(1)子どもの健康状態並びに発育及び発達状態の把握

ア 子どもの心身の状態に応じて保育するために、子どもの健康状態並びに発育及び発達状態について、定期的、継続的に、また、必要に応じて随時、把握すること。

イ 保護者からの情報とともに、登所時及び保育中を通じて子どもの状態を観察し、何らかの疾病が疑われる状態や傷害が認められた場合には、保護者に連絡するとともに、嘱託医と相談するなど適切な対応を図ること。

ウ 子どもの心身の状態等を観察し、不適切な養育の兆候が見られる場合には、市町村や関係機関と連携し、児童福祉法第25条の2第1項に規定する要保護児童対策地域協議会(以下「要保護児童対策地域協議会」という。)で検討するなど適切な対応を図ること。また、虐待が疑われる場合には、速やかに市町村又は児童相談所に通告し、適切な対応を図ること。

①心身の状態の把握の意義
一人一人の子どもの健康状態、発育及び発達状態に応じて保育するとともに、保育士等が、定期的にまた随時、保育中の子どもの心身の状態を把握することが極めて重要です。一人一人の健康状態を把握することによって、施設全体の子どもの疾病の発生状況も把握でき、早期に疾病予防策を立てることにも役立ちます。また、慢性的疾患や障害の早期発見、不適切な養育等の早期発見にも有効です。

②健康状態の把握の方法
子どもの健康状態の把握は、嘱託医と歯科医による定期的な健康診断に加え、保育士等による毎日の子どもの心身の状態の観察、さらに保護者からの子どもの状態に関する情報提供によって総合的に行う必要があります。
なお、一人一人の子どもの生育歴に関する情報は、母子健康手帳等の活用が有効であり、その際は、保護者の了解を求めるとともに、守秘義務についても十分に配慮します。

③把握の実際

【健康観察】
毎日の健康観察は、子どもの心身の状態をきめ細かに確認し、平常とは異なった状態を速やかに見つけ出すことです。観察すべき事項は、機嫌、食欲、顔色、活動性等のどの子どもにも共通した項目と子ども特有の所見・病気等に伴う状態があります。また、同じ子どもでも発達過程により所見の現れ方が異なることがあるので、子どもの心身の状態を日頃から理解しておくことが必要です。

【発育・発達状態の把握】
乳幼児期の最も大きな特徴は、発育・発達が顕著であることです。発育や発達は、出生後からの連続した現象であり、定期的に継続して、または必要に応じて随時、把握することが必要であり、それらを踏まえて保育が行われなければなりません。なお、ここでは、身体の形態面の成熟過程を「発育」、機能面の成熟過程、特に精神運動機能の成熟過程を「発達」として述べています。

○発育・発達状態は、先天的要因、生後の疾病異常、栄養摂取状況、家庭での子育てや保育所等の保育の影響も受けます。そのため、発育・発達状態の把握は健康状態の見極めだけでなく、家庭での子育てや保育の振り返りにも有効です。

○発育状態の把握の方法としては、定期的に身長・体重・胸囲及び頭囲を計測し、前回との比較をする方法が最も容易で効果的です。あわせて、肥満・やせの状態も調べましょう。この結果を、児童票や母子健康手帳等に記録するとともに、各家庭にも連絡し、家庭での子育てに役立てられるようにします。

○精神運動機能の発達は、子どもの日常の言動や生活等の状態の丁寧な観察を通して把握します。精神運動機能発達は、脳神経系の成熟や疾病異常に加えて、出生前、出生時の健康状態や発育・発達状態、生育環境等の影響もあります。さらに個人差も大きく、安易に予測や判断をすることは慎みましょう。

④把握結果への対応

○保育中の子どもの心身の状態については、日々、必要に応じて保護者に報告するとともに、留意事項などについて必要に応じて助言します。保育中に発熱などの異常が認められた場合、また傷害が発生した場合には、保護者に連絡をするとともに、状況に応じて、嘱託医やかかりつけ医等の指示を受け、適切に対応します。

○長期の観察によって、疾病や障害の疑いが生じた時には、保護者に伝えるとともに、嘱託医や専門機関と連携しつつ、対応について話し合い、それを支援していくことが求められます。

○このような事態に備え、疾病や傷害発生時や虐待に対してそれぞれに活用できるマニュアルを作成し基本的な対応を決め、職員全員が適切に実践できることが必要です。この場合、嘱託医や看護師等(保健師、助産師)、栄養士等の専門的機能が発揮されることが望まれます。

⑤虐待の予防・早期発見等の対策

【虐待対策の必要性】

○保育現場は、子どもの心身の状態や家庭での生活、養育の状態等が把握できる機会があるだけでなく、保護者の状況なども把握することが可能です。保護者からの相談を受けたり、支援を行うことにより、虐待発生の予防的機能も可能にします。

○マニュアルを作成し、施設全体の共通認識の下に、組織的に対応すること、また、市町村をはじめとする関係機関とも密接な連携を図ることが必要です。

【虐待等の早期発見】

○子どもの身体の状態、情緒面や行動、養育の状態等について、普段からきめ細かに観察することが必要です。また、保護者や家族の日常の生活や言動等の状態を見守ることが望まれます。

コラム:
◎「観察」の主な要点
保育士等が子どもの状態を把握するための視点として以下のことがあげられます。

◎子どもの身体の状態:低身長、やせているなどの発育障害や栄養障害、不自然な傷・皮下出血・骨折・火傷、虫歯が多いまたは急な虫歯の増加等

◎心や行動の状態:脅えた表情・暗い表情、極端に落ち着きがない、激しい癇癪、笑いが少ない、泣きやすい、言葉が少ない、多動、不活発、攻撃的行動、衣服の着脱を嫌う、食欲不振、極端な偏食、拒食・過食等

◎不適切な養育状態:不潔な服装や体、歯磨きをしていない、予防接種や医療を受けていない状態等

◎親や家族の状態:子どものことを話したがらない、子どもの心身について説明しない、子どもに対する拒否的態度、しつけが厳しすぎる、叱ることが多い、理由のない欠席や早退、不規則な登所時刻等

【虐待等が疑われる場合や気になるケースを発見した時の対応】
保育所では、保護者が何らかの困難を抱え、そのために養育が不適切になる恐れがあると思われる場合には、常に予防的に精神面、生活面を援助していく必要があります。上記の種々の事項に応じて、実際に不適切な養育が起こっていると疑われる場合や気になるケースを発見した時は、速やかに市町村や関係機関と連携を取ることが必要です。なお、この対応については、第6章においても記述されています。
最終更新:2009年01月10日 22:16
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