(1) 保育の目標

ア 保育所は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である。このため、保育所の保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために、次の目標を目指して行わなければならない。

(ア)十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。

(イ)健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。

(ウ)人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。

(エ)生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。

(オ)生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。

(カ)様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを
培うこと。



イ 保育所は、入所する子どもの保護者に対し、その意向を受け止め、子どもと保護者の安定した関係に配慮し、保育所の特性や保育士等の専門性を生かして、その援助に当たらなければならない。
保育所は、それぞれに保育所の特色や保育方針があり、また、施設の規模や地域性などにより、保育の在り様は様々です。しかし、すべての保育所に共通する保育の目標は、この保育指針に示されているように、子どもの保育を通し、「子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う」ことと、「入所する子どもの保護者に対し、その援助に当たる」ということです。
保育所は、「生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期」にある乳幼児の「現在」が、心地よく生き生きと幸せであることを保育の目標とするとともに、その「未来」を見据えて、長期的視野を持って、生涯にわたる生きる力の基礎を培うことを目標として保育することが重要です。それは、生涯、発達し続けていく一人一人の子どもの可能性や、あと伸びする力を信じることでもあり、保育とは、子どもの現在と未来をつなげる営みといえるでしょう。
保育には、子どもの現在のありのままを受け止め、その心の安定を図りながらきめ細かく対応していく養護的側面と、保育士等としての願いや保育の意図を伝えながら子どもの成長・発達を促し、導いていく教育的側面とがあり、この両義性を一体的に展開しながら子どもと共に生きるのが保育の場であるといえます。

①養護と教育の目標
1つ目の子どもの保育の目標は、さらに(ア)から(カ)までの6つの側面から説明されています。
すなわち、(ア)が養護に関わる目標であり、(イ)以下は、教育の内容の5領域に照らし合わせ、(イ)が「健康」、(ウ)が「人間関係」、(エ)が「環境」、(オ)が「言葉」、(カ)が「表現」に関わる目標となっています。
この5領域に関わる保育の目標は、改定前の保育指針と同様、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定されている幼稚園の目標と共通のものとなっています。ここに示された保育の目標を、一人一人の保育士等が自分自身の保育観、子ども観と照らし合わせながら、より深く心に刻んで保育していくとともに、保育所全体で確認しながら取り組んでいくことが求められます。

②保護者支援の目標
2つ目の大きな目標である保護者への援助は、子どもの保育と深く関連して行われるものです。第6 章「保護者に対する支援」に示されていることを踏まえ、保護者の声に耳を傾け、その意向をしっかりと受け止めた上で、適切に対応します。保護者一人一人の状況を考慮し、職員間で連携を図りながら対応していきますが、常に、子どもの最善の利益を考慮して取り組むことが必要です。
また、日頃より保育の意図や保育所の取組について説明したり、丁寧に伝えながら保護者と共に考えたり、対話を重ねていくことが大切です。
こうした保育の目標を目指して行う日々の保育が、常に、人(子どもや大人)との相互の関わりの中で繰り広げられていることや、そのことを通して、子どもはもとより、保護者も、そして保育士等も育ち合っているのが保育の場であるといえます。
子どもと保護者の関係を軸に、子ども、保育士等、また保護者等の様々な関係が豊かに繰り広げられていくことが望まれます。
最終更新:2009年01月10日 19:51
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