技術のあり方

<交通事故>記録装置の開発者・桜井さんの死を惜しむ

 群馬県松井田町で1日、交通事故死した東京都練馬区の「練馬タクシー」社長、桜井武司さん(64)は、交通事故の瞬間を映像で記録する「ドライブレコーダー」の共同開発者として、事故原因の特定や事故防止に向けた活動をリードしてきた人だった。交通事故の遺族らは「装置の普及や事故を減らす運動に大きな痛手だ」と、突然の死を惜しんでいる。
 装置は、たばこ2箱ほどの大きさの超広角レンズが付いたビデオカメラ。車のフロントガラス前面につけ、車の前方の光景を撮影する。事故の際にはセンサーが衝撃を感知し、事故前後の18秒間の映像を記録する仕組みだ。目撃証言のウソも一目で見抜き、事故原因の正確な解析ができると評判を呼び、警察庁や国土交通省も注目している。
 交通事故で長男を亡くした横浜市金沢区の会社員、片瀬邦博さん(62)が00年、民間の交通事故鑑定人の大慈弥(おおじみ)雅弘さん(57)に製作を依頼したのが開発のきっかけだ。試作品を作っては桜井さんが自社タクシーに乗せて検証を繰り返す連係プレーで、03年に開発された。
 桜井さんは装置導入後、意外な効果に気づいていた。記録された映像が安全教育に使えることだ。「記録が教訓になるんです」。装置に見られていることを意識することで、練馬タクシーの事故は大幅に減ったという。桜井さんの会社の約100台から始まった試みは、いま全国のタクシー約2万5000台にまで広がった。
 片瀬さんは「桜井さんがいなければ開発できなかった。事故防止効果まで教えていただいた。これから普及しようという時に、大きな痛手です」。大慈弥さんも「桜井さんに実証実験を一生懸命していただき、意見をもらったことで使い勝手が向上した」と話す。
 桜井さんは最近は二酸化炭素削減に効果のあるハイブリッド車をタクシーに導入することに情熱を燃やしていた。今年2月には、毎日新聞の「発言席」欄に「タクシー、CO2削減の先導に」と提言を寄せていた。大慈弥さんは「積極的な行動で、業界をよくすることに努めていたのに」と言葉を詰まらせた。
 桜井さんは1日午前7時ごろ、松井田町の国道18号で、12トントラックと衝突して死亡した。松井田署によると、家族に「ドライブに行く」と言って自宅を出たという。【青島顕】
(毎日新聞) - 5月2日15時3分更新

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最終更新:2005年05月02日 18:07
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