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「団子1本!」

「はーい!」

 

「日世璃ちゃーん!こっちには団子2本!!」

「はいはい!ちょっと待ってー!」

 

「お姉さん、わらびもちくださる?」

「あ、はい!今日のおすすめですね。」

 

「お茶おかわりもらえますか?」

「すみませんー。セルフなんで自分でお願いしますー。」

 

「江戸で1番ベッピンな日世璃ちゃーん。苺牛乳ー。」

「すみません、セルフなんで・・・・・・

ってあるかー!!!!

そんなに飲みたいなら自分で買ってこいー!!」

 

お盆を持って、朝から和菓子屋を走り回る。

江戸の和菓子屋アイドルこと、日世璃。

ハァハァと若干息切れ気味な彼女に、いつもノリツッコミをさせる男・・・。

 

「ギャアギャアうるせーなー。ふつうにツッコめよー。わざわざノリツッコミじゃなくてもいいだろ。」

「うるさいわ!あんたが言うことじゃないでしょ、このアホ銀時!!頭くるくるのくせにっ!」

銀時。『銀髪天然パーマの常にやるきゼロダメダメ人間』。

 

「おーい。銀さんは頭じゃなくて髪の毛がくるくるなの。

わかる?頭と髪の毛の違い。同じようでだいぶ違うから。そこ、重要だから。」

 

うるさいなあ。ごちゃごちゃと。

 

日世璃はツッコミのため片手で持っていたお盆をまた両手で持ち直す。

と、それと同時に店長からわらびもちを渡され、他の客を待たせていたことを思い出す。

「ごめんなさいね、遅くなって。ごゆっくり。」

そう言って、日世璃はわらびもちを差し出しながら、客にきれいな笑顔を見せる。

「あ、ありがとう・・・」

客は女だというのに顔が赤く染まり、それを隠すように下を向いた。

それもそのはず、その笑顔にノックアウトされてしまった男は数知れず、直接告白をしてきた男も何人かいたそうな・・・。

 

もっとも、当の本人日世璃は、そういうのにまったく興味が無いのか、はたまた他に好きな男がいるのか

(和菓子屋の常連たちは後者だろうと勝手に予想しているそうだ)、その告白に顔を横に振るばかりなのだが。

 

そんな日世璃と

「ていうか無視か!日世璃チャン。苺牛乳ぐらいくれよ。頼むわ。銀さん、甘いもんここ3日くらい食べてねーんだよ。体の中に糖がなさすぎて死にそうなんだよ。」

この『銀髪天然パーマの常にやるきゼロダメダメ人間』、銀時。

 

社会から見れば、両極端にいるような2人だが、昔馴染みとはすごいもので、2人が出会ってもうすぐ18年らしい。

 

「他のお客様の迷惑になるんで、子どもみたいなこと言うのやめてもらえます?」

ていうか、“ちゃん”付けとか気持ち悪い。 

 

まともに話すと埒が明かないので、あえて他人のように話してみる。

銀時は、周りから見ればいい年した青年なのだが、日世璃には子どもみたいに見えるときがあるのだ。

もっとも、今のように“甘いもの”に関してだけだが。

甘いものは日世璃も確かに好きだし、毎日食べる。

じゃなきゃ和菓子屋なんかやっていないだろう。

しかし、銀時ほどではないと、毎日ここに来る彼に日世璃は逆に尊敬するくらい呆れていた。

 

好き嫌いは人の勝手だが、ここまでくるとうっとうしい以外のなにものでもない、と日世璃は思う。

 

「ていうか、ここ和菓子屋なんだから和菓子頼んでよ。それとも、団子やわらびもちは“甘いもん”のうちに入らないって言うの?」

 

「銀さんは苺牛乳が飲みてー気分なの。わかる?」

 

「わからんわっ!!だから苺牛乳がそんなに飲みたいなら他で買ってこい!!

うちには無いって何回言ったらわかるの?」

 

「しゃーねーなー。じゃあ団子1本!」

「じゃあって何ですか!じゃあって…。――ごめんなさい、店長。うるさい客も一応客ですから、

団子1本お願いしますー。」

「はいよっ!ったく、相変わらず仲良いねー。」

店長は、いつもの倍のニヤニヤ顔でそう言う。

 

 

「「っだ!誰がこんな…!」」

私は思わず銀時と声が被る。

もうやだ。

 

 

どっからどう見たら、仲良く見えるのか。

和菓子屋の常連たちもさっきの店長もみんな、仲良い仲良いと言うが

私には、こんなに口喧嘩していて仲良く見えるのが理解できない。

 

 

「喧嘩するほど仲が良いって言うじゃねーか。」

「そうだそうだ。俺らには仲が良いようにしか見えねーよ。」

常連の一人は、そう言ってわざと眩しいような仕草をする。

 

仲が良すぎて眩しいってか。

どんな表現だよ、おい。

ていうか、そんな腕を顔の前にやる動作とかいらないって!

 

「俺らが仲が良いとか悪いとか、そんな無駄話してんなら仕事行ったらどうなんだよ。

それとも仕事なくして、プー太郎ですか。

まあ仕事したくてもそんな頭じゃあ、誰も雇ってくんねーわな。」

 

「おいィィィ!!頭は関係ねーだろ!!」

「銀時の言うとおりですよ。そっちの頭のほうがよっぽど眩しいですよ。」

「えェェ!?日世璃ちゃんってそんな毒舌キャラだったっけー!?

え、違うよね。違うって言ってー!

俺の日世璃ちゃんのイメージ崩れちゃうから!

こなごなに崩れて風に流されちゃうから!」

 

「え?私もとから毒舌キャラですけども?」

「何ー!?そのとぼけた顔は!」

 

常連の中でも特に毎日来てくださるおじ様方が

世界の終わりだとでも言うような顔をしている。

それでも私はそれを知っていてわざととぼけたような顔をした。

 

「まあまあ。お前らも一旦落ち着けって。

で?実際のところどうなんだよ?

銀さんも日世璃ちゃんも恋人とかいねーんだろ?

もう、2人付き合っちまえよ。」

おじ様方の1人が店長のさらに上をいくにやにや顔で聞いてくる。

いや、もうその顔セクハラする前のおじさんだから。

いや、むしろ、セクハラ中のおじさんだから。

セクハラは犯罪なんだよ。知ってる?

 

日世璃は、“いないですけども何か?”そう言おうと思ったが

また銀時と言葉が被ったら恥ずかしいと思って、まずは銀時の言葉を待ってみることにした。

 

ほら、早くおじ様たちに言い返しなさい、銀時。

ほら。

私は絶対に銀時より先にしゃべらないわよ。

ほら、早く。

ほら・・・

 

 

「ばっかやろォ・・・」

よし来たっ!

 

 

 

 

 

「・・・彼女ぐらいいるっつーの。」

 

 

 

 

「そうそう。いるわけないっ・・・・・・はあ!?

いるの!?あんた銀時、彼女いるの!?」

 

私は、銀時と18年くらいの付き合いで、こいつの好きなものも嫌いなものも知ってる。

こいつがマダオに見えて、実はやるときはやる男だってのも知ってる。

銀時のことは何でも知ってる。

つもりだった。

なのにこいつに彼女がいるなんて・・・・・・

 

「全然聞いてないわよ、そんなこと・・・。」

 

「ほぉ~。先越されて悔しいってか。」

「そんなんじゃないわよ。誰がそんなこと言った?」

 

銀時が女の人と歩いてるのなんて見たこと無いわよ。

冗談じゃない。

なんで私の知らないうちに付き合ってんのよ。

あれ?

なんで私こんなにいらいらしてんの。

なんか私今日おかしいや。

働きすぎかな?今日は早く帰してもらお。

 

「私だって・・・私だって・・・彼氏じゃないけど好きな人くらいいるわよ。

こんなダメダメ人間と誰が付き合うってゆーの!しかも天パだし。」

 

「オィィ!!てめェ、天パは関係ねェだろォ!!

これは生まれつきなんだよ!仕方ねェんだよ!!」

「うるさいなぁ。銀時なんか糖尿病になって糖尿星人になればいいのよ!!」

「糖尿星人って何だよ!!あれか、手から糖尿ビームッ!とか出るのか!?」

「糖尿ビームって何よ!!考えることが子どもっぽ過ぎるのよ!!」

「知らねェよ!!お前が糖尿星人とか訳わかんねェこと言い出すからだろーがよォ!!」

「知らないのはこっちよ!!」

 

“銀時なんか知らない”

そう理不尽に日世璃は言い放った後、店長にことわりを入れてから和菓子屋を出た。

 

 「俺はありゃ、相当銀さんに惚れてると見た。」

「あぁ、俺もだ。銀さんが彼女いるって言っただけで、あの動揺・・・」

「惜しいけど、俺ぁ、銀さんになら快く日世璃ちゃんをくれてやるさ」

「銀さん。日世璃ちゃん追いかけなくていいのかィ?」

「うるせェよ。」

「とか言いながら出てってるし。」

和菓子屋は、嵐が過ぎ去ったかのように静かになり

あとには“にしし”と笑う常連の親父たちが残るばかりだった。

 

 

 

私のバカ。

理不尽すぎるでしょ。

もうやだ。

絶対銀時怒ってるよね?

怒ってないほうがおかしいもん。

 

「・・・銀時・・・。」

 

あふれる思いはいつの間にか声から漏れていて

 

 

 

「なんか呼んだか。アホ日世璃。」

 

前を向くと銀時が立っていた。 

 

「っ・・・・・・・・・・・・

なにも・・・アホ銀時なんか呼んでないよ。

・・・おめでとう。彼女できた祝いに飯でも作ろうか?」

嫌みったらしく言ったつもりだった。

でも銀時はなんか全然イラついてないみたいで。

なんだ。おもしろくないの。

 

「なぁーんだ。まだ気づいてねェのか。やっぱりアホだな、お前ェは。」

「・・・?」

こっちの方が少しイラつかされる。

 

「彼女なんかいねェよ。ありゃうそだ、うそ。」

「うそ・・・?」

 

「あぁ。俺がモテねェの知ってんだろ?」

「なぁーんだ。うそかぁ。・・・って、うそってどういうことよォ!?」

 「怒んなって!しゃーねーだろ。

あんな事言われてなんも言い返せねェの、ムカつくしよォ。」

私の顔は、驚きから脱力に変わっていた、と思う。

自分の顔は見えないしね。

銀時からはどう見えたのかわからないけど

銀時はいつもの死んだ魚のような目で、頭をガシガシと掻きながら私を見ているだけだった。

 

「で?飯作ってくれんの?」

「は?作るわけ無いでしょ。ていうか昨日も私作ったじゃん。万事屋の夕飯。」

「今日も頼むって。マジで。新八のより日世璃のが100倍美味ェんだって。」

「マジで?じゃあ作っちゃおっかな。・・・って、作るかァァァ!!」

 

 

 

なんか話しそれちゃってるけど、まあいいか。

銀時も怒ってないみたいだし。

まあ、銀時の嘘に軽く引っかかってしまった自分自身が少しムカつくけど。