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自治体職員のキャリアデザインを考える日記(31-40)
最終更新:
匿名ユーザー
2004年12月20日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(31)
■「リエンジニアリング」
おはようございます。こんにちは。
ハマー&チャンピーの『リエンジニアリング革命』をブックオフで100円で買ったのは、5~6年前のことになるんですが、この本も邦訳が出てからもう10年以上が経ち、書店で見かけることも少なくなりました。
私もすっかり本棚の奥のほうにしまいこんでいたのですが、先週読んだステファン・P.
ロビンス『組織行動のマネジメント』に、リエンジニアリングのもともとの意味は電子部品を白紙から設計しなおすことである、という記述があり、これは大変イメージしやすい言い方だ、と感心しました。
ハマー&チャンピーにも、プロセスを変革せずに修正したものに「リエンジニアリング」という名前をつけた羊頭狗肉の例があることの記述がありますが、日本でも多くのコンサルタント会社から「リエンジニアリング・パッケージ」が発売されました。しかし、その多くは既存の「改善コンサルティング」に新しい表紙を付け替えただけのものだったのではないかと感じます。当時多くの「リエンジニアリング本」が出版されましたが、お題目部分はリエンジニアリングの解説で、後半はなんら目新しくない、というものが多かったです。
しかし、リエンジニアリング・ブームの去った今、改めて『リエンジニアリング革命』を読み直すと、確かに取り上げられているケーススタディは今となっては当たり前のものが多いですが、その思想、つまり「白紙から設計しなおす」という思想自体はまったく陳腐化していないと感じました。
かつて工業分野における日本のお家芸といえば「リバース・エンジニアリング」だったわけですが、経営手法のリバース・エンジニアリングはアメリカにお株をとられたままのようですね。
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp
2004年12月27日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(32)
■巨象も踊る
みなさんこんにちは
IBMがパソコン事業を中国のLenovoに売却することになったそうです。
私が現在メインで使っているノートPCはThinkpadです。
これまでにも何台ものThinkpadをバラしては酷使してきました。Thinkpadは非常に分解しやすく、部品もしっかりしているので、いろいろなOSをインストールしたHDDを入れ替えたりするのに便利でした。青いロゴのThinkpadに無理やりWindows95をインストールしたり、「やっぱりThinkpadにはPC-DOS」ということで、PC-DOSにウェブボーイでネットにつないだりしてたこともあります。
そしてThinkpadといえば「赤い鼻」。一度使い慣れてしまうと、もうマウスやスライドパッドなんかは面倒で使ってられません。何よりもキーボードから手を移動させなければならないので、集中力を寸断し、能率を下げることになります。大方の操作はショートカットキーやタブキーで用が済むのですが、webブラウズや図形の操作などではどうしてもカーソルを使う必要が出てきます。
今では職場でも使い慣れた「赤い鼻」を使うために、職場のノートPCにIBMの「スペースセイバーキーボード」をつないで仕事をしています。
持ち運んで使い場合はともかく、自分の机の上でノートPCを使うときには、外付けのキーボードを使うことをお勧めします。
その理由は、
(1)何より疲れない。
ノートPCを机で使うとどうしても猫背気味になります。また、画面と目の距離が腕の長さに規定されてしまうため目も疲れやすい。
外付けキーボードを使えば自然な姿勢でキーボードを打つことができます。(私は昔からの癖で急いでいるときには膝の上にキーボードを置いて入力してます。)
(2)机が広く使える。
仕事はノートPC1台だけでできるものではありません。大抵はいくつかの資料を机の上に並べながら作業をすることになります。しかし、ノートPCを使っていると、視線が自然に落ちるベストポジションにキーボードが鎮座してしまうため、資料を右や左に置いたり、果てはPCの手前において両手を一杯に伸ばしながら作業をしている人もいます。
外付けキーボードを使えば、ノートPCのキーボードの上にも資料を置くことができるので、一番見やすい位置で作業ができます。またキーボード自体もコンパクトなものやワイヤレスなどがあり、使っていないときにはどこかに退けておけるのも魅力です。(私の机にはたまたま一番奥に電源用の”溝"がついているので、そこにノートPCの本体を刺して、机の上にはモニターだけ出ている状態で使っています。机広々~!)
(3)キータッチを選べる
ノートPCは本体の厚さの制約上、キーストロークが浅く、ペカペカした感じでキータッチの悪いものが少なくありません。昔のガチャガチャしたキータッチに慣れ親しんだ人にとっては、まるで「紙のピアノ」を弾いているようなものでストレスが溜まります。少女に何が起こったのか。
外付けキーボードを使えば、タッチの良い機械式を選ぶことも(懐に余裕があれば)できますし、テンキーの有無や矢印キーの位置など好きな配列のキーボードを選ぶことができます。(私の職場にもハッピーハッキングやワイヤレスキーボードで快調に仕事をしている人がいます。そこまでこだわらず、アキバのクレバリーで1000円で買ったキーボードや道端の露天で300円で買った中古キーボードでもノートPCのキーボードよりも快適なキータッチを得ることができます。)
以上が、私の実践型”机上の論理"です。
さて、先週はIBM前会長のルイス・ガースナーの『巨象も踊る』を読みました。(PC事業についても触れられています。)
基本的には、コア事業への集中、実行へのコミットメント、リーダーシップという点に重点が置かれているわけですが、その中でも特に、価値を生み出すコアとなる強みは人材にこそあるという点に強く共感しました。
そして、それまでのIBMの分割路線を変更し、一つの会社として存続させる方針に切り替えています。当時、「小さいものは美しく大きいものは醜い」とされていた風潮に対し、「象が蟻より強いかどうかの問題ではない。その象がうまく踊れるかどうかの問題である。見事なステップを踏んで踊れるのであれば、蟻はダンス・フロアから逃げ出すしかない。」と反論しています。当時のIBMで問題だったのは、組織が大きすぎるということ以上に、過剰な権限分散によって経費がかかり動きが遅くなることだったのです。
このことは、経済学の言葉を使えば「取引コスト」がかかりすぎる問題と言い換えることができます。組織の単位が大きすぎることが原因で起こるフリーライダーの発生などの問題を避けるために権限を分散させたことで、組織が一体として活動するためのコストがかさんでしまったということです。
集中か分散かを考えるときには、もう一度「組織は取引コストを節約する」という「なぜ組織(企業)が存在するのか」というコースの問いかけに立ち返ることが必要だと考えます。
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp
2005年01月03日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(33)
■働くということ
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
この正月は、アレルギー持ちの子どもが食べられるおせちを作りました。
卵、小麦、牛乳の3大アレルギー他があり既製品は心配なので
出汁からとって準備をしたので(栗は甘露煮を使いましたが)
大晦日は1日中ガス台フル稼働でした。
なんだかどれも茶色系の地味なおせちになってしまいましたが、
どれも無事に食べることができました。
特に黒豆と栗きんとん、豚バラ昆布巻きが気に入ったようです。
さて、今年は年末年始の休みが短く帰省客も少ないらしいということですが、
本を読む時間と考えるとたっぷりの休みです。
年末に読んだ本でよかったのは、日経の1面に掲載されていた企画をまとめた
『働くということ』です。
知り合いが取材されていたりでぽつぽつとは読んでいたのですが、
こうして本にまとまったものを読むと、連載を通して「働く」ことに対して
問いかけている姿勢を強く感じることができる気がします。
一方で、取り上げられている人の個々の発言は断片化され
パッチワークの一部として使われているので、必ずしも本人の意図するところとは
違う使われ方をされてしまうかもしれないということも感じましたが。
翻って自治体職員の「働くということ」を考えてみると、
「働くこと」と「収入を得ること」が大きく寸断された「いびつな労働観」を
持つ人が多いことに気づきます。
(1)人事異動への執着
公務員は特に人事異動にこだわります。枕草子の「すさまじきもの」の頃から
公務員にとっては人事異動がすべてだったのかもしれませんが、現代の公務員も
「除目」に一喜一憂し、ある者は自棄酒を飲み、ある者は「どうなってるんだ」と
上司の机を叩いて抗議します。
少なくとも同期との間では給料は大きく差がつきません。40代前半くらいまでは
昇進に大きな差がつくこともありません。つまるところ関心事は人事異動のことだけです。
自分たちの間には能力の差はない(または自分以外の者は劣っている)との
確信でもあるのか、「異動は運かコネだ」と吹聴して回る者も少なくありません。
人事異動への異常な執着は、「働くこと」によって誰からお金をいただいているのか、
ということが隠蔽されていることの裏返しではないかと思います。
「生活のためにお金を稼いだことがない」、さらに言えば、「生活に困ったことがない」
ということが、「除目」に執着する原因のひとつではないかと考えられます。
(2)貴族趣味的「社会貢献」
「5時までは収入を得るために役所に勤めているけど、休日と夜のNPO活動が僕の心の本業」
という労働観も「働くこと」と「収入を得ること」が大きく断絶した類型のひとつと考えられます。
一見「働く=収入」と直結しているように見えますが、そこには誰からお金をいただいているのか、
という視点が欠落しています。
5時まで仕事すれば安定した給料がもらえる、というのは、形を変えたレント(地代)に
他なりません。領民から重税を巻き上げている貴族が「社会貢献」と称してボランティア活動を
しているようなものです。
「公務員」という仕事こそが社会に貢献することを求められているのですから、
本業はそこそこにNPO活動で社会貢献、というのは本末転倒の話です。
成果や責任を求められず、いつでも嫌になったら辞めることができる
「自己満足の社会貢献」に夢中になってメシのタネの本業がおろそかになるのであれば、
住民からのレントを手放し、顧客に喜んでもらうことが収入に直結する
「顧客満足の社会貢献」を目指してはどうかと思います。
(3)「くすぶり症候群」
「5時までは収入を得るために役所に勤めているけど・・・。」で終わっちゃう人も
多いように思われます。何らかの「活路」を見出して「社会貢献」に夢中になったり
趣味に生きる人になって勤務時間中にトーナメント表を一生懸命作ったりする人もいます。
せっかくなら「代打屋トーゴー」のように面白い話の一つでもあれば救いがあるのですが・・・。
以上、いくつか「いびつな労働観」の類型を挙げましたが、これは必ずしも自治体職員に限らず
民間企業でもこういう人は少なからずいます。
『働くということ』にもありましたが、もう一度自分自身にとっての「働くということ」を
見つめなおす機会が必要だと感じました。
■その他のお勧め
他に、最近読んだ本でよかったのは、
○松井彰彦『市場(スーク)の中の女の子』
名著『ミク戦』の著者の一人が唐突に出版したファンタジー(?)。
『慣習と規範の経済学』の流れを受けたものになっているようですが
とりあえず普通に読んでもちょっと変わった読み物として読むことができます。
○南学・上山信一『横浜市改革エンジンフル稼働:中田市政の戦略と発想』
この手の「改革ドキュメント」は、日産のゴーン改革、三重県の北川改革など
官民問わずたくさん出版されていますが、どうしても書き手のスタンスが定まらないと
読む方も落ち着かないことがあります。
一方でトップ本人が出す本は、本人の理念・メッセージが前面に出てしまい、
共感はするけれども客観的には読みづらい、という気がします。
本書の著者の一人である南さんは、元横浜市職員であり、横浜市の参与として中田改革の
中心にいる人です。一方で大学教員という立場にもあり、主観と客観のちょうど良い
バランスの上で書かれているので非常に臨場感がありながらも一歩引いて読みやすい
仕上がりになっています。
2005年01月10日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(34)
■「ユニバーサル・キャリア・デザイン」
おはようございます。こんにちは。
メーリングリストでの会話の中で「キャリアデザインのユニバーサルデザイン」という言葉を思いつきました。
思いつきのきっかけは、男性職員も徐々に徐々に(JOJOに?)育児休業を取るようになったが、これまで育休取得者が少ない中で、職場復帰後のキャリアを思い描きにくい状況にある、ということです。モデルになるような先輩はいない、女性職員はこれまで育児期間中は家から近く残業もほとんどないような職場・仕事に配置されることが多かったが、男性の場合も同じようなことができるのか。考えれば考えるほどいろいろな疑問が出てきます。
しかし、補助的な仕事はIT化・アウトソース化され、「女性職員=庶務」は過去のものになりつつあります。幼い子供を抱えながら保育園のお迎えは夫に任せて残業もいとわずバリバリ働いている女性職員も増えていると感じます。そのような職員にとっては、やはり自分たちの10年後、20年後の姿はなかなかイメージしにくいはずです。ステロタイプ的な見方をすれば、「育児をしながら負担の少ない庶務系の仕事」か「独身or子供がいないorジジババ頼りでバリバリ働くキャリアウーマン(古!)」の両極端な姿しか浮かんでこないからです。
そうなると、男女問わず、育児休業のような長期の休み(または転職・再就職)を織り込んだキャリアデザインが必要になるのでは、と考えました。
皆で同じ一本道の上り坂を「ヨーイドン」で同じゴールを目指して競争している、という「トラック競技型人生観」で考えてしまうと育児休業は足踏みか後退であり、子供は背負わされた重石になってしまいます。しかし、人生は一本道じゃない、なだらかに上り坂ばかりが続くのではなくアップダウンがある、遠くにはいくつもの頂が目に入るし頂だけを目指さなくてもいい、という「ハイキング型人生観」で考えれば、一休みして辺りの野花を見るのも楽しいし、しばらく一緒に歩く仲間がいるのは楽しい、ということになるのではないでしょうか。
そして、「それじゃ単なる「ユニセックス・キャリア・デザイン」じゃん!」という一人ツッコミを受け、ユニバーサルデザインの「原則」に立ち返ることにします。
『「誰でも社会」へ-デジタル時代のユニバーサルデザイン』の著者、関根千佳さんが社長のUDITのサイトによると、
○ユニバーサルデザインの7原則
・原則1:誰にでも公平に利用できること
・原則2:使う上で自由度が高いこと
・原則3:使い方が簡単ですぐわかること
・原則4:必要な情報がすぐに理解できること
・原則5:うっかりミスや危険につながらないデザインであること
・原則6:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
・原則7:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
http://www.udit-jp.com/ud/ud_7rules.html
とされており、オールマイティなものではないこと、高齢者や障害者のためのものではなく、自分と家族が使いたいデザインのこと、ということらしいので、この辺りから考えるとよさそうだ、と思ったところです。
次回予告!!
「原則1」から順に「ユニバーサル・キャリア・デザインって何?」を考えてみたいと思います。(まだ考えてないけど)
TO BE CONTINED!!・・・ってまだJOJOネタ引っ張るか?
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp
2005年01月17日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(35)
■「ユニバーサル・キャリア・デザイン」2
おはようございます。こんにちは。
前回、ユニバーサルデザインの7原則のご紹介をしたので、今回はそれぞれの原則をキャリアデザインに当てはめて考えてみたいと思います。
・原則1:誰にでも公平に利用できること
「新卒から定年までフルタイムで働くことを前提にしたキャリアデザイン」ではこの原則に反している、ということになります。
前回は、男性が育児休業を取る、というところから話を始めましたが、民間企業から転職する場合にも同じような問題があります。これまでは新卒から定年まで勤めることを前提に「出世競争」(ゴールは部長だったり課長だったり出先の総務課長だったりいろいろありますが)のキャリアパスか「お気楽趣味人」のキャリアパスしかありませんでした。
誰でも公平に利用できるためには、40年近く勤めなくても、10年の人にも5年の人にも利用できるものである必要があります。
UDITに掲載されたガイドラインによると、
1a.誰もが同じ方法で使えるようにする:それが無理なら別の方法でも仕方ないが、公平なものでなくてはならない。
1b.差別感や屈辱感が生じないようにする。
1c.誰もがプライバシーや安心感、安全性を得られるようにする。
1d.使い手にとって魅力あるデザインにする。
ということです。
1aの「同じ方法」という意味では、勤務する年数による使いにくさの問題は大きいと思います。この点が解決されると、さらに一歩進んで自治体間の転職がより容易になると考えられます。
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp
○最近読んだ本
(というか、Amazonからの発送メールを転載してるだけですが・・・)
・『おしゃべりで世界が変わる』川上 善郎 (著)
・『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』
マルコム グラッドウェル (著)
この2冊はそれぞれ別のMLで同じ時期に紹介されたものですが、内容的にかなりリンクしていました。シンクロニシティー?
・『ハッピー社員―仕事の世界の幸福論
解決!組織で働く悩み』 金井 寿宏 (著)
・『あきらめの壁をぶち破った人々―日本発チェンジマネジメントの実際』
中尾 英司 (著)
・『フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方』スティーブン・C.
ランディン他 (著)
この辺も関連する本ですね。
・『インディペンデント・コントラクター
社員でも起業でもない「第3の働き方」』秋山 進 (著), 山田
久 (著)
・『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』ダニエル
ピンク (著)
どうでもいいですが、『インディペンデント~』の中で、1937年の"The
Nature of the
Firm"の内容を「コースの定理」として説明していますが、一般的には1960年の"The
Problem of Social
Cost"のことを指すのではないかと思います。
2005年01月24日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(36)
■「ユニバーサル・キャリア・デザイン」3
おはようございます。こんにちは。
今回も前回に引き続き、ユニバーサルデザインの7原則によってキャリアデザインを考えたいと思います。
・原則2:使う上で自由度が高いこと
この原則についてのガイドラインは、
2a.使い方を選べるようにする。
2b.右利き、左利きどちらでも使えるようにする。
2c.正確な操作がしやすいようにする。
2d.使いやすいペースに合わせられるようにする。
となっています。
「右利きのキャリア」と「左利きのキャリア」があるのかどうかは確かではありませんが、このガイドラインはキャリアデザインにとっても重要だと思います(右脳と左脳のキャリアデザインとかなら何とかこじつけられそうですね。)。
まず、「2a.使い方を選べるようにする。」は言うまでもありません。
選択肢が限られた中で自分のキャリアを模索するのは大変です。ただし、自ら選択肢を狭めている、遮眼帯の中でしか発想していない、という問題はあるかもしれません。ちょっと見渡せば選択肢は無限にあります。
次に、「2c.正確な操作がしやすいようにする。」も重要です。できるかぎり正確な情報がなければなりません。そのためには、自分自身について自省するだけではなく外部からのフィードバックを受ける機会を多く持つことが重要になります。
最後に、「2d.使いやすいペースに合わせられるようにする。」ですが、特に年功序列的な組織においては昇進のペースを何よりも気にする人が多くいます。しかし、まず使いやすさを重視することができれば、昇進ペースに惑わされることなく、自分がやりたい仕事、自分の能力を生かせる仕事、自分にとって価値のある仕事を選択して行くことができるのではないでしょうか。
2005年01月31日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(37)
おはようございます。こんにちは。
今回もユニバーサルデザインの7原則に従って自治体職員のキャリアデザインを考えます。
原則3:使い方が簡単ですぐわかること
定義:使う人の経験や知識、言語能力、集中力に関係なく、使い方がわかりやすく作られていること。
ガイドライン:
3a.不必要に複雑にしない。
3b.直感的にすぐに使えるようにする。
3c.誰にでもわかる用語や言い回しにする。
3d.情報は重要度の高い順にまとめる。
3e.操作のためのガイダンスや操作確認を、効果的に提供する。
ぱっと見ただけでイメージしやすい、ということは大切です。これまで自分の「キャリア」について意識してこなかった人でも「なるほど」とすぐに理解できるようになっていないと、「分かりにくい」というだけでハードルが高くなってしまいます。
とは言えここに書かれているガイドラインはどれも役人の苦手なことばかり。というよりも、このガイドラインの逆を行く技術ばかりを高めてきたと言っても過言ではないでしょう。
■役人のガイドライン:
3a.不必要に複雑にする。
3b.関連法規を全部読まないと使うことができないようにする。
3c.自分たちにしか通用しない用語や言い回しにする。
3d.重要度の高い情報が見つけにくいように紛れ込ませる。または隠す。
3e.操作のためには自分たちに頭を下げて教えを請わなくてはならない。
実際に書いてみると、「ユニバーサルデザイン」と「お役所仕事」は全く正反対であることが分かります。
そして、この原則に則ってキャリアデザインを考えることは、「役所の中の役所」である管理部門の力の源泉を失わせることになるのではないかと思います。
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp
blogとメルマガ始めました。 →行政経営百夜百冊
2005年02月14日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(39)
■ユニバーサル・キャリア・デザイン6
おはようございます。こんにちは。
今回はユニバーサルデザインの7原則から、5番目と6番目の原則を取り上げて自治体職員のキャリアデザインを考えてみます。
原則5:うっかりミスや危険につながらないデザインであること
定義:ついうっかりしたり、意図しない行動が、危険や思わぬ結果につながらないように作られていること。
ガイドライン:
5a.危険やミスをできる限り防ぐ配慮をすること:頻繁に使うものは最もアクセスしやすくし、危険なものはなくしたり、隔離したり、覆うなどする。
5b.危険なときやミスをしたときは警告を出す。
5c.間違っても安全なように配慮をする(フェイルセーフ)。
5d.注意が必要な操作を意図せずにしてしまうことがないように配慮する。
キャリアデザインを職員自身の裁量で決められるようにすると、どうしても本人や制度担当者も意図しないような使われ方をする可能性が出てきます。これまでは、「既製服」のデザインは数パターンしかなかったので、一人一人にぴったりの服ではないものの大失敗することも少ないようになっていました。しかし、キャリアデザインの自由度を高めようとすると予期せぬ失敗をしてしまう可能性も高くなります。
これを防ぐには、定期的に上司と面談をする機会を設けることや、いろいろな人のキャリアデザインを共有できる仕組みが必要になってくるのでしょうか。
原則6:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
定義:効率よく、気持ちよく、疲れないで使えるようにすること。
ガイドライン:
6a.自然な姿勢のままで使えるようにする。
6b.あまり力を入れなくても使えるようにする。
6c.同じ動作を何度も繰り返すことを、できるだけ少なくする。
6d.体に無理な負担が持続的にかかることを、できるだけ少なくする。
筋肉を鍛えるのと同じように、人が成長して行くためには適度な負荷をかけることは必要ですが、その基本動作自体は無理な負担にならないようにしないと、筋肉と同じく故障してしまいます。
キャリアデザインにおいても、マイペースで、しかも効率よく成長する仕組みが重要です。焦らず着実にキャリアを構築して行くためには、自分自身を振り返る機会を織り込んでおくことが大切だと考えます。
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp
blog & メルマガ「行政経営百夜百冊」
~1日1冊、行政経営関連の本を紹介~
http://www.pm-forum.org/100satsu/
2005年02月21日
自治体職員のキャリアデザインを考える日記(40)
■ユニバーサル・キャリア・デザイン7
おはようございます。こんにちは。
今回はユニバーサルデザインの7原則から最後の原則を取り上げてみます。
原則7:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
定義:どんな体格や姿勢、移動能力の人にも、アクセスしやすく、操作がしやすいスペースや大きさにすること。
ガイドライン:
7a.立っていても座っていても、重要なものは見えるようにする。
7b.立っていても座っていても、あらゆるものに楽に手が届くようにする。
7c.さまざまな手や握りの大きさに対応する。
7d.補助具や介助者のためのスペースを十分に確保する。
職員自身がキャリアデザインを考える上で、その大きさは本人にとっても組織にとっても重要です。
自身のキャリアをデザインする上で、庁内公募制度やFA制度は大きな意味を持ちますが、それは一部のエリートだけに開かれた「特権」(ドリームチケット)やアリバイ作りのためのものであっては多くの職員にとっては意味がありません。年に5人や10人が公募制度を利用したところで大勢に影響はありません。
では、どのくらいの大きさが最低限必要になるでしょうか? 大体4年同じ職場にいるとして、単年度では25%が異動するとし、「ティッピングポイント」(一気に変化が全体に波及しだすポイント)を5%と仮定すると、職員全体の1%強が公募制度などによって自分の意思によるキャリアの選択を行うようになると、組織全体に与えるインパクトがあるのではないかと思います。1万人の組織で毎年100人が自分のキャリアを自己選択する計算です。
このくらいの規模になると、「自分のキャリアは自分で選択する」ということが特別の事ではなくなるのではないかと思います。
さて、これまで7つの原則の個々に従って「ユニバーサル・キャリア・デザイン」を考えてきましたが、これら7つの原則全体から考えられるのはどんなキャリアなのでしょうか・・・。
それについては、次週以降考えて行きたいと思います。
請う御期待! 刮目して待て!!!
(・・・って、フニャコフニャオ並みに自転車操業の展開です。危うしオシシ仮面!!!)
戸崎将宏
tozakimasahiro@yahoo.co.jp
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