タッタッタッタッタタ
 音を擬音で表すとなるとおそらくこうなるだろう。
 余り人気が無くなった放課後の廊下を駆け足で走っている生徒達がいる。 

 「場所は?」

 「聞いた話では、初等部近くの中庭です」

 「あまり人が集まらないうちに処理するわよ」

  

 **********

 

 普段の放課後では早く帰りたいのか、クラブ活動をしたいのかで中庭にはあまり人がいない。 しかし、先ほどから中庭の中央に十数人が何かを取り囲むようにして集まっている。はじめは人はあまりいなかったが時間が経つにつれて徐々に人が集まってきたのだ。集まった人々はみな中央の男子生徒と女子生徒の二人に視線を向けている。男子生徒と女子生徒は互いににらみ合って、口喧嘩をしている。

 

 「ルクの馬鹿!! もう謝ったってゆるさないから」

 「誰が謝るかよ。それに馬鹿って言ったほうが馬鹿なんだぜ」

 「もうあったまきた。ぜぇーーったいに許さないんだから!!」

 「フィオナお前、杖を。どうなっても知らないからな」

 

 フィオナと呼ばれた女子生徒は顔を真っ赤にし懐からだした杖を握り締めてルクと呼ばれた男子生徒に向けている。

 ルクは一瞬驚いた顔をしたがこぶしを強く握り締め、頭には獣の耳のようなものが生え、腰の辺りにシッポのようなものが生えてきた。

 二人は互いを睨み付け一触即発の雰囲気だ。

 

 「やめなさい 二人とも」

 凛とした少女のこえが辺りに響きわたった。
 相手の所に飛び込もうとしたフィオナとルクの間に女子生徒が仁王立ちで立っている。


 「さあ、貴方たちどうしてこんな風になったのかじっくり中等部生徒会室で聞かせてもらおうじゃないの」

 彼女はニッコリと微笑みながら二人に突きつける様に言った。

 

 **********

 生徒会室は立派な造りでドアを開けてひらけたスペースの中央には会議用の縦長のテーブルがあり、そのテーブルの少し奥に会長用の木でできた立派な事務机がある。他にも左右には生徒会のそれぞれの役職の部屋や給湯室・倉庫といった部屋がある。その縦長のテーブルに対になるように三人は座っている。


 沈黙を破るように少女は聞いた。

 

 「私はシンディア・R・S・ヴェルエステイル、中等部生徒会長兼が…まあこれはいいでしょう。貴方たちは?」

 テーブルをはさんで向かい側にいる二人に訊いた。

 「わっ私は、 初等部5年2組のフィオナ・ルーツっていいます」

 「俺は初等部5年2組ルクス・フロイト……です」

 

 フィオナはさっきの事を反省しているのか下を向いている。ルクスも反省しているのかこぶしを握り締めじっとシンディアのほうを見ている。

 

 「貴方たちはこの学園の規則”授業や学園の許可、決められた場所での魔法と能力の練習以外は魔法と能力を使うことを禁止する”を知っているはずよね。あの場所は魔法と能力を使うことが禁止されているの」

 

 彼女の言った言葉にコクコクとうなづく二人。そんな姿を見てさっきの厳しい顔は消え少しだけ微笑んだ。そして彼女はフィオナになぜあんなことをしたのか尋ねた。今日フィオナは誕生日に貰ったリボンで髪を結んでいた。放課後リボンをルクスに盗られ、怒ったフィオナはルクスに悪口などを言った。そして喧嘩になりルクスの一言でフィオナは怒って魔法を使おうとしてルクスも能力を使おうとしたらしい。

 

 「貴方たちは魔法や能力を使おうとした。使おうとね。だから貴方たちは規則を破ってはいないわ。未遂よ」

 「シンディア、そんなまわりくどく言わなくて素直に二人に言えばどうですか。校則を破ってないって」 

 

 生徒会室にある給湯室から両手にお盆をのせた少年が机に向かって歩きながら言った。少年はにこにこしながらルクスとフィオナに向かってレビンと名乗った。レビンは薔薇の模様が描かれたティーポッドから同じく模様が描かれた3つのティーカップに慣れた手つきで紅茶を注いだ。温かく湯気が出ている紅茶を三人に配った。シンディアは紅茶をひと口飲み、続いて二人も安心したように紅茶を口に運んだ。

 

 「レビンの言った通りよ。でも罰は受けてもらうわ」 

 

 そう言ってシンディアはカップをソーサーに置いた。そしてレビンから一枚の書類とペンを受け取りさらさらと流れるような手つきで文字を書いた。その書類は学園へ今回のことの報告書で二人の処分のことを書いたものだ。シンディアは書き終わった書類をレビンに渡した。レビンは書類を見て一瞬驚いたがすぐ笑顔になり職員室に提出しに行ってきます、と言って出て行った。シンディアはレビンが教室から出てから口を開いた。

 「罰は一週間この生徒会の業務を手伝うこと、それが気に入らないのなら他のもあるけどね」

 「えっ、それだけなんですか?」

 「ええ、でもきっちり手伝ってもらうからね」

 

 シンディアが返事はと言うと二人は元気よくはいと言った。シンディアはその返事を聞くと微笑んだ。

 

 この部屋の窓から夕焼けの赤い光が差し込んでいる、その光にシンディアの頬は照らされ口元は笑っている。彼女の視線の先には仲直りした二人が仲良く一緒に話している。

 

 

**********

 アトガキという名の懺悔です。

 まずこの1話を書き終えるのに半年もかかってごめんなさい。今年に入ってからパソコンが壊れるわ調子悪いわ色々あったんです。

 そして文才皆無ですみません。本(主にラノベ)は読んでいるんですけどね。国語の文法はニガテです。

 読んでくださった皆様ありがとうございました。2話も気長にお待ちください。

(2009/6/28)泡沫

 

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最終更新:2009年07月02日 20:14
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