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概要

フィンランドを除くスカンジナビア半島、およびアイスランドを中心とした
北ヨーロッパで信仰されていた古代宗教。

ヴァイキングによって信仰されていたことで有名。
キリスト教への改宗が進み、消滅した。
ゲルマン神話*1など周辺の神話への影響も強い。

基本的な世界観は「エッダ」に記されている。

北欧神話に関係する有名な名前

ゲームや漫画で固有名詞だけ借用されることが多い。

登場人物

名前 原語 簡単な説明
オーディン(オージン) Óðinn 主神。戦、死、知恵の神。
トール(ソール) þórr 雷の神。豪傑で、雷を起こす槌を持つ。
ティール(チュール、テュール) Týr 正義と誓約の神。フェンリルに片手を食いちぎられる。
ロキ Loki 巨人でありながら神々の列に加わった神。ラグナレクの張本人。
フレイ Freyr 豊穣神。ヴァン神族?の代表格。
フレイヤ Freyja フレイの妹。不死の林檎の世話をする。
ノルニル(ノルン) Nornir 運命の三女神。ウルズ、ヴェルザンディ、スクルド。
ヴァルキューレ(ヴァルキリー、ワルキューレ、ヴァルキュリア) Valkyrja 戦死した戦士から英雄を選び、ヴァルハラに連れて行く女神。
フェンリル Fenrir ロキの子にして狼。神々の計略で縛られている。

地名

名前 原語 簡単な説明
アースガルズ(アスガルド) Ásgarðr 神々の住まう土地。
ミズガルズ(ミドガルド) Miðgarðr 人間の住まう土地。
ヴァルハラ(ヴァルホル、ヴァルハル) Valhöll オーディンの、戦死した英雄が住む館。

そのほか

名前 原語 簡単な説明
イグドラジル(ユグドラシル) Yggdrasill 「世界樹」。九つの世界を支える根を持つ。
グングニル Gungnir オーディンの槍。
スレイプニル Sleipnir オーディンの持つ八本足の駿馬。
ラグナレク(ラグナロク) Ragnarök 「神々の黄昏((正確には「世界を統べる者の運命」であり、「神々の黄昏」は誤訳であるが定着している。))」。北欧神話に特徴的な、神々が破滅するという結末のこと。
ルーン(ルーネ) Rune 呪術に使用された古代文字。
アース神族?(エーシル神族) Áss オーディンを筆頭とする神々。
ヴァン神族?(ヴァニル神族) Vanr フレイを筆頭とする神々。

北欧神話を題材とした作品、影響を及ぼした作品

中世

名前 補足
ニーベルンゲンの歌? 中世ゲルマンの英雄譚。ジーフリト?(シグルズ、ジークフリート)の活躍とクリエムヒルトの復讐がメイン。

近世

名前 補足
大蛇殺しのシグルド? フケーの手によるもの。北欧独特の節を取り入れた、「指環」の先達である。
ニーベルングの指環 ワーグナーの歌劇。四部作。「ワルキューレの騎行」が有名

研究書・紹介本


書名 著訳者 価格 コメント
中世文学集〈3〉エッダ・グレティルのサガ 松谷健二訳 ¥903 文庫サイズで入手しやすく安価。後半は英雄グレティルにまつわる伝説で、全体に対するエッダの分量が少ない。
エッダ―古代北欧歌謡集 谷口幸男訳 ¥2,625 スタンダードな本で、有名な固有名詞にはひととおり原語スペルが併記されている。箱付きだが分厚いハードカバーではないので、持ち歩くには良い。だが、「スノリのエッダ」が「ギュルヴィたぶらかし」しか掲載されていないなど、全ての文献を挙げているわけではない。
スノリ『エッダ』「詩語法」訳注
『広島大学文学部紀要』特輯号(1983)
谷口幸男 「ギュルヴィたぶらかし」の続き。原語スペルはない。市販本ではないので、地元の図書館を通じて大学図書館や国会図書館にコピーを送ってもらうしかない。
北欧神話物語 キーヴィン・クロスリイ・ホランド ¥2,520 こちらもスタンダードな内容で占められている。「物語」の名の通り、詩調でなく散文物語調なので読みやすい。だからといって作者の創作がすぎることもなく、原典が歌謡調の雰囲気も残されている。解説と物語のバランスも良く、煩わしい注釈がないのも長所で、特に初めて触れるには良い本。ただし、更に深く知るには、本来の歌謡詩調をそのまま訳したような本を読んで感じを掴むべきである。巻頭の写真(モノクロ39点)も含めて図版や挿絵も多い。特に宇宙観を示すイラストは理解の一助となる。
北欧神話 H. R. エリス・デイヴィッドソン ¥2,520 カテゴリごとに分けられ、解説本として有用。物語の訳文を列挙掲載したものではない。北欧神話の中での宇宙観のみならず、当時のヴァイキングが何をどう信仰したかについての解説にまで及んでいる。資料写真が多いが、訳者がちょっと頼りない。
北欧神話(岩波少年文庫) パードリック・コラム ¥756 読みやすく童話物語風の仕上がりになっているが、作者の主観や創作的要素が強い。現代日本人として抵抗なくすらすら読める本としてはピカ一。
北欧神話 宇宙論の基礎構造[巫女の予言を読み解く] 尾崎和彦 ¥10,500 「巫女の予言」の原語・訳と研究が主。北欧神話の世界観を諸説並べて検討していて、北欧神話に登場する地名の相互関係図や地図は重宝する。だが非常に高い。また、基本的に筆者の論を展開する本で、一般的な解釈を紹介する本ではない。
ゲルマン人の神々 ジョルジュ・デュメジル ¥2,310 比較神話学者による構造的神話研究の、第一級の良書。インドやローマなど、ゲルマン諸語が属するインド・ヨーロッパ語族の神話伝説を比較して、ゲルマン神話のさまざまな物語がいったいどんな思想をベースに形成されているか、を分析する。従来言われるほどは、北欧神話に外来要素があるわけではないらしい。
※価格はamazon

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最終更新:2022年12月09日 16:58

*1 ゲルマン神話のうちの一つが北欧神話である。ゲルマン神話とは、インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派の言語(ゴート語、古ノルド語、英語、ドイツ語など)で伝承されていた神話、つまりゲルマン語を話していた集団や民族に伝承されていた神話のこと。最も古いものの一つはタキトゥスの『ゲルマーニア』にあるトゥイスコー?マンヌス?の神話であるが、これ以外にも北欧神話には知られていない神格がいくつか掲載されている。これ以降『ベーオウルフ』にわずかな言及があるなどを除けば、『エッダ』に至るまでほとんど記録はない。ドイツの民間伝承中にはオーディンやフレイヤなどの神格に相当する名称や機能の存在が知られているが、北欧神話に伝えられているものと完全に一致しているわけではない。このように北欧神話以外のゲルマン神話は全くといっていいほど知られていないので、実質的には北欧神話をゲルマン神話と呼んでも問題はない。ただし、北欧神話が北欧西部の伝承を中心に体系化されているというのも事実であり、北アフリカやロシアにまで到達した「異教」のゲルマン民族における神話を到底網羅するものではないため、北欧神話、と限定をつけて呼ぶほうが好ましい(エッダ神話、という呼びかたもあるが、これだとサクソ・グラマティクスの『ゲスタ・ダノールム』などエッダ以外の資料が無視されてしまうきらいがある)。