ケルト神話

古代ケルト?の人々の創世の物語は、現在も謎のベールに包まれている。
彼らは生きとし生けるもの全ての物たちの中に神々の存在を見出していた(アニミズム)。また、輪廻転生や霊魂不滅(Immortality)の概念をもっている。

<ケルト神話の成立>

数多くの神話・伝説は口伝えで伝承されてきたが、成立した地域と言語によって下記の2系統に大別される。

 アイルランド系列:<ゲール語>アイルランド?人・スコットランド?人 <マンクス語>マン島?人(マン島の言語は絶滅→再興の活動がなされているとか)
     主としてアイルランド~イギリス北部で語り継がれた。
     主要書物:『ラーイーンの書?』『エリン来寇の書?
 ウェールズ系列:<ウェールズ語、キムリ語>:ウェールズ人 <コーン語>コーンウォール?人 <ブレトン語>ブルターニュ?半島人
     主にイギリス南部からフランスのブルターニュ地方に渡って語り継がれた。
     主要書物:『カイルマーセンの黒書?』『アナイリンの書?』『タリエシンの書?』『ハーゲストの赤書?』『マビノギオン?

現在中心となって目に触れるものは、前者のアイルランド系列の神話が多いようである。
6世紀以降になってキリスト教とその文化が流入し、それまでは口承文学であったケルトの民話・神話たちが続々と文章化されることとなった。外来文化であるキリスト教の視点に、在来の神話・登場人物などをとり入れ融合させたものが、現在我々が目にすることのできる「ケルト神話」なのである。大きく波をたててうねる歴史・権力・文化の様々な変遷を内奥に含みこんで育ってきた神話、歴史を伝える生きた証なのではないだろうか。
また、ケルトの神話世界には、アーサー王伝説とも関わりの深い物語が多く秘められている。

<概要>

1世紀~4世紀頃/ダーナ神話?;一般的にケルト神話、と呼ばれるのはこのあたりの時代。
アルスター伝説?:ミレー族がアイルランドを制覇して以降。英雄クー・フーリンの物語が中心。
フィアナ伝説?:アルスター伝説より3世紀ほど後、フィン・マックールらフィアナ騎士団の物語。
マビノギ?:ウェールズの吟遊詩人の口承。彼らの歌のことをマビノギと呼ぶ。
(ちなみにケルト人や民話、神話をベースにした同名のMMORPGがある)
12世紀頃/ヴェルスンガ・サガ?(スカンジナヴィア)
9世紀~12世紀/アイスランドのエッダサガ

ダーナ神話?の語り部はトァン・マッカラル?
この壮大な争いと統治の変遷を当時の民族の興亡の歴史と見ることもできるだろう。
古代アイルランドには3つの神族(パーホロン?ネメズ?フィルボルグ?)が
次々にやって来ては滅びた。
4つ神族トゥアハ・デ・ダナーン(ダーナ?)神族(「ダナーン巨人種族」とも呼ばれる)は南の島から「四つの神器(魔剣、魔の槍、魔の釜、運命予言の石「リア・ファイル」)」をもってきたと言われている。
彼らも凄絶な戦いを経て、5番目の半神半人の種族ミレー族に破れた。
彼らが地下や海の彼方の楽園「ティル・ナ・ノグ~常若の国」に逃れ、
小さき人々?(=妖精)」になった時から、われわれ人間の歴史が始まったとされている。

<用語と登場人物たち>

主要書物

書名 内容の概説 主な登場人物 付随説明
ラーイーンの書?
エリン来寇の書?』Lebor Gabála Érenn
カイルマーセンの黒書?』Llyfr Du Caerfyrddin
アナイリンの書?
タリエシンの書?』Hanes Taliesin
ハーゲストの赤書?』Llyfr Coch Hergest
マビノギオン?』Mabinogion

登場人物 (…主な王…神々…など…)

名前 簡単な説明
アーネ?(Aine)
アブノバ?(Abnoba) 狩猟の女神。
アミッド?(Airmed) 医療の女神。
アラウン?(Arawn) 地下世界の支配者。
アリアンロッド?(Arianrhod)
アルティオ?(Artio) 熊の女神。
アルデュイナ?(Arduinna) 猪の女神。
アルネメティア?(Arnemetia)
アンカムナ?(Ancamna)
アンドラステ?(Andraste) 勝利の女神。イケニ族の女王ブーディカがこの女神に祈願するために様々な儀式を行った。
イアヌアリア?(Ianuaria)
イスバザデン?(Ysbaddaden) 巨人の男性。
イコウェラウナ?(Icovellauna)
インキオナ?(Inciona)
ウァグダウェルクスティス?(Vagdavercustis) 植物の女神。
ウェルベイア?(Verbeia)
エスス?(Esus) 残忍な神。
エーディン?(Etain)
エポナ(Epona)
太陽の女神エリウ?(Eriu)
オイフェ?(Aife)
オェングス?(Aengus)
オグマ?(Ogma)
クスルシギアエ?(Xulsigiae)
クー・フーリン(Cú Chulainn)
ケリドウェン?(Ceridwen)
ケルヌンノス?(Cernunnos)
コウェンティナ?(Coventina)
ゴヴニュ?(Goibniu) 鍛冶の神。
三王?
スカアハ?(Scathach)
スリス?(Sulis)
スレウィアエ?(Suleviae)
セクアナ?(Sequana)
ダグザ(Dagda)
ダヌ?(Danu)
ダモナ?(Damona)
ディアン・ケヒト?(Dian Cecht)
トゥルッフ・トゥルウィス?(Twrch Trwyth) 猪。
フィン・マックール(Fionn mac Cumhaill)
ナントスエルタ?(Nantosuelta)
銀の腕のヌァザ(Nuadu Argatlám)
ネヴァン?(Nemain)
ネハレンニア?(Nehalennia) 船乗りの女神。
ネフタン?(Nechtan) 泉の女神。
ネメトナ?(Nemetona)
ネルトゥス?(Nerthus)
バロール(Balor)
ビュハッハ
フォドラ?(Fodla)
ブリギッド?(Brigid)
ブレス(Bres)
ブロダイウェズ?(Blodeuwedd) 人造人間。
ベー・クイル?(Be Chuille)
ベリサマ?(Belisama)
ベルグシア?(Bergusia)
ボアーン?(Boann)
マッハ?(Macha)
マナナン・マクリル?(Manannan mac Lir)
メイヴ?(Medb)
戦いと復讐の女神モリアン(Morrígan)
長き腕のルー?(Lug Lámfada)

主な神話

ダーナ神話? アルスター伝説?(Ulster Cycle) フィン伝説?(Finn Cycle) ヴェルスンガ・サガ? エッダ サガ

主な戦い

名前 簡単な説明
イーハ平原の戦い?
コナン島の大虐殺?
マグ・トゥレドの戦い?(Cath Maige Tuired)
タルティーンの戦い?

主な文化

名前 簡単な説明
ドルイド?(Druid、立法者)
フィリ?(Fili、祭司)
バード?(Barde、詩人)
ゲッシュ?(Geis、誓い)
オガム文字?(Ogam) 3世紀頃~8世紀頃アイルランドで使用されていたとされる。石や木に刻み込むため直線的な形態。日常使用よりも、魔術やゲッシュに用いられたようだ。ラテン文字がメインになり駆逐される。ゲルマンのケルト文字?との共通性やいかに。

<参考文献>

・・・後日あらためて^^;
書名 著者 出版社 要約
ケルトの神話―女神と英雄と妖精と 井村君江? ちくま文庫(1990
ケルト事典 ベルンハルト・マイヤー 創元社(2001) ケルト文化に関係する事項を、研究史を含めて古代から現代にいたるまで簡潔に、しかし適切に解説している事典。学術的なスタンダード。ただし、カタカナ表記に厳密さを求めているのはいいのだが、かなり多くが見慣れない表記であるため、目当ての項目を探すのに苦労する。従来の表記を併記した索引がほしかった。

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最終更新:2023年09月07日 18:45