原稿

 昨年、振り込め詐欺と呼ばれるものやその他多くの詐欺がかつてなく横行しました。被害総額は全国で 250億円を越えるといわれます。では、なぜこんなにまで発生してしまったのでしょう。取り締まられているはずではないのでしょうか。そこで、私達は法律の問題点の一部を調べてみました。

 では、早速その詐欺に関してから。悪徳商法とは簡単に言うと買った後で後悔したという感情が生じるような販売方法などで、悪質なものは法律で取り締まられています。例えば、突然の訪問や電話による勧誘などで、不要な品物を買わされてしまったり、不当に高い金額で買わされてしまったりした時、一度冷静になって考え、不要であると思えば、無条件で返品・解約ができるという“クーリングオフ制度”があります。この制度で一定期間内にクーリングオフをすれば契約そのものがなかったことになります。しかし悪徳業者なら、そうしたことには非常に手慣れていて、クーリングオフを妨害しようとしたり、クーリングオフをしてもしつこくクーリングオフを取り下げさせようとしたり、脅迫的な態度を取ったり、など法律の知識がないと対応が厳しく、弁護士に相談しないと、対処できなくなります。

 また、法律を知らないため、身に覚えのない請求書にすら支払ってしまうケースもあります。法律に関する(ような)名称、たとえば弁護士や公的機関に似た名称を騙ったり、「回収員が自宅へ出向く」「勤務先を調査」「給料の差押え」「強制執行」「信用情報機関に登録」「家庭裁判所に起訴状を出す」といった単語が請求書にならんでいたりしています。これらの言葉が本当なのかどうか、法律通りの物なのかなどはふつうの人は分かりません。こういった法律に関係するような言葉が、受け取った側を不安にさせ、受け取った側は請求された料金を振り込んでしまいます。また、身に覚えのない請求ではなく、実際思い当たるところがあればなおさら被害に遭いやすいでしょう。これに対し、国民生活センターなど様々な所で、被害に遭わないように情報を公開しています。

 しかしこの手のケースにはあらゆるヴァリエーションが(法をすり抜けるものすら)存在します。最近では送られてきた支払請求を放置しておくと、本当に不利益をこうむるような詐欺まででてきています。被害の統計を見ると、まるで流行する病のように一つのタイプが沈静化すると別のが出てくる、といった具合です。とりあえず消費者センターや国民生活センターに相談するように呼びかけていますが、被害は後を絶ちません。法律の穴の一部は、人々が法律をあまり知らない、というところにあるのではないでしょうか。

 では次に、罰則規定がなく、意味をあまり成してないのではないか?という法律をとりあげてみます。その一例が消費者金融です。これには利息制限法と出資法という二つの法律が関わってきます。利息制限法では最大でも年利20%までしか有効と認めていません。しかし、出資法では29.2%をこえる物に罰則を課す、とあります。どういう意味でしょうか。これは、利息制限法が有効か無効かを決めているのに対し、出資法が罰則の限界を示しているのです。しかし、よく考えてみると間の部分は無効とされているのに、罰則は課せられません。その部分が、俗にグレーゾーンと呼ばれているものです。消費者金融と呼ばれるところの返済の年利率はたいてい20台後半に設定されていて、グレーゾーンに入ります。ただ、グレーゾーンというのはあくまで、利息制限法上は無効とされています。その分の利息は支払う義務がありません。しかし、一度払ってしまうと返してもらうことができません。もちろん、多くの人はこの法律を知りませんし、知っていたとしても、借りた側の立場は低く相手がサラ金ならなおさらで、強くこのことを主張しない限り払わされてしまうでしょう。これは政府が注意をうながせば状況はかわるとは思うのですが。
 また、男女雇用機会均等法も、制定自体は大きく取り上げられ、教科書・資料集などに載っているほどでしょうが、改正が行われたものの、いまだに罰則はありません。また、労働基準法は罰則があるにも関わらず守られていません。罰則により法律の実効性を確保するのが当然とみなされている欧米と比較すると、日本はこのような法律が多いです。

 罰則がなく意味の無い法律に関連して、古い法律で意味を成さない法律についても話したいと思います。
 日本で法律が制定されてから既に120年近くたっています。そのため、今も残っている現状にそぐわない法律、罰などが残っています。有名なものとしては決闘罪等があげられます。次はそのようなものについて話して行きたいと思います。
 まず、始めに例に挙げた決闘罪ですが、この法律は今日では殆ど適用されていません。この法律は1889年に制定されており、当時はまだ決闘が行われていたため制定されました。罰は挑んだり、受けたりすると6ヶ月以上2年以下の禁固罰金10円以上100円未満と、挑んだだけでも意外と重く、当時明治政府は武士の考えを払拭しようとしていたものと思われます。ただ、現在まで改正されずに残っており、10円以上100円未満の罰金と、今の時代の貨幣価値に合っているものではないし、そもそも今となっては決闘罪の適用は年に1件あるかないかです。
 他の例としては、失火に関する法律などがあります。この法律は、個人に重大な過失がなければ、失火の場合、民法上賠償責任を負わないというものです。これは、制定されたとき木造住宅が圧倒的に多く、被害を個人に負わせるのは無理だという判断から来たものです。
しかし、現在では鉄筋コンクリート製の家が多く、また消防車の水がかかったなどの被害も弁済されないため、火事の2次被害者は泣き寝入りをすることも少なくありません。
 昔のままの法律には他にも、外国国旗損壊、私戦予備及び陰謀などといった国交に関するものがありますし、また、文章に「帝国」や「木戸銭」等昔の表現を用いてるものもあります。この様に法律の文章は古くわかりにくいので、大衆に敬遠されがちです。

 ここまで見てきたところ、いったい国は何をしているんだ、ということになるでしょう。しかし、国も急激な時代の流れに合わせて法律を変えています。例えば現在脱法ドラッグと呼ばれているものは、化学式が少し違うだけで、麻薬取締法で麻薬と指定されていなかったものだったのですが、それらを広く対象に指定しようと乗り出しています。しかし、それでも、法改正は来年になる見込みで、一年の間は間に合いません。それにこのような事はいたちごっこになり、根本的な解決にはならないでしょう。やはり限界があるのです。では私達は詐欺等に対しても、何もできないのでしょうか。いえ、法律に興味を持つ事です。興味を持てば、毅然とした態度で詐欺に対することができるでしょう。そしてそのためにも、国は法律がもっと親しみの持てるようなものにし、国民に広く情報を公開し、伝える必要があるでしょう。
 ご静聴ありがとうございました。


最終更新:2005年02月09日 01:41