第6章 保護者に対する支援

保育所における保護者への支援は、保育士等の業務であり、その専門性を生かした子育て支援の役割は、特に重要なものである。保育所は、第1章(総則)に示されているように、その特性を生かし、保育所に入所する子どもの保護者に対する支援及び地域の子育て家庭への支援について、職員間の連携を図りながら、次の事項に留意して、積極的に取り組むことが求められる。

【保護者支援の原則】
児童福祉法第18 条の4 は、「この法律で、保育士とは、第18 条の18 第1 項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術を持って、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」と定めています。
保育士の重要な専門性の一つは保育であり、二つは児童の保護者に対する保育に関する指導(以下「保育指導」という。)です。以下に度々触れるように、保育士等の保護者に対する支援は、何よりもこの保育という業務と一体的に深く関連していることを常に考慮しておく必要があります。

コラム:
◎ 「保育指導」の意味
子どもの保育の専門性を有する保育士が、保育に関する専門的知識・技術を背景としながら、保護者が支援を求めている子育ての問題や課題に対して、保護者の気持ちを受け止めつつ、安定した親子関係や養育力の向上をめざして行う子どもの養育(保育)に関する相談、助言、行動見本の提示その他の援助業務の総体をいいます。

【地域子育て支援の原則】
児童福祉法第48 条の3 は、「保育所は、当該保育所が主として利用される地域の住民に対してその行う保育に関して情報の提供を行い、並びにその行う保育に支障がない限りにおいて、乳児、幼児等の保育に関する相談に応じ、及び助言を行うよう努めなければならない。」と定めています。
相談・助言は、保護者支援に欠かせない専門的機能です。法律において、保育所における通常業務である保育に支障をきたさない範囲でこれを行うことを明記しています。すべての保育所がその限界を超えて支援を行う必要はありません。
しかし、近年一層地域子育て支援の役割が重視されてきている状況を踏まえ、地域子育て支援の意義を認識し、積極的に取り組むことが必要とされます。特に児童福祉法第21 条の9 で定められている子育て支援事業のうち、第1 項第2 号の「保育所その他の施設において保護者の児童の養育を支援する事業」のように、保育所の特性を生かした取組が求められています。
地域における様々な子育て支援活動と連携し、それぞれの地域の特徴、保育所の特性を踏まえ、それを生かして進めることが大切です。
またこの条文では、保育所の地域に対する情報提供の努力義務が明記されていますが、この業務も地域における子育て支援と深く関係しています。

【入所児童の保護者との連携の原則】
児童福祉施設最低基準第36 条は、「保育所の長は、常に入所している乳児又は幼児の保護者と密接な連絡をとり、保育の内容等につき、その保護者の理解及び協力を得るよう努めなければならない。」と定めています。保育所における保育が、保護者との密接な連携のもとで行われることは、子どもの最善の利益を考慮し、子どもの福祉を重視した保護者支援を進める上で不可欠なものです。

【特別の支援を必要とする家庭及び児童の優先入所の原則】
保育所は、市町村が「保育に欠ける」と判断し、入所を受託した乳幼児の保育を行うことを目的としています。これに関連し、児童虐待の防止等に関する法律第13 条の2 は、市町村が保育所に入所する児童を選考する場合には、「児童虐待の防止に寄与するため、特別の支援を要する家庭の福祉に配慮しなければならない。」と定めています。また母子及び寡婦福祉法(昭和39 年法律第129 号)第28 条は、市町村が保育所に入所する児童を選考する場合には、「母子家庭等の福祉が増進されるように特別の配慮をしなければならない。」と定めています。さらに、発達障害者支援法(平成16 年法律第167 号)第7 条は、市町村は保育の実施に当たって、「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通して図られるよう適切な配慮をするものとする。」と明記しています。
これらの法の趣旨を踏まえ、特別の支援を必要とする家庭や保護者の保育や子育て支援に留意することが重要です。

【保育所における二つの保護者支援】
保育所における保護者に対する支援には、大きく次の二つがあります。その一つは、入所している子どもの保護者に対する支援です。もう一つは、保育所を利用していない子育て家庭も含めた地域における子育て支援です。前者に関しては、保育所は本来業務としてその中心的な機能を果たします。また、後者に関しては本来業務に支障のない範囲において、その社会的役割を十分自覚し、他の関係機関、サービスと連携しながら、保育所の機能や特性を生かした支援を行います。地域子育て支援活動は、現在、様々な専門職、ボランティア、当事者などが担っています。その中でも、日々子どもを保育し、子どもや保育に関する知識、技術、経験を豊かに持っている保育所が、保護者や子どもとの交流、保護者同士の交流、地域の様々な人々との交流を通じて、その特性を生かした活動や事業を進めています。

【子育て支援の機能と特性】
保育所は、以下のような子育て支援の機能、特性を持っています。つまり、①日々、子どもが通い、継続的に子どもの発達援助を行うことができること、②送迎時を中心として、日々保護者と接触があること、③保育所保育の専門職である保育士をはじめとして各種専門職が配置されていること、④災害時なども含め、子どもの生命・生活を守り、保護者の就労と自己実現を支える社会的使命を有していること、⑤公的施設として、様々な社会資源との連携や協力が可能であること、の5 点です。保育所の子育て支援は、男女共同参画社会の進展や家庭の養育力の低下などの今日的状況を踏まえ、こうした保育所の特性や保育環境を生かして進めていくことが必要とされています。






















最終更新:2009年01月10日 22:39
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