ansuke @Wiki 死にたい奴この指とまれ:第2話

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

ページを読み込むと、真っ白なスペースの真ん中に素っ気なく文字が並んでいた。

 

ようこそ、自殺美容整形外科へ。

当院は、業界唯一の自殺コンサルティングサービスを立ち上げて35年。

三千人以上のお客様の美しい最期をお手伝いして参りました。

残念ながら、お客様の喜びの声をお届けすることはできません。

また、サービスの性質上ここで多くを語ることは憚られますので、

まずはお電話ください。

ご予算に応じた的確なヒアリングに基づき、最適なメニューをご提供致します。

 

フリーダイヤル:0120-4274-5555

(シニナヨ、GOGO、GOGOまで)。

通話料無料。24時間受付。

 

これはなにかのいたずらに違いない。

嘲笑する気持ちに反してその手は携帯電話をつかんでいた。

「シニナヨGOGO、GOGO」をダイヤルする。

(つながった…)

呼び出し音が鳴ったことに軽く興奮したのもつかの間、

「はい、自殺美容整形外科ですが」

老人の声だ。まったく言葉を用意していなかった一郎は慌てて電話を切ってしまった。

 

もう一度、呼吸を整えて「シニナヨ、GOGO、GOGO」をダイヤルする。

「はい、自殺美容整形外科ですが」

さっきと同じ声。老人だ。

「あの、ホームページを見て電話したんですけど」

「ありがとうございます。確認ですが、死にたいとお考えの方ですか」

「はい、そうです」

明るく答える自分の声に違和感を感じる。

「ご予算ですが、最低でも50万円からになりますけど、よろしいですか」

「はい、大丈夫です」

「なんかまだお若いようですが…」

「いえ、大丈夫です。うち、金持ちなので」

「そうですか。それでは、明日の朝、ご来院いただけますか?」

「はい。ていうか、どこに行けばいいんですか」

「メールアドレスを教えてください。すぐに地図をお送りしますから」

一郎はメールアドレスを伝えた。

「届きましたか?」

「え、もう送ってくれたんですか」

「はい、確認してください」

新着メールを開く。

(富士大和田木立前バス停下車、徒歩30分)

地図には、バス停のマークから細い道が一本だけ、

富士山のほうへ向かってくねくねと伸びていた。

「ちょっと遠いですが、よろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

なんで簡単に「はいはい」と返事をしているのか、自分でもよく分からない。

「確認ですが、明日、即日決行でよろしいですか?」

「はい、いつでもいいんですけど」

「では、身の回りの整理などありましたら、そちらを抜かりなく、お願い致します」

「はい、大丈夫です」

「そうですか。では、ご来院、お待ちしております」

 

わけの分からないうちに、明日が自分の最期の日になってしまったらしい。

(ま、いいか)

一郎はその夜、日が昇るまで眠らなかった。