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「たっだいまー。」
「あ、日世璃さん、おかえりなさい。」
「日世璃おかえりアルー。」
万事屋の玄関扉を開けると、ぴょんぴょんと効果音が聞こえそうな勢いで、
神楽と新八が走り寄ってくる。
2人ともかわいいなー。うさぎみたい。なんて思ってると銀ちゃんが不満そうに言った。
「なんで2人ともおかえりの挨拶が、日世璃にだけなんですか。
おかしいだろ。この家の主は俺だっつーの。」
「日世璃ー、酢昆布ー!」
「ごめん、神楽ちゃん!酢昆布切れてた?」
「えー!!買ってきてないアルかー!?」
「ごめんごめん。今日は買い物じゃなくて、ちょっと散歩に行ってて・・・。」
はは・・・。あの沖田総悟君っていったい何がしたかったんだろ?
無駄な時間過ごした気がする。
あんな無駄話してるんだったら、買い物行ってあげればよかったかな。
「おーい。なんかみんな俺の存在忘れてなーいー?」
「銀ちゃんは黙ってるアルよ!!」
「ひどっ!!神楽チャンひっどっっ!!」
「神楽ちゃん。銀ちゃんイジメはそのぐらいにしとこーねー。銀ちゃん、ああ見えて天パだけど結構傷つきやすいから。」
ハハ・・・。
神楽ちゃんの毒舌ぶりには、毎度感心するよ。
いや。さっきのはほんの序の口だけど。
「いや。日世璃さんも地味にひどいことを言ってる気が・・・」
そういう新八は、いつもみんなにひどいことを言われてる所為か、銀時の気持ちを察して、慰め役に回る。
「銀さん。元気出してください!ほら、僕なんかよりずっとマシですよ!僕なんかメガネメガネって・・・」
「うるせェよ。メガネなんかに慰められたくねェっつーの。」
「ちょ・・・!?銀さん!?僕、銀さんの気持ちを思って・・・」
「はーい。晩御飯つくろーね。神楽ちゃん。」
「おう!味見ならまかせるヨロシ!」
そんなこんなで、・・・・いや、そんなこんなって何だ。
・・・まあ、そんなこんなで。
万事屋では、ごく普通の当たり前の会話が続いた。
銀時は、主なのに無視され、新八は慰めに入るのに傷つけられ、女の2人がここでは1番強い。
いや、どこのお宅でもそうなのだろうか。
「「「「いっっただっっきまーーーす!!!!」」」」
みんなで声を合わせて「いただきます」。
これ、万事屋のルール。
といっても、日世璃が江戸に来て居候みたいに万事屋に居座る前は、こんなことやっていなかったのだけれど。
だから、今でも、めずらしく日世璃が自分の家に帰っているときは、万事屋の面々は彼ららしく、個々に好きなように食べ始める。
しかし、何故だろうか、日世璃が江戸に引っ越して来てちょうど1カ月。
このルールは、すっかり習慣のようになってしまったのだ。
「神楽ちゃん、今日はいつもより食べるね。」
「当たり前アル!」
「今日は久しぶりに仕事が入ってたんです。」
「へ~、めっずらしい~。」
銀時たちは万事屋。
『金さえくれれば、何でもする。』
と言えば怖いように聞こえるかもしれないが、何しろ仕事なんか滅多に入ってこないし
入ってきたかと思えば、逃げた猫の捜索だとか、電球替えてくれだとか、
日世璃にしてみれば、よくそんなので生活してこれたなと思うものばかりである。
だが、時々本当に時々、危険な仕事も入ってくる・・・というか勝手に頭突っ込んでたり
巻き込まれたりが多いのかもしれないが・・・。
それが、日世璃には気がかりでしょうがないのだ。
何しろ、バイト三昧で、銀時たちが今日は何の仕事をして帰ってきたのか、全く知る術もないのだ。
知らないことを知りたがるのは人間の当たり前の行動で、
「何の仕事?」
と軽く質問してみるのはいつものこと。
そして隣にいる銀ちゃんから
「あ?たいした仕事じゃねーよ。気にすんな。」
と返事が返ってくるのもいつものこと。