careerdesign @Wiki 自治体職員のキャリアデザインを考える日記(61-71)


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2005年07月18日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(61)


■「ピカソ」のキャリア 「ゆでガエル」のキャリア

 先週、「キャリアデザイン研修」を1日受講しました。通常この手の研修だと、「キャリアとは何か」の座学を一通り聞いた後、「ではあなたの過去のキャリアを振り返り、将来のキャリアをデザインしてみましょう」という作業をするのが相場だと思うのですが、その研修は少し変わっていました。
 なんと、1時間程度のオリエンテーションの後、4人組に分けられ、いきなり「レゴ」を配られました。そして、まずは5分間でブロックだけを使った「船」をつくる事に。そして、次はいくつかのアクセサリーがプラスされて「船」を作り直し、3ラウンド目では文房具や紙を使っていいことになります。
 これは遊びではなく、「ビルディング・パス」というれっきとしたキャリア研修プログラムで、ブロックやアクセサリーをスキルやコンピテンシーに看做すことで、年代を追ってどうやってキャリアを組み立てて行くか、をシミュレーションするものです。今回の研修ではスキルやコンピテンシーが広がる一方の3ラウンドだけでしたが、より高年代向けには、スキルの陳腐化やミッションの変更などが組み込まれているそうです。
 これまでこの日記でも「レゴ形キャリア」について考えてきましたが、実際にレゴそのものを使って体験すると、レゴ型キャリアをイメージしやすいと実感しました。

 そして、午後のプログラムでは「キャリアMQ」という特性診断テストを行いました。今回受診したのは簡易版ということで25個の質問に答えましたが、4~5段階の回答を選択し、5つの因子ごとに計算すると、ワークスタイルやキャリアの志向性、自律度を測定することができると言うものです。MBTIに少し似ている質問もありましたが、キャリア診断に絞った内容になっており、意外性は少ないですが使いやすいもののようです。

 この研修の講師を担当されたのは、キャリア・ポートレート・コンサルティング代表の村山昇氏です。氏は『「ピカソ」のキャリア 「ゆでガエル」のキャリア』という著書も出版されているということで、早速、入手しましたが、
・キャリア形成の意志の「強:弱」
・キャリア形成環境の「流動的:固定的」
の2軸によって、「ピカソ」「耕一さん」「タンポポの種」「ゆでガエル」の4つに分類したキャリア形成のタイプは、著者のビジネスマンとしての経験を反映して、とてもリアリティのあるものでした。

     キャリア形成の意志<強>
          ↑
     耕一さん |  ピカソ
キャリア      |
形成環境      |
<固定的>←――――+――――→<流動的>
          |
          |
    ゆでガエル |  タンポポの種
          ↓
     キャリア形成の意志<弱>

 さて、ここで気になるのが自治体職員のキャリア形成タイプはどのタイプが多いのか、ということです。
 一般的にキャリア形成の意志は<弱>のタイプが多そうです。よく言われる「ゼネラリスト」のタイプは「タンポポの種」ということになるでしょうか。確かに、何年か(場合によっては1年で)同じ職場にいると「どこでもいいからそろそろ異動させてくれ」と逃避したがるのはこのタイプのようです。また、「スペシャリスト」と呼ばれる人たちも、単に同じ仕事をずっと続けたがる、という意味では「ゆでガエル」タイプに陥る可能性が大きそうです。
 本書の解説では、「はっきりとした意志を持ってその分野の職についたという意味」では公務員は「一所深化」の「耕一さん」タイプに分類されるそうですが、「耕一さん」やましてや「ピカソ」タイプは公務員には少なそうだ、というのが実感です。


(参考)
村山 昇著『「ピカソ」のキャリア 「ゆでガエル」のキャリア』

キャリア・ポートレート コンサルティング
http://www.careerportrait.jp


○自治体職員のキャリア・デザインを考える日記

「■ユニバーサル・キャリア・デザイン8」
「■「レゴ型キャリア」って何さ? その1」
「■レゴ型キャリア」ってなにさ? 2」
「■レゴ型キャリアってなにさ 3」
「■レゴ型キャリアってなにさ 4」


自称「自治体歯車職員」
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp

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~1日1冊、行政経営関連の本を紹介~
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2005年07月25日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(62)


■レゴのブロック:技術屋と事務屋のキャリア観の違い

 前回に引き続き、キャリアデザイン研修がらみの話です。
 キャリアデザイン研修は、年齢別に行われるので、今年の研修は同期前後の知り合いが多いので、何人かに研修の感想を聞いてみました。
 特に、この研修の特徴である、レゴブロックを使った「ビルディング・パス」に関しては、好き嫌いというか、すとんと腹に落ちるかどうかが、はっきり分かれました。「ビルディング・パス」とは、レゴのパーツの一つ一つをスキルや行動特性に見立て、それを積み上げることがキャリア形成である、という考え方に基づいたワークショップです。
 具体的には、技術屋は誰もが、この考え方を「分かりやすい」と感じていました。逆に事務屋では「分かりやすい」と感じた人が少なかったです。これは、スキルの積み重ねが目に見える形で成果に結びつきやすいという仕事の特性によるものなのかもしれません。また実際には、技術屋といっても、ずっと同じ分野の仕事をしているわけではなく、12~3年くらい働いていると、本来の職種にあまり関係のない分野の仕事を一つくらい経験していることが多いのですが、そういった機会に自分の専門分野を客観的に見ることができたのかもしれません。
 一方、事務屋では、スキルのブロックを積み重ねる、という考え方が理解しにくかったようですが、これは、個々の仕事ベースで見ると、3年くらいやった仕事で身につけた関係法令の知識などが、人事異動によってまた一から新しい知識を仕込まなければならなくなるからではないかと思います。しかし、3年ごとに新しい分野の仕事をやったとしても、蓄積される種類のスキルもあります。分かりやすいところでは、段取りの付け方や対人交渉力などがあり、これらは仕事の分野が変わっても共通に必要とされます。また、もう一段メタな視点から見ると、自分の仕事やそれを取り巻く環境を客観視し、体系的に理解する力が有るか無いかで、新しい仕事への対応のスピードや仕事の出来に差が出てきます。この力はマネジャーには不可欠なものと考えられますが、ヒラにとっても大きく力の差となって現れる部分ではないかと思います。
 この点で、今回のキャリアデザイン研修はたった1日しか時間が無かったので、事務屋にとっては理解が難しいものであったかもしれません。もう少し長い時間をかけて、自らのスキルや行動特性をしっかり棚卸した後で、レゴブロックに触ったのであれば、自らのスキルをブロックに見立てやすかったのではないかと思います。
 なお、事務屋でもレゴブロックが「分かりやすい」という人もいましたが、それらの人たちは、民間企業で何年か勤めた後で転職した人や、庁内公募を使って自らの意志で現在の仕事を担当している人たちでした。これらは、自らのキャリアを客観的に見直すいい機会になっているのだと考えられます。


(参考)
村山 昇著『「ピカソ」のキャリア 「ゆでガエル」のキャリア』

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2005年08月01日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(63)


■四半世紀の間に変わらないもの、変わったもの

 今から25年前に出版された『地方官僚 その虚像と実像』をブックオフの100円コーナーで入手しました。内容的には雑誌に掲載されたルポルタージュ記事をまとめたものなので、自治体職員の高給・厚遇ぶりとその無能・無責任ぶりを面白おかしく書こうとするあまり、場当たり的な深掘りされていない取材が多く、いい加減なヨタ記事の類の記述も多く見られますが、それでも、当時の自治体職員に対する世間の目を推し測る貴重な資料なのではないかと思われます。
 ラスパイレス指数132.8という今から考えれば驚異的な数字をたたき出した大阪府門真市役所では、勤務時間中にパチンコでとってきた景品を職場にお土産に配る職員を見つけて嬉々として書き立てていますが、現在でもサボってわざわざ隣町のパチンコ屋で時間をつぶしているところを見つかる職員が新聞記事になったりしますので、いつの時代も変わらないものなのかもしれません。
 この門真市役所を含む関西近郊の市役所は「衛星都市連合」略して「衛都連」という共同戦線を張り、えげつない交渉をしていたということが書かれています。この当時にこの市役所に入った20歳前後の職員も、今や40代後半に差し掛かり、市役所の中核を担う世代になっていますが、この本に描かれているような役所の内実に、ある人は嫌気がさして転職したり趣味や市民活動の世界に逃避したり、ある人はどっぷり首まで漬かって過ごしてきたのかもしれません(そもそも役所の現実を承知した上で入った抜け目のない人か、知らずに入った世間知らずか、という意味での逆選択が就職時点で働いているかもしれませんが。)。
 さすがに、国家公務員給与を3割増しするような高いラスパイレス指数はこの四半世紀で是正されてきましたが、是正の対象となったのはラスパイレス指数だけで、この問題に関する交渉は、この時点の条件をスタートに行われたのではないかと想像されます。つまり、職員の待遇がこの時点よりも悪化しないように、本給を下げる代わりに様々な代替措置が交渉の俎上に上ったのではないかと考えられるということです。
 これが、現在問題になっている破格の福利厚生や説明のつかない諸手当、そしてヤミ年金と無関係ではないのではないかと推測されます。つまり、交渉の中で一方的に待遇を悪化させられるような条件を、強力な交渉力を持つ側が簡単に飲むとは思われないからです。
 この四半世紀の間に、ラスパイレス指数という指標の一つは確かに下がりましたが、少なくとも関西の自治体職員に対する市民の目の厳しさ、失望感は変わらない、または内実が漏れるに従って悪化しているのではないかということは想像に難くありません。
 このHPの管理人である大島さん(神戸市役所)が、自治体職員の厚遇・無能ぶりに大変厳しい発言をされているのを読んで、「そこまで言うことはないのでは?」、「それほどまで酷いということはないだろう。」と思っていました。これまで市役所や町役場の人と机を並べて仕事をしていた経験からは考えられなかったからです。しかし本書を読んで、もしかすると想像を絶する世界が関西に現存しているのかもしれない、という恐ろしい想像が浮かんでしまいました。


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2005年08月08日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(64)


■庁内パートタイム人材市場

 衆議院が解散になり、選挙の日程も決まって、全国の共済系の宿泊施設では、8月の終わりから9月前半のキャンセルが相次いで大変なことになっているのではないかと思います。私も、楽しみにしていた行事が飛んでしまって大ショックです・・・(T_T)
 さて、選挙となると大変なのが選挙管理委員会の職員です。予め日時が読める参議院選挙や地方選挙と異なり、衆院選の場合は、直前まで日程が読めないために、立候補予定者説明会の会場押さえや各種「紙モノ」の準備など、解散してからの突貫工事になるものが多く、担当者は不眠不休の日々が続くことになります。
 「月300時間の残業をするくらい仕事にのめりこむことも良い経験だ」と言う人もいますが、本人にとっては良い思い出や自信になっても、徹夜続きでフラフラになった体と朦朧とした意識で、どれほどすばらしい「プロの仕事」としての住民サービスができると言うのでしょうか。「自分ばかりが体を張った大変な仕事をしている。この仕事は自分にしかできない。」という選民思想と被害者意識の織り交ざったような妙な心理的状態のせいで、関係者や周りの職員、そして住民とのトラブルも多発します。大抵はやつれた青白い顔を見て引き下がってくれますが、仕事のピークがすぎた後も心理的なしこりが残ることが少なくありません。
 また、残された家族、特に子供への負担は大変なものです。働き盛りの30代の父親が月に300時間を越えるような残業をしていては、家族に対する責任を全く果たすことができません。家事分担の責任は全く放棄し、子供のお風呂や寝かし付けなどは、そのやり方すらわからない、という人が少なくありません。特に、子供がまだ幼い場合には、家に残された妻は誰とも一言も会話をしないような毎日が続くことがあります。一方で本人は職場で、「自分の顔を見ると子供が泣く」、「朝出かけるとき『パパ、また明日』と言われる」などの「家族不幸自慢」の話に花を咲かせていたりします。この幼少時の家族へのネグレクトが影響を表すのは十数年後に子供たちが多感な思春期になってからかも知れません。

 しかし、その組織の構成員全てが300時間残業しているようなことは通常ありえません。家に帰る時間も無いほど徹夜が続く人の近くには、8時9時で帰る人がいて、別のフロアの人は定時で帰っていたりします。休日や深夜の時間外はその金額自体も割高になりますが、それ以上に、職員の健康をすり減らし、家族の犠牲の上に成り立っているような殺人的な長時間労働は、短期的に見れば「働き者」でも、長期的に見ると後に心身を病んだり家庭的な問題を抱えるなど、組織にとっても大きなコストであると考えられます。
 そこで、一時的にマンパワーを必要とする業務に、他の部署からパートタイムでの応援を集められるような「庁内パートタイム人材市場」のようなものを造ることはできないでしょうか。勤務形態は、週に何日とか、午前午後とか、連続した5日間とか、色々な形態が考えられます。マッチングの方法は、繁忙期を見越して求人を出す方法もあれば、やってみたい業務のあるところに自分から売り込みに行く方法も考えられます。
 単にテンポラリーな労働力が必要なだけならば、アルバイトを雇えば済む話ですが、あえて職員が他の部署の仕事を手伝うのには理由があります。メリットとして考えられるのは以下の点です。

(本人にとって)
・将来やってみたい仕事をいくつも体験することができる庁内インターンシップ的な意味合い。自律的なキャリアデザインの大きな材料になる。
・他の部署の仕事のやり方を学ぶことができる。特に、忙しさのピークにある「鉄火場」「修羅場」的な緊張感のある職場を経験することは、若い職員にとっては大きなプラスになる。
・単なる知人ではなく、一緒に働いた仲間をたくさん増やすことができる。

(受け入れ側にとって)
・単なるアルバイトではないので、ある程度責任のある仕事を任せられる。
・何でも担当者が抱え込む仕事のやり方ではなく、コアの仕事と分割発注可能な仕事とを切り分けることができる。
・ピーク時に合わせて定数を確保しておく必要がなくなる。
・人事異動があっても、ある程度仕事が分かった人を集めることができる。また、OBの招集もかけやすい。
・他の部署との間の風通しが良くなる。

(送り出し側にとって)
・座学の研修に出すよりも、より実践的な成果が期待できる。

 逆に、デメリットとして考えられるのは以下の点です。

(本人にとって)
・本業の方にしわ寄せが行く。
・仕事の内容が事前の期待と沿わない場合が出てくる(雑用ばかり押し付けられる、など)。

(受け入れ側にとって)
・物見遊山の応援が来ても役に立たない。→事前にきちんとした面接などを行う必要がある。

(送り出し側にとって)
・一時的な戦力ダウン。

 人事異動時の庁内公募制度が長期的な労働市場だとすると、この市場はスポット的な市場ということになります。その結果、普段の定数は少なくても、募集をかければ多くの応援を集めることができる業務が出る一方で、募集をかけても応援が集まらず、いつも送り出す側に回る不人気業務との差があからさまになることが考えられます。しかし、より魅力的な働き甲斐のある職場作りの競争になれば、全体としてのレベルアップにつながるのではないかと思います。


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2005年08月15日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(65)


■職員の話を聴く会

 一般の企業に比べて役所が誇れるものと言えばその仕事の多彩さかもしれません。就職に当たって、「いろいろな幅広い仕事ができる」ということを公務員という仕事を選択する理由にあげる人も少なくありません。そして、実際に役所の中には、色々と面白い経験をしている人がたくさんいます。
 しかし、実際にはひとりの職員が数多くのバラバラな仕事を体験できるわけではありません。採用職種によって配属先も異なりますし、何しろ時間は有限です。
 そこで、色々な珍しい仕事を体験した人から話を聴いてみよう、ということで「職員の話を聴く会」というのを始めてみました。
 まず初回は、外務省に派遣され総領事館に勤務した経験のある職員にお話を聴きました。4年間の間に、本省で2年、総領事館で2年勤務して、外務省の職員や他省庁からの派遣職員の働き振りを見てきた経験は、地方自治体の中だけにいては決して経験できないものです。1時間半という時間があっという間に過ぎてしまいました。
 今回は外に派遣された人のお話を聞きましたが、役所の中にいてもなかなか経験できない仕事もたくさんあります。また、高度成長期の役所がどんな雰囲気で、どんな人たちが仕事をしていたのか、というのも聴いてみたいと思います。


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2005年08月22日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(66)


■ワーク・ライフ・バランスで「誘因両立的」な改革を進める

 行政だけには限りませんが、「改革」という言葉にはどこかストイックな響きがあります。例えば「改革者」という言葉に「殉教者」的なイメージを重ねる人も少なくありません(一方で「破壊者」というイメージを持つ人もいるわけですが)。この「自治体職員有志の会」HP上の色々な日記の中にも「改革」という言葉が毎日出てきますが、それは「有志」という言葉に象徴されるように「改革の志士」の自己犠牲的なメッセージが込められているのではないかと思います。
 しかし、自己犠牲を前提にした改革は後が続きません。正論を言っているので総論で真っ向から反対する人はいなくても、「教条的な思い入れだけに凝り固まった連中」と看做されてしまい、協調者が生まれません。すると、一部の人間はますます「世の中間違っとる」という思いを強くして極端な方向に暴走し、最後には集団自決するカルト的な悲劇を生む可能性もあります。
 重要な点は、「改革」自体が目的化しないことと、個々の主体(個人や組織)にとっても正のインセンティブが働くことです。民間企業であれば、近視眼的には改革には抵抗しても、商品やサービスの競争力の向上や組織自体の生き残りがかかっているからこそ、最終的には改革に協力せざるを得なくなるのですが、自治体の場合には、「住民サービスを停止するわけには行かないから、いざとなったら国が面倒を見てくれる」と、住民を人質にとっているので、組織の生き残りがかかっている、という危機意識がスローガン以上には実感しにくいのが現実です。民間企業では当たり前の、「組織の生き残り」以外のインセンティブを探さなければなりません。

 その一つになるかもしれないのが、「ワーク・ライフ・バランス」という考え方です。個人の生活と仕事とのバランスをとるには、現時点以上の住民サービスの実現と総労働時間の短縮という相反する要件を満たしていかなければなりません。そのためには、単なる当局への要求としてだけの「労働時間の短縮」ではなく、職員一人ひとりが、「少ない投入でより多くの成果」を生むための工夫をしなければならなくなります。
 例えば、「長時間残業や休日出勤を減らす」という目標を達成するためには、仕事のやり方自体を見直して無駄なプロセスを省き、これまでよりも生産性を上げなければ、単に「安かろう悪かろう」になるだけです。しかし、生産性を向上させることは、住民にとっては手続きのスピードアップになり、組織にとっては時間外手当や深夜の光熱費の削減、そして職員個人にとっては個人の生活のための時間の確保になり、まさに「三方一両得」が達成できます。
 同様に、「長期休暇の取得」や「父親の育児休業の取得」は、個人個人の職人芸的な事務処理がまかり通っていた(だから、何千万円もの横領が何年も露見しなかったりします)役所の世界で、マニュアルの作成など定型事務の標準化を進めざるを得なくなり、組織としての生産性を向上させることになります。
 これまでならば、「時間外手当を一律○割カットします」とか「長期休暇の取得目標があるから形だけでもとってくれ」とか「○○事務処理システムを導入したからチェックリストに従ってマニュアルを作成すること」などのように、組織の都合だけを一方的に押し付ける手法を用いていました。これは、一方の当事者である職員個人個人にとっては単に負担が増えるだけに感じられるので、職員の面従腹背の抵抗に遭い、改革が頓挫してきたのです。
 これを「ワーク・ライフ・バランスを実現する」という視点から取り組むことで、結果的に目指す状態は同じでも、双方にとって望ましいと思える、つまり「誘因両立的(incentivcompatible)」な改革の切り口になるのではないかと思います。


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2005年08月29日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(67) [カテゴリ未分類 ]  
■恐怖の予備役リスト?

 今週は、衆院選の受付事務などがあり更新が遅れてすみませんです。

 さて、その衆院選の受付なのですが、各都道府県ごとに受付を行っています。
 候補者(と言っても大抵は代理人ですが)は、仮受付の後、受付順位(ポスター掲示場の順番など)を決めるためのくじを二回行い(ここでドラマが生まれます。ガッツポーズをする人、ガクッとうなだれる人など)、立候補書類の受付をすると、公営物件(いわゆる選挙の七つ道具、これがないと第一声が挙げられない)を受け取り、選挙事務所の設置や運動員の届けやポスターなどの公費負担の書類の提出など、とにかく大量の提出書類の受付を行います。また、交付する物件も、大きくかさばる看板や数万枚の証紙などこちらも大量で、二人がかりで持って帰るような量です。

(詳しくは、兵庫県の選管のHPに前回衆院選の記録が載ってましたのでごらんください。3~4ページにかけて公示日の事務が列記されています。)
http://web.pref.hyogo.jp/senkan/kiroku/pdf/03/02.pdf

 これらの受付事務を、選挙区の数だけラインを作って(一部はまとめますが)行うので、大量の人手、しかも受付事務にある程度精通した職員が必要になります。選挙事務には100点と0点しかないからです。

 そこで、他部署から応援を集めることになるのですが、今回は予め説明会や研修をみっちりやる時間もなかったために(解散から公示までは長かったですが、準備期間は短かったので)、選管事務局のOBなど過去に選挙の受付を仕切ったことのある人が集められました。
 この人選に当たっては、過去の選挙担当者の名簿を元に、県議選などの受付の経験がある人をリストアップし、各部に応援依頼を出す、という形で進められたようです。実際に身柄を拘束されるのは、前日午後から夜にかけてのリハーサル(プレスが入り、公示日当日の朝刊にはリハーサルの様子の写真が掲載されることが多いようです。)と、当日の受付が一段落して体制縮小するまでの間です。

 今回は急な選挙ということで、他の部署からの応援に対する理解(同情?)が得られやすいものでしたが、職員が持っている様々な知識や経験を、組織を超えて動員する仕組みというのは、もっとシステム化されてもよいのではないかと思います。例えば、災害対策の割り当てなどは、現在の担当業務以上に過去の経験(被災地への応援経験含む)が重要になってくると思いますので、属人的な要素を含む応援体制のあり方もあっていいのではないかと思います。ほかにも大きなイベントなどにも使えるかもしれません。
 まるで軍隊の「予備役」のようですが、現在の業務としての顔と予備役としての顔、複数の顔を使い分けることができれば、もっと組織の壁にとらわれずに職員の能力を活かせるのではないでしょうか。


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2005年09月05日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(68)


■大阪市役所は変われるか?

 昨日は政策分析ネットワークのシンポジウム「大阪市役所は変われるか?」に参加してきました。
 まず大阪市の現状について、コーディネータの上山氏と読売新聞の深井氏、大阪市立大の永田氏からそれぞれ「素材出し」がされた後、今後どうすべきかについて議論されました。
 上山氏からは大阪市のインフラが人口350万人(現在よりも政令市1つ分以上の人口増)を前提に過剰に整えられていること、深井氏からは、オリンピック招致失敗や三セク破綻などの1千億円以上の損失には市民は無関心であったのにスーツ支給や食事券などの身近な問題に対しては先鋭的な反応があったこと、永田氏からは、他の自治体の行革が「あるべき姿」を議論するのに対して大阪市の改革はまず現状の数字を重視している点がユニーク、というお話がありました。
 横浜市の改革に携わられた神田外語大の南氏からは、大都市の改革の共通する点と異なる点についてのお話があり、共通する点としては「官房系」と呼ばれる部門の既得権益のピラミッドを壊さなければ、改革は三ヶ月で元に戻ってしまう点が指摘されました。
 有志の会関係では、あきる野市の飯嶋さんから、情熱のある大阪市の職員をどう伸ばして行くか、という質問がありました。



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2005年09月12日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(69)


■本業と並行して蓄積されるスキル

 今朝まで衆院選の応援でした。仕事の内容は、開票結果を記録した開票録という書類の受付です。
 組織の再編に伴い、人手が足りなくなったので、昔この業務を経験したことのある職員に応援が回ってきたということです。
 私自身は、この仕事は3年ぶりでしたが、むしり取った衣笠、じゃなくて昔取った杵柄(究極超人あ~るというマンガを参照のこと)で、事前の心配にもかかわらず結構覚えていて、やっているうちに楽しくなってきました。書類をチェックして間違いを指摘して修正してもらうというものなので、決して楽しい種類の仕事ではないのですが、小さい町村なんかだと選挙のときの窓口は何年も同じ人がやっているので、懐かしさを覚えながら時間を過ごすことができました。
 市町村では選挙という不定期な仕事において、毎年の人事異動で担当になる事務局はそれほど大きなウェイトを占めません。もちろん会場の設営や契約などの事務局としての仕事はありますが、疑問票の審査や集計、県選管への報告などの業務は他の課の応援職員が毎回担当し、「審査のプロ」「速報のエキスパート」としてスキルを積み、事務局の職員では太刀打ちできないほどです(事務局は当日忙しくて構ってられない、というのもありますが)。極端な例として、ある市では、選挙の時期になると選管事務局OBが数人召集され、書類の作成や審査など実質的な事務はOBが行い、事務局の職員はその下働きをしながら仕事を覚える、というやり方をしています。
 よく、公務員は数年毎に異動してしまい、一から勉強しなおしでスキルが蓄積されない、ということを聞きますが、過去の経験を織り込んだ繁忙時の応援体制を柔軟に組むことによって、特に選挙などのように一時期に仕事が集中するイベント系の業務に関しては本業とは別にスキルの蓄積と伝承が図れるのではないかと思います。


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2005年09月19日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(70)


■財政危機をあおってはいけない?

 ロンボルグという人の『環境危機をあおってはいけない』という本があります。

 これは、我々が信じ込んでいる様々な「神話」、例えば、
・今後数十年で石油資源は枯渇する、
・農薬や化学物質で我々の子孫は死に絶える、
などの類の環境危機を訴えるストーリーを、環境保護団体が使っているものと同じ
公的な統計資料をもとに、元グリーンピースのメンバーで、統計学を教える
准教授である著者が検証をしているものです。
 この分析の結果は、我々の「神話」に正面から矛盾するものが多く、
総じて言えば、我々の暮らしは発展途上国を含めて20世紀を通じて
劇的に衛生、食料事情は改善し、西側諸国での大気汚染の減少は著しく、
今後もこの繁栄を支えるのに十分な資源が残存している、というものです。

 著者が言いたいのは、だから心配しなくてもいいんだよ、ということではなく、
センセーショナルなキャンペーンにパニックにならずに、冷静になって現実を
見つめて、限りあるリソースの有効な使い道を考えよう、ということです。
 例えば、海岸に流れ着いた重油を回収することはトータルな自然にとっては
それほどのメリットはなく、むしろ高圧水で洗浄することのダメージが方が大きい、
などが挙げられています。


 さて、今週の「自治体異邦人日記」では、来るべき財政危機について、
・郵政民営化
・長期金利の急上昇と市場のパニック
・自治体の大リストラ(事業廃止、職員の解雇、給料の遅配、など)
という2010年の国や自治体の在り方が予測されています。
 私は金融に関しては全くの素人なのですが、銀行業界でプロとしての経験を積み、
大学院の博士課程に席を置き、シンクタンクの研究員という肩書きを持つ
管理人さんの予測となると、単なる素人のたわごとではない信憑性があります。
もちろんご本人も、研究者としての確信と使命感を持って書かれているのだと思います。


 ここで、先のロンボルグの著作に戻りますが、ロンボルグは民主主義が機能するためには
できる限り最高の情報にアクセスできる必要があると述べています。
しかし、多くの人は、事態はそれほど悪くはない、ということをおおっぴらに
するのはまずい、皆が危機感をなくしてしまう、ということを言います。
これがどれほど反民主主義的であるかは、一部の聡明な人たちは真実を
知っているけれども、愚民に真実を教えると間違った行動をとるから
教えない方がいい、というエリート主義的な理屈を見れば明らかでしょう。

 私は決して、国と地方の財政状況が楽観視していいものだというつもりはありません。
しかし、仮に一部の人間が、愚民たちに危機感を抱かせることを目的に、
間違った推計を大げさに(それも本人は承知で)使って財政危機をあおっているのだと
すると、それは民主主義を歪めるエリート主義的な考え方ではないか、
議論をするならばきちんとした情報をベースに議論すべきではないかと考えます。

 もちろんだからと言って、異邦人日記の予測が危機感をあおるために
歪んだ推計を基にしていると断言するつもりは毛頭ありません。
願わくば、次回以降の日記において財政破綻に至るシナリオの根拠となる
データとロジックを出していただけるとより民主的な議論ができるのでは
ないかと思う次第です。


自称「自治体歯車職員」
戸崎将宏
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2005年09月26日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(71)


■自分たちの”常識”は他所では通用しない。

 最近、多くの自治体で「庁内公募」という制度が導入されています。よくあるのは、翌年度の新規事業などの”目玉事業”の実施に当たり、担当してみたい職員を募りレポートを提出させる、というタイプのものです。人事担当者の会議などでもよく話題になっています。しかし、制度の運用のされ方は自治体によって様々で、公募が「普通のこと」になっているところもあれば、まだまだ「一部の例外」として扱われているところもあります。
 先日、ある自治体で開催されている人材マネジメントに関する研究会で、私が担当している庁内公募制度についてお話をさせていただく機会がありました。制度の概要は、
・課で欲しい人材像を書いた”求人票”を貼り出す。
・応募してきた人と課長が面接し、うまくマッチングできれば異動。
というものです。これに対して、次の二点の質問がありました。
(1)新規事業ならともかく、現在の担当者がいる既存事業に関して公募をかけることは、現在いる人を否定することにならないか。
(2)毎回公募で異動する人が出てきてしまうと、計画的な育成ができないのではないか。
 このうち、(1)に関しては、現担当者もこの先ずっと同じ業務を担当するわけではなく、異動しなくても担当業務が替わることはよくあることであることや、応募してきた人と現担当者の間での競争ということになり、現担当者の方が勝ち残ればそのままであること、などをお話しました。また、(2)に関しては、どういう仕事人生を送りたいか、を含めて自分で考えればいいのではないか、ということをお話しました。
 私は、自分ではこれらに対する違和感は感じていませんでしたし、帰ってから、この話を同僚や他の職場の友人たちに聞いても「そんなの当たり前」という感じでした。まだこの制度を初めて数年ですが、毎年数十件の”求人”が出されるなかで、制度を利用しない人を含めて、「庁内労働市場」という考え方が自分たちにとっては”常識”になってしまってきたのです。
 これらの考え方には、それぞれ長所・短所があり、どちらが望ましいというものでもありませんが、大事なことは、外の人と話すことで、自分たちが”常識”だと思っていることが他所では通用しない、ということに気づく点にあると思います。


自称「自治体歯車職員」
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp

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2005年10月03日

自治体職員のキャリアデザインを考える日記(72)


■本当の幸福は家族やコミュニティーから得られる

 クレイトン・クリステンセンというハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の教授がいます。優良な経営を行っている企業は、顧客の声に耳を熱心に傾け、新技術に投資をするという、その経営が優良であるが故に失敗する、というジレンマを、「破壊的イノベーション」という概念によって説明した人です。
 クリステンセン教授の経歴は輝かしく、そして研究者としてはやや遅咲きです。その著書、『イノベーションのジレンマ』の解説によれば、オックスフォードの経済学修士とHBSのMBAを取得し、ボストン・コンサルティング・グループで活躍した後、高性能セラミックのベンチャー企業を起こし、その後、再びHBSの博士課程に戻り、通常3~5年かかるところを2年間で修了し、その博士論文は数々の賞を受賞します。
 しかし、クリステンセン教授は、この輝かしい経歴から想像されるような仕事一辺倒、学業一辺倒の人間では決してありません。5人の子供を持ち、市の役員やボーイスカウトなどのコミュニティ活動にも熱心です。
 クリステンセン教授が語ったエピソードに次のようなものがあります。


コンサルタント時代の同僚は大きなヨットを持っていたが、係留費用やメインテナンスに追われて不平ばかり言っていて幸せそうでない。一方、私は毎週日曜に教会で困った人の相談にのり、人や地域のために役立っていることの満足感で満たされている。本当の幸せはお金ではなく家族やコミュニティから得られることを覚えておいて欲しい。


 現在、ヤミ手当てやカラ残業問題などをきっかけに、公務員の給与に対する議論が盛んになっています。個人的には、もちろん貰えないより貰えるに越したことはありませんが、十把一絡げの勤続年数・年齢と金額の議論になり、肝心の仕事の中身が議論の中心にならないことは残念です。本来、「その仕事はどれだけの価値を生み出しているのか」というところから議論がスタートすべきではないかと思います。
 なにより、自治体職員を含めた公務員の仕事に対する最大の報酬は、クリステンセン教授が述べている、人や地域のために役立っている満足感、ではないかと思います。


自称「自治体歯車職員」
戸崎将宏
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