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目を瞑れば、これまで過ごして来た、この街の情景が脳裏に蘇える。
しかし、目を開ければ……そこには、ただ、現実がある。

【灯真】「あ、ああ………ぁあ」
【灯真】「うぁ……なんで、なんで……」

【灯真】「お父さん、お母さん、じいちゃん、ばあちゃん……雨音、ロイ……」
【灯真】「みんな、どうして……」
【灯真】「誰か! 誰か! 生きてる人は!」
【灯真】「誰か! 答えてよ! 返事をしてよ! ……げふ!がふっ!」

空から、白い何かが降ってくる。

【灯真】「……ゆき……じゃ、ない」

それは僕の頭の上にも落ちた。
手に取ってみる。

【灯真】「……はね……?」

白い、鳥の羽。

【声】『聖なるかな……』
【声】『聖なるかな……』
【声】『聖なるかな……』

声が聞こえる。
歌うような、泣くような。

それと、殆ど同時に。
蹲ったままだった、他の人たちが体を起こした。
一瞬、安堵する。
しかし、その体を覆っていたものは。

――灰色。

【灯真】「あ……」
灰色の羽が、広げられ、そして……“それ”は、僕のほうへと歩み寄ってきた。

【市民】『聖なるかな……聖なるかな……セイイイイイイイイキキィィィィィ…………』

声がキーンと……耳には聞こえない、体で感じるしかないほどの高い波長を奏でる。

【灯真】「…………うるさい」
【灯真】「煩い、五月蝿い!」

僕は。
その声に抗するように叫んだ。

【灯真】「お前が壊したのか!」
僕の住処を。家族を。思い出を。

【灯真】「もう十分だ……!」
【灯真】「これ以上、お前に何一つやるものか!」
足元に転がっていた角材……ちょうど木刀ほどの大きさになっていた……を拾い上げ、一気に踏み込み、なぎ払う。
吹き飛ばされる灰色の“天使”たち。

【灯真】「帰れ」
【灯真】「帰れ!」
【灯真】「帰れ、聖なるを騙るものよ!」
天より来たのなら……奈落の底へ叩き落してやる!



【黒服】「――雪村灯真君だね」
【灯真】「――どちら様、ですか?」
【黒服】「我々は、ヤシマ陸軍の使いのものです」

【灯真】「陸軍?」
耳慣れない言葉。
無視しようとしていた足が止まる。
【黒服】「我々には君を拘束する権利がある。お手数をおかけいたしますが……ご同行ください」
【灯真】「………断っても……無意味か」
【灯真】「――なんで、僕なんです?」
【黒服】「先日の健康診断で、新兵器のギアドライバーとしての適性を認められた……それだけだ」
答えたのは、別の黒服の男だった。
【黒服】「……部下の無礼をお許しください」
先ほどまで喋っていた男が、礼儀正しく頭を下げる。

【黒服】「ここから先は……我々の上にいるかたが、ご説明します」
【黒服】「……それまで、よい旅を」
ニヤリ、と、黒服の隊長の唇が歪んだ。
僕は。
【灯真】「……さよなら。縁があれば、また」
校舎を振り返り、一言だけ。
【灯真】「楽しかったよ……」
聞こえるか聞こえないかの小さな声で、そう呟いた。


【黒服】「天使というと、どんなイメージが頭に思い浮かびますか?」
【灯真】「……羽根が生えた、カミサマの使い」
そして、僕にとっては。
【灯真】「……仇」
【黒服】「そう、君はとりたいはずです……仇を」
にやけた口調で言う、黒服。
【黒服】「そのための力、我々が与えましょう」

【灯真】「戦争……まさかまた始まるなんて……」
【黒服】「まあ、信じられんでしょうが……これが現実です」
窓が開く。
自然とそちらを見ると、戦闘によって破壊された街並みが、目に入った。

【黒服】「それに……はじまったのではありません」
【黒服】「終わってないのですよ。戦争は……一度たりともね」


【黒服】「いけない! 走れ!」
じわり。
車の中から赤いシミが広がる。
【黒服】「……は、しって……逃げるん……だ……」
【灯真】「助けを呼んでます!」


見上げれば。
白い、不気味な化け物が、僕を見下ろしていた。
胸から浮き出た無数の人の顔が、口を開く。
【顔】『聖なる……カカカカ……カナ……』


【灯真】「…………負けるか」
【灯真】「おまえらなんかに、殺されて、たまるか」
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