課題小論
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~社会資本整備において必要十分とされる目安~
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1. はじめに
現在の日本の経済情勢は、バブル経済の崩壊を経て長期の低迷状態にある。右肩上がりの拡大の時代から脱却できないままに、国や地方自治体の財政収支は悪化の一途をたどり、社会資本整備を取り巻く環境は公共事業費の縮減という非常に厳しいものとなっている。一方で既存する社会資本は老朽化がすすんでおり、高度経済成長期の社会資本は更新の時期を迎えている。
これらのことから、これからの社会資本整備は更新投資に重点がおかれる。しかしそれは、単純に新しくすれば良いというものではない。維持更新投資への重点化は、既存の社会資本が安全性や快適性、社会便益を損なわないことを第一義とした上で、社会資本の質をより向上させるということを意味する。すなわち、国民の資産を減衰させないことが最低限の条件であり、その上で新たな価値の要求に答えることがこれからの社会資本整備における命題であると考えられる。
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2.維持更新投資への重点化
維持更新投資への重点化は、社会の利便を維持するということだけでなく、社会資本の延命化やトータルコストの削減といった財政的安定にも繋がる。
維持更新を適切な時期に行うことで、費用対効果の高い効果的な社会資本をストックすることができる。
さらに、技術の向上や質の追求などにより、多様な価値を集約することを目指し、環境への配慮や人間的デザイン性、維持コストの節減といったより豊かな社会づくりを目指すことが求められている。
3.最後に
社会資本整備が置かれている現状は、非常に厳しいものであると同時に、求められることが高度かつ多様なものとなってきている。また、技術の向上により、良質な社会資本を効率的かつ少ないトータルコストで提供できるような新たな可能性が広がっていることも確かである。
以上のことから、技術的要求に答え、維持更新投資を中心に担っていくことが、これからの安定成長期における社会の安全性、快適性や効率性を追求することの中核であり、社会資本の質を向上させることである。有限な資本・資源の中で新たな価値を更新に生み出せるか否かこそが、これからの社会資本整備において必要十分とされる目安ではないだろうか。