし、ヨーロッパの諸国は国際法を尊重している。イギリスも例外ではなかった。だがゴールドスミス卿は、不法行為を憂慮しながらも、攻撃を正当化するために何らかの法的根拠を用意する役目を引き受けている。 会議の前に参加者に渡された報告書(これも秘密メモと同時にリークされた)によると、会議に先立つ4月にクロフォードへ招かれたブレアは、ブッシュとの会談でアメリカの計画に協力することを約束していた。イラクを侵略して占領する正当な理由がないことを心配する前に、外務省やMI6の報告を聞く前に、参戦することを約束していた。もちろん、この約束は内閣に計って決めたものではない。労働党の議員たちも知らなかった。イギリス市民に対しては、「イラク攻撃については何も決まっていない」と繰り返していた。 会議はイギリスが軍事攻撃に加わることを前提としている。だから、ブレアは次のように言い切った。 ──政治状況が整えば、国民はイラクの政権交代を支持するだろう。そこで、重大な問題がふたつある。まず、この軍事作戦が成功するかどうか。そして、作戦を支障なく進めるために、政府がどのような政治戦略を立てるべきか── 「政治状況が整えば」とは曖昧な表現だが、リークされた別の文書を見ると、イギリス首相はアメリカ大統領に戦争の条件をもっとわかりやすく説明している。 ──諸国の協力をえて連合軍を組織すること。そして、世論を作り上げること── ここから両国政府による情報操作が始まる。企業メディアは政府のプロパガンダをさらに増幅して何度も流しつづけ、人びとの恐怖や怒りを駆り立てようとした。それでも、私たちは覚えている。市民は戦争を支持しなかった。アメリカやイギリスだけでなく、全世界の市民が連帯した。戦争に反対し抗議の声を上げた。 権力を握る者たちが真実を覆い隠し、歴史を塗り替えようとしても、私たちは忘れない。サダム政権が受け入れた武器査察団をバグダッドから退去させたのはアメリカだった。イラクではすでに10万人の命が奪われ、その何倍もの人びとが傷ついた。国家の富は多国籍企業群に略奪され、国土は劣化ウラン弾により永久に汚染された。占領軍に対する抵抗運動は激しくなるばかりで、イラクは大規模な内戦へと突き進んでいる。 しかし、2002年7月23日、ロンドンのダウニング街にある首相官邸では、国際法を無視し民主主義を忘れた者たちが、密かに戦争の準備を始めていた。アメリカ・イギリス連合軍の爆撃によって、バグダッドが燃え上がる8か月まえのことだった。 【1】The Secret Downing Street Memo, The Sunday Times - Britain (May 1, 2005). http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1593607,00.html ダウニングストリート(英首相官邸)メモ 秘密情報につき厳重に親展とすること。閲覧はイギリス政府の要人に限る。 送り先/デイビッド・マニング [首相つき外交政策顧問] 差出人/マシュー・ライクロフト [外交政策担当補佐官] 日付/2002年7月23日 メモ番号S195/02 他の配送先: 国防大臣 [ジェフ・フーン] 外務大臣 [ジャック・ストロー] 法務長官 [ピーター・ゴールドスミス] リチャード・ウィルソン卿 [内閣官房長官] ジョン・スカーレット [内閣府統合情報委員会(JIC)議長] フランシス・リチャーズ [政府通信本部長官] CDS [マイケル・ボイス、統合参謀本部議長] C [リチャード・ディアラブ、情報局秘密情報部(通称MI6)長官] ジョナサン・パウエル [首席補佐官] サリー・モーガン [政治戦略担当補佐官] アラステアー・キャンベル [首席報道官] イラクに関する首相会議(7月23日)について 7月23日、マニング卿は、他の配送先として上に名前をあげた関係者とともに、イラクについて話し合うためブレア首相と会議を開いた。 この記録の扱いには細心の注意を払うこと。メモをコピーしてはならない。会議の内容を知っておく必要があると認められた者だけに閲覧を許す。 ジョン・スカーレット[統合情報委員会(JIC)議長]が、イラクに関する情報とJICによる最新の分析を要約した。サダム政権は残虐で、恐怖によって支配している。政権を倒すには大規模な軍事攻撃を行うしかないようだ。サダムは恐れている。しかし、空と陸から攻撃されるだろうと予測してはいても、攻撃が間近に迫り、しかも圧倒的な規模になるとは考えていない。イラク政権内の意見によると、近隣諸国はいずれもアメリカに味方する。イラク軍は一般兵士の志気が低い。サダムを支持する国民はおそらく少数派である。 C[ディアラブMI6長官]が、先日ワシントンで行われた[ジョージ・テネットCIA長官との]会談の様子を報告した。アメリカ政権の態度が明らかに変わっている。武力行使はもはや当然だと見なされている。攻撃を正当化するために、テロリズムと大量破壊兵器を同時に[サダム政権と]結びつける。しかし、政策に合わせて情報を作り上げ、事実をねじまげているだけだ。NSC(アメリカ国家安全保障会議)は国連での交渉ごとなど我慢できないし、[理事国を説得するために]イラク政権の記録をまとめて公開するつもりもない。またワシントンでは、軍事攻撃が終わったあとの対策について何も議論されていないに等しい。 CDS[ボイス統合参謀本部議長]によると、CENTCOM(米中央軍司令部)において、米軍の戦略担当者たちが8月1日と2日に、ラムズフェルドが3日に、ブッシュが4日に、それぞれ攻撃を指令する。 アメリカには大きく分けて二つの選択がある。 (a)準備を整えた上での開戦。兵士25万をゆっくりと配備し、短期(72時間)の空爆を行う。そして南の国境を超えバグダッドまで侵攻する。開戦までに90日を要する(準備に30日、クウェートへの配備に60日)。 (b)急激な開戦。中東にすでに配備されている兵力(3x6000)を使い、空爆を続ける。この空爆を正当化するために、イラク軍の挑発行為に応戦するかたちで攻撃を開始する。開戦まで60日を要するが、空爆はもっと早くから行う。この選択は危険を伴う。 いずれの選択を取るにしても、ディエゴガルシア島[英領]とキプロス島[基地がある地域のみ英領]の基地が必要なので、アメリカはイギリス(およびクウェート)の協力が不可欠だと見なしている。トルコを始めとする湾岸諸国も重要だが、協力が得られなくても大きな支障とはならない。イギリスには参戦する上で三つの選択がある。 (1)ディエゴガルシア島とキプロス島の基地を提供する。加えて、特殊部隊が編成する3個飛行中隊を投入する。 (2)上に加えて、海軍と空軍を投入する。 (3)さらに加えて、陸軍4万兵を投入する。おそらく米軍とは別行動で、トルコの国境を越え北部から侵攻し、イラク軍の2個師団を釘づけにする。 国防相[フーン]によると、アメリカはサダム政権に圧力をかけるために「活発な活動」をすでに始めている。いつ開戦するかまでは決まっていないが、アメリカ議会選挙の30日前をめどにして、来年1月に武力行使が始まる可能性が高い。 外相[ストロー]は、今週この問題についてコリン・パウエル[米国務長官]と会談する予定だとして、次のように意見を述べた。開戦の期日こそ決まっていないが、ブッシュがすでに武力行使を決断したことは間違いない。しかし、攻撃する理由が薄弱だ。サダムは近隣諸国の脅威とはなっていないし、大量破壊兵器を開発するイラクの能力はリビア・北朝鮮・イランよりも劣る。だから、国連の武器査察団を再び受け入れるかどうか、サダムに最後通告を突きつける計画を練るべきだ。そうすれば攻撃を正当化する法的な根拠を得ることもできるだろう。 法務長官[ゴールドスミス]は、イラクの政権交代がいかに望ましく思えても、それだけでは軍事攻撃の法的な根拠とはならないと主張した。そして、考えられる法的根拠を三つあげた。まず、正当防衛としての攻撃。つぎに、人道介入としての攻撃。そして、UNSC(国連安全保障理事会)の議決にもとづく攻撃。最初のふたつはイラクに当てはまらない。3年前に出された安保理決議1205にもとづいて攻撃することも難しい。もちろん、このような状況は変わるかもしれないが、と長官は示唆した。 首相[ブレア]は、サダムが武器査察官を拒絶すれば政治と法律に関する問題は大きく違ってくると指摘して、次のように述べた。政権交代と大量破壊兵器は結びつけられている。大量破壊兵器を製造するような政権は倒さなれればならないということだ。リビアやイランに対しては、イラクとは違った戦略をとる。政治状況が整えば、国民はイラクの政権交代を支持するだろう。そこで、重大な問題がふたつある。まず、この軍事作戦が成功するかどうか。そして、作戦を支障なく進めるために、政府がどのような政治戦略を立てるべきか。 第一の問題について、CDS[ボイス議長]は、アメリカの作戦計画がうまくいくかどうかは今のところ判断できないと述べた。たとえば、開戦の当日にサダムが大量破壊兵器を使ったらどうなるのか、バグダッドが陥落せずに市街戦は始まったらどうするのか、われわれは質問を重ねているところだとした。 国防相[フーン]は[ボイス議長に向かって]、サダムがクウェートやイスラエルに対して大量破壊兵器を使う可能性があることも話していただろうと指摘した。 外相[ストロー]は次のように述べた。成功の見込みがない限り、アメリカは軍事作戦を遂行しないだろう。よって、軍事戦略に関してはアメリカとイギリスの利害が一致している。しかし、政治戦略となると米英に違いが出てくる。アメリカに抵抗されても、イギリス政府は[国連を通して]サダムへ最後通告を出すという方策を慎重に模索するべきだ。サダムは国連の要請に強硬な対応を貫くと思われる。 ジョン・スカーレット[JIC議長]は、サダムが武器査察団をまた受け入れるとすれば、それは攻撃を受ける恐れが高いと確信した時だという考えを示した。 国防相[フーン]は首相[ブレア]に向かって、もしイギリスの参戦を求めるなら、決断を早く下す必要があると主張した。また、アメリカ政府には最後通告に手間をかける意味はないとする意見が多いと注意を促して、首相がブッシュに政治の状況を整理して説明することが重要だと述べた。 結論 (a)イギリスがいかなる武力攻撃にも参加することを前提として活動しなければならない。しかし、確固とした決断を下す前に、アメリカによる作戦計画の全体像を把握しておく必要がある。CDS[ボイス議長]は、イギリスがどのような体制で参戦するかについて検討していることをアメリカ軍に伝える。 (b)首相[ブレア]は、作戦を準備するのに必要な経費を確保することができるかという問題について再考する。 (c)CDS[ボイス議長]は、今週中に、[米軍の]軍事作戦の全容とイギリスの軍事支援がどのようなものになるかについて、詳細な報告書をまとめて首相へ送る。 (d)外相[ストロー]は、武器査察官たちの経歴について首相に報告書を送る。また、[国連が]サダムへ最後通告を出すように慎重に少しずつ働きかける。トルコを始めとする中東諸国やEU主要国の見解や立場について、首相に助言を送る。 (e)ジョン・スカーレット[JIC議長]は最新の情報分析をまとめて首相に送る。 (f)法律上の問題を忘れてはならない。よって、法務長官[ゴールドスミス]は、FCO[外務省]とMOD[国防省]の法律顧問と協力して、法律に関するアドバイスを検討する。 (会議の結果を踏まえて行われる上記の任務については、それぞれに別個の書類で委託してある。) マシュー・ライクロフト 原文/The Downing Street Memo 翻訳/安濃一樹 漏洩したメモ全8部を保管するページへ ( )は原文の挿入語句。あるいは英文略称名とその和訳。 [ ]は訳文の補助語句。 編集/安濃一樹 ヤパーナ社会フォーラム http://japana.org/ mailto:kazuki@japana.org TITLE:http://www.japana.org/peace/japana/secret_memo.html - Microsoft Internet Explorer DATE:2005/06/27 09:04 URL:http://www.japana.org/peace/japana/secret_memo.html
●ダウニング・ストリート・メモ 解説と全訳 +ダウニング・ストリート・メモ 解説と全訳 +ブッシュは疑惑に答えよ *ブッシュは疑惑に答えよ Subject:[TUP-Bulletin] 速報513号 ブッシュは疑惑に応えよ 050615 Date:Wed, 15 Jun 2005 22:33:38 +0900 To:TUP-Bulletin@yahoogroups.jp 「ダウニングストリート・メモ」への応答を求めるブッシュ大統領への手紙 と、大統領弾劾をとの米国民への檄 ================================== イラク侵略開始後、ブッシュ大統領と米首脳を弾劾すべしとの声を最初にあげ たラムゼー・クラーク元米司法長官は、弾劾書を公開しています。 http://impeachbush.pephost.org/site/PageServer?pagename=VTI_articles (「TUP速報399号ブッシュ政権を弾劾する04年11月1日」をご参照ください。 http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/426 ) TUP速報499号で全文が紹介されている機密文書「ダウニングストリート・メ モ」――ロンドンのダウニングストリートにある英首相官邸で行われた秘密会 の議事録なので、このように呼ばれています――は、アメリカとイギリスが根 を捏造してイラク侵略に踏み込んだことを白日の下にさらけ出しました。 この機密文書が明らかになって、米議会によるブッシュ大統領の弾劾、また、 ブレア首相の国際刑事裁判所(ICC)への訴追が現実味を帯びてきました。英サ ンデータイムズ紙が5月1日にこの機密文書を掲載してから1ヵ月が経過した現 在も、まだ、そのような動きは見えていませんが、ジョン・コンヤーズ・ジュ ニア下院議員ら89人の連邦議員が連名で、ブッシュ大統領にこの機密文書に対 するコメントを求める書簡を送り、同時に、大統領に回答を求める手紙に署名 するよう、コンヤーズ議員が署名者10万人を目標に国民に呼びかけています。 また、ノーマン・ソロモンがブッシュ大統領弾劾を実現しようとの檄を小論に まとめています。 米国民には是非ブッシュ大統領の不正を正して欲しいものです。今後の経過を 注目したいと思います。                     寺尾光身/TUPスタッフ =================================== ~~~~~~~コンヤーズ下院議員による米国民への呼びかけ~~~~~~~ ( http://www.johnconyers.org/ ) ダウニングストリート・メモ 2005年5月27日 仲間の皆さん: 皆さんの多くがご存知のように、最近英国で極秘メモが明るみに出ましたが、 これは、アメリカ合州国政府がはたして信頼できるのかに重大な疑いを抱かせ るに十分なものだと思います。「ダウニングストリート・メモ」と呼ばれるこ のメモは、内容はトニー・ブレア首相と英政府高官とで行われた会議の記録で あり、イラク戦争へ導いていくためにブッシュ政権が行った多くの主張に、重 大な疑問を投げかけています。イラクでは1600人を超える男女の米兵が死に、 イラク人数十万人が殺され、2000億ドルを超える納税者の税金がこの戦争遂行 についやされている事実を見れば、私たちはこれ以上傍観者でいることはでき ません。 同僚議員88人と共に、私は大統領にこの重大な件について回答するよう要請す る手紙を書きました。しかし、真実を追究する私たちのこの活動はこれまで無 視されてきました。皆さんのご支援をお願いしたいのです。アメリカ国民はこ の件に関して回答をもらう権利がありますし、大統領はこのメモについて真実 を語るよう、国民の皆さんが直接要求するべきだと、私は確信しています。そ のために、89人の国会議員が大統領に突きつけた質問に大統領自身が回答する よう要請する大統領宛ての手紙に、皆さんの署名をお願いします。 私自身が責任を持ってその手紙をホワイトハウスに届けます。 皆さんはこの手紙を読み、自由に後ろに署名してください。皆さんもそうだし 私も、ホワイトハウスが何とかこの件が尻すぼみにうやむやになって欲しい、 と思っていることはわかっています。しかし、ここ数週という短期間に、私た ちの断固たる姿勢によって、このメモは主要紙の記事になり、ホワイトハウス の記者会見でも取り上げられるに至りました。皆さんの助けがあれば、ブッ シュ政権に説明責任を果たさせることが可能になります。 どうか皆さんの友人や同僚にこの重要な手紙を手渡して、一緒に署名するよう お願いしてください。 皆さんの援助と支援、どうもありがとうございます。 ジョン・コンヤーズ・ジュニア ~~~~「ダウニングストリート・メモ」に関する大統領への手紙~~~~ ( http://qrl.jp/?174199 [圧縮URL]) 「ダウニングストリート・メモ」に関する大統領への手紙 ジョージ・W・ブッシュ閣下 アメリカ合州国大統領 1600 Pennsylvania Ave, N.W. ワシントンDC、20005 親愛なる大統領様、 以下に署名した私たちは、トニー・ブレア英首相と英閣僚級高官が行った会議 の記録を記したダウニングストリート・メモなるものがロンドンタイムズ紙に 最近明らかにされたことに、強い関心を持っていますので、この手紙を書いて おります。アメリカ合州国と英国は、2002年の夏にはイラク攻撃について合意 していたことを、この記録は示していますが、これは侵略が行われた時点より かなり前であり、また、あなたが軍事行動決行の国会承認を求めた時点からさ えも前であり、さらに、この戦争を正当化するために米国当局が故意に情報を 操作したものであることを示しています。 この英政府の記録が、ブッシュは2002年7月の時点ですでに軍事行動に出る決 心をしていた、との英高官の言辞を引用していることは、特記に値します。に もかかわらず、一月後に、「すべての選択肢を考慮に入れる」つもりであると あなたは述べ、戦争の「予定表は存在しない」と語られました。ドナルド・ラ ムズフェルド国防長官は「イラクと戦争を始めるというような決定は、大統領 はしていない」と言い切っていました。 さらに、イラクが大量破壊兵器を保有していたという根拠の無い主張がどうし て出てきたのかということが、なぜこの戦争に踏み出したのかという重大な疑 問としていまだに消えずに残っています。これが「諜報機関の大失敗」、換言 すればミスの結果なのか、それとも戦争擁護を正当化するために、意図的にそ して周到に情報を操作した結果なのか、について、なおも議論が続いていま す。ダウニングストリート・メモはこの論争を解明するものでもあるようで す。米国で「政策に都合がいいように、情報や事実をでっちあげた」、との英 国の諜報機関の長の発言が引用されているからです。 以上のような懸念がありますので、私たちはあなたに以下の質問にお答えくだ さるようお願いするものです。 1) あなたあるいは政府のどなたかが、この漏洩した文書の内容は正しくない と反論されますか? 2)戦争決行の議会承認を求める以前に、同盟軍参加を求めることも含めて、 戦争への手筈を整えていたのでしょうか? あなたあるいは政府のどなたか が、これより前に侵略行為に参加の承認を英国から取り付けましたか? 3)この記録に示されているように、戦争正当化に役立たせるために、兵器査 察団に関しての最後通告を作る努力をしていましたか? 4)あなたとブレア英首相とがイラク侵略が不可避であると合意したのは、ど の時点でしたか? 5)漏洩した文書に述べられているように、情報と事実を政策に都合がいいよ うに「でっち上げる」ために、米諜報機関と英政府当局が協力しあったので しょうか? これらの質問は、下院議員ジョン・コンヤーズ・ジュニアが代表となって連邦 議員89人が2005年5月5日にあなたにお送りしたのと同じものです。米国市民そ して納税者として、私たちは次のように考えます。我が国を代表し開戦を宣言 するに当っては、国民が我が政府および最高指揮官を信頼できることが絶対に 必要です。したがって、以上の質問に、あなたができる限り迅速に、公開して お応えくださることを要求したいと思います。 この件を早急にご検討くださいますよう、心からお願い申し上げます。 敬具 氏名: 町名番地: 市、州: 郵便番号: Eメールアドレス: ~~~~~~~~~~~ノーマン・ソロモンの小論~~~~~~~~~~~ ( http://www.tompaine.com/print/the_key_to_impeachment.php ) 弾劾への手掛かり ノーマン・ソロモン 2005年6月1日 ノーマン・ソロモンの新著、「How Presidents and Pundits Keep Spinning Us to Death(お手軽な戦争-大統領と評論家たちは如何に我われを死に巻き込 んでいるか)」、6月に刷り上り。詳しくは www.WarMadeEasy.com へ。 ブッシュ大統領を弾劾すべきだとお考えなら、本気になるべき時が来ました。 私たちは巨大な障害に直面しています――しかもその障害は弾劾のための法的規 準とは何の関係もありません。すべてマスコミと政治の問題です。 2005年も5ヵ月が過ぎました。ブッシュを弾劾しようとする運動は大変小さな ものでしかありません。そのような運動にのしかかっている大きな因子は次の 3つです。1) 連邦議会を共和党が牛耳っていること。2) 民主党の連邦議員が 無気力に慣れきっていること。3) もしかすると大統領は本当は戦争犯罪を犯 しているかもしれない、という考えを、主流マスコミが取り上げようとしない こと。 当面、共和党を多数派から引き摺り下ろすことはできません。しかし、民主党 の連邦議員に火をつけることは、やろうとすればできるのです。それからこの 数週の間に、圧倒的な啓発的、「扇動的」キャンペーンを打ち上げて、報道機 関に強い衝撃を与えることは可能です――その際先日来明るみに出たダウニン ストリート・メモにスポットライトをあて、なぜ重大な憲法問題としてのこの メモの意味を明らかにしなければいけないのか、ということを説明することです。 トニー・ブレア首相が側近と2002年7月に行った会議の議事録を記したこのメ モが数週前に漏出したことは、弾劾に値する違法行為についてブッシュが有罪 であることの、かつて無い最強の証拠となる可能性があります。下院司法委員 会の民主党有力下院議員ジョン・コンヤーズがついこの5月にこう書いています。 * 「第一に、戦争開始に至るまでには政府はあらゆる選択肢を模索しつく すつもりである、と連邦議会と米国民に対して行った政府の意思表明とこのメ モの内容とは真っ向から矛盾すると思われます。議事録によると、2002年7月 には政府はすでにイラクに戦争を仕掛けるとの決定をしていました。」 * 「第二に、イラクが大量破壊兵器を保有していると間違って述べている 欠陥情報が、単なる「ミス」だったのか、それとも戦争は必然であることを支 持するようにあらかじめ定めた結論に導くために、意図的に手を加えた結果 だったのか、ということに関して、過去一年有半、アメリカ合州国内で論争が 巻き起こりました。このメモは米国内で戦争に踏み込む決定に都合がいいよう に、情報や事実をでっちあげた、と述べており、この問題は決着がついている と思われます。」 サイト www.AfterDowningStreet.org が5月26日に立ち上がったのは、マスコ ミと政治の場で論点を構築しなければと考え、一歩一歩着実にこの問題に迫ろ うとしている実績ある進歩的団体が連合した成果です。この連合は下院での審 問決議を呼びかけていますが、そうなれば法務委員会の場での正式な調査が行 われることになります。 「最近漏れてしまったダウニングストリート・メモは、イラクに対する戦争に 踏み切った根拠について、アメリカ合州国議会と米国民を騙し、誤った方向に 導く陰謀に、合州国大統領が積極的に関与したことの、これまでに無く有力な 証拠となるものです」と、ジョン・C・ボニファズ弁護士がコンヤーズに最近 書き送っています。「もし事実であれば、その行為はアメリカ合州国憲法第二 条第四節『大統領、副大統領および合州国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪 またはその他の重罪および軽罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合 は、その職を免ぜられる。』に規定される重大な犯罪を構成するものです。」 とも。 憲法第一条第八節は連邦議会だけに宣戦布告をする権限を与えています――し がって、イラク侵略の下準備の中での嘘は結局憲法条項に対する犯罪的攻撃に 他ならない、と言うこともできます。しかし、「重罪および軽罪」という文言 は極めて大まかな言い方です。そして歴史をひもといてみると、ワシントンの マスコミ・政界が織りなす中枢的な論議の場では、戦争犯罪が弾劾というよう なスケールで話題になることすらまれでした。 1974年のウォーターゲート疑惑事件では、ニクソン大統領は、司法委員会が27 票対11票で弾劾勧告を承認した後にすぐさま辞任して弾劾を免れました。同勧 告では、司法妨害を理由として、下院本会議による弾劾を勧めていました。こ の法務委員会で、弾劾条項の中にニクソンによる違法なカンボジア爆撃――そ て爆撃に関してついたうそ――を含めることに賛成票を投じたのは、委員中12 だけでした。 もう一つ戦争関連で弾劾の動きがあったのはイラン・コントラ疑惑*に応じて でした。マスコミ報道や議会審議では知ることはできなかったはずですが、 レーガン政権のイラン・コントラ工作は、アメリカに支援されたコントラ・ゲ リラがニカラグアの一般市民を恐怖に陥れ、その中で数千人を殺した米政権が 行った戦争の一環をなすものでした。テキサス州選出で民主党のヘンリー・ゴ ンザレス下院議員が1987年にレーガン大統領(それから、ついでのことに ジョージ・H・W・ブッシュ副大統領)の弾劾を執拗に求めましたが、このとき 賛同した議員はほとんどいませんでした。 *訳者註:イラン・コントラ疑惑=中米ニカラグアのソモサ独裁政権をサン ディニスタ民族解放戦線が打倒しましたが、レーガン大統領は旧ソモサ派の反 政府ゲリラ・コントラを支援し、新政権に圧迫を加えました。米議会がコント ラ支援を禁止したにもかかわらず、レーガン政権は敵対していたイランへの武 器売却代金など3000万ドルをコントラに与えるとうい違法行為を行いました。 いわゆるイラン・コントラ疑惑です。 父ブッシュ大統領が湾岸戦争を開始する前日、ゴンザレス議員はふたたび道徳 的高みを示しました。1991年1月16日、この一匹狼の民主党員は下院の議場に 立ち、ブッシュを五つの訴追項目に関して弾劾する決議案を提出すると発言し ました。ナショナルジャーナル誌はつぎのように報じました。「ゴンザレスに よると、ブッシュが犯した憲法違反には、『貧しい白人、黒人、メキシコ系ア メリカ人、ヒスパニック系アメリカ人が圧倒的多数を占める中東派遣の』志願 兵からなる軍隊を指揮している平等保護条項違反や、国連安全保障理事会理事 国に『イラクに対する好戦的行動を支持するよう買収、恫喝、脅迫している』 国連憲章違反があげられていた。」 過去において、戦争犯罪で大統領を弾劾しようとの試みはすべて、ポトマック 川に投ぜられた石のように沈んでしまいました。今回そんなことにさせないた めには、私たちの取組みが必要です――国じゅうで団結するのです――徹底的な公 的調査を行い、草の根からの強大な力となって現れるうねりを作り出しましょ う。マスコミの壁を押し倒し、大統領の戦争犯罪と憲法に基づく適切な処罰に 関する現実的な議論の輪の中に政治家を引きずりこむ大きな力は、大規模な運 動からしか生まれません。 翻訳:寺尾光身/TUPスタッフ TUP速報 配信担当 萩谷 良 電子メール: TUP-Bulletin-owner@yahoogroups.jp TITLE:wsfj - Outlook Express DATE:2005/06/16 14:40 URL:mhtml:mid://00000069/ *ダウニング・ストリート・メモ 解説と全訳 イギリス政府の機密文書が証明するイラク侵略という巨大な犯罪 安濃一樹 2005年5月14日 5月1日、英サンデータイムズ紙がイギリス政府の機密文書を掲載した【1】。議会選挙を背景としてリークされたこの文書は、イラクに対する攻撃と占領が国際法に反する犯罪行為であることを証明している。 内部からの告発や証言はこれまでにもあった。そのつど、アメリカやイギリス政府がいかに腐敗し無能で残忍であるかが明らかにされたが、政府は情報操作(スピン)が巧みで、権力に従順な企業メディアの協力をえて、いつのまにか批判をはぐらかしてしまう。 イラクをめぐる世界の情勢に関心を持ち、信頼できる資料や論説・証言を調べた人ならだれでも、イラク侵略が不法行為であることを「知っていた」けれど、どれほど説得力ある論証を重ねても犯罪を証明することはできなかった。しかし、今回リークされた秘密メモは、イラク侵略という巨大な犯罪をアメリカとイギリスが共謀して犯したことの確かな証拠となる。 メモは、2002年7月23日に首相官邸で開かれた会議の内容を要約したものだ。会議に招かれたのは首相の側近と外交・情報・軍事・法律を担当する閣僚だけで、他の大臣たちは会議があることも知らされていなかった。 メモの核心となるのは、MI6(アメリカのCIAに相当する)のディアラブ長官による次の発言である。 ──アメリカ政権の態度が明らかに変わってきた。武力行使はもはや当然だと見なされている。攻撃を正当化するために、テロリズムと大量破壊兵器を同時に[サダム政権と]結びつける。しかし、政策に合わせて情報を作り上げ、事実をねじまげているだけだ── ブッシュ政権がイラク侵略を正当化するために、サダム政権とアルカイダの関係や大量破壊兵器の脅威を利用すること、そしてそれがすべてウソであることをイギリス政府は(そして、おそらく世界の数多くの政府も)知っていた。ストロー外相は、イラクを侵略する「理由が薄弱だ」として、次のように説明している。 ──サダムは近隣諸国の脅威とはなっていないし、大量破壊兵器を開発するイラクの能力はリビア・北朝鮮・イランよりも劣る── その上でストローは、武器査察団を受け入れるかどうか、サダムに最後通告を出すよう国連に働きかけるべきだと対策を提案し、サダムが拒絶すれば攻撃する理由となることを示唆した。つまり、国連のイラクに対する通告は、戦争を回避するためではなく、イラク侵略を正当化するために仕組まれたものだった。 それで法的な根拠がえられるのだろうか。ゴールドスミス法務長官の次の証言に注目しよう。 ──イラクの政権交代がいかに望ましく思えても、それだけでは軍事攻撃の法的な根拠とはならない── イギリス人が好む乾いたユーモアだが、長官が意味したことは、ブレア首相も会議に顔をそろえた面々もよく承知していたに違いない。侵略戦争は国際法に反する。もっとも厳しく裁かれる大罪である。ニュルンベルク裁判の判決文には次のように記されている。 ──戦争は本質的に邪悪なものである。その影響は、交戦国の間にだけに留まらず全世界に及ぶ。よって、侵略戦争を遂行することは、単なる国際犯罪ではなく、究極の国際犯罪となる。あらゆる犯罪を引き起こす侵略戦争は、すべての悪を内包するという点で、他の戦争犯罪と隔絶している── これを「平和に対する犯罪」と呼び、「人道に対する犯罪」と並ぶ大罪と規定している。ニュルンベルク裁判と東京裁判で、「平和に対する犯罪」を問われた戦犯は全員が絞首刑を宣告された。 アメリカは、自国の利益のために国際法の精神を踏みにじり、国際刑事裁判所(02年4月に効力発生)の権威も認めていない。しかし、ヨーロッパの諸国は国際法を尊重している。イギリスも例外ではなかった。だがゴールドスミス卿は、不法行為を憂慮しながらも、攻撃を正当化するために何らかの法的根拠を用意する役目を引き受けている。 会議の前に参加者に渡された報告書(これも秘密メモと同時にリークされた)によると、会議に先立つ4月にクロフォードへ招かれたブレアは、ブッシュとの会談でアメリカの計画に協力することを約束していた。イラクを侵略して占領する正当な理由がないことを心配する前に、外務省やMI6の報告を聞く前に、参戦することを約束していた。もちろん、この約束は内閣に計って決めたものではない。労働党の議員たちも知らなかった。イギリス市民に対しては、「イラク攻撃については何も決まっていない」と繰り返していた。 会議はイギリスが軍事攻撃に加わることを前提としている。だから、ブレアは次のように言い切った。 ──政治状況が整えば、国民はイラクの政権交代を支持するだろう。そこで、重大な問題がふたつある。まず、この軍事作戦が成功するかどうか。そして、作戦を支障なく進めるために、政府がどのような政治戦略を立てるべきか── 「政治状況が整えば」とは曖昧な表現だが、リークされた別の文書を見ると、イギリス首相はアメリカ大統領に戦争の条件をもっとわかりやすく説明している。 ──諸国の協力をえて連合軍を組織すること。そして、世論を作り上げること── ここから両国政府による情報操作が始まる。企業メディアは政府のプロパガンダをさらに増幅して何度も流しつづけ、人びとの恐怖や怒りを駆り立てようとした。それでも、私たちは覚えている。市民は戦争を支持しなかった。アメリカやイギリスだけでなく、全世界の市民が連帯した。戦争に反対し抗議の声を上げた。 権力を握る者たちが真実を覆い隠し、歴史を塗り替えようとしても、私たちは忘れない。サダム政権が受け入れた武器査察団をバグダッドから退去させたのはアメリカだった。イラクではすでに10万人の命が奪われ、その何倍もの人びとが傷ついた。国家の富は多国籍企業群に略奪され、国土は劣化ウラン弾により永久に汚染された。占領軍に対する抵抗運動は激しくなるばかりで、イラクは大規模な内戦へと突き進んでいる。 しかし、2002年7月23日、ロンドンのダウニング街にある首相官邸では、国際法を無視し民主主義を忘れた者たちが、密かに戦争の準備を始めていた。アメリカ・イギリス連合軍の爆撃によって、バグダッドが燃え上がる8か月まえのことだった。 【1】The Secret Downing Street Memo, The Sunday Times - Britain (May 1, 2005). http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1593607,00.html ダウニングストリート(英首相官邸)メモ 秘密情報につき厳重に親展とすること。閲覧はイギリス政府の要人に限る。 送り先/デイビッド・マニング [首相つき外交政策顧問] 差出人/マシュー・ライクロフト [外交政策担当補佐官] 日付/2002年7月23日 メモ番号S195/02 他の配送先: 国防大臣 [ジェフ・フーン] 外務大臣 [ジャック・ストロー] 法務長官 [ピーター・ゴールドスミス] リチャード・ウィルソン卿 [内閣官房長官] ジョン・スカーレット [内閣府統合情報委員会(JIC)議長] フランシス・リチャーズ [政府通信本部長官] CDS [マイケル・ボイス、統合参謀本部議長] C [リチャード・ディアラブ、情報局秘密情報部(通称MI6)長官] ジョナサン・パウエル [首席補佐官] サリー・モーガン [政治戦略担当補佐官] アラステアー・キャンベル [首席報道官] イラクに関する首相会議(7月23日)について 7月23日、マニング卿は、他の配送先として上に名前をあげた関係者とともに、イラクについて話し合うためブレア首相と会議を開いた。 この記録の扱いには細心の注意を払うこと。メモをコピーしてはならない。会議の内容を知っておく必要があると認められた者だけに閲覧を許す。 ジョン・スカーレット[統合情報委員会(JIC)議長]が、イラクに関する情報とJICによる最新の分析を要約した。サダム政権は残虐で、恐怖によって支配している。政権を倒すには大規模な軍事攻撃を行うしかないようだ。サダムは恐れている。しかし、空と陸から攻撃されるだろうと予測してはいても、攻撃が間近に迫り、しかも圧倒的な規模になるとは考えていない。イラク政権内の意見によると、近隣諸国はいずれもアメリカに味方する。イラク軍は一般兵士の志気が低い。サダムを支持する国民はおそらく少数派である。 C[ディアラブMI6長官]が、先日ワシントンで行われた[ジョージ・テネットCIA長官との]会談の様子を報告した。アメリカ政権の態度が明らかに変わっている。武力行使はもはや当然だと見なされている。攻撃を正当化するために、テロリズムと大量破壊兵器を同時に[サダム政権と]結びつける。しかし、政策に合わせて情報を作り上げ、事実をねじまげているだけだ。NSC(アメリカ国家安全保障会議)は国連での交渉ごとなど我慢できないし、[理事国を説得するために]イラク政権の記録をまとめて公開するつもりもない。またワシントンでは、軍事攻撃が終わったあとの対策について何も議論されていないに等しい。 CDS[ボイス統合参謀本部議長]によると、CENTCOM(米中央軍司令部)において、米軍の戦略担当者たちが8月1日と2日に、ラムズフェルドが3日に、ブッシュが4日に、それぞれ攻撃を指令する。 アメリカには大きく分けて二つの選択がある。 (a)準備を整えた上での開戦。兵士25万をゆっくりと配備し、短期(72時間)の空爆を行う。そして南の国境を超えバグダッドまで侵攻する。開戦までに90日を要する(準備に30日、クウェートへの配備に60日)。 (b)急激な開戦。中東にすでに配備されている兵力(3x6000)を使い、空爆を続ける。この空爆を正当化するために、イラク軍の挑発行為に応戦するかたちで攻撃を開始する。開戦まで60日を要するが、空爆はもっと早くから行う。この選択は危険を伴う。 いずれの選択を取るにしても、ディエゴガルシア島[英領]とキプロス島[基地がある地域のみ英領]の基地が必要なので、アメリカはイギリス(およびクウェート)の協力が不可欠だと見なしている。トルコを始めとする湾岸諸国も重要だが、協力が得られなくても大きな支障とはならない。イギリスには参戦する上で三つの選択がある。 (1)ディエゴガルシア島とキプロス島の基地を提供する。加えて、特殊部隊が編成する3個飛行中隊を投入する。 (2)上に加えて、海軍と空軍を投入する。 (3)さらに加えて、陸軍4万兵を投入する。おそらく米軍とは別行動で、トルコの国境を越え北部から侵攻し、イラク軍の2個師団を釘づけにする。 国防相[フーン]によると、アメリカはサダム政権に圧力をかけるために「活発な活動」をすでに始めている。いつ開戦するかまでは決まっていないが、アメリカ議会選挙の30日前をめどにして、来年1月に武力行使が始まる可能性が高い。 外相[ストロー]は、今週この問題についてコリン・パウエル[米国務長官]と会談する予定だとして、次のように意見を述べた。開戦の期日こそ決まっていないが、ブッシュがすでに武力行使を決断したことは間違いない。しかし、攻撃する理由が薄弱だ。サダムは近隣諸国の脅威とはなっていないし、大量破壊兵器を開発するイラクの能力はリビア・北朝鮮・イランよりも劣る。だから、国連の武器査察団を再び受け入れるかどうか、サダムに最後通告を突きつける計画を練るべきだ。そうすれば攻撃を正当化する法的な根拠を得ることもできるだろう。 法務長官[ゴールドスミス]は、イラクの政権交代がいかに望ましく思えても、それだけでは軍事攻撃の法的な根拠とはならないと主張した。そして、考えられる法的根拠を三つあげた。まず、正当防衛としての攻撃。つぎに、人道介入としての攻撃。そして、UNSC(国連安全保障理事会)の議決にもとづく攻撃。最初のふたつはイラクに当てはまらない。3年前に出された安保理決議1205にもとづいて攻撃することも難しい。もちろん、このような状況は変わるかもしれないが、と長官は示唆した。 首相[ブレア]は、サダムが武器査察官を拒絶すれば政治と法律に関する問題は大きく違ってくると指摘して、次のように述べた。政権交代と大量破壊兵器は結びつけられている。大量破壊兵器を製造するような政権は倒さなれればならないということだ。リビアやイランに対しては、イラクとは違った戦略をとる。政治状況が整えば、国民はイラクの政権交代を支持するだろう。そこで、重大な問題がふたつある。まず、この軍事作戦が成功するかどうか。そして、作戦を支障なく進めるために、政府がどのような政治戦略を立てるべきか。 第一の問題について、CDS[ボイス議長]は、アメリカの作戦計画がうまくいくかどうかは今のところ判断できないと述べた。たとえば、開戦の当日にサダムが大量破壊兵器を使ったらどうなるのか、バグダッドが陥落せずに市街戦は始まったらどうするのか、われわれは質問を重ねているところだとした。 国防相[フーン]は[ボイス議長に向かって]、サダムがクウェートやイスラエルに対して大量破壊兵器を使う可能性があることも話していただろうと指摘した。 外相[ストロー]は次のように述べた。成功の見込みがない限り、アメリカは軍事作戦を遂行しないだろう。よって、軍事戦略に関してはアメリカとイギリスの利害が一致している。しかし、政治戦略となると米英に違いが出てくる。アメリカに抵抗されても、イギリス政府は[国連を通して]サダムへ最後通告を出すという方策を慎重に模索するべきだ。サダムは国連の要請に強硬な対応を貫くと思われる。 ジョン・スカーレット[JIC議長]は、サダムが武器査察団をまた受け入れるとすれば、それは攻撃を受ける恐れが高いと確信した時だという考えを示した。 国防相[フーン]は首相[ブレア]に向かって、もしイギリスの参戦を求めるなら、決断を早く下す必要があると主張した。また、アメリカ政府には最後通告に手間をかける意味はないとする意見が多いと注意を促して、首相がブッシュに政治の状況を整理して説明することが重要だと述べた。 結論 (a)イギリスがいかなる武力攻撃にも参加することを前提として活動しなければならない。しかし、確固とした決断を下す前に、アメリカによる作戦計画の全体像を把握しておく必要がある。CDS[ボイス議長]は、イギリスがどのような体制で参戦するかについて検討していることをアメリカ軍に伝える。 (b)首相[ブレア]は、作戦を準備するのに必要な経費を確保することができるかという問題について再考する。 (c)CDS[ボイス議長]は、今週中に、[米軍の]軍事作戦の全容とイギリスの軍事支援がどのようなものになるかについて、詳細な報告書をまとめて首相へ送る。 (d)外相[ストロー]は、武器査察官たちの経歴について首相に報告書を送る。また、[国連が]サダムへ最後通告を出すように慎重に少しずつ働きかける。トルコを始めとする中東諸国やEU主要国の見解や立場について、首相に助言を送る。 (e)ジョン・スカーレット[JIC議長]は最新の情報分析をまとめて首相に送る。 (f)法律上の問題を忘れてはならない。よって、法務長官[ゴールドスミス]は、FCO[外務省]とMOD[国防省]の法律顧問と協力して、法律に関するアドバイスを検討する。 (会議の結果を踏まえて行われる上記の任務については、それぞれに別個の書類で委託してある。) マシュー・ライクロフト 原文/The Downing Street Memo 翻訳/安濃一樹 漏洩したメモ全8部を保管するページへ ( )は原文の挿入語句。あるいは英文略称名とその和訳。 [ ]は訳文の補助語句。 編集/安濃一樹 ヤパーナ社会フォーラム http://japana.org/ TITLE:http://www.japana.org/peace/japana/secret_memo.html - Microsoft Internet Explorer DATE:2005/06/27 09:04 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