(1)保育士等の自己評価

ア 保育士等は、保育の計画や保育の記録を通して、自らの保育実践を振り返り、自己評価することを通して、その専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならない。

イ 保育士等による自己評価に当たっては、次の事項に留意しなければならない。

(ア)子どもの活動内容やその結果だけでなく、子どもの心の育ちや意欲、取り組む過程などにも十分配慮すること。

(イ)自らの保育実践の振り返りや職員相互の話し合い等を通じて専門性の向上及び保育の質の向上のための課題を明確にするとともに、保育所全体の保育の内容に関する認識を深めること。保育士等が行う自己評価は、保育実践の改善のためにあります。保育は計画、実践、省察、評価、改善、計画という循環を重ねながら展開します。改善のための評価には、評価の視点として「子どもの育ちをとらえる視点」と「自らの保育をとらえる視点」の二つが含まれています。

①子ども一人一人の育ちをとらえる視点
保育士等は子どもと生活を共にする中で、個々の育ちをしっかりととらえることができる専門性が何よりも大切です。特に第2章に示される発達の特性とその過程を踏まえ、ねらいと内容の達成状況を評価します。そのとき留意したいのは、一人一人の発達に個人差があること、生活や遊びの中で目に見えにくい心の動きなど内面の育ちをとらえること、子どもの活動の結果だけに目を向けるのではなく、どのようなことに興味や関心を持ち、どのような活動に取り組もうとしているのか、また取り組んでいるかを理解することです。また、保育の環境や、子ども同士及び保育士等との関係など、周囲の状況との関連も視野に入れながらとらえることも大切です。
さらに、それまでの生育歴や保育歴をはじめ、家庭や地域社会での生活の実態にも目を配るようにします。

②自らの保育をとらえる視点
保育士等は、指導計画に書かれたねらいと内容、環境構成、保育士等の援助などが適切であったかなど、「保育の過程」の全体を振り返ります。指導計画をはじめ保育実践記録などをもとに、保育士等の間での省察を通じて、保育の目標やねらいの達成状況、課題となっていることを明らかにします。また、保育を展開していくうえで、保護者との連携が十分に図られていたかについても振り返ります。

③保育士等の学び合いとしての自己評価
自己評価は、保育士等が個別に行うだけではなく、相互理解が大切になります。そのためには、保育実践を互いに見合うことや、カンファレンスを通して、子どもの行動の見方や自己の保育の意味を検討することなどは、一人では気づけなかった保育のよさや課題の発見につながります。ときには保育所外部の専門家を交えたカンファレンスを行うことも大切です。同じ保育場面でもとらえ方は様々であり、自分の保育が同僚や他の専門家にどう映るのか、自分と異なる子ども理解や保育の視座に出会うことで保育の視野を広げ、自らの子ども観や保育観を見つめ直す機会となります。
こうしたことを通して、自己評価が保育の質の向上に欠かせないものであることを実感できるようになると、そこに共通の保育への見通しを持って、お互いに意見を交わし合う関係が形成されます。保育実践の意味を共有化したり、ときには自分の不十分な点や修正が必要な点に気付く機会になったり、あるいは保育のマンネリ化に陥ることを防ぐことにもつながります。それぞれが専門性を持ちながらチームワークを向上させていこうとする姿勢によって、組織として前向きに取り組むことが可能になります。このような自己評価のあり方により、学び合いを継続していく基盤が形成され、自分と異なる他者の意見を受け止め自らの保育を謙虚に振り返る姿勢や、保育に対する責任感と自覚など保育の専門性の向上が図られていきます。
最終更新:2009年01月10日 22:06
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